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LGBTの歴史に見る欧米の傲慢さ

はじめに

近年、欧米を中心にLGBT(性的マイノリティ)の権利を尊重する機運が高まり、同性婚の合法化などの法整備が急速に進んでいます。一見すると、「欧米はLGBTをリードする進歩的な地域」というイメージを抱きがちですが、歴史を振り返ると必ずしもそう単純ではありません。
ここでは、日本と欧米におけるLGBT観の歴史をたどり、なぜ欧米が“傲慢”と批判されることがあるのかを考えてみます。


1. 江戸時代の日本:独自の寛容な性文化

武士階級の「衆道」と歌舞伎の女形

  • 衆道(しゅうどう): 武士の間で男性同士の親密な関係を重んじる慣習があり、必ずしも奇異なものとは見なされていなかったとされます。

  • 歌舞伎の女形: 都市部の娯楽として発展し、男女の役割を柔軟に演じる文化が存在しました。

江戸時代の日本は「性」をタブー視するよりも、一つの“人間関係”として受け止める風土があったようです。
社会の規範にもある程度の寛容さが見られ、いわゆる「同性愛」や多様な性表現が、少なくとも極端に弾圧されることはなかったと考えられています。


2. 同時期の欧米:キリスト教的価値観による抑圧

同性愛は「罪」や「異端」とみなされた

  • 多くの国で教会や法律によって厳しく罰せられた。

  • キリスト教が社会全体を支配していた時代であり、異性愛以外の性は公的にも私的にも排除されがちだった。

このころの欧米では、同性愛や性的多様性に対し厳しい処罰が科されるケースが少なくありませんでした。
「欧米がもともと進んでいた」わけでは決してなく、むしろ強い抑圧の歴史があったと見ることができます。


3. 明治時代:欧米の価値観が日本に持ち込まれる

欧米諸国との条約改正に向けた西洋化

  • 日本は「近代国家」として認められるため、キリスト教的な性道徳を導入。

  • 同性愛や多様な性のあり方を“野蛮”や“未開”とする見方が一気に広まった。

江戸時代の寛容な性文化は「後進的」とみなされ、日本国内でも急激に排除されました。
欧米が自国の価値観を“進んだもの”として押し付ける形で、日本は自らの伝統を否定する方向に進んでいったのです。


4. 19~20世紀の欧米:抑圧の歴史と変化

依然として厳しい罰則

  • 19世紀後半~20世紀前半にかけて、欧米では同性愛が犯罪扱いや精神疾患扱いを受けるケースが続きました。

  • イギリスでは「オスカー・ワイルド事件」のように、有名作家が同性愛を理由に投獄された例もあります。

人権運動の高まりと転機

  • 第二次世界大戦後、欧米でも人権意識が高まり、LGBTの権利を求める運動が活発化。

  • 1969年の「ストーンウォールの反乱」が大きな転機となり、徐々に法的・社会的な受容が進み始めました。

しかし、欧米がここまで来るのに長い時間を要しており、それまでの長い期間は同性愛をはじめとする性的マイノリティに対して厳しい抑圧が行われていました。


5. 現代:欧米の積極的なLGBT権利擁護と“傲慢”の指摘

急速な法整備

  • 最近では欧米諸国で同性婚が合法化され、LGBT差別禁止法などが整備されつつあります。

  • 政府やメディアが「人権先進国」として世界に発信し、他国に“モデル”としての価値観を押し付けることもあります。

傲慢さの背景

  • 自国で長年にわたりLGBTを迫害してきた歴史を深く反省する前に、「今の基準」が正しいとして他国に価値観を押し付けがち。

  • 日本に対しても「先進国なら同性婚を認めるべき」と圧力をかける一方、かつては日本の寛容な文化を“野蛮”として否定してきたという矛盾をはらんでいます。

たとえば「欧米式こそ人権を尊重している」という態度には、「自分たちの抑圧の歴史を棚に上げている」との批判が当てはまるわけです。


6. 現代の日本:過去の寛容さを思い出せるか

明治以降の状況

  • 西洋化政策により、江戸時代の性に対する柔軟な風土が失われ、同性愛がタブー視されるようになりました。

  • 現代でもLGBTに対する法整備が遅れており、社会的認知が限定的という課題があります。

欧米からのプレッシャー

  • 「グローバルスタンダードに合わせろ」という欧米の主張が高まるなか、「そもそも日本の文化や歴史はどうだったのか?」という視点が十分に尊重されていないという声もあります。


7. まとめ:欧米の傲慢さと日本が取り組むべきこと

欧米の傲慢さとは?

  • かつて日本の性文化を否定しておきながら、今度は自国のLGBT政策を「正義」として押し付ける。

  • 過去の抑圧を反省しきれていないまま、道徳的優位に立とうとする。

日本ができること

  1. 江戸時代の寛容さを再評価: 欧米の価値観を盲目的に採用する前に、自国にも多様な性を受け入れる伝統があったことを思い出す。

  2. 現代の人権感覚と調和: 欧米の法制度をそのままコピーするのではなく、日本がどのようにLGBTの権利を保障できるかを自主的に考える。

  3. 外圧に振り回されない: 歴史的背景や文化を踏まえながら、独自のペースで社会の合意を形成していく。

こうした流れを踏まえると、欧米が“今の基準”で他国を評価・批判する行為は、過去の自分たちの抑圧の歴史を軽んじているようにも映ります。
日本としては、もともとあった寛容な風土を生かしつつ、現代の人権意識と調和する道を探っていくことが大切なのではないでしょうか。


終わりに

欧米がLGBTの権利を保護するようになったのは、決して古くはありません。長い抑圧の歴史があったからこそ、現代の動きがあるとも言えます。
一方、江戸時代の日本には、すでに多様な性を受け入れる下地が存在していたという事実は、あまり語られてこなかったかもしれません。
欧米が形づくった現代の「人権基準」を鵜呑みにするだけではなく、日本自身の歴史や文化を再確認することも、今後のLGBTをめぐる議論には不可欠だと感じます。

本記事が、その一助になれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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