#3 公的年金について①
今回から数回に分けて、公的年金制度についてお話したいと思います。
皆さんは、「公的年金」と聞いて、どのようなことを思い浮かべますか?
実際にもらっている年代の方ならともかく、まだ、20代、30代くらいの方なら、「年金ってどうせ自分たちは保険料に見合う給付は受けられない」からと国民年金保険料を支払えるお金があるのに、あえて未納にして代わりに個人年金保険などで貯蓄をしている方も一定数いるようです。
実際に30代の国民年金保険料滞納者のうち10.3%は個人年金に加入し平均13,000円の保険料を払っています。
(厚生労働省平成29年国民年金被保険者実態調査による)
私たちは年金をもらうことを期待できない?
下の図は、老後の生活設計の中で公的年金をどのように位置付けているかを聞いたもので、すでに公的年金が支給されている70代以上の方は45.0%が全面的に公的年金に頼ると回答しているのに対し、30代ではそのように答えた人は2.5%しかいません
他方、公的年金にはなるべく頼らずできるだけ個人年金や貯蓄などを中心に考えると答えた人は70代以上では6.1%にとどまりますが30代では26.8%います。
すでに年金を受給している高齢者と比べて30代の世代は公的年金にあまり期待できず頼れないものと思っている方が少なくないようです。
30代にとっての公的年金とはすぐに給付を受けることがなさそうでかつ将来もあまり期待できないにもかかわらず毎月結構な金額の保険料を支払わされているそんな厄介な存在として写っているのかもしれません。
どんな時に公的年金が支給されるか?
では一体どういう時に公的年金の給付が受けられるのでしょうか?
真っ先に思い浮かぶのは自分が高齢者になった時に受け取れる老齢年金でしょう。
現在の法律では1966年度以降以後に生まれた人は公的年金の原則の支給開始年齢は65歳となっています。
また公的年金には障害年金や遺族年金といったものもあります。
障害年金は病気や怪我などにより障害を負い就労により収入を得ることが難しくなった場合に支給されるものです。
遺族年金は家計を支えるものが不幸にもなくなってしまった場合に遺された家族の生活を支えるために支給されるものですこれらは年齢に関わらず(本人や家族に)支給されます。
「人生の大きなリスク」を個人や家族で負うことは難しい
公的年金は老後の生活費、障害を負った後の生活費、死亡した場合の遺された家族の生活費を支えるものですが、もし公的年金がなかったら私たちはこれらのリスクを背負いきれるでしょうか。
たとえ生活費を1世帯で年180万円(月15万円)に抑えたとしても例えば65歳から85歳まで20年間生活するためには3,600万円が必要です。
夫がサラリーマンで0歳の子供と専業主婦の妻がいる家庭で夫が亡くなった場合、子供が18歳になるまでだけを考えても3,240万円が必要になります。
もし35歳で障害を負いその後85歳まで50年間生きるとすると必要な生活費は9,000万円にもなります。
これほどの金額の貯蓄を普通の人が準備することはまずできませんし、たとえこの金額を準備できたとしても何歳まで生きるのかがわからない以上それで安心することはできないのではないでしょうか。
そうは言っても民間の保険もあるじゃないか、と思う方もいるかもしれません。障害年金と遺族年金については、民間の保険会社が運営することもそんなに難しくありません。
障害を負うこととなる確率や若いうちに死亡する確率はだいたいわかっているため多くの加入者は集めることができれば集めた保険料で決まった金額の年金額を約束する保険を作ることができます。
こうした保険は「年金型生命保険」や「就業不能保険」などといった名前で販売されています。
これらの保険は公的年金と合わせていざという時の保障を厚くするために使うべき保険ですが、国の障害年金や遺族年金に変わる機能を持つとも言えます。
ただし当たり前のことですが民間の保険は保険料掛金を払った人にしか給付することはできませんし、保険会社が国民に保険の加入や保険料掛金の支払いを強制させることもできません。
無保険ゆえに生活を支える大黒柱がなくなったり障害を負ったりしても年金がもらえない国民がたくさん出てしまえば社会は不安定になってしまいます。
次回は年金の仕組みについて、お話していきます。