我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?《深読み 千と千尋の神隠し&タイタニック》vol.23
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2019年12月XX日
途方もない考えに取り憑かれた男の夢の中
第一階層『千と千尋の神隠し』
国道21号の分かれ道
ジャックの肉体は滅びたが、ジャックの生きた証しは「A love a day」によって「stay」した…
「with getting sexy」を経た「hot number」として…
そしてそれは、孫娘リジーの「hot number」の中にも存在し…
その次の世代にも「stay」し続ける…
それを伝えるためにジェームズ・キャメロンは、ローズに「私ってホットナンバーでしょ?」と言わせた…
FOXYの曲『HOT NUMBER』を匂わせるために…
しかし『HOT NUMBER』が凄いのはここからだ…
ブリッジ(Cメロ)では驚くべきことが歌われる…
驚くべきこと…
それは主語が突然「わたしたち」に変わることで表現される…
We want to tear you apart
We gotta get in your heart
We're hot numbers, yeah
私たちはあなたを引き裂きたい
私たちはあなたの核心に入りたい
私たちはホットナンバーズ
「私たち」は「あなた」が「tear apart」つまり「引き裂かれる」ことを求める…
そして「私たち」は「your heart」つまり「あなたの核心」に「got to get in」するという…
そんな「私たち」は、自分たちを「ホットナンバーズ」と呼ぶ…
この内容を主客逆転、つまり「女性目線」で歌うと、こうなるわね…
ビートルズ、ポール・マッカートニーの名曲『Goy To Get You Into My Life』…
「あなたを私の生命の中に取り込みたい」…
その通り…
『Goy To Get You Into My Life』は、まさにローズの視点で語られる愛の物語…
ジャックは死んでもずっとローズのそばに「存在」していた…
「思い出」などというあやふやなものではなく、ローズの「メモリー」の「トラック」に記録された「レコード」として、ローズの息子や孫娘リジーの中に存在していたのだ…
そして『HOT NUMBER』のCメロはこう続く…
You got that look in your eyes
We want to get in your heart
We're hot numbers, yeah
あなたはセクシー、目を見張るものがある
私たちはあなたの核心に入りたい
私たちはホットナンバーズ
プリンスも「U got the look」と歌っていたな…
男と女の愛のワールドシリーズ(笑)
クラブのトイレで行われる「一発勝負」の歌なのに、最大で七戦あることになっちゃうわね…
しかもプリンスの地元ミネソタは「ツインズ」だから、子供も出来ちゃう…
「You got that look」とは「あなた」が「バッチリ整っている状態」とか「最高にセクシーな状態」ということ…
そしてそれが「in your eyes」つまり「あなたの目の中で」だという…
「ホットナンバーズ」である「私たち」は、いったい何のことを言っているのか…
その答えは、Cメロ最後のフレーズに…
We're hot numbers, yeah
You're outnumbered, ooh-woo
私たちはホットナンバーズ
あなたはアウトナンバード
ここに知恵が必要である…
思慮のある者は「hot numbers」と「outnumberd」の数字を解くがよい…
その数字とは、「人間」をさすものである…
うふふ。うまいこと言うわね(笑)
「私たち」である「ホットナンバーズ」は「数がたくさん」という意味で、「あなた」である「アウトナンバード」は「数で上回っている」という意味…
つまり数が「私たち < あなた」ということ…
しかしこれは、愛し合う男女の分身「精子と卵子」のイメージとは反する…
一度の射精で放出される精子の数は「数億個」で、それを待ち受ける卵子の数は「1個」だから…
このミステリーを読み解く鍵は、ズバリ「あなたの目の中」というフレーズ…
「私たち/ホットナンバーズ」に数で勝る「あなた/アウトナンバード」がいる場所は「目の中」…
つまり、目の中の「瞳」に…
その通りだレウコノエ…
巨匠 Stanley Kubrick(スタンリー・キューブリック)の『2001: A Space Odyssey(2001年宇宙の旅)』で象徴的に映される「瞳」のアップも、この歌詞と全く同じ意味合いを持っている…
うふふ(笑)
あなたの大好きな米津玄師『海の幽霊』が主題歌の映画『海獣の子供』もそう…
やたらと意味深な「目」が登場し、その中の「瞳」が強調されていた…
これらの「瞳」は「受精」が投影されたもの…
中央にある円形の「瞳孔」が「卵子」で、その周囲の放射状の線「虹彩」が「精子」…
だから2番ではこう歌われていた…
Take me if you want, you should try it once
Ain't nothin wrong with getting sexy
欲しければ私を取れ、あなたは一度試すべき
「getting sexy」に悪いことなど何一つない
この「getting sexy」とは「性を取捨選択する」ということ…
つまり「sexy」な「私」の中にある「x」と「y」のどちらか1つを取り、「性」をゲットしろということ…
ヒトにおける男女の性は「X」と「Y」の「性染色体」で決まる…
男性の性染色体は「XY」の組み合わせで、女性は「XX」の組み合わせ…
そして生殖の際には、男女それぞれ片方の染色体を組み合わせて、新たな命を作り出す…
しかし女性の性染色体はどちらも「X」なので、性別は男性の精子の中にある「X」か「Y」で決まる…
つまり、もしも「あなた(X)」が「私(XY)」の中の「X」をゲットすれば「女性(XX)」になり…
もしも「あなた(X)」が「私(XY)」の中の「Y」をゲットすれば「男性(XY)」になる…
「getting sexy」とは、言い得て妙…
「hot numbers」な「私たち」と「outnumbered」な「あなた」も、これで説明がつくわね…
なぜ「私たち」よりも「あなた」は「数で勝っている」のか…
それは「性染色体」のことを言っているから…
男性の「Y染色体」は塩基の数が「5100万」…
かたや女性の「X染色体」は塩基の数が「1億6300万」…
まさに「outnumbered」だ…
女の奥底にある「核心」部分では、こんなに壮大な「数のドラマ」が繰り広げられる…
ローズが「A woman's heart is a deep ocean of secrets」と言ったのも、よくわかるわ…
ジャックの「make it count」も、そうだな…
人間の遺伝子DNA(デオキシリボ核酸)は約30億の塩基対をもつ…
しかし、生殖の際にDNAの鎖は分裂して、一本のRNA(リボ核酸)となる…
そして子宮の中で、男性からのRNAと女性からのRNAが結合し、新たなDNAの鎖となって生命が躍動し始める…
染色体のRNAの中には億単位の数の「人間が生きるための情報(塩基)」があるけれど、それ単体では何の意味もなさない…
しかしそれがパートナーのRNAと結びつくことで、その情報は活性化され、意味のあるものになる…
まさに「make it count」、それを有効化しろ…
だから続きの言葉が「meet me at the clock」だった…
二人の約束の場所である時計の真上には何があったかな?
時計の上には大きな「目」があった…
巨大な「瞳」が…
中央の大きな円が卵子で、その周囲の小さな円が精子…
しかも小さな円は精子みたいに、少しつぶれた形をしている…
精子はこっちでしょ(笑)
ちなみに『千と千尋の神隠し』における「大きな目」は「湯婆婆」だ…
その名前も古ラテン語で「卵巣」を意味する「ovar(オバァ)」から来ている…
だから湯婆婆はハクを「八つ裂きにする」と言い、ハクもそれを受け入れた…
『千と千尋の神隠し』を見た人の多くは、こんな疑問をもった…
「どうやって湯婆婆は赤ちゃん(坊)を作ったのか?」
その答えは「八つ裂き」発言にある…
なぜなら湯婆婆は卵子…
ハクを「八つ裂きにする」というのは、実際に卵子が精子を八つ裂きにし、そのRNAを自分の中に取り込むことの喩え…
受精のメカニズムを人に置き換えると極めて残酷な世界になる…
しかしそれは「生と死」というものの本質…
ひとつの「生」は無数の「死」の上に成り立っている…
『千と千尋の神隠し』では「元気でね、また会おうね」と大分マイルドな表現になったが、言わんとすることは変わらない…
「つべこべ言わずに、己を活性化しろ」ということだ…
だから最後に「紫の髪留め」が活性化した…
あれは「赤と青の2本の糸(RNA)」が結合して出来た「新しい命(DNA)」だから…
「HOT NUMBER」の話は尽きないな…
しかし先に進まなければならないので、このへんにしておこうか…
「CALL IT LOVE」のサブタイトルは伊達じゃないわね…
それを「愛」と呼ばないと、人間はやってられない…
さてお次は、我らが愉快な狂言回し、ルイス・ボーディーンの独演会だ…
身振り手振りを駆使して「タイタニック号の沈没」を再演する場面…
あの「実況解説」に対するローズの反応、最高だったわよね(笑)
ボーディーンと老ローズのやり取りは、あまり注目されたり語られることはないが、この作品の中で非常に重要な意味をもっている…
もちろんあの小芝居にも、ジェームズ・キャメロンはトリックを仕掛けた…
驚くべき内容の…