仮面ラヰダーYEBISU(仮)

先日みた夢。加筆修正あり。

 仮面ライダーYEBISU(仮)代官山五郎は改造人間である。悪の組織ビアショッカーの野望を阻むため日夜激しい戦いを繰り広げてる。これはその序章である。
「目が覚めたかね。代官山くん」
「ううう」
「もう大丈夫じゃ。脳改造される前に救出できてよかった」
「ううう。一体何が?」
「君は悪の組織メガショッカーに誘拐されて改造人間にされたんじゃ」
「何すか、その居酒屋のお得なドリンクみたいな名前の組織は」
「悪の秘密結社じゃ。最近は世界征服に加えて、数年前に立ち上げたフリマアプリが大人気で、先月はAIを利用したマッチングサービスをローンチしたところじゃ」
「うう。理解できません。で、ここは?」
「メガショッカーに対抗する非公然組織『フレンドリーモータース』じゃ」
「どう見てもバイク屋のガレージじゃないすか」
「そんなことよりスペック教えとくよ」
「軽いですね。まあ僕もあんまり深く考える方じゃないんでいいですけど」
「まずパンチ。かなり効く。そしてキック。すっげえ効く」
「古式ゆかしいですね。今時そこらのチンピラだって関節技くらい使いますよ」
「まあ聞け。最後に必殺技アトレ・クラッシュがある」
「商標的に不安を感じる名称ですが、期待できそうですね。どんな技?」
「相手の頭を掴んで駅ビルに叩きつけるという大技じゃ」
「は」
「西館用と東館用がある」
「ふざけてんの」
「ちゃんとウエストかイーストかを発声しないと発動せんからな」
「人の頭コンクリに叩きつけて何が発動すんだよ。警察沙汰か」
「この地に封じ込まれた地霊とかその他一式がドバッと吹き出るんじゃよ」
「急にオカルト?」
「そんなふわっとしたもんじゃない。身も蓋もないくらい物理的な効果がある。試算では半径2キロが廃墟に」
「そんなのやらせるつもりだったの」
「まあこれは最後の手段じゃ。パンチとキックで雑魚は大概なんとかなる」
「だから雑魚以上の時どうすんだよ」
「あと乗り物の話ししとくね」
「誤魔化すなよ」
「まあまあ。しっかり聞いとかないと苦労するよ。毎日のことだからね」
「博士口調と便利に使い分けてんな」
「愛車はこのヤマハPASじゃ(車両協力ヤマハ発動機)」
「本日二度目の、は?」
「おいおい、まさか自転車乗れないわけじゃあるまいの」
「そうじゃなくて」
「パワーモードにすれば坂道でもスイスイじゃぞ」
「じゃなくて、なんでオートバイじゃないんだよ」
「駅周辺は車両が入れないところも多いし、警官も多いんじゃ」
「正義の味方に交通法規関係ないだろ。昔は羽根つけて空飛ぶのまであったぞ。そもそも変身に合わせてガワが変わるバイクなんて車検通らねえって」
「今どきはの、正義の味方といえども遵法走行をしないわけにはいかないのじゃ。警察への通報はもちろん、ネットで刺されて炎上でもしてみろ。垢バンされでもされた日にゃ広告収入が、いやこっちの話」
「じゃあ事件が起きたらペダル漕いで駆けつけるのかよ、正義の味方のライダーが」
「大腿部周辺は特に念を入れて改造してあるから大丈夫じゃ。都内なら下手にタクシー使うよりよっぽど速い。ま上り坂は自身の重量があるんで多少苦労はするが自業自得じゃろ」
「自業自得がふさわしい人が目の前にいる気がするな」
「冷静に。あとこれベルトな」
「お。これはかっこいいじゃん」
「変身駆動モジュールと重力制御モジュールが入っておるから取扱は慎重にな」
「え。何。急にマジっぽくて嬉しいんだけど。あ、重い」
「単三電池が弾帯みたいになって4ダースほど入っとるからの。電池切れには気をつけること。飛んだり跳ねたりを繰り返してると5分と持たないよ。あと百均の電池は質が悪いので使わないこと」
「子供のラジコンみたいだな。せめて充電式とかにできなかったのかよ」
「文句を言うな。単三電池なら途中のコンビニでもかえる。兵站を考慮した設計じゃ」
「戦闘能力は考慮してないだろ」
「最後にこれ、コスチュームね。大胆にタイと釣竿をあしらってみました」
「えー」
「腰にはビクも。私物はこれに入れるといい」
「ないわ。今日一番ないわ。もうちょっとなんとかならないの?」
「新しいライダーってのは大体賛否あるもんじゃ。一ヶ月もしないうちに慣れてくる」
「そんなもんかな」
「そもそもライダーの正体は秘密なんだから関係ないじゃん」
「慰めるつもりでひどいこと言ってるよ」
「あとこれ敵の資料ね。アー写もあるから顔とか覚えといて」
「うわ。これベルサーチじゃねえ」
「リアルに悪そうじゃの。スタバで勧誘とかしてそうじゃ」
「なんで悪の組織の雑魚の制服の方がシュッとしてんだよ」
「仮想通貨とやらであぶく銭が入ったらしいんじゃ」
「うちらもなんとかなんないのかよ」
「最近は若者の自動二輪離れがすすんでの。うちも仕事はママチャリのパンク修理ばかりじゃ」
「ところで脳改造は本当にしなかったんだろうな」
「もちろんじゃ。ちょいと引っ込み思案を直した程度」
「人の前頭葉触ってんじゃねえぞ」
「ビアショッカーに改造されてみろ。瀕死のガン患者に特効薬と偽った片栗粉をグラム50万円で売りつけても、一日の終わりにはビールが美味い程度には割り切った倫理観に調整されるんじゃぞ‘」
「さっきメガショッカーって言ってなかった? いくら雑な設定とはいえ1シーンの間くらい守れよ。とそんなこと言ってる端から良い子の悲鳴が!」
「出動じゃ、代官山くん。東口駅前でティッシュ配りに化けてニセ遊戯王カードを大量にばらまいている集団がいる。ビアショッカーに違いない」
「それどっかの半グレじゃないのかな。えー。でも、とりあえず『とうっ!』」

という夢を見た。
あと九夜つづくかもしれない

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