クリストファー・ノーラン大解剖番外編!『インセプション』ってビートルズの「ホワイト・アルバム」そのまんまじゃんか!の巻
まいど!ワイは鶴や!ツルヤナンボクや!
ええじゃろうだよ!
ノークリ(注1)の「クーパー三部作(注2)」の解説は全5回で終わったと思ってたのに、まだあったのか!
(注1:クリストファー・ノーランのこと。おかえもん命名)
(注2:『メメント』『インセプション』『インターステラー』のこと。おかえもん命名)
第2回では「インセプションはオブラディ・オブラダや!」って言うとったよな。
どうも、おかえもんです。
確かに第2回では、そう話したね。
そして第5回では『インターステラー』があまりにも完璧な『アビイ・ロード』へのオマージュだった…って話をしたね。
んでもって、改めて『The Beatles(通称:ホワイト・アルバム)』を聴き直してみたんだよ。もしかして…って思ってね。
そしたら案の定『インセプション』は、『オブラディ・オブラダ』どころか『ホワイト・アルバム』そのものだったんだ。
だから『アビイ・ロード』の時みたいに、曲ごとの解説をしょうと思った次第。またいろんなカバーバージョンでお届けするよ!
それがやりたかっただけだと思うけど!
ふふふ。まあ、そうなんだけどね。
でも、ビートルズの『ホワイト・アルバム』を聴いてから映画『インセプション』を観ると、超おもしろいよ。
だって、このアルバムそのまんまなんだから(笑)
今回のツルガキで『ホワイト・アルバム』の内容を確認して、それからもう一回映画を観ると最高におもしろいかも。
もう観たことある人も、騙されたと思って、これを読んだ後にもう一度映画を観てみて。
その際は、字幕版で元のセリフを聴きながら観るのが一番いいね。
YouTube版はこちら。300円で視聴できます。
こっちは199円でレンタル可能だ。
ラジャー!
では早速いってみようか。
名盤『ホワイト・アルバム』の冒頭を飾るのはこの名曲、『バック・イン・ザ・USSR』。歌ってくれるのは、The Laddersの皆さん!
The Ladders『Back in the USSR』
完コピやな。
USSRがUSAだったら完璧だったね!
ディカプリオ演じるドム・コブは、最後にやっと故郷アメリカへ帰れたんだもんね!
この曲はチャック・ベリーの『バック・イン・ザ・USA』のパロディなんだよ。ここからノークリは「主人公が飛行機に乗って、やっとの思いで故郷アメリカに帰る」ってストーリーを着想したんだろうね。
歌詞に出てくる雪山のくだりも、そのまんま映画に使われた。
せやから雪山やったんか。
映画の中でも登場人物がボヤいてたな。「なんで雪山やねん!」って。
雪山が、まさかビートルズのせいやったとは(笑)
次の曲は『ディア・プルーデンス』だ。
演奏してくれるのは、Mark Torromeo!
Mark Torromeo 『Dear Prudence』
こっちも完コピや。
『ホワイト・アルバム』は、ヒッピー文化に影響されたビートルズのメンバーが憧れのインドへ行って、その時の体験から作った曲が多いんやったな。
この曲は特にそうだね。
ビートルズの面々は、当時最高のカリスマ導師だったマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーのもとへ瞑想の修行に出かけたんだ。
そこに同行したのが、女優ミア・ファローの妹プルーデンス・ファロー。彼女は瞑想にハマりすぎて、自室に引き籠ってしまった。外の世界へ一切出て来なくなってしまったんだね。それを心配したジョン・レノンが「外に出ておいで」って思いながら作ったのが、この曲だ。
『インセプション』でも、似たようなシーンがあったね。
あれはインドじゃなくてケニア東岸の港町モンバサだったけど、地下室で集団睡眠してる光景とか、なんかインドっぽかった!
「Dear Prudence...」って彼女に話しかける体で歌われるんだけど、「君の笑顔を見せてくれないか?」とか「目を開けて、外の世界を見よう」とか、まさに映画のストーリーそのものだよね。
夢に籠ってたんは、妻のモルやのうて、ドム・コブ自身やったんけどな。
さあ、お次は『グラス・オニオン』!
歌ってくれるのは、ワイルドなナイスガイ、VIKEだ!
VIKE 『Glass Onion』
この曲は『インセプション』にとって特に重要だから、日本語訳も紹介しておこう。
GLASS ONION
作詞作曲:レノン=マッカートニー
日本語訳:おかえもん
ストロベリーフィールズのことは話したよね
そう、現実ではない夢みたいな世界のことさ
じゃあ今度は、もっとスゴイ場所を教えてあげる
そこでの君は、まるで神のよう
何でも手に入り、全てがうまくいく世界
さあ、こいつをキメて行ってみよう
今まで知らなかった、もう一つの人生
本当の自分の姿を見ることができるんだ
セイウチと僕のことは話したよね
とっても仲良しで、いつも一緒にいたんだ
息が詰まりそうなくらいにね
そろそろ君たちに答えの糸口(clue)をあげようかな
セイウチってポールのことなんだ
ちっちゃいガラス粒がキラキラしてる海岸に立って
レディー・マドンナは辻褄合わせに精を出す
こいつをキメたら、見える世界さ
丘の上に住む愚者のことは話したよね
君だけにこっそり教えてあげる
彼はまだあそこに住んでいるんだ
そこへ行くかどうかは君次第
針でプスっと刺してもいいし
みんなでジョイントしてもいい
楽しみ方は人それぞれ
グラス・オニオンから見える世界さ
完璧にヤバい歌やな。
だね。
当時ビートルズは「若者のドラッグ文化を助長している」って非難されてたから、ラジオで放送禁止になったり、レコードが発売禁止になったりした地域もあったんだ。
だからわざとこういう歌を書いたんだね。当て付けのように。
ノークリはこの歌詞から、かなりのインスピレーションを得ているよね。『インセプション』のアイデアの多くは、この曲から作られていると言っていい。
夢の最深部LIMBOなんて、まさに歌詞の通りだよね。
夢が何でも実現できる世界だったもん。
ハマったら最後、抜け出せなくなるか、発狂してしまう世界…
セイウチとポールの謎かけも『インセプション』そのまんまやな。
「おかえもん解釈」では「妻モル=アリアドネ&サイトー」やった。
あと、歌詞に出て来る「clue」って単語も、物語作りに活きているんだ。
この「clue」ってのは「解決の糸口」って意味なんだけど、そもそもは「糸玉の端っこの糸」のことなんだよね。
映画の登場人物アリアドネは、ギリシャ神話に出て来るクレタ島のアリアドネ姫の名前から取られているんだけど、この姫はミノタウロスの迷路で「糸玉」を使ってイケメンの勇者テーセウスを助けるんだ。糸をたどって脱出するんだよね。だからヒントや手掛りのことを「糸口」と言うようになった。
ノークリは、ええとこに目ェ付けたな。
歌詞に出て来る「cast iron」ってのは、ケイ素、つまりガラスの素を多く含んだ鉄のこと。フライパンや鍋などに使われるよね。ちょっとキラキラしてる粒が入っているやつだ。
映画では鏡やガラスを通して「なりすまし」をしたよね。モルは割れたシャンパングラスまでも使っていた。
モルや子供たちが遊んでいたり、黒い岩の上にサイト―の家があった海岸のことも、ちゃんと歌われているんだ。
「ずっとあそこにいる」って歌われてる「丘の上の愚者」は、まさにサイト―のことだもんね。
集団で夢に行くときは、手首に何か刺しておったよな。
そんで特別に調合された「薬物」で、夢の持続時間を調整しとった。
なんかLSDの実験みたいやったな。
「みたい」じゃなくて、たぶんノークリは当時行われた様々な幻覚実験を参考にしたと思う。インドじゃなくてケニアにしたのは、カモフラージュだよね。
それか聖書のヨブ記に出て来る「黄金のトパーズ」の産地エチオピアのことかもしれない。ヨブ記もベースになっているからね。
この曲、けっこう大事やな。映画『インセプション』の世界観は、この曲の歌詞から作られたんや。
次のバンドはこのバンドだいっ!
Compass Band『Obladi Oblada』
さて、『オブラディ・オブラダ』に関しては、「インセプション前編」でたっぷり解説したよね。
ちなみにこの曲の歌詞は『インセプション』だけでは消化しきれず、伏線の回収は『インターステラー』まで持ち越された。
あれは衝撃的やったな。「He's a singer with the band」っちゅう歌詞が、あんな風に「重要な意味」で使われとって、マジさぶいぼ立ったで。
まじ天才だと思った!
発見した僕もね。
さて、『ホワイト・アルバム』5曲目は『Wild Honey Pie』なんだけど、この曲は特に意味の無い歌なんで、次にいこう。
『ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル』、歌ってくれるのは、孤高の多重録音男posturex1だ!
posturex1『the continuing story of bungalow bill』
この歌も面白い歌詞だよね。ジャングルへ狩りに出かけたバンガロー・ビルと子供たちの話。しかもビルは自分のママを連れて行くんだ。
映画『インセプション』では、ジャングルが「雪山の要塞」に置き換えられて、歌詞がそのまま使われている。2番から訳すね。
The Continuing Story of Bungalow Bill
作詞作曲:レノン=マッカートニー
日本語訳:おかえもん
獰猛な虎が眠るジャングルの奥深く
ビルと象は、まんまとしてやられた
キャプテン・マーベルが突然現れて
虎の眉間を撃ちぬいたんだ
子供たちよ、歌おう
バンガロー・ビル、いったい何を仕留めただい?
子供たちはビルに尋ねたんだ
殺すことって罪なんじゃないの?って
「相手が獰猛に見えたら許される」って答えたら
ママが割って入って、こう言った
「見かけで殺していいのなら、死ぬのは虎じゃなくて私たちよ」
子供たちよ、歌おう
バンガロー・ビル、いったい何を殺したんだい?
雪山の要塞シーンで、歌詞そのまんまの部分があったな。
ホントそのまんま…
秘密の病室にいるお父さんのもとへ向かったロバート・フィッシャーを守るために、ドム・コブとアリアドネが隣の棟からスナイパーみたいに敵を狙撃してた時だよね…
警備兵をバンバン撃ち殺してるコブに向かって、アリアドネが尋ねるんだ。
「彼らは殺しちゃってもいいの?」
コブは「彼らは夢の主の投影だから大丈夫」って答える。
でも妻モルが突然天井の通気口から現れて、銃を構えながらロバートの背後に忍び寄るんだ。
その姿を見た瞬間、コブはモルを撃つことを躊躇してしまった。警備兵同様に、投影されたモルなのに。
そしてその隙を突かれて、ロバートはモルに射殺されてしまう。
せやったな。まさに歌詞の通りや。
ちなみに、おかえもんは「モル=アリアドネ」説を唱えとったけど、このシーンでそれは証明されとるよな。あの建物の構造は作り主であるアリアドネと、夢の主イームスしか知らんはずや。なのにモルは天井の隠し通気口から侵入してきおった。コブの投影なら、そんな近道は知らんはずやで。
だよね。
ちなみにキャプテン・マーベルがいよいよ映画化されるそうだ。DCとマーベルの間で半世紀にわたり著作権をめぐって不毛な裁判が繰り返された「いわくつき」のヒーローだよね。
2019年3月の公開を予定してるらしい。主演は『ルーム』のブリー・ラーソンだ。
ビートルズが歌っとった頃は男やったのに、いつのまにか女になっとんねんな、キャプテン・マーベル。そこをノークリが上手く使いおった。
「MARVEL」の名を縮めると「MAL(モル)」や。
そして7曲目は、ジョージ・ハリスンの名曲『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』だ!
歌ってくれるのは、ソ連が産んだ最後の歌姫レジーナ・スペクター!
2016年の映画『KUBO And The Two Strings』からの三味線バージョンで、どうぞ!
Regina Spektor『While My Guitar Gently Weeps』
わお!大物だ!
なんで急に有名人を選んだの?
この映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』、日本が舞台の物語で、和音楽や折り紙とか浮世絵が上手く使われている作品なのに、なぜか日本で劇場公開されなかったんだ。
日本人の大好きなビートルズのこの曲が、和風アレンジで主題歌になっているというのにね…
しかも、日本でも有名なナイキ創業者フィル・ナイトの息子トラヴィス・ナイトが監督をした作品なんだよ。
主人公KUBO少年の母である猿は『アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンが演じているんだ…
そして父であるクワガタ侍は『インターステラー』のマシュー・マコノヒーだ!
こんな豪華な布陣で肝心の日本公開がされなかったなんて、僕は信じられないよ!
ウィキペディアでも日本語ページだけ無いんだよ!他の言語のページはいっぱいあるっていうのに!マジあり得ないよな!
落ち着け、おかえもん!
嘆くなら、ジェントリーにね!
これは一本取られたな…
<注:11月18日に日本での公開が決まりました!(8/24追記)>
さて、この曲も『インセプション』にとって非常に重要だから、全部訳してみよう。
While My Guitar Gently Weeps
作詞作曲:ジョージ・ハリスン
日本語訳:おかえもん
あなたを想えば見えてくる
愛はずっとそこに眠ったまま
私が静かに嘆く間も
ここはずいぶんと散らかってしまった
今すぐ「掃除」が必要だろう
それでも私は穏やかに努める
なぜ誰もあなたに教えてくれなかったんだろう
複雑な愛の解きほぐし方を
どうしてあなたは操られてしまったんだろう
奴らはあなたを手懐け、おかしな考えを信じ込ませていた
でも外へ目を向けてみると
世界が常に回り続けていることに気付く
私が嘆き悲しんでいる間にも、ずっと
私たちは学んでいかなければならない
これまで犯した数々の間違いから
だけど悲しみは決して消え去ることはない
どのようにして抜け出せたんだろう
あなたも道を誤っていたはずなのに
いつのまに逆さまになったんだろう
誰もあなたに警告しなかったのに
あなたを想うと見えてくる
愛はずっとそこに眠ったまま
私がひそかに悲しむ時も
あなたのことを想うと…
まだ私は悲しみに暮れてしまう…
『インセプション』そのまんま…
主人公ドム・コブは、ひそかに「妻や家族との思い出」を夢の中に再現していた…
そして、その「思い出」の中でも最重要な場所は、結婚記念日にモルと最後に過ごしたホテルの部屋だった。シャンパングラスが床に割れて散乱してて「掃除」が必要だったね…
モルがドムに仕掛けた「インセプション」の舞台「フィッシャー親子」でも、写真立てを床に落としてガラスが割れて、それを「掃除」しないままにしていた…
その通り。
そして元詞の「bought and sold」がナイスな働きをする。
単純に訳せば「売り買い・利用した」ってことなんだけど、「sold」って言葉には「(何かを)正しいと思い込ませる」って意味もあるんだ。
まんまインセプションやんけ。
そして、世界がグルグル回る…
確かに回ってた(笑)
そんで、いつのまにか「あべこべ」になっとった…
ディカプリオがインセプションを仕掛けてたつもりが、逆にやられてもうた…
妻モルにまんまとしてやられたんや…
モルの「駒」であるアリアドネとサイト―と、「コマ」に騙されて…
だね。
映画を観てる人たちも、完全に騙された。立場がいつの間にか「逆転」してることに全く気付けないような構成になっていたからね。
ノークリは、まさに当代きってのイリュージョニストだ。天才だね。
次のバンドはこのバンドだいっ!
『ホワイト・アルバム』の8曲目は、これまた名曲『ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン』だ。
ラテン系”ひとりクリスタルキング”ことカルロス・モリナの演奏でどうぞ!
Carlos Molina『Happiness Is A Warm Gun』
ホンマ”ひとりクリキン”や。カルロスやったらムッシュ吉崎(低音)と田中昌之(高音)を演じ分けられそうやで。
懐かしいね。
この曲もインセプションっぽい。
死んだ妻の面影を引きずる男の歌だからね。
おんなじ「飛び降り」やしな。
しかし『ハッピネス~』の歌詞も『インセプション』そのまんまやな。
『インセプション』はヤク中映画か(笑)
かつて流行った瞑想とかトリップとか夢療法とかをベースにしているんだから仕方ない。
さて、この曲も訳しておこうね。
Happiness Is A Warm Gun
作詞作曲:レノン=マッカートニー
日本語訳:おかえもん
彼女は間違いを何度も犯すような女じゃないんだ
ああ、マジで最高な女だ
その感触は、上等なベルベットのようで
トカゲみたいに窓枠を這う
色とりどりの鏡を持った男が人込みに紛れて近づいてくる
あいつはマジでヤバい奴
その目にみんな騙されるんだ、ゆっくりと手間暇かけて
嫁さんの石鹸の臭いがする
とっくのとうに捨てちまったはずなのに
「fix」しなきゃいけない
すっかり落ち込んでしまったんだ
思い出のあの場所に置いてきた
小さな「アレ」を取りに行かなきゃ
Mother Superior, Jumped the gun
早まったことをしてしまった
幸せってのは、撃った後にやってくる
勇気を出してやってみなきゃ
何も気付かないものなんだ
お前を腕の中に抱いていた時
最後に覚えているのは、指に感じた引き金の感触
そう、誰も俺の邪魔はできやしない
だってもう、後戻りできないんだから
「トカゲみたいに窓枠を這う」って…
そんなシーンがあったよね…
「鏡の男に騙されるな」ってのも一緒や。
「捨てた嫁」とか「思い出の町に置いてきた小さなアレ」とか、いちいち歌詞が映画のストーリーに対応しとる。
映画では、夢の中で主に「銃」を使って階層を「ジャンプ」しとった。劇中では「キック」って呼ばれとったけどな。
ここまで来ると、オマージュどころの騒ぎじゃないよね。
『ホワイト・アルバム』の映画化だ(笑)
ここまでやっても気付かれないのが凄いよね。
恐るべきストーリーテリングと演出技術!
9曲目は『マーサ・マイ・ディア』
ポール・マッカートニーが愛犬マーサのことを歌ったものだね。
演奏は、バンジョーのJosh TurnerとギターのCarson McKeeだ!
Josh Turner&Carson McKee『Martha My Dear』
うまいやんけ、このコンビ。見た目は地味やけど、ええ腕しとる。
だよね。
歌詞も紹介しておこう。
MARTHA MY DEAR
作詞作曲:レノン=マッカートニー
日本語訳:おかえもん
愛しのマーサ、何日費やしただろうか
お願い、覚えておいて
君は僕の大切な存在なんだ
忘れないで
顔をあげて、お馬鹿さん
自分がしたことをちゃんと見て
このうんざりするような状況は、誰のせい?
自分の周りがどうなっているか
ちょっとくらいは気にしてて
自分の周りをしっかり見てごらん
君と僕は、いるべくして一緒にいるってことを
片時も忘れないでよね
愛しのマーサ
僕の思考は、君に支配されている
だからお願い、僕に優しくしてくれないか
愛しのマーサ、僕を忘れないで
これもドム・コブの思い、そのまんまだ!
「MARTHA」と「MAL」って似てるし!
しかも頭の中を支配されてる(笑)
だね。
さあどんどんいくよ!
10曲目は『アイム・ソー・タイアード』
歌ってくれるのはケイティだ。よろしく!
Katie Thomas『I'm so tired』
このお姉さん、好き!
あの頃の宮沢りえみたい!
このネエチャン、実は超美形やろ。それなりのカッコしたら、往年のヘップバーンみたいになるで。
ふざけた感じから真剣モードになるとことか、まじグッとくる。
だよね。
さて11曲目は『ブラックバード』だね。
当時高まりを見せていた公民権運動に対してポールが送った応援歌だ。特に虐げられていた黒人女性に対してね。
歌ってくれるのは、魅惑の歌姫ジュリアンだ!
彼女も素晴らしい逸材だぞ。
惚れるなよ!
JULIANNE『BLACKBIRD』
惚れたァァァァァ!!!
ははは。
全盛期の南沙織と後藤久美子を足して2で割った感じだよね。
石川さゆりも入っとる。
確かに。
さて、映画でのモルは、まさにブラックバードだった。
夢の奥深くから飛び立ったんだ。夫を夢の最深部LIMBOにおびき寄せて…。
さて、12曲目は『ロッキー・ラクーン』だ。
Russ Chapmanの演奏と子供たちの演技の物語仕立てでどうぞ!
Russ Chapman&Paonia Players『Rocky Raccoon』
ストーリーが分かりやすい!
てかこれ『メメント』やろ。
女を奪われた男の復讐の物語や。しかも、歌も映画も復讐は終わらんと来てる。
小道具も一緒や。
モーテルの部屋にあったギデオンの聖書と拳銃。隣の部屋から聞こえる「アレ」の声。歌詞に出て来るDANは、DODDになっとった。そんで謎の女NANCYはNATALIEや。
そうだよね。
でも「足を撃つ」ってところは『インセプション』に使われた。
さて次は13曲目『ドント・パス・ミー・バイ』だね。リンゴ・スターがボーカルをとる御機嫌なナンバーだよ。
でも歌詞の内容は、女に去られた哀れな男の切ない物語なんだけどね。
さあ、ロッド君がリンゴ調で歌ってくれるぞ!
Rod O'Toole&Friends『DON'T PASS ME BY』
似とるやんけ。
でも、この歌って『インセプション』というよりも…
ふふふ。
では『インターステラー』を意識して歌詞を訳してみようか。
DON'T PASS ME BY
作詞作曲:リチャード・スターキー
日本語訳:おかえもん
(1番)
あなたのサインに耳を澄ます
何かを伝えようとする、その痕跡を
直接は届くことないメッセージ
あなたがノックしてくれるのを待っていたの
この古びた私の部屋で
これってもう私は見捨てられたってこと?
(2番)
飾り棚の上の時計がカチコチ動いたぞ!
誰かが手を振っているのが見えたけど
それは自分自身の手だったんだ!
君は今夜どこにいるだろうか?
私は広大な宇宙にひとりぼっちで
君に直接会うことはできない
これってもう君の愛が失われたってこと?
(サビ)
私を行かせないでくれ
つらい思いは、もうたくさんだ
わかっているだろう?「君」がすべてなんだ
その行動がどれだけ私を悲しませたのかわかるかい?
「君」が出ていく姿なんて見たくないんだ
私を行かせないでくれ
これ以上悲しませないでくれ
(3番)
あなたのこと疑ってごめんなさい
あんまりだったわね
きっとあなたはどこかで事故にあって
And you lost your hair
あなたは私にこう言ったの
いつか必ず帰って来るって
だから私は「STAY」の言葉通りここに留まった
あなたからの連絡を待ち続けていたの
完全に『インターステラー』(笑)
1番は、少女時代のマーフ
2番は、異次元に飛ばされたクーパー
サビは、過去の自分を見た時のクーパー
3番は、大人時代のマーフ
だよね!
「ノック」はTARSのジョークにも使われたな。「ノック、ノック…」っちゅう名前を使った駄洒落や。
映画の主人公クーパーが、「ジョン・ニュートン・クーパー」と「ジョン・ニュートン」と「ジョセフ・マーフィー」の名前からとられた「駄洒落ネーム」やってことをネタにしたジョークなんや。ノークリ本人とワイらにしかわからん、かなり高度なジョークやで。
そんでまた歌詞の中に、英語のままの部分があるね。
「髪の毛が抜け落ちた」ってとこが…
この「And you lost your hair」がキモなんだ。
「hair」って時計用語でいうところの、心臓部にある「ひげゼンマイ」のことなんだよ。
つまり「And you lost your hair」は「あなたの時計の秒針を狂わせて…」とも訳せるんだ。
ノークリは「hair」って言葉の特性をフルに活用したんだね。さすがだよ。
ひゃあ!そうだったのか!
しかし、『メメント』の「ロッキー・ラクーン」といい、『インターステラー』の「DON'T PASS ME BY」といい、ノークリは相当『ホワイト・アルバム』が好きとみえる。
さて14曲目は『Why Don't We Do It in the Road?』。タイトルのフレーズを延々繰り返すだけの歌だね。
ちなみに「road」って単語には、「道路」って意味の他に「鉄道」という意味もある。モルの鉄道の謎かけは、まさにこの曲の通り。
ほう!
この調子で行くとキリがないんで、23曲目の『ヘルター・スケルター』まで飛ぼう。
珍しいアコースティックバ-ジョンでいこうか。
歌ってくれるのは、パンチのきいた声がセクシーなヘイリー嬢だ!
Haley Reinhart『Helter Skelter』
ドスが利いとるな。
この曲も『インセプション』にとって重要だから、訳詞を紹介しよう。
Helter Skelter
作詞作曲:レノン=マッカートニー
日本語訳:おかえもん
下まで行って、また上に戻る
そこでちょっと「お化粧」直して
またすぐに行かなきゃならない
一番下まで降りたら
あなたにまた会うことになるわね
あなたにとって私は何なの?
今からあなたのところまで降りてあげる
but I'm miles above you
ねえ、教えてくれないかしら
私の質問にちゃんと答えてくれない?
あなたは私の愛した人
こんなこと本当はしたくはないの
私にいったいどうして欲しいの?
一番下の秘密の場所まで降りるわよ
あなたを夢を壊すつもりはない
どうしたいのか答えを出して
あなたは私の愛した人
こんなこと本当はしたくはないの
気をつけて!「彼女」が来るわよ!
ヘルター・スケルター
「彼女」が猛スピードで降りて来る
そう、「彼女」がね…
モルの歌やったんか、この曲は!
映画では描かれない、モルの「出動」の歌だったんだ!
物語が展開する「階層」の上には、常にモルがいる「階層」があるんだったよね。モルはそこから「鏡の偽装」を使ってアリアドネやサイト―になりすまし、下の「階層」へ降りて来るんだ。
ひとり三役だから、かなり忙しいだろうね…。まさに「ヘルター・スケルター」状態ってわけだ。
また英語のままの部分があるやんけ。
「but I'm miles above you」やから「だけど私はあなたの遥か上にいる」で、ええんとちゃう?
この歌では、ここがポイントなんだ。
映画『インセプション』の謎に迫る重要なヒントなんだよ。
モルのお父さんの名はMiles(マイルス)教授だった。つまりモルの旧姓はMilesだ。
ドムはマイルス教授のもとで「設計」技術を修得した。フランスのパリだったね。そして教授の娘モルと出会う。彼女は父から英才教育を受けた「設計」のエキスパートだった。ドムの才能を凌ぐほどのね。きっと教授は娘を使って、さまざまな実験をしていたに違いない。『インターステラー』のブランド教授みたいに。ドムの親友アーサーも、彼女の才能に心酔していた。もちろんその美貌にも。
それらをひっくるめて「but I'm miles above you」を超訳するとこうなる。
「だけど私はマイルス教授の娘。あなたより一枚上手なの」
ずいぶん高慢チキな女やな!
仕方ない。ドムの才能は、まだ学生のアリアドネよりも下なんだから。
さて、次の曲『レボリューション』に行ってみようか。
歌ってくれるのは、Rusty Clantonだ。
Rusty Clanton『REVOLUTION#1』
この歌って、英単語の勉強みたい。
レボリューション
エボリューション
デストラクション
ソリューション
コントリビューション
コンスティテューション
インスティテューション
語尾が「ション」で終わる単語がいっぱい出てきて面白いよね!類語だったり、反対語だったり!
も、もしや…
こうゆう都合で「インセプション」ってタイトルになったんか!?
「ション」つながりで…
だろうね。
記憶を埋め込むことが「インセプション」。そして抜き取ることが「エクストラクション」だ。
この2つの単語はそのまま歌詞に置き換えられる。
君はインセプションをしてくれって言うよね
わかるよ、みんな世界を変えたいと思ってる
だけど君だって知っていたはずだろう
エクストラクションとは、わけが違うんだって
誰かの考えを変えるってのは
たやすいことじゃないんだよ
ホントだ!
ノークリは大好きな『女王陛下の007』に出て来る「イン遊び」と、この「ション遊び」をもとに「インセプション」というタイトルを考えたんだ。
インあそび?
『女王陛下の007』の中のシーンで、「in~」で始まる単語を次々と言うシーンがあるんだよね。
それとジョン・レノンが作った曲『レボリューション』の「~tion」を合わせて「inception」にしたってわけだ。
ひゃあ!
タイトルの由来もわかったところで、そろそろラストの曲にしようかな。
そういえばノークリは映画のラストを、夢か現実かどちらともとれるような描写で終わらせたよね。
そして僕は「どちらでもいい」という立場をとった。あの「コマ」は観客の意識をそらす「おとりアイテム」だからね。すべてはモルによる夫ドムへのインセプションだったわけだから、最後の場面がまだ夢の中の可能性もある。モルが、夫婦間でズレてしまった「時間調整」をしている可能性もあるんだよね。ただでさえ女性は精神年齢が高いのに、LIMBOで長く過ごしてしまったせいで、夫よりもさらに精神年齢が進んでしまったから。
まったくややこしいハナシやな。
考えただけで眠れくなっちゃうね!
夢路いとし喜味こいしか!
春日三球・照代だよ。
でも映画『インセプション』は、まさに「夢路いとし喜味こいし」だったよね。
愛しさゆえに夢路に迷い、君を失ったがゆえに恋しさがつのる…
って感じ。
うまいことまとめたな!
というわけで、お別れはやっぱりこの曲『グッドナイト』。
歌ってくれるのはアシュリーとエドの二人。生まれて来た我が子のために、思いを込めて歌ってくれたよ。
『ホワイト・アルバム』のラストが「Good Night」ってことは、映画のラストもやっぱり夢の中なんとちゃうか?
オイラもそう思う。
それじゃあ皆さん、ここまで読んでくれてどうもありがとう。
そして、おやすみなさい。
グッナイ。
Ashlee & Ed Lemon, Jr.『Good Night』
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