社会人デビュー②
車のタイヤ交換が思ったより高額なので絶望してるヒロオカです。
こんにちは。
前回の続きです。
怪しげな洗脳儀式・・・じゃなくて、2日の研修を終えて、とうとう店舗での初勤務。
研修の内容が異常だっただけに、嫌な予感しかしない。
そして結果から言ってしまうと、初勤務はその嫌な予感通りの展開だった。
初日ということで、仕事といってもやることは販売方法を教わったり、その練習をしたりが主だったのだが、これが当時、社会人になりたてのワシには衝撃的であった。
その販売方法は一言で言うと、超強引なキャッチセールスだったのだ。
店頭前を通行する女性に声を掛ける
↓
着物、よかったら見るだけでも見てみてー、と店内に誘導
↓
せっかくだし着るだけでも、と勢いで着付け
↓
あわよくばそのままご購入。
こんな流れ。
まだ世間知らずだったワシは、店舗での販売なんて、モノを買いに来た人に、ただオススメしてたくさん買ってもらえれば良いものだと思っていた。
だが、その商品に興味がない人相手にでも、どうにかして商品を売り込むという、いわゆる営業的なモノの売り方を、この時初めて体感した。
理屈はわかる。
特に着物みたいに高額で普段使わないモンは、こうでもしなきゃなかなか売れない。
けど、興味のない人に興味を持たせ、買ってもらう、というやり方は、どうにもワシには肌が合わなかった。強引すぎる。
店長(25・♂)曰く、興味のなかったものに興味を持ってもらい、その人に新たな世界を知ってもらうキッカケを作っているんだから、堂々と声掛けしていいんだよ!
まぁモノは言いようだよね。
そんなウチのキャッチセールスには、かなりの演技力と、強いハートが要求される。
こんな強引なやり方・・・とか思ってる内は、まず成功しない。
そのやり方への違和感をぬぐい切れなかったワシは、早くも心が折れる。
これから毎日こんなことすんの・・・?
とりあえず、初日は その怪しげなキャッチの練習をして終わる。
はぁ。もうこれだけで疲れたよ。
とくに心が。
ちなみに、これから毎日、新入社員全員の売上がFAXで全店舗に知らされるらしい。
鬼かな?
翌日。
朝、店に来てみると、早速新人の売上報告FAXが。
早くも数名、売り上げた新人がいるようだ。
しかもその内ひとりは、100万売り上げたとか。
何者だよそいつ。
だがその売上詳細を読んでみると、どうやらそいつの親族が着て買っていった模様。
そんなんアリかいな。
ちなみにウチの店舗は新人がワシ含め4人いたが、もちろん誰も売れていない。まぁ初日は接客すらしてなかったし。
そうして勤務2日目がスタート。
この日から、店の前を歩く買い物客のキャッチまがいな声掛けが本格的に始まる。
ほとんどナンパやぞこれ。
仕事だから仕方なし、と、なんとか通行客に声はかけるも、だいたいスルーか苦笑であしらわれて終わり。
そりゃそーだよね、どうしても胡散臭い演技みたいになっちゃうもん。
お客さんも警戒するわ。
でも他の新人3人は、なんとか店内に誘導するところまでは出来ている模様。
すげぇなアンタら。
そしてその翌日。
副店長(31・♂)が、25歳くらいのお姉さんを店内に誘導。
そのまま、せっかくだし、滅多に着ないでしょうから着てみるだけでも・・・と、着付けを開始。
さすが副店長、経験者は違うなぁ・・・とは思うけど、そのお客さんも明らかに気が弱そうで断れないタイプっぽい。
なるほど、こういう人は狙われやすいんだな・・・。
着付けをしていると、「あらー素敵じゃなーい」とか言いながら、パート店員のおばちゃんが一人また一人と、お客さんの周りにギャラリー風に集まりだす。
そうして着物を着せられたお客さんは、いつの間にやら接客していた副店長の他、数名の店員に囲まれる形に。
怖。
「こんな素敵な恰好でお出かけしたら、一生の思い出になりますよねー」
「一式だけでも持っておくと、この先何かあっても役立つわよー」
「ほんとお似合いだわ~」
「結婚式や観劇、お茶会とか、意外と着物の出番ってあるのよねぇ」
うわぁ・・・
1時間以上、そんな集中砲火をお客さんに浴びせ、結局そのお客さんは20万の帯+30万の着物と、その他和装小物は今回だけのサービス、という名目でトータル50万で購入決定。
もちろんローンで。
食らいついたら放さないスタイル。
あのお客さんも、これからは着物を着る生活を楽しむことが出来るんだ。
高い買い物で迷っていたようだけど、絶対買ってよかったと思ってくれるよ。
ねぇ副店長それ本心なの? (´·ω·`)
他の皆も口々に「あの子はきっと買って喜んでるよ~」とか言ってる。
揃いも揃って嘘くせぇ。
これを見て、ますますこの仕事を続ける自信がなくなった。
いくら着物を後世に残すため、お客さんに喜んでもらうため、とか綺麗事並べても、結局ただの押し売りだもんなぁ。
無理だわ・・・
ちなみに、入社数日めのこの時点で、他店舗の新人が既に2~3人辞めていた。
ギブ早ぇな~と当時は思ったけど、多分これが正常な人間の判断。
ワシも辞めたいとは既に思ってはいた。
けど、仕事は3年は続けるべきという、例の風潮が頭にあったので、この時点ではまだ辞める選択肢が無かった。
あと、貧乏学生だったのに勤務地近くに引っ越しして金が無かったから、というのもあるけど。
続きます。