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我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?《深読み 千と千尋の神隠し&タイタニック》vol.20
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2019年12月XX日
途方もない考えに取り憑かれた男の夢の中
第一階層『千と千尋の神隠し』
国道21号の分かれ道
それを読み解くヒントを与えてくれるのは、やっぱりあの男…
我らが愉快な狂言回し、ルイス・ボーディーン(笑)
その通りだレウコノエ…
では、彼の調べた「ローズの経歴」に戻ろうか…
ローズの町「Cedar Rapids」と、フラ・アンジェリコの『受胎告知』…
そして「空白の8年間」…
いったいローズのどんな秘密が隠されているのか…
ルイス・ボーディーンは、ボスであるトレジャーハンターにこう報告した…
BODINE : She's a very old goddamned liar. I traced her as far back as the 20's... she was working as an actress in L.A. An actress. Her name was Rose Dawson. Then she married a guy named Calvert, moved to Cedar Rapids, had two kids. Now Calvert's dead, and from what I've heard Cedar Rapids is dead.
ボーディーン「神をも恐れぬ嘘つきババアだ。俺が1920年代まで遡って彼女の経歴を洗ってみたところ、ロサンゼルスで女優をしていたことがわかった。女優だぜ。名前はローズ・ドーソン。そしてカルバートという名の男と結婚し、シーダーラピッズへ引っ越し、子供が二人いた。今はもうカルバートはこの世にいない。シーダーラピッズに問い合わせたところ、カルバートは死んだそうだ」
次の重要なポイントは、ローズに「子供が2人いた」ということ…
そして、やけに「カルバートの死が強調されている」こと…
ローズが産んだ2人の子供については、これだけしか情報が無い…
しかし、このボーディーンの情報と、ローズが持っていた家族写真を照らし合わせると、ある「重大な事実」が浮かび上がって来る…
ローズが「2人の子供」と一緒に写っている写真は2枚あった…
だけどこの2枚の写真が、いつ撮られたのかはわからない…
上の写真に写る2人子供は、男の子と性別不明の幼児…
下の写真に写る2人の子供は、どちらも女の子…
ローズが産んだ子供は2人なので、この写真の中にはローズと関係のない子供が入っている…
ローズが産んだ2人の子供のうち、1人は確実に女の子ね…
サーカスのテントの前で象に乗るローズの写真に一緒に写っている…
あれはたぶん十二歳前後の頃…
そして彼女は結婚し、3人の娘をもうけた…
それを示すのが、ローズの写真の中にあった1枚のカラー写真…
あの写真の雰囲気は、おそらく1980年前後と思われる…
彼女の娘たちは二十代から三十代前半…
ローズの娘は五十代半ばといったところか…
ローズの娘は結婚して姓が変わっているはずだから、あの写真の中の女性たちは皆 Calvert(カルバート)姓ではない…
だけど、年老いたローズの身の回りの世話をしていた孫娘 Lizzy(リジー)の苗字は Calvert(カルバート)だった…
つまりローズが産んだ2人の子供のうち1人は男の子で、その子がリジーのお父さん…
つまり、ローズが産んだ2人の子供は、男の子と女の子…
上の写真に写っていた性別不能の幼児が成長し、下の写真の少女のどちらかになった…
おそらく、人形を抱いている白いリボンと服の少女だろう…
上の写真のローズの雰囲気は三十歳前後で、幼児は二歳くらい…
下の写真は、その五年後ってとこかな…
これまで判明したことを家系図にすると、こんな感じだ…
しかし、ここには矛盾が存在する…
ボーディーンが調べたローズの経歴と、明らかに矛盾する点が…
それは、息子が「大き過ぎる」こと…
その通りだレウコノエ…
ボーディーンが報告したローズの経歴は「1920年代」からのもの…
ローズはロサンゼルスで映画女優をしていて、カルバート氏との結婚を機にシーダーラピッズに移り住み、二人の子をもった…
ローズは「1895年生まれ」なので、1920年代は「25歳から35歳」の時期…
つまり、ローズが「30歳前後」に見えるあの家族写真は「1925年頃」に撮られたものということになる…
あの幼児が2歳くらいだから、ローズが結婚してシーダーラピッズに移住したのは27歳くらいの時、1922年あたり…
だけど、リジーの父親になる「あの男の子」は、どう見ても10歳以上…
ローズとカルバート氏の間に生まれた子とするには、明らかに計算が合わない…
おそらくあの男の子は、母ローズの結婚を機にカルバート家に入った…
つまり彼はローズの連れ子であり、カルバート氏とは直接の血のつながりは無い…
ズバリ、彼が生まれたのは「1913年」の「1月か2月」ね…
その通り…
彼はタイタニック号の沈没(1912年4月)から十月十日(とつきとおか)後に生まれた子…
つまり、ローズがニューヨーク港に上陸した際…
お腹の中には「新しい命」が芽生えようとしていた…
ローズが「自由の女神像」を放心状態で見つめていた理由はこれ…
だからニューヨーク港は冷たい雨が降っていて、男が大きなコウモリ傘を持って近づいて来て、映っていたのはずっと「あのアングル」の自由の女神像だった…
なぜならローズは、夫以外の子を「受胎」していたから…
画面左上にある大きな光…
そこから左斜め下へ伸びる光線…
何かが書かれたノート…
近づいてきた男との短い会話…
頭上に大きなコウモリ傘…
地面には水溜り…
もう、間違いないだろう…
ジェームズ・キャメロンが伝えようとしているのは、フラ・アンジェリコの絵『受胎告知』…
この時「ローズ・ドーソン」と名乗ったローズは…
自分がジャックの子を「受胎」していることを予感している…
『Annunciation』
Fra Angelico
クリソツ…
もう、そうとしか思えないわ…
あの独特なラインの天井を「傘」で表すのは、巨匠ルネ・クレマンの代表作『Plein Soleil(太陽がいっぱい)』のラストシーン「海の家」と同じ…
偉大な芸術は、みな模倣から始まる…
モネなど印象派の画家も、マネの真似から始まった…
ジェームズ・キャメロンも然り…
James Cameron
そして、ボーディーンの報告で「カルバートの死が強調されている」のも、この「隠された事実」を匂わせたもの…
繰り返された「Calvert's dead」とは、「Calvert」が絶えたことを意味している…
ローズとカルバート氏の間に生まれた娘は、結婚してカルバート姓ではなくなった…
そしてカルバート姓を引き継いだリジーには、カルバート氏の血は流れていない…
そういうことだ…
ローズから始まる家系図の「本当の形」はこうなっている…
あの有名なポーズは、それを暗示していたというわけだな…
そして孫娘のリジーは三十代後半で独身…
年老いた祖母を介護をしてくれる優しい子だけど、なぜか良縁に恵まれなかった…
このままいくとジャックの血が途絶えてしまう…
だからローズはリジーを「あの場所」へ連れて行った…
船上で84年前と同じ「愛の奇跡」が起きることを信じて…
もちろん「愛の奇跡」は起きた…
リジーとトレジャーハンターBrock Lovett は、ローズとジャックのように「ダンス」する…
歓喜の中で二人が溶け合い、ひとつになる愛のダンスを…
そして、人類にとって「本当の宝物」である「ひとりの人間が生きた証し」は、次の世代へと受け継がれていく…
歓喜の中で二人が溶け合い、ひとつになる愛のダンス、か…
うまいこと言うわねクリス(笑)
その話へと誘導してくれるのも、もちろん「彼」だ…
我らが愉快な狂言回し、ルイス・ボーディーン(笑)
それじゃあ冒頭シーンの続きを見てみましょう…