ツルでもガキでもわかる!全米映画興行収入ランキング6/30-7/2編『逃げも隠れもしない男、エドガー・”ベイビー”・ライト!』の巻
まいど!ワイは鶴や!ツルヤナンボクや!
ええじゃろうだよ!
おかえもんです。
もう7月か。すっかり夏やな。
涼しい映画館が恋しくなる季節だよね!
だね。
クーラーが無かった頃は一日中よく映画館で過ごしたものだ。あの頃が懐かしいな。
学生街の名画座とかやと、週末の夜は寝に来とる奴がぎょうさんおったな。蒸し風呂みたいな安アパートの部屋にはおられんから、涼しい映画館で朝まで寝るんや。あの頃は座敷の映画館とかもあって横にもなれた。千円くらいやったな。朝まで映画もぎょうさん観れるし、寝たい時に寝れる。貧乏学生はクーラーなんて無縁やし、まだマンガ喫茶とか無かった時代やしな。
加藤登紀子の『時には昔の話を』の世界みたい!
そこまで昔じゃないけどね(笑)
さて、先週末6/30~7/2の全米映画興行収入ランキングをいってみようか。カッコ内は通算売上だよ。
① DESPICABLE ME 3
$75.4M 初登場
② BABY DRIVER
$21.0M ($30.0M) 初登場
③ TRANSFORMERS:THE LAST KNIGHT
$17.0M ($102.1M) 2週目
④ WONDER WOMAN
$16.1M ($346.6M) 5週目
⑤ CARS 3
$9.5M ($120.7M) 3週目
⑥ THE HOUSE
$9.0M 初登場
⑦ 47 METERS DOWN
$4.7M ($32.6M) 3週目
⑧ THE BEGUILED
$3.3M ($3.6M) 2週目
⑨ THE MUMMY
$2.8M ($74.5M) 4週目
⑩ PIRATES OF THE CARIBBEAN 5
$2.4M ($165.5M) 6週目
やっぱり来たね、怪盗グルー3!
日本でも7/21に公開だ!
(『怪盗グルーのミニオン大脱走』公式サイト)
イルミネーションはノリにノっとるな。日本ではディズニーと海外アニメ2強時代や。ドリームワークスが配給されへんさかい(笑)
2位は『ベイビー・ドライバー』だね。
春に大ヒットした『ボス・ベイビー』は日本未公開になっちゃったけど、こっちのベイビーは日本でも公開されるみたい。
『ボス・ベイビー』はドリームワークスやさかいな。
こんな超クールで超オモロイ映画を劇場で観れん国は可哀想や。
だよね。
3位は『トランスフォーマー/最後の騎士』だ。
4位の『ワンダーウーマン』は、アメリカで3億4600万ドル、世界グロスで7億ドルを突破した。日本円(110円換算)にすると約770億円。8月末から日本での公開も控えているから、まだまだ記録を伸ばしそうだ。
監督のパティ・ジェンキンスさんは、女性監督作品の売上世界記録を更新したね。おめでとう!
ちなみに、これまでの女性監督作品No.1は『カンフー・パンダ2』だった。
このインタビューいいね。僕もジェニファー・ユー・ネルソンみたいにスラスラ絵を描いてみたい。
ドリームワークス黄金時代!
カンフーパンダ2までは日本でも劇場公開されとったな。あの頃が懐かしいわ…
そして5位は『THE HOUSE』が初登場だ。
娘の奨学金が取り消されたんで、自宅で地下カジノをやって、なんとか学費を工面しようとする夫婦のドタバタ劇やな。
大スターなのに日本では知名度が異常なほど低い二人(ウィル・フェレル&エイミー・ポーラー)が主演やさかい、劇場公開は無いやろ。
せっかくカジノ法案が通ったのに、もったいないこっちゃ。
違法カジノの話だからね…
さて、6位が『カーズ3』で、7位が…
あっ!
ヨハネス・ロバーツさんの『海底47m』だ!
アメリカの映画興行収入ランキングで歴代ワースト2位、「72ドル」の記録をもつ男、ヨハネス・ロバーツ!
ついに3000万ドルを突破した。これから日本を含め海外でも公開されるから、まだまだ記録を伸ばすはずだ。こういう低予算のおバカ映画が、夏の大作のスキをついてランクインするのはホントに愉快だ。イギリスが生んだB級映画界の新星ヨハネス…。これからが楽しみだね。
8位は『The Beguiled』。
ソフィア・コッポラが描く、”禁断の園”のちょっと怖い話だね…
女性だけで集団生活をしているところに、男がひとり迷い込むんだね。そして、今まで男性と接触したことのない女たちは、だんだんと狂っていく…
男にとって夢のような世界から、一転して悪夢の連続になるっちゅうわけやな…
ワンダーウーマンと設定が似とるけど、まったく違った女性の描き方でオモロイな。
この映画、全米でたった4館のみの公開だったんだよ。でも連日超満員だったんで拡大公開され、ランクインしたってわけ。
女だらけの世界に迷い込むのが、”あの”コリン・ファレルってのも何とも言えない。
9位が『THE MUMMY』、10位が『パイレツ・オブカリ』。
まあ、この二つはもうええやろ。
あれ…?
無い…
せや…
あいつがおらへん…
そう。
僕がずっと贔屓にしてた『キャプテン・アンダーパンツ』は、13位に沈んだ…
木曜まで9位にランクインしてたんで、まだまだ週末もイケると思っていたのに…
元気を出して、おかえもん!
パンツマンはよく戦ったよ!
僕たち、あの白ブリーフの雄姿を絶対に忘れない!
もしいつか日本で公開される日が来たら、絶対におかえもんに仕事が来るよ!
ありがとう、君たち…
でも、そんなに落ち込んではいないよ。
書きたいことは書き尽くしたしね。
それに、僕は今…
『ベイビー・ドライバー』に夢中なんだ!
わ~お!
か~っちょい~~!
思わず歌いたくなるよね。
みーどりーの なーかをー
はしりぬけてく真っ赤なスバル!
馬鹿にしないでよ!
そっちのせいよ!
ちょっと待って!
そんな大声で怒鳴らないでよ…
そうやって二人はいつも気分次第でアドリブ始めるんだから…
まじ意味わかんない…
ベイビー、いったい何を教わって来たの?
疲れるわ!
それだけが言いたかったんやろ!(笑)
しかもそこ「ベイビー」ちゃうで。
「坊や」や。
もう昭和ネタやめてよ。
平成も終わるっていうのに。
映画『ベイビー・ドライバー』は音楽映画でもあるんだ。
歌詞に「ベイビー」が入ってる曲が、劇中で効果的に流れるんだよ。
車と音楽が好きな人には、たまらない映画だ。
タランティーノやったら『プレイバックpart2』も使ったかもな。
もしかしたら日本に舞台を移した『ベイビー・ドライバー2』で使われるかもしれない。
ええっ!?もう続編が決まってるの?
しかも日本で!?
いや、僕の希望的妄想だ。
せやけど、ワイルドスピードかて日本編があったしな。
今の時代なら、日本スルーで中国編だと思うよ。
それな。
オイラこの「Bao Bei(BABY)」って中国の歌が大好きなんだけど、映画ラストのド派手なカーチェイスシーンで流れたらカッコイイと思うんだ。絶対に泣く自信がある!
素朴で泣けるな
でも、インドって可能性もあるよね。
映画『BABY DRIVER』は米英共同資本だし、監督のエドガー・ライトはフレディー・マーキュリー大好きだし。
こんなテイストになるかもしれない。
おい!なんやねん、この動画の「EROS NOW!」っちゅうチャンネル名は!
こんなもん見とんのか、このマセガキめ!けしからん!
EROSってのはボリウッドで有名な映画会社だよ。エロスシアターをチェーン展開してる。ナンボクが心配してる「エロ」とは関係ない。
せ、せ、せやったんか…
ええじゃろはんは、まだ子供やさかい…、ツルガキもそこらへんは、いちおう気ィつけなアカン思うてな…
しかし監督のエドガー・ライトさんは、ついに大化けしたね!
これまでのおバカ映画とは打って変わって、こんなスタイリッシュな映画を作っちゃって!
だよね。
エドガーのこれまでを辿ってみよう…
まずは彼が世に出るきっかけとなったB級ゾンビ映画の傑作『ショーン・オブ・ザ・デッド』('04)…
超バカっぽい!
でもこれがゾンビ映画界の神様ジョージ・A・ロメロに認められ、ロメロのゾンビ映画に役者として出演することになったんだ。セリフもたくさんある結構いい役でね。
でもエドガーは断った。
なんで!?
ゾンビ役しかやりたくなかったからだ!
本物のバカだ!
そして『HOT FUZ(ホット・ファズ)』('07)で世界的に注目される。
低予算おバカ映画の金字塔だ。
でも、かなりカッコいい映像だよね…
そう。エドガーの芸風は「どんなくだらない内容でも、細部まで徹底的に、ちょー真剣に作る!」だから。
この宅心にシビレて、多くの有名俳優がノーギャラで出演したりもしたんだ。
そしてついにハリウッドから声がかかった。
最高のおバカ映画を作ってくれと…
それが『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』('10)だ。
なんか、最後のほうが『ピクセル』に似てる。ドンキーコングとかも出てくるし。
その通り。
エドガーはゲームオタクでもあるんで、映画の中でどうしてもゲームキャラや「ゼルダの伝説」の曲を使いたかった。だから任天堂に頼んで使わせてもらったそうだ。
「主人公にとっては”童謡”みたいなものなんです」って手紙で訴えてね。
執念やな。
しかもこの映画の音楽監督は、ロック界の超大物プロデューサー、ナイジェル・ゴッドリッチやんけ!
主人公のバンド「SEX BOB-OMB」の曲はBECKが作った。
ダサかっこいい~!
これでハリウッドでも評価されたエドガーは『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』プロジェクトに呼ばれ、脚本を書くことになった。
あのスティーヴン・スピルバーグが監督で、『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが製作という超特大プロジェクトだ。
イギリスのオタク青年が、世界の巨匠二人と!?
最初の打ち合わせでスピルバーグの隣の席だったエドガーは、気がついたらスピルバーグの腕を触っていたそうだ。
これは現実か…?もしかして蝋人形じゃないのか?って(笑)
わかる!その気持ち!
そして豪華キャストで、究極のおバカ映画を完成させる。
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』('13)だ。
愛すべきクズ野郎どもに捧げる鎮魂歌や。
まさにチンコンカスやな。
そしてついに、あのディズニーから声がかかる。
マーベルのニューヒーロー『アントマン』の脚本&監督に大抜擢された。
すごい!
まるで映画みたいなサクセスストーリー!
エドガーはイギリスのわらしべ長者だ!
いや、エドガーはわらしべ長者なんかじゃない。
なんでや?
わらしべ長者は、何かを手に入れるために、持っていた何かを手放していくよね。
そうやって気がついたら大成功者になっていたって話だ。
でもエドガーは、それを拒んだ。
ええっ!?
エドガーは自分の魂を売り渡すつもりはなかったんだ。
磨き上げたオタク魂、研ぎ澄まされた宅心をね。
で、でも…
相手は天下のディズニー…
彼は監督を降ろされた。
・・・・・
悔しかっただろうね…
恥ずかしかっただろうね…
彼のサクセスストーリーはメディアで大々的に持ち上げられたからね…
原案もエドガーが考えたのに…
絵コンテも脚本も書き上げたのに…
穴があったら入りたい心境だったろうね…
世界一深い穴に…
でもエドガーは、こんなことでくじける男じゃない。
早速、自分が持てる力の全てを注ぎ込んだ映画作りに着手した。誰もが驚く最高傑作を作ってやろうとね。
それが『BABY DRIVER』だ。
なんてカッコいい奴なんだ!
映画の予告編で流れる曲はBOGAの『NOWHERE TO RUN』。
逃げる場所はない…
隠れる場所もない…
降板劇をうけて、エドガーは自分自身にこう言い聞かせていたと思うんだ。
捲土重来を期すためにね…
そうやって聴くと、よりインパクトある曲やな。
イントロの重々しいピアノとか、まるでエドガーが這い上がっていくみたいや。
だよね。
このニューヨークタイムズの記事にある最初の動画を見てよ。
映画冒頭のシーンみたいなんだけど、こっちも超クールだよ。
超カッコいい!!!
だよね。
この映画は、とにかく音楽がカッコイイんだ。
音楽に合わせて映画は作られていて、役者がどう動くかも綿密に計算されている。
Siaの『シャンデリア』で注目された振付師ライアン・ヘッフィントンが指導したそうだ。
なるほど!だから惹きつけられるのか!
冒頭シーンの曲はジョン・スペンサー&ブルース・エクスプロージョンの名曲『BELLBOTTOMS』('94)だね。
すっごいドラマチックな曲なんだけど、歌詞がまた最高にいい。
「I wanna dance!」って叫ぶとこなんて、エドガー・ライトの気持ちそのまんまだと思う。
「俺はただ思いっきり踊りたいだけなんだ!」
ってね。
おかえもんは、作り手の思いを代弁するのが好きだね!
しかもいつも推測で!
ふふふ。
さて、主人公ベイビーを演じるのはアンセル・エルゴート。
若い女性たちに大人気の俳優だ。
マリコ・タマキさんの回に出て来たジョン・グリーン原作の映画『きっと、星のせいじゃない』のイケメン俳優じゃんか!
だね。
これできっと大ブレイクだ。
そしてヒロイン役にリリー・ジェームズ。
ディズニーの実写版『シンデレラ』で主演してたね。
超フレッシュなコンビやな。まるで青春映画や。
タランティーノの『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』とはエライ違いや。
その分、脇を名優たちが固めるよ。
ケヴィン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハム…
なんともそそられるメンツやないけ!
そしてこの映画には、多くのミュージシャンも俳優として参加してるみたいなんだ。
さっきのジョンスぺをはじめ、レッチリのFlea、そしてポップス&映画音楽界の大御所ポール・ウィリアムズ…
大御所?知らないなあ…
あほ!
カーペンターズの名曲の数々を作った人やで!
だね。しかも僕の好きなカーティス版でどうもありがとう。
あと、主人公ベイビーのお母さん役を、あのスカイ・フェレイラが演じているらしいよ。
スカイ・フェレイラって…
まさか…あの…オマ
こらァ!
子供がそんな言葉口に出したらアカン!(閲覧注意)
いや、子供じゃなくても言ったらアカン!
え?
楽曲内でマドンナやブロンディやバングルスら80年代音楽への「オマージュ」を多用することで知られる、って言おうとしただけなのに…
せ、せやったんか…
さっきの「エロス・なう!」チャンネルの件があったさかい、ついつい…
「エロス・なう!」じゃなくて「EROS NOW!」チャンネル!
君たちに任せると、話がどんどんオカシナ方向へ行ってしまうよ。
『ベイビー・ドライバー』は、クールでスタイリッシュでオタッキーなカーアクション&クライムムービーなんだからね!
犯罪者を逃がすプロの”運び屋”ドライバーっちゅうたら、ジェイソン・ステイサムの『トランスポーター』を思い出すな。
そうだね。
あのシリーズへのオマージュもたっぷりらしい。
でもね、トランスポーターシリーズもカッコよかったんだけど、ベイビーはさらにクールだ。だってベイビーの車はスバル・インプレッサWRX2006だもんね。いかにもXスポーツとゲーム好きの現代っ子って感じだ。
せやな。
ジェイソン・ステイサムはBMW735とかアウディA8やったもんな。あっちはオヤジ趣味や。
かたやベイビーはスバルや。欲や見栄と無縁の今時の若者って感じやな。しかもベイビーだけに髪も瑞々しい。
ラリーの名車、ゲーム世代の憧れの車が、アトランタの街を駆け抜け、ドリフトしまくるんだ。
きっと最高にカッコいいだろうね。
ちょっと待って…
おかえもん、さっきから「みたい」とか「らしい」とか「だろうね」ばかりなんだけど…
もしかして、この映画観てないとか…?
よく気がついたね、その通りなんだ。
僕はまだまだヒヨッ子ライターだから、映画試写会のお誘いが来ないんだよ。
そういう意味では、僕も立派なベイビーだね。
あんたは「あまちゃん」なだけや!
『BABY DRIVER』
監督・脚本:エドガー・ライト
撮影:ビル・ポープ
音楽:スティーヴン・プライス
出演:アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケヴィン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハムほか