チャッターアイランド vol.19

『チャッターアイランド』はDJ/プロデューサーのokadadaとDJ/ライターのshakkeがしゃべったことを記録する、という趣旨のテキスト&音声コンテンツです。毎月1回の配信を予定してます。

読書会はじめました


okadada
先週くらいにね、トマス・ピンチョンを読むっていう読書会をやって。
shakke オカダさんの家でね。経緯としては、最近オカダさんがとにかく本を読んでると。で、自分も本読みたいけどなかなか読めないよねって話をしてたんだよね。そのきっかけ作りと、みんなでひとつの作品を読むのってどんな感じなのかなっていう興味で読書会をやろうと。先月……それこそ前回のチャッターアイランドを録ったあとに話して。テーマというか、ひとつ題材を決めてやりましょうってなったんで、オレはピンチョンを読んでみたいと。いきなりハードル高いかもだけど、それくらいの劇薬をいかないといけないなって。
okadada それでピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』という中編を
shakke なんで『競売ナンバー〜』にしたんだっけ?
okadada オレがすでに読んでたっていう。あと、ほかのピンチョン作品に比べて短いっていうのもあったっすね。短編を除いたらいちばん短い。
shakke あとキャリア的にも初期のほうの作品だから、そこからはじめていろいろ派生できるかなというのもあり。その読書会をつい先週、オカダさんの家でやったと。
okadada 参加メンバーがFNMNLでライターやったりしてる山本くん……Aki Doranikovって名前でDJもやってますね。あとミツメの川辺素くんの4人でね。やってみてどうでした?
shakke いやぁ、ひさびさにしっかりした本を読んで、その達成感でまず“いいねぇ”って気持ちが。それを思えたのがまずよかったっすね。あと、最初はざっくり大掴みで読んでも、あとで4人とかで読み直しというか、改めてさらってみると、理解度が格段にちがうなというのがあったね。
okadada 4時間ぐらいやりましたね。
shakke 4時間もやったっけ。
okadada 録音してたんですけど、4時間ぐらいやってましたね。
shakke とりあえず章立てされてるから、その章ごとにバーっと……“ここはこういうことっすよね”みたいな感じで話していくんだよね。
okadada 読書会っていろんな進め方があると思うんですけど、まずは全体の感想から各々話して。そこから順番に気になったとこや気付いたことを話していくっていうのひたすら。
shakke けっこうミニマルではあったけど、4時間ぐらいかけないとわかんないことはあるなと思った。
okadada オレもやってよかったですね。これまでひとりでずっと読んでたんで。あと、何回も読むことってあんまりないじゃないですか、正直。『競売ナンバー〜』は2.5回ぐらい読んだんですけど……
shakke しかもオカダさんは旧訳と新訳の両方読んだんだっけ?
okadada 新訳も読んだけど、ちゃんとは読んでないです。ふわっと読んだくらい。
shakke あらすじはわかってるしね。
okadada 翻訳がちょっとちがったり、“ここ、こういう言い方するんや”みたいな。それくらいで、あんま細かくは読まなかったですけど。でも、やっぱりそうやって改めて精読していくと、ひとつひとつの文章が“なんでこんなふうに書くんやろ”みたいなこと考えられて、“これも、これも、これも!”みたいな感じでつながっていくっていう。
shakke そうね。しかもピンチョン作品が特にそういった含みだったり、文化的背景だったりが多層的だったりするから、精査して読むことで“こうなるんだ!”って思えやすいタイプの作家かもしれんね。
okadada すごかったですよ。読書会の前に3時間か4時間かけて半分くらいまで読み直したんすけど、“ああぁ!”みたいなのの連続でしたね。
shakke 最後まで読むと、最初のほうの表現がどうフリになってるかみたいなこともわかるし。
okadada ちょっとした表現でも後々のフリになってるような文章になってて。しかも、これ見よがしな伏線とかじゃなくて。
shakke ルビひとつとっても、最後まで読むとそういう意図でこのルビがあてられてるんだなってなる。
okadada ピンチョン、そりゃラノベとかに比べたら読みにくいかもしれんけど、そんなにでしょ?
shakke いや、ぜんぜん読める。っていうか、ざっくりストーリー大掴みして、その背景とかぐらいは容易に受け止められたかも。単純におもしろいと思ったよ。
okadada けっこうスラップスティックですからね。
shakke 普通に声出して笑うところとかあったもんなぁ。スプレー缶のくだりとかね。あそこはもうめちゃめちゃおもしろいじゃんね。だから、これ聴いてるひととかでピンチョンってハードル高いなと思ってるひとがいたら、ぜんぜん余裕だねって言いたい。
okadada ハハハハハ! めっちゃイキっとるやん! ピンチョンを1回通ってるからこそのイキり。
shakke そうそう。でもね、そこには明確に深い溝があるから。
okadada よくないけど、ある種のじゃれ合いとしてね、ありますよ。だから何回か前にオレ言ったでしょ。やっぱ『ドン・キホーテ』を読み通すっていうのはそういうくらい……“オレ、読んでっから”みたいな。
shakke ハハハ。“あぁ、きみたちまだ読んでないんだ?”みたいなね。
okadada 実際はまだまだ読んでない作品あるんやけど。
shakke でも、やっぱパブリックイメージとしてさ、難解な作家ではあるからね。

shakke とはいえ、難解な作家も読みはじめちゃえば読めちゃいはするからね。
okadada この話も前にしたと思うんすけど、だからってできないよねっていうこともあるっすからね。数学とかも“1ヶ月ぐらいやれば高校数学思いだせるでしょ”みたいに言われても、“いやいやいや、かんたんに言うなよ”ってなるじゃないですか。
shakke そもそもトライしづらいもんね。
okadada ドラクエばっかやらんとピアノの練習せいよ、みたいなね
shakke パッションの必要性よね、そこは。
okadada それとタイミングっすよね。結局、才能っていうのはそういうことなんやなと思いますよ。タイミングが来て、かつ、それをやる元気があって、やる環境に恵まれてないと。ひとりでやれるのに越したことはないかもしんないけど、まわりがそういう感じになんないとなかなかね。
shakke そう思ったら、自分はまわりにいい意味でも悪い意味でも流されやすいタイプなんで。だからこそできてることもたくさんあるんじゃないかなとも思ってて。
okadada わかる。自分も体に気をつけたり、ご飯に気をつけたりしてた時期はツイッターでリスト作ってましたもん。健康とかについて書いてるひとをフォローせずともリストで見たりして。で、そういうYouTubeも毎日見る。そうすることによって、それが普通な気がしてくるっていうか。だから、これは微妙な言い方だけど、“付き合う相手を考えろ”みたいことでもあるなとも思うっすね。
shakke そうね。セッティングを整えるために外堀埋めてくっていう作業は大事。
okadada よくも悪くも“朱に交われば赤くなる”みたいなことはありますから。まわりが音楽ばっか聴くヤツらやったら、音楽聴くのが普通だと思ってしまうけど、実際はそういうわけじゃないじゃないっすか。我々は音楽に携わるようなことが仕事だし、普通になってるけど、そうじゃないひとからしたら“なんでそんなに音楽聴いてるんですか”ってことになるっすよね。自分たちとしては普通なんですけどね。だから、環境やなと思うっていうか。
shakke だから、もしやりたいことがあって、まわりにいっしょにやってくれるひとがいたら、それはいいことだよね。読書会もみんなのLINEグループができて本腰が入った感じあるし。メールしたり、LINEすることによって、自分のなかにパッションを定着させられる、みたいな。それは方法のひとつとしてあるかもしれない。
okadada むかしのツイッターとかそんな感じだったっすもんね。いまだったらDiscordとかなのかもしれないっすけど。“身内”って大事やなとオレがずっと思ってるのはそこっすね。“身内ネタはよくない”って言われがちやけど、ある程度のとこまで身内って必要だと思うんすよね。醸造するための箱っていうか。
shakke ずっとその身内のなかで停滞してるのはよくないけど、スタートと助走って意味ではめっちゃ大事だと思いますね。
okadada 5人とか10人いれば充分だと思いますよ。だって、音楽のサブジャンルとかもだいたいそんなもんじゃないですか。核になるひとなんて5人ぐらいなもんで。そういうのをね、どんどんやっていきたいっすね。
shakke いろんなひとに手伝ってもらって。もう30代後半になって確実に腰も重くなってきてるんでね。

ワオワオ! 合宿免許 WAO!!


shakke
あ! オカダさん、最近さ、ファミリーマート行ってますか? 店内でかかってる『合宿免許WAO!!』のCM……。
okadada うん、あれね。
shakke 最近のやつ聞きました?
okadada いや、聞いてないっす。
shakke ヤバいんですよ。『合宿免許WAO!!』のコンビニCM、いま男性が(ナレーションを)やってるんですけど……本当よくない。
okadada なんなんすか。
shakke あのCMってさ、最初に“ワオワオ!”って言うでしょ? なんならあそこがいちばん聴かせどころじゃないっすか。
okadada フフフ……。
shakke (元気よく)“ワオワオ!”でしょ? 新しい男性のバージョンだと(すこしテンションを下げた声色で)“ワオワオ……”って感じで。……もっと力入れろよと。
okadada ハハハハハハ!
shakke “ワオワオ!”だろ!
okadada ハハハ。それ、だれがやってるんすか?
shakke だれなんだろ? ちょっと調べるわ。
okadada ごめん、全然フィールでけへん!
shakke ウソ!
okadada 別にええやん!
shakke いやいや、オレらが好きだった“ワオワオ!”があったじゃん!
okadada でんぱ組.incの……
shakke 最上もがさん。あの感じには遠く及ばないから。
okadada フフフ、ひさしぶりに思い出したわ……。もう4年ぐらい前でしょ?
shakke そうそう。オカダさんの前の家の近くのファミマ行ってよく聞いてたもんね。
okadada あのCMを聞き終わるまで店内にいましたからね。買い物が終わってても。
shakke そうなんだよ。
okadada あのCMのラストに最上もがさんが“ぼくも行きたかったなぁ!”って言うんすよね。あれが好きでねぇ。
shakke フフフフフ……
okadada ハハハハハハ!
shakke ハハハハハハ!
okadada 最上もがさんに関して好きも嫌いもなかったけど、あれだけ本当に好きでした。
shakke オレも大好きだったよ。
okadada いやいや! いいじゃないですか、“ワオワオ……”でもべつに。“カッコいい!”ってなるひともいるって。シャケちゃんがそんなに『合宿免許WAO!!』に対してこだわりがあるとは思わなかったですよ……。
shakke あ、いまの『合宿免許WAO!!』応援ボーイはそらるさんっていうひとらしい。歌い手さんで、まふまふさんとユニットやってたりするんだ。でもさ、パッと見た感じの印象、そこまでキャラクターとして最上さんと遠い感じもしないんだよね。ざっくり病み系でもあるような感じだし。
okadada それはわからんけど……。
shakke でも、だとしたら最上さんは元気に“ワオワオ!”ってやってたじゃないですか。そらるさんにも元気にやってもらいたかった……。
okadada というか、最上さん本人もなんも思ってないと思うわ。“そんな仕事あったっけ?”ってなもんですよ。
shakke でも、逆にオレらはでんぱ組inc.の熱狂的なファンではないけど、際立ってあのCMのファンだったじゃん。
okadada ハハハハハ! そんなこと言ってるのオレらだけやと思う!
shakke でもオカダさんも好きだったでしょ? やっぱそういうボーダーを越える力があのCMにはあったわけですよ。
okadada 日本で5人ぐらいだと思うなぁ、それを受け取ったの。
shakke そう考えると、いまのそらるさんの“ワオワオ”は力が足らないと思う……というか、そもそも流してると思う、あのCMを。
okadada ああ、仕事として。そうかなぁ……。
shakke そうだとしたら“ちゃんと聴いてるひといまっせ”って言いたいね。
okadada ファンがいるぞと。
shakke なんなら、そらるさんにも“ぼくも行きたかったなぁ!”って言ってもらいたいもんね。
okadada “ぼくも行きたかったなぁ!”は恒例じゃないから。
shakke そうだよね。最上さんの後任はえなこさんだったけど“ぼくも行きたかったなぁ!”は言ってなかった。
okadada いやぁ、どうでもいいっすね。ビックリするくらいどうでもいいわ。

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