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夫婦ゲンカしたので、夫に仕返しした。

夫婦ゲンカをした。

この日のケンカの原因は、寝ている夫を起こしたこと。

私たち夫婦は、
とてもじゃないがうまくいっている夫婦とは言えない。
しかし、部屋数的に同じ寝室で寝ている。

同じ寝室で、家族5人。
シングルベッド2つと、2段ベッド。
シングルを2つくっつけて、
その横の2段ベッドには長男・長女。
夫と私の間には末っ子を挟んでいる。


その日の夜中、
私は凍えて目を覚ました。

寝ぼけていたので、
あれ?私、雪山に置いてかれたんか?
そう思った。

寝る前にエアコンを
"健康冷房"にして寝たはずなのに
"設定温度24℃の強風"になっていた。

またか、やられた。

特に二段ベッドの上の段は
直で風がくるため、
長男は相当寒いはず。

慌てて冷房を止め、ふと見ると
私と末っ子が布団を掛けていないことに気付く。

末っ子が凍える!
そう思い急いで布団を探すも、なかなか見つからない。

横を見ると、
ぬくぬくと布団にくるまり安眠中の夫。
そして、その安らかな顔面の下に
私と末っ子が掛けていた布団。

みつけたー!!!

末っ子の体が冷えていたので
これはまずいと思い、
頭の下からゆっくり抜き取る。

しかし、布団にはある程度の厚みがあるため、
夫の頭がガクンと揺れてしまう。
ま、まずい…

夫はビクッとして目を覚まし
「はあ!????????」
と、みるみるうちに怒りゲージがMAXになった。

「ご、ごめん。お布団なくて、寒くて」
「はあ???????」
「ごめん、ゆっくり抜いたんだけど」
「目が覚めたんだけど!はあ!」

そこから夫の不機嫌はおさまらず、
布団の横で舌打ちと溜め息を繰り返す。

もともと声の大きい夫の溜め息は
トトロ並みに響く。

怒りで興奮したのか、
トイレに行ったりリビングに行ったりしながら
ブツブツ文句を言っている。

子どもたちがその声で起きてしまわないか
ヒヤヒヤしながら朝を迎えた。


翌朝も夫の機嫌は直っておらず、
子どもに何か話しかけられても
「お父さんは、知らん!」
の一点張り。

完全に不貞腐れていた。

たしかに
疲れて寝ているところを起こされたら
イヤだよなあと思いつつ、

少し時間が経つにつれて
私もジワジワ腹が立ってきた。

いや、そもそもなんで
私と末っ子の布団を枕がわりにしてるん?
寒かったら取り返すやん?


私は、仕返しすることにした。

夫の帰り時間はいつも分からないので、
玄関の鍵を開ける音で帰宅を判断する。

夫が帰ってきた、と思った瞬間、
電気を消したリビングへ小走りで行き、
ソファに寝転ぶ。

涅槃像のようなスタイルで待機し、
顔の横には画面を光らせたスマホを置く。

自分の顔をライトアップさせるためだ。

ミヤンマーの涅槃像

夫がリビングに入ってくる。
耳にはイヤホン。
楽しく落語でも聴きながら帰ってきたのだろう。

その夫を、リビングのソファから
涅槃像スタイルのまま、ひたすら真顔で見つめる。

はじめは私の存在に気付かなかった夫だが、
「え?」という顔で
おそるおそる近付いてきた。

その姿を、
目をかっぴらいたまま、真顔で見つめる。

真横あたりまで来たとき、
私はやっと、眼球を動かす。

目を大きく見開き、
まばたきもせず、
ゆっくりと。

「え、ええ?なに、なんなの?」

夫のその動揺にも反応せず、
ただただ無言で夫の顔を見つめ、
そして、精一杯の気持ち悪い顔で
二ヤーっと微笑みを浮かべる。

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

彼は大の怖がりなので、
私が何かに取り憑かれたのだと思ったらしい。


大歓喜。

これでもう
怖くて私から布団を奪えないだろう。
私は勝負に勝ったのだ。


普段は仕返しなどしないし
何か言われても言い返したりしないのだが
(面倒臭いから)

この件で「仕返し」に少し快感をおぼえてしまった自分がいる。


次なにかあったら、何をしよう。
そんなことを考えてしまう。

お風呂場で『リング』の貞子風に待機していようか。
それとも『ストレンジャーシングス』のデモゴルゴンのコスプレをしたまま布団に入ってようか。


ワクワクする。
楽しみがまたひとつ増えた。
ありがとう、夫。






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