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神ってる⁉
前回の記事で紹介しました、本居宣長の説いた神観念を念頭において、「神ってる」という言葉について考えてみたいと思います。
「神ってる」という言葉は2016年に流行語大賞に選ばれました。これは「神がかっている」の略語であり、まるで神が人に乗り移ったのかと思うような超人的な技能、常識では考えられないような状態であることを指します。
「神ってる」という言葉自体は今ではもう古くなってきていますが、神ゲー、神回、神演技、神対応といった、神○○という言葉は定着していると思います。大爆笑を取るお笑い芸人に対して「笑いの神が降りてきている」と言ったりもします。
神を人間に降ろして、神の意志を伺うことをシャーマニズムと言います。そして神を降ろす人のことをシャーマンと言います。日本神話でも神功皇后が神がかりにより、神意を述べるという話があります。古代社会ではシャーマンを通して神の意志を伺い、物事を決定していく政治形態でした。これを祭政一致と言います。
東北のイタコや沖縄のノロといった民間の霊媒師が日本には多く存在していました。つまり、民衆にとって神がかりは身近なものでしたが、明治以降は国家神道政策にとって邪魔な存在でした。
そこで明治政府はシャーマンたちが世の中を混乱させないように、民間の霊媒師の活動が規制するようになりました。日本は古来から、神がかりの文化が深く根付いている国でした。
「カミ」とは霊あるもの、威力あるもの、呪力あるものと、日本では古くから考えられてきました。北海道に住んでいたアイヌの文化では「カムイ」という言葉があります。カムイとは人間の力を超えているモノをいいます。例えば自然環境のように、太陽や空気、水や動植物があるから人間は生きていくことが出来ます。人間は自然環境ありきの存在で、これらが無いと存在しえないし、存続することが不可能です。よって自然環境はカムイです。
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他にも例を上げると、道具もカムイです。柄杓は水を漏らさずに汲み上げることが出来ます。手を使って水をすくい上げると水が指の隙間から漏れます。だから柄杓は人間の力を超える存在ですので、カムイと呼んでその力を讃えます。
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刃物や道具を使うことで調理をしたり、様々な物を作成することが出来ます。武器は人間や動物を殺傷することが出来ます。人間の力だけではできないことが、これらの道具を使用することでできるようになります。「カミ」を考える上でこの「カムイ」という言葉の持つ感覚はとても参考になるのではないかと思います。
神ゲー、神回、神演技、神対応といった「神○○」という言葉の使い方には、古来から我々日本人が培ってきたカミに対する感覚が表れているように思います。とても素晴らしいことに対し、神と称えることが日本人ならではの行動なのではないでしょうか。
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