嵐の夜にやって来て、嵐の日に虹の橋に向かって旅立った!最愛のちーちゃんへ
「ただいまぁ! ごめんね、遅くなっちゃったぁ。」
いつもと同じ。仕事から帰ってくると、開口一番の私の言葉。
そう、ちーちゃんへの言葉。
玄関に一歩足を踏み入れた途端、ポロポロと涙がでる。
こぎれいに片づけられた部屋は、やっぱりなんだか落ち着かない。
履きくたびれたビーサンを見つめながら、つぶやく私。
「もう、猫砂で汚れた玄関はもうないんだな。」
ぐしぐし!とゲンコツで目を擦って涙を拭う。そしてそのままリビングに入る。
もう、そこにはちーちゃんの姿はない。
餌の入ったお皿ももうない。
お水を取り替える必要もない。
いつもだったら、大の字でソファの上ででーんと寝ていたちーちゃんの、その姿はない。
「よっこいしょ。」
声をだしてみる。そしてその場所に腰かけてみる。
思ったより広い。当たり前だ。もうちーちゃんがいないんだから。
掃除機を出して、なんとなく掃除をしてみる。
掃除機の中のゴミを捨てようとして、ハッと気づく。
猫ちゃんの毛でいっぱいになってた掃除機のゴミ溜まりには、もう、猫ちゃんの毛がない。
「そっか、もういないんだ。本当にいないんだ。」
16年前の嵐の夜。近くのコンビニで薄汚い汚れた猫を見つけた。
ずぶ濡れになってコンビニのスタッフさんから缶詰をもらっていたその猫をチラ見した。
食べているその子と目が合ってしまった。
チャチャチャと私のほうに寄って、そして靴の上に乗っかると足にしがみついてきた。
不思議と汚いと思わなかったのは、なぜだろうか。
感情に身を任せて、そのままその子を連れて帰った。
お風呂に入れて、ドライヤーで乾かし、爪を切ってあげると、案外美人さんだ。
私と当時小学生だった娘の間に、そっと寝そべって、そしてうちの子になった最初の夜だとういうのに、大の字で眠ってしまった。
かわいい寝顔。その日から、ちーちゃんは、我が家の末娘になった。
チーズを見ると気が狂ったように欲しがった姿を見て、「ちーちゃん」と名付けた。
先代の猫をなくして一年ちょっと過ぎていたころだった。毎晩一緒にお布団で寝たが、全く警戒心もなくスヤスヤと眠る姿や、ころんとお腹を見せる姿が、とってもかわいい。
ちーちゃんを、路上で初めて見た時、
「きっとどこかで飼われていたのかもしれない。」
そう思った。
念のため、獣医さんのところへ連れていき、検査をしてもらうと、の避妊手術もしていたし、出産の経験もあるようだという。
「きっとどこかで飼われていた子が、訳あって、路上生活になったんでしょうね。」
獣医さんはそう言った。
ちーちゃんは、我が家の中で一番の頑張り屋さんだった。
娘が大きな病で高校へ行けなくなった時、ちいちゃんはいつも娘のおでこをポンポンとしてくれた。慰めてくれた。
そして
「がんばれー、がんばれー、負けるなー、負けるなー。」
そう言っていつも娘のそばにいた。
私が体を壊した時もそうだった。
「ママ―、前に進めー、前に進めー。」
そう言って励ましてくれた。
ちーちゃんは、いつも上を向いていた。
だから、ちーちゃんがいなかったらきっと今の自分はない。
2021年9月18日、嵐の日のお昼ごろ。
私、オットであるマスター、すでに嫁に行った娘、看護師をしている私の妹と、先に愛猫に先立たれたもう一人の妹・・・
5人に看取られながら、静かに静かに虹の橋へ向かって行った。
ピンクのかわいいタオルにくるまれて、私と一緒に使っていたタオルを抱っこして、かわいいお花に囲まれて、そして、私の書いたお手紙をもって、
大好きだったチュールも持って、
お空で先代猫のリリーと出会ったときにお互いがわかるように、リリーの写真も持って・・・
旅立っていった。
あれから、半月。
そろそろ、めそめそ生活から卒業。
ちーちゃんに笑われないように、ちーちゃんに心配をかけないように、ちーちゃんのいない毎日を一生懸命生きると誓っている。
ちーちゃん。
ありがと。本当にありがと。
ちーちゃんから、たくさんのことを学んだよ。
いつになるかわからないけど、虹の橋の手前のお花畑で、私が行くまで待っててね。
きっと先輩猫ちゃんたちと、楽しく過ごしてくれてると思うから。
ちーちゃん、ちーちゃん、ちーちゃん・・・
呼んでもいないのわかってるけど、やっぱりまだ、ちーちゃんの名前をついつい呼んじゃうね。
そして、やっぱり、うんと、淋しいね。
逢いたい。