努力が無駄になる人、報われる人
この世には「努力が無駄になる人」と「ちゃんと報われる人」がいます。
私は学習塾や英語のコンサルティングサービスを運営していますが、勉強の世界を見ていても「努力がなかなか結果につながらない人」と「努力がちゃんと結果につながる人」はハッキリとわかれます。
毎日眠い目をこすりながら何時間も勉強をしているのになかなか結果が出ない人がいる。一方で、仕事をやりながらスキマ時間で勉強して着実に結果を出していく人もいます。
努力が無駄になる人と報われる人、どこが違うのでしょうか?
長年いろんな人を見てきて「努力を無駄にしない人」「効率的に結果を出せる人」にはひとつの共通点があることに気づきました。
かならず「あること」をやっているのです。
今日はそのあたりのことをお話ししてみたいと思います。
努力が報われる人は「課題の解像度」が高い
努力が報われる人はどういう人なのか?
それは「何が自分の課題なのか?」をきちんと把握している人です。「課題の解像度」が高いのです。
一方、努力が報われない人は「何が自分の課題なのか」をぼんやりとしか把握していません。
この「課題の解像度」の違いが「努力が報われる人」と「報われない人」の違いです。
私は、課題の解像度を高めることを「イシューの精緻化」と呼んでいます。イシューは「課題」、精緻化は「細かい部分まで明確にする」という意味です。
課題を細かい部分まで明確にする「イシューの精緻化」ができているかどうかが、努力が無駄になるか報われるかの分かれ目になります。
努力を無駄にしない人は、かならず「イシューの精緻化」をやっている。
……と言われれてもわかりにくいと思うので、具体的な例で説明していきましょう。
お金がないとき、何から始めるべきか?
ある会社員が「お金がない」ことに悩んでいるとします。
ここで「生活を切り詰めよう」「ボーナスまで耐えよう」「がんばってたらいつか昇進するだろう」と思ってしまってはダメです。
それは「思考停止」と同じです。
本当にお金がないことに悩んでいるのなら「イシューの精緻化」を進めるべきです。課題を掘り下げていくのです。
「お金がない」という課題を突き詰めていくとどうなるでしょうか?
お金がないとき、まずは大きく2つの道があります。「支出を減らす」もしくは「収入を増やす」です。あたりまえですね。
多くの人は節約をして「支出を減らす」ことはわりと実践しているのですが「収入を増やす」ための方法は実践していなかったりします。
そこで「会社員が収入を増やすにはどうすればいいのか?」をさらに掘り下げていきます。すると昇進、転職、副業あたりが思い浮かぶでしょう。
ここで「昇進を待とうかな? いや、転職しようかな?」などと考えるだけでは意味がありません。さらにひとつひとつの戦略を掘り下げる必要があります。
まずは「昇進」についてさらに掘り下げていきます。
自分が昇進するためには何が足りないのか?
↓
営業の売上が足りない
↓
じゃあ、売上が大きい人と自分の差はどこにあるのか?
↓
そもそもの訪問数が足りない
↓
毎日の訪問数を3つ増やす
「イシューの精緻化」というのは、こうして問題点を深く深く掘り下げていくこと。すると根本的な問題が「具体的な行動」として浮かび上がってきます。
もうひとつ、「転職」のパターンも考えてみましょう。
いまは製造業で営業をやっている
↓
どうやらIT企業の給料は1.5倍ほどいいらしい
↓
業界を変えればスキルアップしなくても給料は上がりそう
↓
転職に応募しよう
となります。
「やるべき行動」のうち実現可能性が高いほうを選ぶ
さて昇進と転職、まずは2パターンで「イシューの精緻化」を行いました。
すると「訪問数を3つ増やす」と「転職に応募する」という、変えるべき行動がそれぞれ浮かび上がりました。
ここではじめて両者を比べるわけです。
もし「訪問数を変えるだけで売上が伸びて昇進できそうだな」と思うのなら昇進を目指したほうがいい。
一方「同じ仕事をしていても、別の業界に行くだけで評価が上がりそうだな」と思うのなら転職を選べばいい。
多くの人が「昇進と転職のどちらを選べばいいか?」という時点で立ち止まって考えてしまうのですが、そこで終わってはいけません。「訪問数を変えるのと、転職に応募すること。どちらがコスパがいいか?」と考えること。最終の行動どうしを比べることなのです。
解決すべきそもそもの問題は「お金がないこと」です。
よってどちらの行動を選ぶほうが成功確率が高いのかを考えればいいだけなのです。
勉強も「イシューの精緻化」でうまくいく
勉強を効率よくやるためにも「イシューの精緻化」は大切です。多くの人は「自分の問題点」を正確に把握できていません。
私たちのところには「英会話ができるようになりたいです」という人がたくさん来ます。いきなり英会話の練習をしようとする人もいますが、それではうまくいきません。
たしかに「英会話ができない」というのはイシューです。ただ、解像度が低すぎるのです。英会話にはざっくり言うだけでも次のようなプロセスがあります。
①相手の話を音として聞き取る
②文法的に処理する
③内容を理解する
④それに対する自分の意見を構築する
⑤英語で話す
もっと細かく言うこともできますが、だいたいこのくらいでしょう。
まずやるべきことは「このプロセスの中のどこに自分の課題があるのか」をピンポイントで見つけること。そしてさらに細かいユニットごとに課題を見つけて、それをつぶすソリューションを選ぶことです。
「自分は語彙力に問題があるな」「音の聞き取りに問題があるな」「文法処理のスピードとか、意味の理解のスピードに課題があるな」というように、それぞれの具体的な課題を見つけることが大切なのです。
「英会話の練習をする」というソリューションは、かなり英語を話せる人がさらに流暢に話すためにやることです。まだぜんぜん英語ができないのに、流暢に話すことを目指しても無駄な努力になってしまいます。
すでにソリューションは山ほどあります。ただ、正しいソリューションを選ぶことができていないのです。
そこさえクリアすれば勉強はグンと効率的になります。
「がんばればなんとかなる」という幻想
人生でも勉強でも「がんばればなんとかなる」と思っている人がたくさんいます。もちろんがんばることも大切なのですが、その前にきちんと「イシューの精緻化」をしなければ、無駄な努力で終わってしまう危険性があります。
キャリアに関しても同じです。
よく「会社にしがみついていればなんとかなる」と思っている人がいます。「やりたくない仕事だけど、がんばっていればいつかは報われる」と思っている人もいます。
それは幻想です。「報われない努力」で終わる危険があります。
少しだけ私の話をします。
私は大学卒業後、老舗のカメラ会社に就職しました。体育会系ゴリゴリの営業部に配属されました。
入社したのは2000年。ちょうどカメラがフィルムからデジタルにシフトしているときです。ただ会社からは「デジカメを売ると利幅がすごく減るからフィルムカメラを売ってくれ」と言われていました。
努力虚しく売上はどんどん落ちていき、営業所の人数も減らされていきました。一人あたりの担当エリアはどんどん広くなっていき、挙句の果てに他の会社に買収される話まで出てきました。
それでもまわりの同僚たちは「ここでがんばらなきゃ」と言っていました。「がんばっていたらいいことがあるはずだ」と。
……でも、どう考えてもないわけです。
もちろんすでに50、60代で、このまま大きい会社に買収されて、退職金も満額もらえるというのであれば「いいことがある」のかもしれません。しかし入社2、3年目の人で、そのままがんばって得することなんてかなり可能性は低い。そこに賭けるのはリスクだと思いました。
私は早々に転職を決断しました。
その後、塾の経営に乗り出し今ではおかげさまでうまくいっていますが、もしあのまま「がんばればなんとかなる」と会社に残り続けていたら今の自分はなかったでしょう。
大切なのは根性論で乗り切ろうとしないことです。まわりの空気に流されないことです。いったん冷静になって「イシューの精緻化」をしてみる。すると自ずと答えは見えてくるはずです。
心理的バイアスに気をつけろ
人は現状維持のほうがラクですし、安心感を覚えます。
カメラ会社の例でも、残り続けた人は「現状維持のほうがリスクが少ない」と判断したのかもしれません。
しかしそれはただの「心理的なバイアス(偏り)」です。ここに気をつけなくてはいけません。
キャリアを考えるとき、多くの人は「転職よりも昇進のほうが現実的だ」と思いがちです。でもこれは心理的なバイアスです。
こう思ってしまうのは「同じ会社に長くいるほうが信用があるよ」とか「3年間は働かないとダメだよね」などと思い込まされてきたからです。
そんなバイアスに騙されてはいけません。
仮に製造業からIT業界に移ったとしても「この人は3年経たずに辞めてるから信用できない」などと思う人の割合はすごく低いでしょう。
実際には制約じゃないことを制約だと思っていることはよくあります。そこをできるだけフラットに見ること。そのためにも「イシューの精緻化」をして本当にやるべきことをあぶり出すべきなのです。
あなたが本当にやりたいことはなに?
ここまで「イシューの精緻化」の話をしてきました。
「お金がない」「英会話ができない」などの問題があるなら、それをどんどん深堀りしていって、本当の問題点を見つけ出すこと。あとは、その問題点をつぶすソリューションを実行するだけで万事解決というわけです。
さて、ここからさらに重要なことを言います。もうちょっとだけお付き合いください。
そもそもそのイシューを解決したところでしあわせになれるのか?? という話です。
多くの人は自分で「人生のゴール」を設定していると思っています。でも私から見ると、自分でゴールを設定できている人はほとんどいません。
「何を言っているんだ。そんなことはない。自分で目標は立ててきたぞ!」という反論も聞こえてきそうです。
本当にそうでしょうか……?
たとえば「いい学校に入っていい会社に入る」という目標があります。これは本当に自分で設定したものでしょうか? 学校の先生や親に言われて押し付けられたものではないでしょうか?
「医者になってお金持ちになる」「英語を使いこなして世界で活躍する」。これだって、自分で本当に設定したものでしょうか? 世間のイメージに引っ張られていないでしょうか?
多くの人は、いつのまにか「ゴール設定」を人に委ねてしまっています。このゴール設定を人に委ねてしまうと、どんなに努力しても、どんなにがんばってもしあわせになれません。
でも、そういう人はけっこう多いのです。
もちろん世間的に「しあわせ」とされることが、自分にとっても「しあわせ」ということはあります。それなら問題はありません。
お金がたくさん入ってきたらしあわせ。いい会社に入ってちゃんと昇進できればしあわせ。それなら問題はない。
でも、自分が思う「しあわせ」が世間とズレていたときに、ちゃんと自分のしあわせのほうを優先できる人は多くありません。
「それが本当に自分にとってのしあわせなのか?」ということをギリギリまで考えることが大切だと思うのです。
「自分は何がしたいのか」をギリギリまで考える
私は子どものころから「本当は何がしたいのか?」「自分にとってのしあわせはなにか?」をギリギリまで考えていました。
まわりから見るとちょっと変わった子どもだったと思います。
たとえば小学校1年生のとき、私は「子ども会」を退会しました。
子ども会というのは公民館などに集まってみんなでレクリエーションをする会です。弟は楽しく通っていたのですが、私はぜんぜん楽しいとは思えなかった。
「ぼくは子ども会に行きたいのだろうか?」「自分のしあわせは子ども会に行くことではなく家で遊んでいることではないか?」 そう思ったので子ども会をやめたのです。
フォークダンスを踊るのも意味がわかりませんでした。「どのタイミングでどういうふうに手足を動かすかは自分で決めたい」と思っていました。なので参加しませんでした。
自分が本当にやりたいことを見つける。自分にとってのしあわせを追究する。そのマインドは子どものころから変わっていません。
イチローにならなくても同じくらいの幸福感は得られる
自分の本当のゴール、目指すべき場所がわかっていれば、最適な戦略をとることができます。
たとえばイチローの活躍を見て「うらやましいな」と思ったとします。「カッコいいし、足も速いし、スゴイな」と思ったとする。
ただ、うらやましいからといってイチローを目指して野球を始めるのは愚策でしょう。もちろんあなたがまだ少年で運動神経が抜群なら野球を始める意味はあるのかもしれません。でもすでに大人になっていて「これからイチローを目指す」のはかなり難しい。
ここで立ち止まって「なぜイチローをうらやましく思ったのか?」と考えてみるわけです。するとこんな考えにたどり着いたりします。
イチローがうらやましいと思ったのは「野球がうまいから」ではなく「たくさん稼いでいるから」ではないか?
自分の「本当のゴール」を考えてみると野球のプロになることではなく、イチローのようにたくさん稼ぐことだと気づくわけです。
当然「イチローのようにたくさん稼ぐ」といっても、何千万ドルも稼ぐことはできません。そもそも市場が違いますしビジネスの仕組みが違います。
ただ、イチローと「同じ額」を稼ぐことはできなくても、イチローと同じくらいの「幸福度」に到達することは可能かもしれません。ふつうの人にとっては何千万ドルも稼がなくても、年収1千万円くらいあれば、イチローと同じくらいの幸福度を得ることはできるはずです。(もちろんイチローの幸福度がどれくらいかはわからないですが。)
「自分の本当のゴールはどこにあるのだろう?」と考えれば、誰かに変な嫉妬心を抱いたり「うらやましい」などと思うこともなくなるはずです。
解決法は意外とシンプルだ
最後にもうひとつお伝えしておきたいのが「解決法は自分で見つけるものではない」ということです。
多くの人は解決法は「自分で見つけるもの」だと思っています。人生を歩んでいく中で「自ら探していくもの」だと思っています。
しかしうまくいっている人は「自分で答えを見つけよう」なんて思っていません。なぜならすでに答えはあるからです。
多くの先人たちがベストアンサーを導きだしています。それをただ実行すればいいだけなのです。人生にレシピはある。なのに、みんなレシピを自分でつくろうとしているのです。
私は東大に受かる人を何人も見ていますが、彼ら彼女らはたいてい一般的な勉強法に忠実です。トリッキーな勉強法に飛びついたりはしません。だから合格する。すごくシンプルな話です。
スポーツの世界でも「スポーツ科学」の研究は進んでいます。そこで判明したセオリーどおりにやったほうがチームは強くなるはずです。なのに、強くないチームほど独自の方法を試してうまくいかなかったりします。
私は悩んだら本を読みます。それも長く読みつがれた名著です。たとえば人間関係に悩んだら、デール・カーネギーとかアルフレッド・アドラーとか、その分野の決定版を読む。そうすればたいていなんとかなります。
うまくいかない人ほど、自分で解決法を編み出そうとする。長い時間考えたり、友だちに相談したりするから、ややこしくなるのです。
友だちよりもアドラーのほうが人間関係に関しては詳しいはずです。せっかく人類が長い時間をかけて積み上げてきた英知があるのに、自分で生み出そうとするのは「無駄な努力」です。
人生は一度きりだからこそ
私が塾を経営したり英語学習のコンサルティングビジネスをやったりしている理由は2つあります。
ひとつは、成績をあげてよろこんでもらうこと。
もうひとつは、この世界から「報われない努力」というものを減らしたいからです。
実は私は、根っからの「めんどくさがり」です。 子どもの頃から本当にやりたいことを突き詰めてきた話をしましたが、それも自分が「めんどくさがりだから」というところに起因しています。
自分がそういう性格なので「努力できる人」のことをすごく尊敬しています。目の前のことにがんばって取り組み、何かを成し遂げようと汗を流す。そういう人を私は素直に「すごいな」と思います。
だからおせっかいかもしれないですが、その努力を無駄にしてほしくないと思うのです。せっかく努力するのであれば、きちんと結果を出し、成果に結びつけてほしい。
そこで「めんどくさがり」な私が身につけてきた戦略の手法をお伝えすることで、多くの人の努力が報われてほしいのです。
戦略を考えて「報われる努力」ができるようになると、仕事も勉強も効率的になります。効率的になると人生の自由な時間が増えます。
そして、その自由な時間で自分の好きなことをやってほしいと思うのです。私はぼーっと空を眺めたり、頭をからっぽにして散歩をしたり、ベッドでYouTubeをダラダラ見て過ごすのが好きです。
そういう時間が取れているのも、私が戦略を考えて効率的に時間を使ってきたからなのかもしれません。
人生は一度きりです。そして人生の時間には限りがあります。
戦略を立て、報われる努力をして、自由な時間で好きなことをしてほしい。偉そうに聞こえたらもうしわけないのですが、私はそう願っています。
*
【英語を学びたいとお考えのあなたへ】
最後に少しだけお知らせをさせてください。私は「イングリッシュカンパニー」という英語学習のコンサルティングサービスをやっています。
現在、1週間であなたの「真の課題」を見つけ、戦略を立てさせていただくサービスを実施中です。英語学習を始めるにあたっての「イシューの精緻化」をさせていただくものです。
「今年こそ英語を身につけたい!」と思ったら無駄な努力をしないためにも、まずは一度プロのコンサルタントと戦略を立てるところから始めてみることをオススメします。