句集紹介 高﨑公久『青』
高﨑公久『青』
令和四年 文學の森
俳誌「蘭」は昭和四十六年の創刊。
作者は、平成二十八年より「屠蘇酌みて今年これより一誌負ふ」と主宰継承。
師系は「林火忌や潮流青を深めつつ」という大野林火。
福島県いわき市の出身で、野澤節子・きくちつねこに師事し、「牡丹供養赤炎青炎は二人の師」と須賀川で有名な牡丹供養を詠む。
東日本大震災の年次の句も収録されているが、「想いの十分の一も表現できていない句を載せるのに、忍びなかったから」と、相当数詠んだ原発の句をすべて省いたという。
郷土の句には、いわき市の念仏踊り「新仏の安穏願ひじゃんがら舞ふ」などがある。
本書は第三句集にあたり、平成二十二年から令和三年までの計三百一句を収録する。
題の「青」は、「私の精神の色であると同時に、体内を駆け巡る血の色でもあると思っている。」という。
「青が溢れて針葉樹林瞳に涼し」(勿来)
「大旦叩き染めなる藍匂ふ」(草津)
「走り根にも樹齢青葉の中尊寺」(平泉)
「百号の裸婦に青影夜の秋」(嬬恋)
「恬淡と沙羅落つ蒼き夕の音」(松島)
令和四年二月、「蘭」創刊五十周年の年の出版となる。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』令和四年六月号「句集紹介」)