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日本神話解説④ 天の岩戸神話は神社祭祀で再現されている
高天原での誓約(うけい)
父親であるイザナギから勘当されたスサノオは、母の国を訪ねていきたいとの思いを実現するために、
その事情を姉上に聞いてもらうために天上世界である高天原の天照大御神に会いに行きます。
しかし、粗暴な弟がやって来ることに対し、自分の国を侵略しにきたと勘違してしまったアマテラスは男性の格好に着替え、弓矢で武装して「何をしに来たの‼」とスサノオに問い詰めます。するとスサノオはそのいきさつを説明し、暇乞いに訪れただけだと弁明します。
弟を疑う姉は「ならば証を見せよ」といいます。「ならば互いに受誓約(うけい)をし、子を生もう」ということになり、潔白を証明するための姉弟の間で儀式が執り行われます。
両神は川を挟んで、互いの持ち物を出しあいます。アマテラスがはじめにスサノオの十拳剣(とつかのつるぎ)を三つに折り、それを噛み砕いて吹き出すと宗像三女神を生みます。次にスサノオがアマテラスの八尺の勾玉(やさかのまがたま)を噛み砕いて吹き出し五柱の男神を生みました。
福岡県宗像市に鎮座する宗像大社の宗像三女神は沖津宮(おきつぐう)、中津宮(なかつぐう)、 辺津宮(へつぐう)に宗像三女神は祀られていますが、この神話を物語るかのように沖津宮のある沖ノ島には剣の破片がおびただしく出土します。神話であった通り剣を砕く神事があったのではないかと考えられています。
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マツリゴトに関わるものには邪心のない,明朗で曇りなき心が重要であると古来より説かれてきました。これを「清き明き心(きよきあかきこころ)」といいます。まさにそれを象徴する受誓約(うけい)のような儀礼が古代において行われていたのでしょう。
アマテラスは互いの物から生まれた神をそれぞれの子としますが、スサノオは自分にやましい心がなかったから心優しい女神が生まれたのだと勝利を宣言します。
その勝った勢い余ってスサノオは暴走を始めます。まず田んぼの畦(あぜ)を破壊し溝を埋めて農耕を妨害し、神聖な儀式を行う御殿に糞を撒き散らしたりと、乱暴狼藉を働きます。弟を疑った罪の意識からか、アマテラスは弟を責めずにむしろ庇います。
しかし弟の狼藉はエスカレートしていき、ついには神様へ捧げる織物を織る建物に皮を剥いだ馬を投げ込み、女性が死亡してしまうという大事件を起こしてしまいます。
これにすっかり気が滅入ってしまったアマテラスは「天岩戸」という洞窟に引きこもってしまいます。
天岩戸の伝説と神社祭祀
弟のDVによって太陽神であるアマテラスが姿を隠してしまったために、天上と地上の世界が闇に包まれて様々な災いが起こります。事態を深刻に捉えた八百万の神々は天安河(あめのやすかわ)の河原に集まって会議をします。話し合いの結果、思金神(おもいかねのかみ)という神様が作戦を考えてお祭りを執り行うことになりました。
まず、たくさんのニワトリを集めて鳴き声を聞かせることにします。朝がきたと思って岩戸から出てくると考えたのでしょうか。次に神々に命じて榊の木を根からごっそりと採ってきて、玉や鏡、木綿(ゆう)と麻(あさ)で飾りつけをしました。
それを布刀玉命(ふとだまのみこと)が捧げ物として取りもち、天児屋命(あめのこやねのみこと)が祝詞を奏上し、力持ちの天手力男神(あめのたじからおのかみ)が天岩戸に脇に隠れて待機します。
お祭りもクライマックスとなり天宇受売命(あめのうずめのみこと)が桶を逆さまにしてその上で激しいダンスを踊り、トランス状態になりストリップをはじめたために、集まった神々は大笑いして大いに盛り上がります。
自分が引きこもっていて世界は闇に包まれているはずなのに、外が騒がしいと不審に思ったアマテラスは少し戸を開けて様子を尋ね、いくつかやりとりをすると、ある隙に力持ちの天手力男神が岩戸を開き、天照大御神を引き出します。そして岩戸の中に二度と中に入れないようにしめ縄を張りました。
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これが世にいう「天岩戸伝説」です。この神話の中に、現在の神社と祭祀に関わる重要なエッセンスが盛り込まれています。
朝を知らせるニワトリを飼う神社は多く、神鶏として大切に育てらてれますし、布刀玉命が捧げ持ったとされるものは真榊(まさかき)といいまして、多くの神社では御殿の中の扉の前の両側に置かれています。
天児屋命の祝詞は神主が上げる祝詞そのままです。天宇受売命のダンスは神々が楽しむ「神楽」であり芸能のはじまりでもあります。でもまさかトランス状態で一心不乱にストリップダンスがその始まりだったとは意外です。
アマテラスが岩戸を開いて自分の姿を見た鏡は向きでいえば反対ですが、多くの神社の神殿の扉の前に置かれています。
天手力男神の岩戸を開きですが、神社の大祭では祭典中に神殿の重たい御扉を宮司自らが開扉します。このようにして現在の神社では、「天岩戸神話」を永久的に再現・再演されるかのような形で祭祀が伝承されています。
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