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新リース会計基準とは?~2027年から始まる新しいリース会計ルールをわかりやすく解説~
はじめに
2027年1月1日以後に始まる事業年度から、日本でも新リース会計基準が適用されることになりました。これにより、企業の財務諸表(貸借対照表や損益計算書など)におけるリース取引の扱いが大きく変わります。
「リースの処理ってどう変わるの?」
「何が“新しい”のか?」
本記事では、新リース会計基準の概要から企業への影響、そして会計用語の補足説明まで、できるだけかみ砕いて解説します。
1. 新リース会計基準とは?
1-1. 従来のリース会計との大きな違い
従来のリース会計では、リース取引を以下の2種類に区分していました。
ファイナンス・リース
「実質的に資産を購入したのと同じ」とみなされるリース。
オンバランス(後述)の対象となり、貸借対照表に計上される。
オペレーティング・リース
「資産を一時的に借りている」という性格が強いリース。
これまでは、オフバランス(後述)にできる場合が多く、貸借対照表に資産・負債を計上しないケースが多かった。
しかし、2027年から適用される新リース会計基準では、「ファイナンス・リース」「オペレーティング・リース」を問わず、原則的にリース取引をオンバランス処理(後述)するよう求められます。
用語解説:オンバランス vs オフバランス
オンバランス:貸借対照表(バランスシート)に資産や負債として計上すること。
オフバランス:貸借対照表に計上せず、メモのような形で注記(開示)するにとどめること。
2. 新リース会計基準のポイント
2-1. なぜオンバランス化が進むのか?
世界の会計基準(IFRSなど)の流れとして、「リースを使っている以上、経済的価値(使用できる権利)が企業にある。その負債(支払い義務)も含めて、財務諸表に反映すべき」という考え方が主流になっています。
これを受けて、日本の基準も**「貸借対照表にリース取引をほぼすべて反映しよう」**という方向へ変わるのです。
2-2. 使用権資産とリース負債
新リース会計基準では、リースによって使用している資産を**「使用権資産」と呼び、貸借対照表の資産側に計上します。同時に、リース料を支払う義務を「リース負債」**として負債側に計上します。
使用権資産:リース資産を一定期間使うことができる権利
リース負債:リース料の支払い義務
3. 企業の財務諸表に与える影響
3-1. 貸借対照表の資産・負債が増加
オペレーティング・リースであっても、オンバランス化されることで、企業の総資産と総負債が増えます。その結果、
自己資本比率:分母の総資産が増えるため、数値が下がる可能性あり。
総資産利益率(ROA):こちらも総資産が増える分、ROAが低下するケースが多い。
3-2. 損益計算書への影響
従来はリース料を月々の費用として計上していましたが、新基準では、
使用権資産の減価償却費
リース負債の利息費用
という2つに分けて費用処理を行う方法が一般的。会計上のタイミングや金額が変わることで、利益計上の時期が従来と変わることがあります。
3-3. 経営や資金調達への影響
借入金が増えるように見える
リース負債として計上されるため、金融機関との交渉などで与える印象が変わる可能性があります。リース契約の見直し
今後は「短期リース」や「変動リース料」を組み合わせる企業が増えるかもしれません。財務戦略や投資判断
貸借対照表にリース資産・負債が載ることで、他の設備投資や資金調達との兼ね合いを再検討する必要があります。
4. 新リース会計基準への対応策
4-1. 契約の洗い出しと区分
まずは、現在のリース契約をすべてリストアップし、新基準ではどう扱うべきかを検討しましょう。契約ごとにオペレーティング・リースか、ファイナンス・リースかなど、細かい区分が必要となります。
4-2. 影響分析とシミュレーション
財務指標への影響
自己資本比率やROA、流動比率など主要指標がどの程度変化するか、試算を行う。利益計画への影響
減価償却費とリース負債利息のタイミングを踏まえた上で、利益計画を修正する。
4-3. システムやプロセスの改修
新リース会計基準に対応するために、会計システムの設定変更やエクセル管理表の整備などが必要となります。月次・年次決算時の手順を整理し、担当者が混乱しないようにマニュアルを作成すると良いでしょう。
4-4. ステークホルダーへの説明
社内への周知:経営層や他部門に対し、リースのオンバランス化による財務諸表の変化を説明。
外部への報告:金融機関や取引先にも、新リース会計基準の影響で貸借対照表がどのように変化するのか、丁寧に伝えましょう。
5. 適用時期と今後の流れ
5-1. 適用開始:2027年1月1日以降
2027年1月1日以後に始まる事業年度から、この新しいリース会計基準が強制適用となります。企業によっては、早期適用が選択可能な場合もありますが、多くの企業は数年をかけて準備を進めることが想定されます。
5-2. 国際会計基準(IFRS)との関係
IFRS(国際会計基準)でもリース会計は大きく変わっており、日本の新リース会計基準はIFRSの流れを意識したものといえます。グローバルで事業を展開する企業ほど、海外基準との足並みを揃える意義が高いでしょう。
6. まとめ:早めの対策で混乱を回避しよう
新リース会計基準の導入により、これまでオフバランス(貸借対照表に載せなかった)リース取引がオンバランス(貸借対照表に計上)になり、企業の財務諸表に大きな変化が生じます。
資産・負債の増加で自己資本比率やROAなどの財務指標が変わる
損益計算書の費用配分も、リース料から減価償却費+利息費用という形に変わる
企業の経営戦略や契約形態にも影響を及ぼす可能性が高い
2027年の適用開始まで時間はありますが、早期の準備がとても大切です。リース契約の洗い出しや会計システムの見直しを進めることで、混乱を最小限に抑え、スムーズに新リース会計基準へ対応していきましょう。