Be strong, be kind 〜強くて優しくあれ〜
こんにちは。女将の奈海です。
先日のニュージランドのアーダーン首相の言葉が、私の心に染みています。
Be strong, be kind
強くて優しくあれ。 私はそう、解釈しています。
実は、私は数年前まで、どんな女将さんになりたいですか? との問いに、
必ずこう答えていました。
『強くて優しい女将』と。
すると、こう言われてしまいました。
強いと優しいは、反対語。だから、強くて優しい人というのは、存在しないよ!
と。
あまりにも多くの人がそう言うので、もう私は強くて優しい女将になりたいと、言葉に出すことをあきらめました。
でも、やっぱり今でも想うんです‥強くて優しい女将になりたいと。
ニュージーランドの首相がこの言葉を声を大にしてくださったお陰で、やっと私ももう一度、言葉を声を大にして言っちゃおうと思います。
2020年4月11日土曜日。この日を境に、私達の営む飲食店はガラリと様変わりしました!
自粛要請のなか、飲食店はのアルコール提供は夜7時まで、店内飲食は夜8時までとなりました。本来、飲食店の一番活気のある時間帯は、夜7時から10時ぐらいです。当然、どこのお店もテイクアウト中心のサービスに切り替えての営業となり、海んちょも同じくテイクアウトを中心に勝負真っ只中です。
5時半開店だった日吉の街の小さな料理屋は、4時開店に前倒しもいたしました。
当然、売上は激減です。体力のない個人飲食店や、社会的な立場を考える大手の飲食チェーン店、老舗の大きなグループ店などの一部の店舗では、休業という選択をしているお店もすくなくありません。海んちょは、マスターと女将の私との2人だけで自粛営業を続ける決断をしました。赤字がこのまま続き、すべての資産が底を尽きたとしても、その時になったらその後のことを考えればいい。老舗のお店や組織的なお店は、そうはいかないでしょうが、海んちょは個人の小さな飲食店です。経営者が3倍働けばいいさ!!と。
開店時間を前倒しにしたので、女将の私は昼過ぎにはお店に入ります。まずは開店準備。座敷の水拭き掃除から始まり閉店のお片付けまで、女将の仕事は3倍になりました。泣き言なんて言う余裕はありません。強くならなきゃ。自分に負けない自分にならなきゃ。ただそれだけでした。
女将の心もガラッと変わりました!
仕事は3倍に増えても、売上は4分の1に。ところが不思議なことに苦痛ではありません。愚痴もでてこない。なんでだろう。座敷の水拭きやトイレのモップかけをしながら考えました。
普段やってなかったこと、スタッフさんに丸投げしてたこと、すべて自分でやってみると、みんなへの感謝への気持ちが沸沸を湧いてくるのです。こんなに大変なことを毎回文句も言わずにやっていてくれたスタッフさん達。
急に優しいふわふわした気持ちが湧いてきました。本当にありがたい。感謝の気持ちで速攻でモップ片手にスタッフさんとのグループLINEで、感謝の気持ちを送ってみたりしちゃったくらいです。
店先のお花達にも、優しい気持ちが湧いてきました。
寒かった冬。こんな川沿いのコンクリートの上で、よく寒いって言わないで頑張ってくれたね、って。そして、冬の間、枯れ木のように茶色くなっていたカーネーションも、このゴールデンウィークに真っピンクの小さくて可愛いお花を咲かせてくれました。
戦略もガラっと変わりました!
経営戦略も変わりました。テイクアウトのお客様に、厨房の様子がわかるように、仕込みの様子を動画で撮影しSNS投稿をしたり、酒類販売業の免許を取得して、生ビールもテイクアウトしていただけるようにしました。まかないご飯の様子も、POP作りの様子も、閉店後の夜中にメニューをプリントしている風景もSNSでお伝えするようにしました。
容器も持ち帰りやすいものに変えました。お料理もできるだけお持ち帰りのお時間に合わせるように調理して、おうちご飯でも出来立てを召し上がっていただけるように努力しました。
どんなに忙しく戦場のような厨房になっても、絶対に怖い顔して作らない、調理させてもらえる喜びを噛みしめながら、笑顔で調理する、これを心がけて作ることにしました。優しく優しく、とにかく優しくと。
お客様の言葉にも変化が!
その翌週。お客様の言葉にも大きな変化が現れたのです。
なんと、たくさんのお客様よりテイクアウト料理の注文のご連絡が!
応援しにきました!
LINE見ました!
インスタ見て連絡してます。仕込み中のお料理、予約できますか?
お店に行ったことないんですけど、テイクアウトはできますか?
などなど。普段ごかぞくでのごはん会や、お友達同士でのごはん会、気軽に使っていただているお客様。みなさん、急に優しい労いの言葉と応援の言葉をかけてくださるようになりました。
あのお客様から頂いた意外なお言葉!
そして何より驚いたことは、あの常連様から頂いた意外なお言葉でした。
ご家族連れでいらっしゃる常連のお客様
潰れては困るんです。いや、私たちが潰さないんで。応援しますから。守りますから!
普段はご家族でいらっしゃるご夫婦。急にお二人が真顔でそう言ってくださったのです。思わず、涙が‥。ぐしぐしと拭い取るおかみ。優しい言葉、ありがとうございます。
常連のグループ様のある一人からも、驚く言葉が!
その方は、普段はあまり言葉を発しない静かでおっとりした感じの(すいません、勝手にそう思っていました!!)スポーツ系男子。周りがわいわいしている中、その方は言葉少なくて、数杯のハイボールと鶏のチリソース炒めをご注文していました。お帰りの際には小さくそっと「ごちそうさまでした。ありがとうございました」と目も合わさず、照れ臭そうにそれだけ言って帰っていくのです。その彼が、わざわざ電話をくれ、鶏のチリソース炒めをご注文くださったのです。テイクアウトのお料理を手渡した際に、なんだか言いたげな顔をされたので、
みなさんは、お元気でお過ごしですか?御無事でお過ごしですか?
とお声かけをしました。
あの‥こんな風になっちゃいましたけど、絶対に負けないで頑張ってください。僕たちもみんな会わないで頑張ってますから。そしてまた会えるようになったら、前と同じようにここにみんなできますから。だから、前と同じように営業を続けててください。お願いします。
と、目をぐっと見つめて頭を下げてそう言ったのです。あの彼が、そう言ったのです。
びっくりしたのと嬉しかったのと、そして、強くありたいと思ったのと、優しくありたいと思ったのと‥で、思わずうるっときちゃいました。でも泣かない!です。涙は終息後の嬉し涙に取っておきたいから。
近隣にお住まいの理系男子からの優しさに包まれた言葉
そしてもう一つ。数ヶ月に一度のペースで3、4名の仕事仲間と一緒にいらっしゃるエリート理系男子。(日吉は場所柄、理系男子が案外多く住んでいます)
その彼は、お近くにお住まいのなのですが、海んちょの前をお通りになるときに顔を合わせる機会がたまにあります。
おはようございまーす。
こんにちは!
お帰りなさい、いまお仕事帰りですか?
とお声をかけても、ぼそっと、
あ、はい‥
とだけお答えになる‥そんな彼が、閉店時間の15分前に息をきらして店内に入っていらっしゃいました。びっくりして
どうされましたか?なにかありましたか?
と私。すると、大きな声で、笑顔で、マスクの奥から
大丈夫ですか、お店!
体壊さないで、お店を続けてください!テイクアウト料理始めてるって聞いて、買いにきました!
もう本当にびっくりです。みんな、本当に心配してくれる。愛情いっぱいかけてくれる。本当に嬉しい限りです。
お客様の心と体を強くするお料理とごはんを!!そう思って今までやってきましたが、実はお客様に強くしてもらっていたことを、改めて気づかされました。
いま、女将は小さなお礼を考えています
自粛要請後の最初の営業日の夜。ご来店くださったお客様は、たったの1組でした。この日の夜は、へこんでいましたが、今思えば、よくきてくださったと感謝しています。このままではおそらく倒産、破産も免れない、そうなったらなったで仕方ない!と腹をくくった夜でしたが、3週間たった今、自分の気持ちに変化を感じています。
終息後の応援ありがとうキャンペーンを企画する前向きな気持ちが湧いてきていますし、最近では、女将からの今できる、終息前の小さなお礼企画を考えています。
私たちは大丈夫♡
今は、自粛要請の真っ只中。加えて、自粛要請期間は予定よりもう一ヶ月延長となりました。
店内利用もお席を間引いてのご案内となっているため、本来は40名の席数のところ、フロアは1テーブルのみ、座敷席は1〜2テーブルのみのご案内とさせていただています。女将とマスター二人だけでテイクアウトのお料理と、店内でご飲食されるお客様のお料理をつくらせていただているので、てんやわんやのドタバタです。
それでもお客様からは、お叱りの言葉よりも労いの言葉をいただいたり、時にはご協力していただいたりと、本当に優しくしていただいています。
強くて優しくありたいと常に願っている女将の私ですが、実はお客様が強くて優しいからだったのですね。
今夜は、今までのレシピを読み返しています。強くて優しくありたいと願う女将からの小さなお礼ができればと考えながら‥レシピを読み返しています。
Be strong, be kind! We will be OK!
ですね。
今日の女将の戯言でした。
奈海
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