天才ノーラン大解剖!『ダンケルク』はやっぱりビートルズの『LET IT BE』だったよ前編(究極のネタバレ警報💀💀💀)
やっぱり来たなダンケルク!
しかも予想通りの『レット・イット・ビー』…
顔違ってるけど…
やあナンボク、ええじゃろう!
ボクおかえもんです。
おう、オッサン!
ダンケ観たら書く言うとったから、観に行って来たっちゅうことやな。
いや、まだ観てないよ!
ふぁっ!?
YouTubeにあった各種予告編とWikiを見て確信したんだよ。そんで脚本の一部を読んでみたら、もう完全に僕の予想が当たってた。だから映画を観に行かなくても大丈夫。
相変わらずの無根拠な自信だ!
そんなことないよ。
日本の公開日が9月9日になったのは、絶対にクリストファー・ノーラン(以下ノークリ)自身の希望に違いない。
しかも映画本編は99分間なんだそうだよ。
もうこれは『LET IT BE』の中の曲『One After 909』を意識してに決まってるじゃないか。
「そんなの偶然だよ」なんて言わせない!
言うてへんやろ。
しかもオマージュのターゲットは、ただの『LET IT BE』じゃない。
この映画『ダンケルク』は、映画『LET IT BE』へのオマージュなんだよ!
なぬ!?
この映画版『LET IT BE』の中で、僕は凄いことを発見した…
『ダンケルク』でスピットファイアら戦闘機による激しい空中戦が描かれ、海へ墜落するという、この映画最大の話題シーンは、なんと…
ポール・マッカートニーの発案だったんだ!
いやいやいやいや、それはないでしょ!
ホントだよ。映画『LET IT BE』を観てもらえればわかる。
ところで…オイラ…
『LET IT BE』に映画があったってこと初めて聞いたんだけど…
なんや知らんのか?
おかえもん、サクっと見せたれ。
いや、残念ながらYouTubeにはちゃんとした動画が無いんだよ。
ニコ動にはあったんだけどね。こんな感じで。
AmazonではDVDが売ってる。コチラです。
でも映画を全部観るのは大変だろうから、ファンによるちょうどいいダイジェスト版がYouTubeにあったんで、それをちょっと観てもらおう。
注目は0分50秒からだ。
ここでポールが戦闘機の墜落シーンを「こうするんだよ!」って教えている。
そして1分55秒からのシーンもチェックしてほしい。
『ダンケルク』で重要になるシーンが描かれているんだ。
その他の部分は、とりあえず今は観なくても大丈夫。あとでゆっくり楽しんでくれ。
さあ、THE BEANSの皆さん、再現フィルムをよろしく!
THE BEANS『LET IT BE (film)』
ポール風の人のアレが墜落シーンの指導なの!?
いや、確かホンマモンのポールは、もっと激しくジョージに指導しとったで。
「そうじゃない!こうだ!こうやって落ちていくんだ!なんでこんなこと一発でわからないんだ!」
ってな。
往年の黒澤明か大島渚かっちゅうくらいに。
そんでジョージがキレるんや…
そうだったよね。
そして1分55秒からのシーンは、そのジョージ・ハリスンが感電する事件の再現だ。
感電してカツラが飛ぶの…?
そんなドリフか新喜劇みたいなことビートルズがやるか!
ただポールがふざけてスタッフに「ジョージが死んだら君たちクビだよ」って言うんやったな。
しかしこれが『ダンケルク』と何の関係があるんや?
ふふふ。
そこは順を追って説明していくとしよう。
例によって真っ新な状態で映画を観たい人は、ここで引き返してくれたまえ。
一番のお薦めコースは、映画を観てから本記事を読んで、そしてもう一回映画を観に行くって流れだ。
「俺はどんなネタバレをされても映画を楽しめるゾ!」と自負するツワモノは、このまま読み進んでもらって結構。
でもそうじゃない人は、ここで引き返したほうがいい。
引き返すって、どこに行ったらええねん。
Get back to where you once belonged...
それ『GET BACK』の歌詞!
映画『LET IT BE』は「ゲットバック・セッション」と呼ばれるスタジオでのセッション風景と、「ルーフトップ・コンサート」と呼ばれるライブ録音からなるドキュメンタリー映画なんだ。
正確に言うと、
1、トゥイッケナム映画撮影所でのセッション
2、アップル・コア本社スタジオでのセッション
3、アップル・コア本社ビル屋上でのゲリラライブ
この3つのパートから構成されている。
しかも時間軸はそれぞれ異なっていて、実は順番になっていないんだよね。
どっかで聞いたことあるハナシや…
『ダンケルク』だよ。
ノークリは、映画『LET IT BE』のアイデアをそのまんま拝借したんだ。
「陸・海・空」のドラマがそれぞれあって、時間軸が立体的に描かれる。
おお!
ということで、まずはこの曲『GET BACK』から聴いてほしい。
アルバム『LET IT BE』ではラストナンバーになったけど、このセッションのメインテーマである曲だ。
そして『ダンケルク』がノークリのライフワークともいえる「クーパー三部作」の「総仕上げ」的な意味合いをもつ「第四の作品」であることを象徴する曲でもある。
演奏はイタリアの不良オヤジVicoPagliaStyleの皆さん、ジェノヴァの街でのちょっとヤバいルーフトップ・コンサートだ!
VicoPagliaStyle『Get Back』
街なかのビルの屋上で焚き火したり拡声器使ったり、ほんまアホなオッサン連中や。
いろんなバンドがコレを真似して動画撮ってるけど、これは正真正銘の「ゲリラ」ライブやな。下の道路を歩いとる通行人の反応が本家そっくりやで。窓から迷惑そうな顔で見とる奴とかも。
だよね。
さて、この曲の歌詞は、末期状態にあったビートルズを何とか立て直そうとポールが作ったものだよね。
「ゲット・バック」つまり「あの頃に帰ろうぜ。あの頃の俺たちを取り戻そうぜ」というメッセージ…というか、切実な願いだね。
おかえもんの「クーパー三部作」説によると、ノークリはこれまで英国の国民車だったミニ・クーパーの物語を映画の中でこっそり描いてきた。
そして『インターステラー』のラストで、おばあちゃんのマーフにこんなセリフを言わせたんだよね。
「ブランドを助けて」
って…
それは故郷を離れ、遠い地で孤立しているミニ・クーパーやロールスロイスなどの英国ブランドのことでもあったんだ…
その通り。
かつてはモノ作り精神にあふれ技術大国だったイギリスは、クーパー・カーの没落と共にその心を失ってしまった。ビートルズの活躍は、英国が輝いた最後の瞬間でもある。
70年代には不況は深刻になり、80年代にはサッチャー首相によるサッチャリズムの時代を迎える。大規模な規制緩和と経営合理化による大改革だ。そして90年代には「クール・ブリタニア」の時代がやって来る。古臭い製造業から、おしゃれなソフト産業に国家規模で舵を切った。最新技術を駆使した金融やIT、さまざまな新しいメディアなどがもてはやされたんだ。
でもノークリはそこに疑問を持っていた。
それでいいんだろうか?ってね。だから彼は「手作り」にこだわるんだ。できる限りCGは使わず、いろんな知恵を絞って映画を撮るんだよね。もちろん映画の中の世界にもそれは色濃く反映されている。スマホどころか携帯電話も出て来ない。「重力」という科学史上最大の謎を解いた時も、スーパーコンピューターどころかPCすら使わず、ノートと黒板でやって見せたくらいだ。
すさまじいまでのコダワリやで。ちゅうかもうギャグの世界や。
ノークリは憂いた。
英国はこのままでいいのだろうか?
かつての技術大国の精神を取り戻すべきなのではないのだろうか?
手放してしまった「ブランド」をこのまま見棄ててしまっていいのだろうか?
「モノ作りの精神」と「輝けるブランド」こそが、英国の未来を築くのではないだろうか?
大きな流れに迎合するのではなく、自分で考え、自分の足でしっかりと立つことが大事なんじゃないか…
だからEUに関しても…
皆さん、これはおかえもん個人の意見であり、あくまで推測に過ぎません。
てゆうか、このシリーズ全体に言えることですが、ノークリ本人に確認なんて一切とってありませんから。
でも、映画『ダンケルク』に出て来る「赤十字」は、イングランドのことなんだよね…。そこをよく見て欲しい。どういう使われ方をしているか、とか。
さて、そろそろ歌詞の紹介にいこうかな。
さっきの動画は映画版のカバーなんだけど、アルバム版の『GET BACK』では、歌の前後にジョン・レノンの「おふざけ」が入るんだよね。実はこの「おふざけ」が『ダンケルク』では重要なんで、それも訳しておくよ。
GET BACK
作詞作曲:レノン=マッカートニー
日本語訳:おかえもん
<おふざけ>
可愛いLoretta Fartは自分をcleanerだと思ってたけど
実はfrying panだったのさ、yeah !
The Picker ! このネタを拾ってくれ!
指が燃えてる写真を撮ってくれよ!
<1番>
ジョジョは自分を一匹狼だと思っていたが
これじゃあやっていけないと気付いた
そこでアリゾナ州ツーソンの家を出たんだ
カリフォルニアの葉っぱを求めて
帰えろうぜ、もといたところへ
戻ろうぜ、ジョジョ
懐かしの故郷へ
<2番>
麗しのLoretta Martinは、自分を女だと思ってたけど
実は男でもあったんだ
周りの女友達はみんなイケてるって言うんで
行けるとこまで行ってみることにした
帰えりなよ、もといた世界へ
なあ戻ろうぜ、ロレッタ
懐かしの故郷へ
<おふざけ>
ありがとう、モー
グループを代表してお礼の言葉を言わせてください
このようなチャンスを与えてくれてどうもありがとう
オーディションに受かるといいんだけど
まあ、わかりやすいな。
映画的にはイギリスへ「GET BACK」したくて、ノークリ的にはDIY精神とか英国魂を「GET BACK」したいんやろ。
でも2番の歌詞が『インセプション』してる…
アリアドネや渡辺謙になりすましていたモルのことだ…
渡辺謙に偽装しとったんやない。サイト―やで。
しかしなんで「おふざけ」が大事なんや?
何の意味もないやろ。
そんなことないよ。とっても重要だ。
まず初めの方。
ここに出て来る「Loretta Fart」は、トム・ハーディ演じる空軍パイロット「Farrier(ファリアー)」のことなんだ。
なんで!?
「Fart」の「Far」と「Farrier」の「Far」しか共通点がない!
そんなことないよ。
彼はダンケルクからの撤収作戦でドイツの戦闘機を一掃するために出動した。「cleaner」だね。
でも彼の名前「Farrier」は英語で「蹄鉄工」って意味なんだ。馬の足の裏につけるU字型の鉄だね。だから「frying pan(フライパン)」なんだ。そして「flying pan(空飛ぶフライパン)」でもある。
ちなみに彼が最後に降り立つ場所は「LA PANNE」という土地だ。英語風に読めば「ラ・パン」だね。
そして「pan」には「カメラをパンする」って意味もある。固定したカメラをぐるっと回して撮ることだね。いわゆるパノラマだ。ノークリは今回、スピットファイアにカメラを取り付けて臨場感あふれる空中戦を撮ったらしいよね。絶対にスクリーンで見てくれって言っている。
最後のとこだけはホントに言ってたよ!
ファリア―は重要人物やと思うで。
リンゴ・スターに顔が似とるってだけでキャスティングされたわけやないやろ。
その通り。
彼の名前「ファリア―」は「ウェストファリア条約」のことでもある。
ヨーロッパ全土を巻き込んだ長い戦争が終わり、1648年に締結されたこの条約によって、近代ヨーロッパが形作られた。相互の領土を尊重し、内政への干渉を控えることを約し、新たなヨーロッパの秩序が形成されるに至ったんだ。(詳しくはWikiで)
「相互の領土を尊重し、内政への干渉を控えることを約す」っちゅうとこがミソやな。今のEU問題にも通じるものがある。
で、「The Picker」っていうのは、いわゆるパパラッチのことなんだけど、『ダンケルク』にも「拾う人」や「選ぶ人」が出て来るらしいよね。
救出作戦だもんね…
じゃあ後の方の「おふざけ」は?
映画『ダンケルク』のキャンペーンにおいて、何か気付いたことはない?
ノークリが、やけに強調してることがあるんだ。
強調?
イギリスの人気アイドルグループ「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズのことだよ。
ノークリは必要以上に彼についてこう言及するんだ。
「彼のことは知らなかった。普通にオーディションを受けに来てて、何千人の中から選んだんだ。まさかあんなに有名人だったとは」
まさか…
「モー」が「ノー」ってこと?
ワン・ダイレクションの誰かが、ハリーのことで感謝を述べているってことなの?
そうなるよね。
どこまで手の込んだキャンペーンなんだろうか。これをいかにも知的でクールにやってのけるんだから、ノークリには全く驚かされるよね。彼の言うことの全てを真に受けてはいけない。話半分で聞いておいた方がいいんだよ。
みんな、騙されちゃいけないぞ(笑)
ノークリは駄洒落とか「おふざけ」が大好きなんだ。表情一つ変えずにやってのけるは、英国の血なのかな。
変態や。いい意味で。
ところでさっきトム・ハーディ演じるファリア―が「リンゴ・スター」だって言ってたけど、どうゆうこと?
顔が似てるだけじゃない。
ほら、リンゴって口数少ないでしょ?あまりペラペラしゃべらない。でもしっかりとリズムを刻むんだ。確実にね。地味だけどビートルズを下支えしてたのは彼だった。リンゴの独特のキャラクターは、個性と主張の激しいバンドの命綱でもあったんだね。ファリア―って、そういう役みたいだよ。トム・ハーディ自身もそんな感じだよね。あまりベラベラ喋る感じじゃないし、華やかな大スターって感じでもない。でも存在感は物凄くある。
じゃあ、他の3人はどないなっとんねん?
ジョンの場所にフィン・ホワイトヘッド演じるトミー
ポールの場所にハリー・スタイルズ演じるアレックス
ジョージの場所がバリー・コーガン演じるジョージ…
ジョージだけジョージやんけ(笑)
これも全部意味があるの?
おかえもんの「てきとー」じゃなくて?
他にも「ギブソン」や「コリンズ」や「ミスター・ドーソン」や「ピーター」とか重要人物がいるのに…
この僕がそんな「てきとー」な仕事するとでも思ってるのかい?
(映画を観もしないで解説記事書いてるくせに…)
彼らの配置には、全て重要な意味がある!
彼らはそれぞれ対応するビートルズのメンバーのキャラクターを劇中で演じているんだ!
ええ~~~~っ!!!
しかも『ダンケルク』は映画『LET IT BE』へのオマージュだ。「ゲットバック・セッション」のね。
ポールは「ゲットバック・セッション」で昔のビートルズを「GET BACK」するために、昔の曲をたくさん演奏しようって提案したんだ。
ストレートなロックンロールやオールディーズナンバーを演奏していたあの時代…
そう、ハンブルグの頃みたいにね。
せやったな。
あの映画での『ユーヴ・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー』とか、めっちゃ泣けるで。
Nick Martellaro『You Really Got A Hold On Me』
おっ!いいねえ!
でもこっちも捨てがたいぞ!
最後のギターソロの掛け合いなんて泣けちゃうよね!
Karlstad Motown Big Band『You really got a hold on me』
ギブソンもフェンダーもたまらんな。マジ泣ける。
お勧め動画対決してる場合じゃないでしょ!
確かに。
こんなことをやってる場合じゃなかった。
ハンブルグ時代のビートルズの話をしなければならないからね。
なんで?
だって『ダンケルク』は、そういう映画なんだもん!
へ?
これを見たまえ。
ドイツ・ハンブルグ時代のビートルズと『ダンケルク』キャラの対応図だ。
後編は、この関係をたっぷり解説するからね!
そして『ダンケルク』に秘められた謎を徹底解明するぞ!
おそらく世界初の試みだろう。期待しててね!
ひゃー!
また凄い展開になってきた!
「後編」とか言っといて収まらないパターンに100ダンケルク!
つづく
DUNKIRK
製作:クリストファー・ノーラン、エマ・トーマス
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
撮影: ホイテ・ヴァン・ホイテマ
音楽: ハンス・ジマー
出演: フィン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシ、バリー・コーガン、ケネス・ブラナーほか
9月9日より全国ロードショー
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