歳時記を旅する 6 〔曼珠沙華〕後*曼珠沙華かつて一揆の果てし丘
磯村 光生
(平成十年作、『花扇』)
「彼岸花の花はどんなに咲こうがどれ一つとして実を結ぶものはない。球根の分球によってのみ増殖する。(略)畦道という畦道を埋め尽くすように咲くその花は、わざわざ人が植えたからであり、必ずしもねずみなどの害を防ぐ為ばかりではなかったであろう。」(『鎌倉 花の四季』磯村光生)
句の丘は、たとえ人里離れていても、かつてその地にも人間の営みがあったことを彼岸花が伝えている。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』令和二年九月号 「風の軌跡―重次俳句の系譜―」)