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社会人デビュー①
もう社会人はやりたくない、ブラック企業ウォーカーのヒロオカです。
こんにちは。
前回↓
の続きです。
大学4年の夏に、あっさりと就職が決まったワタクシ。
就職先は大手の呉服販売チェーンです。
着物なんてまったく興味ありませんでしたが、世間知らずなワタクシは、店頭で着物売るくらいなら余裕余裕、と根拠無くやっていけると思っていました。
しかし、そんな思い上がりは、わりと早い段階で打ち砕かれることになります。
大学を無事卒業したワタクシは、千葉の某店舗に配属されました。
実家から車で1時間半くらいの場所でしたが、流石に通うのはちとしんどいです。
なので、店舗から徒歩10分ほどの場所にアパートを借りて引っ越しをしました。
勤務初日は、店舗ではなく、まず都内の某所で研修でした。
研修は二日続けて、同じ場所で行うそうです。
初日は、ある大部屋に、首都圏エリアの新入社員が全員集められ、かなりの人数となっていました。
さあいよいよ研修スタートです。輝かしい社会人生活の第一歩です・・・
まず、そのエリア管轄のお偉いさんや、役職持ちの人の紹介から。
とりあえず社長除いて、このエリアで一番偉いのは、ちっこくて小太り眼鏡の茂木田部長。
50歳前後ってとこかな。
ウチの店舗のエリアマネージャーとやらは、まだ28歳くらいだとかの、ちょっとキツいお顔立ちのお姉さん。
他にもなんか、よくわからんのが何人かいたけど、とりあえず今はこの二人覚えときゃいいか。
そして最初は、簡単に着物の説明から始まる。
ふむふむ。がっつり絹100%の着物は正絹。
それと化学繊維で出来てるのもあるという。
当然値段は全く違う。なるほど。
留袖、振袖、訪問着、小紋、紬、ついでに浴衣。
それぞれに格というものがあり、TPOに応じて着るものは変わるという。
ふむふむ、なるほど。めんどい。
それから、扱う着物は全て女性用。
男性用は無いらしい。イイネ。
次はどうやら商人の基本やら、仕事への向き合い方?
のような話をするという。ほう?
このあたりから 早くも空気に違和感が漂い始める。
商売は、お客様あってのもの。
お客様がいるから、我々は食べていける。
ま、まあせやな。
お客様を幸せにすることが我々の使命だ。
お客様を幸せにし、社会貢献をすることが我々の幸せでもある。
お金はその結果ついてくるに過ぎない。
お、おう。
だから、お客様は神様なんです。
我々の仕事は、神様に仕えることと同じなのです。
ちょっと何言ってるかわかりません。
まぁ「お客様は神様」だとかはよく聞く謳い文句だけど。
でも商売って神様に通ずる程のもんなの?
なんとなく語り方に、体育会系のような圧と、
狂気を感じるのは気のせい?
まぁとりあえず、
ウチの仕事はただの銭儲けじゃなく、社会貢献してる崇高なもの
なんだよ、ってことみたい。
着物売るのって社会貢献なん?
着物を売るのは、古くからの日本の着物文化を後世にも残すため、だと。
ああ、まあそう言われると社会貢献と言えなくもない・・・のかな?
あとは、まあありきたりな、
自己成長のために云々、
若くして役職に就ける云々、
その結果自分の生活を潤すこともできる、みたいな話。
結局、一番言いたいのは、
「ウチの会社は素晴らしい!四の五の言わねえでお前ら全力で尽くせ!」
ってことなのは理解できた。
当時は聞き流してたけど、今思うと完全に愛社精神を植え付けるためのマインドコントロールでした、あれ。
そういや怪しげな音楽流して、怪しげなお香炊いて、怪しげな空気醸し出してたな。
で、研修の二日目は、簡単な疑似着付け(っていうのかな?)の練習。
いくつかのチームに分かれて、反物をトルソー(マネキンみたいなやつ)に巻き付けて、着ている風に見せる練習。
反物を順序に従ってトルソーに巻き付けていくと、確かにちゃんと着物を着ているように見える。
店頭では、この手法でお客さんに実演販売するらしい。
で、一通り練習が終わると、今度は一人ひとり、その疑似着付けのタイムアタック。
競わせるとかホント体育会系。
着付けってそこまでスピーディーにやらんとダメなん?
エリアの親分である茂木田部長、誰かが何かしでかしたわけでもないのに、早くもめっちゃ叫んでる。
「お前ら!社会人は時間厳守が当たり前だからな!ちんたらやるんじゃねぇぞ!!」
うわぁいきなり高圧的。
もうやだコイツ嫌い。
そういえば、練習会場の準備や後片付けをする際も、制限時間が設けられていた。
合図とともに 新入社員が一斉に駆け出してドタバタ作業をしている光景は異様だった。
呉服屋ってこんなマッシブな空気なん?
その異様な着付け練習が終わったら、別室にてまた講習。
今度はセールストークをするためのコツだとか。
細かくは覚えてないけど、一つ印象に残ったシーンがある。
人でもモノでも物事でも、良い視点から見るのが大事である、と。
つまり悪い点よりも、良い点を積極的に見ていこうと。
仕事をする上でも日常生きる上でも、大事なことですね、と。
まあ、もっともですな。
マトモなことも言うのね。
で、講師のおっさんが続ける。
「ではここに一万円札があります。今からこれの良い点を見つけ、徹底的に褒めてください。じゃあ一番前のあなた。」
!?
唐突な無茶ぶり。
新入社員の女の子一人をいきなり指名して、1万円札を褒めろと言う。
その子は、困惑しつつも
「す、すごいですね~・・お金があるから、私たち生活できるんですよね~」と、精一杯振り絞って一万円札を褒めていた。
ま、まあ誰でもそんな感じになるよね・・・。
続いて講師が「はい、いいですね。では、次は私が見本をお見せしましょう。」と言う。
講師が急に猫なで声になり、体をくねらせながら一万円札をさすり始める。
「いやぁ~。ありがたいなぁ~。君がいてくれると、気持ちがあったかくなるんだよぉ~。君が財布にいてくれるだけで、僕はすごく安心するんだよぉ~。いつもありがとうね~助かってるよ~。これからもよろしくね~。」
怖。
そしてキモっ。
いや、褒めるって意味では確かにまぁ上手く褒めてるけども。
でもなんか怖いよ。キモいよ。
え、ワシらも店頭でこんな風にお客さん褒めなきゃダメなん?
絶対無理なんだけど。
・・・そうして、2日間の研修が終わっての感想。
やべぇトコ来ちまった。
ちょっと長くなりそうなので、いったんここで区切りますね。