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麻雀プロを辞めました。その理由と麻雀プロになって思ったこと

初めまして。現在某外資系IT会社に勤めております、岡林晃嗣(おかばやし こうじ)と申します。
私の自己紹介はこちらをご覧ください。


0.まえがき、このnoteは何か、想定読者

2020年7月~2024年2月まで日本プロ麻雀協会に所属していた筆者が麻雀プロになって感じたこととやめるに至った過程を書いています。
これから麻雀プロになりたいと思っている方や麻雀プロのことを知りたいという方を想定読者として書かせていただきます。
本編では読み物として書かせていただこうかと思うので、口語で文章を綴りたいと思います。

1.自分の麻雀との出会いと麻雀プロになろうと思ったきっかけ

自分が麻雀プロになろうと思った理由は「色々頑張ってきた20代の締めくくりを麻雀プロという形で締めたかった」からである。
自分が麻雀と触れたのは大学2年生の時で少し遅めだった。
大学の周りのグループの中に麻雀が好きな人が3人おり、その仲間たちに連れられるように雀荘にセットをしにいったことが最初に麻雀と触れ合ったきっかけである。
大学の近くには家族経営をしていた「リーチくん」という雀荘があった(今は閉店)。こに来るのはほぼ同じ大学の学生のみ。経営していたオーナーの娘さんがほとんど店番をしていたが、徹マンをする学生がいるときは信頼している常連の学生に店番を任せて運営をするような雀荘だ。
まるで田舎の話のようだが、これが神楽坂にあったのがびっくりである。
リーチくんに行けば大体顔見知った同じ大学の学生たちで溢れており、時間が開けばみんなそこに行き、まるでフリーのように4人揃ったらゲームが始まる。中には麻雀を打つわけではないのに遊びにきて、漫画を読んでいる人もいれば、化学の授業で提出するレポートを雀卓横のサイドテーブルで仕上げている人なんかもいた。

このリーチくんのおかげで自分の学生時代はほとんど麻雀が中心だった。授業の合間は1時間でも開けば1半荘やりにリーチくんに向かい、授業が終わればまたリーチくんに行く。いつもいるメンバーたちと徹マンをしては、次の日の授業に向かう。こんな時間を延々と繰り返していた。中には卒業出来ずに本当に延々繰り返している人もいた。

自分がこんなにも麻雀に時間が投資できた理由の一つが、全然勝てなかったことだ。
自分は数学科の出身なのだが、みんな等しく山や配牌が配られているにも関わらず全然勝てなかった。数学的にはありえないが、それを超えた腕、強さがこのゲームには存在していることをまざまざと見せつけられ、悔しくて、強くなりたくていっぱい打った。
自分も決して強くはないが、とてつもなく弱かったわけではなかったと思う。当時天鳳をやっていたときは四段~五段を行ったり来たりしていた。そういう意味では当時一緒にやっていたメンバーは鳳凰卓にいたようなメンバーだったのかもしれないと今では思う。

そんな日々の中、強かったメンバーの一人が冗談で「就職せずに麻雀プロになってみようかな」と言っていた。初めてプロを意識したきっかけである。
みんなでプロテストの過去問を解いてみたり、プロが来店するお店に行き「プロがどんなもんじゃい!」という気持ちで同卓希望を出してみたりしていた。
しかし結局、言い出しっぺの人もその周りも誰一人プロになることはなく、自分も含めてなんとか大学を卒業し、就職した。

社会人になってからは同じ会社で麻雀をする人たちとたまにセットをしていたが、当時学生時代のような強さの人たちと出会うことはなく、モヤモヤする日々が続いていた。
そんな中で近しい業界の中で麻雀が強い人たちだけが集まる社会人サークル的な形と出会うことが出来た。皆さん一流の会社に勤めて、中には重役になっている方もいらっしゃるようなサークル。
ここではセットを呼びかけるためのやり取りや3ヶ月に一回行われた大会を運営しており、たくさんの強い方々と麻雀をすることが出来た。そしてこのサークルで知り合った方々の中に出会ったときは一介の会社員だったのだが、その後プロテストに合格して麻雀プロになった方が複数いた。

これが自分にとって大きな衝撃的だった。
当時学生時代は就職しないで麻雀プロになるものだと思っていたが、会社員と二足の草鞋を履いて両立するという選択肢があることを知った。
また改めて麻雀プロを目指す大きなきっかけだった。
丁度当時29歳の誕生日を迎える時だったので、「20代の初めに考えた夢を20代最後に叶えに行こう」と考え、仲の良かった大塚 裕喜プロに相談をし、彼が所属していた日本プロ麻雀協会プロテストを20期後期で受験。無事に合格した。

2.麻雀プロになって良かったこと

結論、麻雀プロを経験できて本当に良かったと思う。箇条書きでいくつか書いてみる。

①日常では出会えないさまざまな人と繋がりができたこと

まず最初に良かったと思ったことは人のつながりが広がったことである。
麻雀プロの共通項は「麻雀が好きなこと」か「麻雀を強くなりたいと思っていること」だろう。
その中には僕みたいに会社員との兼業をしている人も協会は多いが、雀荘メンバーとして働いている人や声優やタレントさん,中にはYouTuberさんなど普段は関わることが出来ないお仕事をしていらっしゃる人などさまざまなバックグラウンドを持った方々が集まっている。
こんなコミュニティはなかなか無く、これだけで自分にとっては刺激的かつキラキラした環境で、この中に属しているだけでも十二分に楽しい時間を過ごすことが出来て良かった。

今でも色が濃い世代なんじゃないかと思う同期たち(協会20期後期)

②公式戦の面白さに出会えたこと

正直最初は「公式戦は赤も無くて、普段の麻雀と違うから面白いのかわからない」と思っていたのですが、いざやってみるとこれがとてつもなく面白い。
勝ち上がっていくこと自体も面白いのですが、公式戦独特の緊張感だったり、様々な条件の中で打ち方を決めていくことなどどれも面白かった。
過去の自分のnoteに新人戦の時の対局記があるので、もし興味があれば覗いてみてください。

③「天鳳」と出会えたこと

「麻雀プロは麻雀が強い人がなる」
このように思っている人もたくさん多い。
しかし実際は囲碁や将棋のような世界とは違くて、最近麻雀を知った、みたいな方々も実は結構多い。
それもそのはずでプロテストで問われているのは、麻雀の強さではなく、団体のルールや最低限の知識であるため強さとは比例しなかったりする。
実際自分も当時はまだまだ麻雀が弱かった。

プロなりたての時の天鳳の成績。五段原点割れ。

そんな中で漫画家のウヒョ助さんという業界では有名な方に取り上げていじっていただき、「天鳳で9段とったら見直すからやってみろ」と言われたことをきっかけに天鳳に打ち込んだ。

プロとして認められたくて、9段到達を目標に平日の仕事の合間や寝る時間も惜しんで、本をいっぱい買ってインプットを行い、アウトプットとして天鳳を打ち込んだ。
それの甲斐もあって徐々に段位やRが上がっていき、初めて鳳凰卓まで駆け上がることが出来た。この時の感動は今でも覚えている。
結局プロを辞めるまでに8段には3回いけたもののあと一歩届かず9段に到達することはできなかったが、天鳳の鉄強たちとの麻雀は下手なフリー雀荘でやる麻雀なんかよりも最高にエキサイティングで、たくさん負け越す日なんかは一日中凹んだらすることもあるが、これからも9段到達は一つの目標として目指してマイペースで頑張っていきたい。

④Xのコミュニティを知れたこと

X(旧Twitter)のコミュニティに触れることが出来たことも大きい。
お恥ずかしながらプロになるまでXでこんなに大きな麻雀コミュニティがあることを知らなかった。
プロの方々の活動の中心なのはもちろん、天鳳や雀魂をはじめとするネット麻雀のコミュニティも大きい。
特にネット麻雀で対戦した方々とX上で交流をできるのはとても新鮮で、天鳳を続けていく理由の一つになっている。Xで知り合った方々や天鳳民の方々のオフ会など、もし機会があればお会いして一緒に麻雀をしてみたい。

⑤ビジネス上でもいい名刺替わりになった

これはあくまでもサブ的なことではあるが、「麻雀プロやってます」という肩書はビジネス上でもとても有利に働いた。
仕事上で出会う方々は自分のビジネス的な側面しか見えていない中で、麻雀プロという肩書きは振れ幅にもってこいの肩書きだった。やはり「趣味が麻雀です」というよりも「麻雀プロをやっています」の方が振れ幅は大きい。
より仕事を真面目にやっている人ほどこれは大きなセルフブランディングの武器になると思う。

その他にも細かいこともたくさんあるが、麻雀プロになって良かったことはとても多く、間違いなく自分の人生に彩りを加えてくれていた。個人的にはまだまだやり残したこともあるので麻雀プロ活動をクローズするには惜しい部分もあった。

3.なぜ辞めたのか

子どもが生まれたことがきっかけで麻雀プロを辞めることにした。

リーグ戦など土日の対局は元々参加していなかったし、子どもができても麻雀プロを続ける選択肢は正直あったと思う。
ただ、自分の中でのしっかりと意図を持って辞める意思決定を下した。

自分は20代の時から子どもが産まれたあとの人生は深く考えており、それまでは大きく変化を加えていきたいと考えている。
30歳の誕生日を迎える前に描いた自分の自己紹介noteを改めて読んでも、子どもが生まれる前までの人生をどこまで前に進めるかはとても意識していることがわかる。

特に自分が考えていたのは「ワークライフバランス」の考え方の変化に向き合っていました。
具体的には「社内におけるキャリア形成」やではなく、「家族や趣味を大切にするために30歳になるまでにこうなっていたい」とか、「子供が生まれるまでに仕事はここまでやり切りたい」などです。

過去の自分の自己紹介noteより

少し話は変わるが、基本的に人は有限な資源の中で生きていて、その資源をどのように配置するかで人生は大きく変化をしていく物だと考えている。ここでいう
ここでいう資源に該当するものとして、例えば「時間」である。
どんなに学生時代に麻雀が好きで時間を投資していても、期末テスト付近では約1ヶ月程度学校の自習室にこもって、1日6時間程度はテスト勉強をしていたり、仲の良い同僚から急な飲みの誘いがあっても、仕事が忙しい時はアウトプットを作り切るまではパワポと格闘する。
他にも「お金」や「頭のキャパシティ」なども有限な資源だろう。
特に「頭のキャパシティ」はとても重要な観点だと思っていて、「時間」の投資よりももっと重要だと思っている。
具体例としては、例えば家族との時間を作るためにディナーに行くが、仕事のことばっかり考えていて、食事や家族との会話に集中できない状態では、「時間」自体は家族に割いているが、「頭のキャパシティ」は仕事に割いている状態であろう。

自分は頭のキャパシティは割と広い方ではあると思う。マルチタスクをこなすのは得意だし、興味関心があればすぐに飛びついて、新しい情報を収集する。
ただ、これからの人生では「家族」に自分のリソースを割いていくことを重要視していきたいと考えており、そのためには限られている資源の中から自ら意思決定をして、削除していくものを決める必要がある。

その考えの元で今は「麻雀」に割くべきではないという判断をし、麻雀プロを辞めることにした。

まだ生後1ヶ月なので、夜中の3時ごろに腹減ったと泣いてみたり、おむつが気持ち悪いと泣いてみたり、隙間時間に天鳳やっていて2軒リーチがかかって何を切れば良いかと悩んでいたりするときに泣いてみたりと大変なことも多いが、どんなに泣いていても抱き抱えると泣き止んでほっとした表情をする子どもを見ていると、時間もお金ももっと子どものために使っていきたいと考えており、辞めたことは良い決断だったのではないかと思っている。

4.個人的に思う麻雀プロを満喫できる人の特徴

ここは完全なる主観となるが、下記2点を持ち合わせている人が麻雀プロには向いていると思う。(自分はなってから気付いたが、向いていなかった)

①麻雀を上手くなりたいと思う人

結局この業界は結果が全て。
特に男性プロは結果を出さないと、お仕事やメディア出演のきっかけを掴むことは難しいかと思う。
そういう意味では雀力向上とは常に向き合い続ける必要があり、本やYouTubeなどを用いた座学や勉強会への参加、ネット麻雀などを用いてアウトプットを頑張るなどいろんな方法があるかと思いますが、限られた機会で結果に繋げるための日々の鍛錬は必要。
これを継続するための努力ができる人は麻雀プロに向いていると考える。

②時間的な余裕がある人

麻雀プロになってから発生するイベントはたくさんある。
・リーグ戦や様々なタイトル戦などの公式戦
・プロ仲間たちとの交流(勉強会、飲み会など)
・ゲストなどの麻雀関連のお仕事
これらを全て受けられる時間的な余裕がある人は麻雀プロを楽しむことができると思う。
特に1つ目と2つ目はかなり重要だと思っており、麻雀というゲームの特徴上、運要素が絡むためどんな実力者もある程度の試行回数を行わないと結果につながらないことも多い。そういう意味では参加できるタイトル戦はどんどん参加した方が良いし、よりたくさんのプロの方々と知り合うことでいろんな会場でもアットホームに対局を行うことができるようになると思う。
またプロ仲間たちとの交流も純粋に楽しめる人にはのめり込むきっかけの一つになり得る。団体を超えて、仲間たちとお酒を飲んだり、ちょうどそのときに放映しているMリーグを見てあーだこーだ言ったりするのは最高の時間の一つだ。

4.今後の麻雀業界との関わり方について

麻雀プロは辞めたのですが、端くれながら麻雀業界にはもっと改善できることは多いのではないかと感じる部分が多かったです。
各団体の運営方法、麻雀/麻雀プロの価値向上など様々な課題を目の当たりにして、こうすればもっと良くなるのにと考えていた部分も多数ありました。
そのためどこかのタイミングでは業界の発展につながるような取り組みを行いたいと考えていて、具体的に何をするのかはまだ構想中ですが、自分の得意とするビジネス面において、優秀な周りの方々の協力を仰ぎながら大きな変化を加える大風の目として何か一石を投じれたと考えております。

5.最後に

ここまで駄文を読んでいただきましてありがとうございます!
短い麻雀プロ人生でしたが、とても充実した3年間でした。間違いなく人生の中でも大きなチャレンジができたと思っています!
また、協会の運営の皆様や仲良くしてくれたプロ仲間の皆様、本当にありがとうございました!
もしこれを最後まで読んでいただいた方の中に麻雀プロテストを受けるか悩んでいる人がいれば、悩むぐらいなら是非挑戦していただきたいです。やってみて違うと思うなら辞めればいいと思います。

引き続き何かしらの形で麻雀業界と関われるように頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします!

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