OPSの改善案
OPSとは出塁率に長打率(塁打数÷打数)を足した数値で、近年非常に重視されている指標である。確かにOPSが高い選手は軒並み最強打者の印象が強い。
最近では、OPSが高い=良いバッターという認識が広がっており、データ好きの野球ファンの間では、打率やHR数よりもOPSが重視されている印象がある。
OPSが高い=良いバッターという認識は正しいのか。OPSに関するデータをいくつか集めてみた。
過去5年のOPS12球団トップの打者
2022年 村上宗隆 1.168
2021年 鈴木誠也 1.072
2020年 柳田悠岐 1.071
2019年 鈴木誠也 1.018
2018年 丸佳浩 1.096
出典:ベースボールラボ
通算OPSトップ5(通算4000打数以上)
1位 1.07999 王貞治(1959-1980)
2位 .99566 松井秀喜(1993-2002)
3位 .99041 A.カブレラ(2001-2012)
4位 .98651 落合博満(1979-1998)
5位 .96047 柳田悠岐(2011-)
歴代シーズンOPSトップ5
1位 1.29461 王貞治(1974)
2位 1.25827 王貞治(1973)
3位 1.25763 R.バース(1986)※三冠王、シーズン打率最高記録の.389
4位 1.24368 落合博満(1985)※三冠王、
5位 1.23425 W.バレンティン(2013)※シーズン本塁打記録の60本塁打
出典:日本プロ野球記録(※は独自で補足)
上記のランキングにあがっている打者は皆「手がつけられない超強打者」に相応しい打者ばかりである。また、MLBでは7/31現在、大谷翔平がOPS1.083とMLBトップの成績を残している。余談だが、大谷は現時点で出塁率と被打率がリーグトップであるため、「リーグで最もアウトにならない打者」と「リーグで最もヒットを打たれない投手」が同一人物という信じられない状態となっている。やはり、OPSは打者の評価指標として非常に優れていることは間違いないようだ。
しかし、OPS至上主義だと評価されないタイプの選手がいる。それは1番打者を務めることが多い安打製造機タイプである。例えばイチローのMLB通算OPSは.757と強打者と呼べる値ではない。つまり、OPSを上げるには長打を打つことが絶対条件となっているのが現状で、OPSという評価指標においてイチロータイプの打者は正当な評価が得られない。私はこれがOPSの問題点だと考えている。
そこで、イチロータイプの打者が正当に評価されるために、新しいOPSの計算方法を提案したい。
それは、長打率の計算に盗塁数を加味することである。
長打率は塁打数÷打数で計算されているが、これを(塁打数+盗塁数)÷打数で求める方法を提案したい。
2001年(MLB1年目)のイチローを例にあげて計算してみる。
この年のイチローの成績は、単打192、二塁打34、三塁打8、本塁打8なので塁打数は316(192+34×2+8×3+8×4)で、長打率は.457(316÷打数(692))であった。そして出塁率が.381なのでOPSは.838であった。
これに盗塁を加味すると
316(塁打数)+56(盗塁数)=372なので、
盗塁を加味した長打率=372÷692(打数)=.538
つまり、OPS=.538+.381=.919となる。
このように、盗塁を加味した長打率を使うことで、イチロータイプの特徴である走力を加味して評価できるため、OPSはより正確に打者を総合的に評価できる指標となる。
また、MLBでは2023年から、牽制回数制限、ベースの拡大によって、盗塁数は激増しているため、「盗塁ができる選手」の価値はより上がっていくことが予想される。そこで、打者の総合的評価指標であるOPSに盗塁数を加味することで、より選手の評価にOPSが有用な指標となるだろう。