ペンネームに恋をして 正体が分からない方がなんかワクワクする
「ビジネスをするなら名前は本名で顔出しした方が良いですよ」
ぐうも出ない正論。
正に仰る通りでございます。
そうですねぇそうですねぇと相槌を打ちながら、じゃあなんで私はそれでも匿名で活動しているんだろうなぁとぼんやり考えたのであります。
こんにちは、Okakiです。
私は現在個人でデザインやら文章やらを書いたりしてお金をいただき暮らしている人間です。表向きには本名ではなく、匿名で活動しています。
個人で仕事をするのなら「本名で顔出しした方が良いですよ」とよく耳にしてはそうですよねと首を縦に振っている毎日です。安心感と信頼感が違いますもんね、本当に。
ではなぜそれでも匿名で活動するのかと言うと「プライバシーとかセキュリティの為」と一言で言ってしまえばそれでおしまいなのですが、一番の大きな理由はそれでもなく、単純に匿名への憧れだったりする訳です。
私は子どもの頃から自分のペンネームが欲しかったんです。
子どもの頃にペンネームに恋をして
私の子どもの頃の夢は漫画家でした。
いまは少しお仕事で漫画をちょろっと描かせて頂いて、まぁ夢を叶えたと言えば叶えたのですが、描けば描くほど「これはめんどくせえ作業だぜ、週刊連載の人とか頭おかしい」と尊敬と畏怖の念を感じずにはいられません。
正直に言って、漫画描くのめっちゃ大変です。
3ページやら4ページの漫画でひいひい泣いてる私は、そんな現実を痛感しつつお仕事の漫画を描いているのですが「漫画家ってやっぱここがカッコいいよなぁ」と思っているものがあります。
それがペンネームです。
私は自分のペンネームを作りたくて漫画家を目指していたと言ってもいいかもしれません。なんという理由だ。
漫画家ならペンネーム。
芸能人なら芸名。
自分を表す名前だけど本当の自分の名前じゃない名前。
偽物の名前だけど偽名とも違う。
仕事用の名前。
私じゃないけど私の名前。
なにそれかっけえ。
「普段の僕の名前はこれ、でも仕事をするときはこう呼ばれてる。〇〇ってね!」
そんなの正体を隠しながら影で世界を救っているヒーローみたいじゃないか。私も正体を隠すような名前が欲しい!
とまぁこんな憧れを子ども頃に抱きまして、私はペンネームが欲しかったのです。
今はもうアカウント名とかユーザー名とかで言われる方が多いけれど、私は自分で「仕事用の自分を表す名前」を作れる職業に憧れていました。漫画家とか芸能人とか小説家とか。
例えばペンネームで『ずっと男性だと思っていた漫画家さんが実は女性でした』とかネタバラシされると「うそっうわ、やられた〜!全然気が付かなかった!」と悔しかったりしますが、名前で性別も謎にできちゃうのが最高に面白いです。
実は私も結構な確率でネット上での性別とリアルの性別を間違えられたりします。自分では全然隠しているつもりも無いのに、真逆の性別で受け止められている可能性があると思うとなんだかとてもワクワクしました。
「プライベートではズボラで良いけど、この名前を使うときは仕事ができるかっこいい自分になるの、仕事用の私よ!」
そう暗示を掛けるかのように名前を使っていきます。それはまさしく映画のスーパーヒーローが敵を倒すために別の自分に変身をするときかのように。(実際はそんなかっこよくもなんとも無い自分なんですけど)
純粋に、自分で自分の名前を作ることで、別の自分を、新しい自分を作ることにワクワクしました。
新しい自分の名前を考えるときは「この名前の私は何をしていこうか、何ができるだろう」と未来を想像していきます。どうせ仕事をするなら自分だけでも「ふふふ」とニヤけられる裏設定のような要素を作って楽しみたいというのが私の生き方です。
ペンネームを作ることで、自分の新しい可能性を作り出せるような気持ちになって楽しくなりました。今はもうこの「Okaki」と言う名前が自分の中でしっくり定着してくれるようになっていて面白いです。
「記憶しておきなさい。君はこの世界という演劇の1人の役者であると。君の役割はただひとつ、与えられた役を見事演じること」
ローマ時代の哲学者、エピクテトス
私は自分の手で「演じる役」を新たに作ることに面白さを感じていました。
もちろん、お仕事で契約書を巻くときとか普通に本名で書きます。
お仕事する人にはきちんと本名を言います、はい!
本名を絶対隠したい訳でも無くて、別の名前を使うことでの面白さを楽しんでいきたいだけなのです。
その方が、なんか人生楽しそう。
正体が分からない方がなんかワクワクする
「匿名なんて所詮は虚像だよ」
「それは偽物だよ」
「真剣に考えるならもっとビジネスとして考えるべきだ」
「キャリアを積みたくないの?」
色々なご助言を頂く度に「正論過ぎて頭が上がらん...」と毎回床を見る羽目になるのですが、虚像ってそんなダメですかねと寂しくも感じるのです。
偽物。うん、確かに...。
そもそも本物ってなんでしょう。本物になりたいかと言われても「え、あ、はい...?」という感覚でして別になりたいとかなりたくないとかもあまり思わないんです。
「...?自分が自分ならそれで良いんじゃない?」としか言えなくて。
本名を出すこととか顔写真を出すことで信頼、信用が作れるのは本当にそうなのだけど、私は阿呆にも自分の存在に少しでも不確かな、謎な部分を残して活動する魅力を捨てられずにいます。
楽しいか、楽しくないか?
面白そうか、そうでないか?
どうしてもこういう基準で見てしまいます。
寧ろ作り物だから、偽物だからこそ楽しいなとも思えるのです。
学校の出席名簿に書かれている4、5文字の聞き慣れた名前ではない自分、先生にも友人にも家族も知らない私が存在出来る空間があるようで。まるで異世界で生きていくようで楽しい。
別にお金を騙し取ろうとか、誰かを蔑もうとか陥れようとかは全く思ってなくて、ただ「私じゃない私」を作って新しい目線で世界を生きてみることが面白いのです。
もちろんお金が発生するときはきちんと「私ゃこういう者です、えぇどうも」と名刺をお渡しします。名刺をお渡しして「あぁ、こういうお名前なんですね」と初めて知ってもらうのも、それはそれで面白いシーンかなとも感じています。
匿名であること、本名を隠すことが悪事をする為の逃げ道になっている印象が悲しいですが、私は隠すからこその楽しさを見つめて楽しんでいきたいなと感じています。
いま私のSNSのフォロワーさんはオタクアカウントを合わせて大体8500人くらい居るんですけど、私の本名よりペンネームの方が多く知れ渡ってるというのがそれだけで面白い。
私のリアルの本名を知ってる人よりも圧倒的に『私だけど私じゃない、でも私』を知ってる人が多い。これだとどちらが本物で、どちらが偽物なんだろうなとも思えてきます。どちらも本物かもしれないし、どちらも偽物かもしれません。
漫画やゲームでよくある「あいつは『黒い悪魔』と呼ばれてる奴だぜ!」とか異名や称号がありますが、それペンネームでもワンチャンあるんじゃないかね?と密かに思っています。
ペンネームという私の異名が一人歩きして世界を渡れたら絶対楽しいよなぁ〜!と夢見ているオタクです。世界を知るのが好きなんでどうせならペンネームで世界を渡りてぇな。
別にいいんです、本物じゃなくても偽物で。虚像かもしれない。
でもそっちの方が私はワクワクします。
こういうワクワク感が捨てられないからペンネームはやめられません。
私の場合はペンネームと言うよりハンドルネームと言った方がしっくりくるレベルですが良いのじゃ!
どうせ生きるなら、少しでも自分の人生面白くしていきたいです。
自分で自分の裏設定を作りたいものです。
あ、お仕事ではきちんとお名刺お渡しして本名名乗ります!
どうぞご贔屓に!
(最近の野望は本を出版して印税で世界の博物館を巡る旅に出ることです。探さないでください!)