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七月末より二週間の夏休みを頂戴した。

今まで様々なレストランで仕事をして来たが、これ程長い休みは初めてである。

喜ぶべき事ではあるが、高校時代に無期停学を食らった時と気分がさほど変わらぬは何故か?

気持ちは一向に晴れず、心はどうにも梅雨明けの碧空の様にはいかない。


そうこうして居たら高校時代の悪友、大阪在住の会社経営、古留英二から連絡あり、明日上京するから一杯行くべ・・との突然の電話。

すかさず東京の同級生数人に連絡を入れるが大方は欠席との事。

『突然じゃ無理だろ~』

当たり前か?

かろうじて三人が出席。


この古留と云う男、小生とは高校時代、一度たりとも同クラスになった事はなく、住まいが近い訳でもなかったが、何故か非常に仲が良かった。

大学は東京と鹿児島に別れ、二人ともたまたまマグレで浪人の憂き目に会わずに済んだ為、夏休みの帰省中は殆ど一緒に遊んだ。

毎日朝御飯が終わる頃にフラッとやって来て夕方日が暮れる頃まで(九州は八時頃か?)一日中自分の家か、そこを拠点に何処かしらを『鮒』の様に回遊した。

昼飯は毎日小生の家で、時には夕飯までちゃっかり食べて帰った。

当時の古留家のエンゲル係数は一人分低かったと推測出来る。

うちの母は、もう一人兄弟が増えたかの様に彼を可愛がったが、後年リクルートに就職し、優秀な営業マンに出世したのを考慮すると、彼の巧みな話術と調子良いお世辞に上手く乗せられて居ただけだと・・今自分は思って居る。


そんな夏の一日、二人で何をやって居たのか?殆ど記憶には無いが勉強でなかった事だけは確かである。

元々二人とも勉強が好きで大学の門をくぐった訳ではなく、どちらかと言うと勉学は大嫌いであった。

『大学行けば何とかなるべ~』的な非常に安易な発想から入学したに他ならない。

想像するに学校や旅行、将来や恋愛に関する話しなど・・実にとりとめの無い事を語り続けて居たのだろう。

互いに取るに足らぬ『心の澱み』を打ち明け、人としての成長をする幻想を夢見ていたのだが、元より若年時の悩みなどで人間が成長などする筈ないのである。



話しを戻すと・会はサラリーマンの聖地新橋集合となり、小綺麗な居酒屋で刺身、唐揚げなどを肴にビール、焼酎を数本空にした。

学生時代の友人には駆け引き無く気楽に本性を出せるので、ようやく気持ちが前向きになれた。


駅に向かう道すがら、古留は唐突に全く見知らぬ女に声をかけ、手を繋いで歩くのを見た時は一同唖然としたが当の本人は何等悪びれた様子は無く、楽しそうに夜の雑踏に消えていった。




その後姿は昔、筑後川で見かけた一匹の鮒の陰影と重なった。




とこしへの夏に残した置き手紙




星もうだる蒸し暑い




月の輝く真夏の夜の夢









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