ICFコア・コンピテンシー6:積極的傾聴【英語動画まとめ】
こんにちは。英語資料翻訳シリーズ第7弾です。
国内で活躍するコーチ、コーチングをビジネスや生活に生かしたい方に向けて、英語の資料(論文、ブックレビュー、インタビュー、ウェビナーなど)を翻訳 / 要約し、日本語で掲載していきます。
今回も、ICFコア・コンピテンシーの解説動画の翻訳 / 要約をしていきます。今回は、6つ目のコア・コンピテンシー「信頼と安全を育む」です。
全8回の解説動画は、こちらから視聴できます。
ICFコア・コンピテンシーとは、ICFが定めたプロコーチの能力水準の記述のことで、公式サイトによると、以下のように説明されています。
ICFの認定資格(ACC, PCC, MCC)を取得するためには、コア・コンピテンシーと倫理規定についての180分のテストを実施しないといけないほか、プロコーチとして活動する上で考え方の基盤となる、必要不可欠なものです。
目次
動画について
今回は同シリーズの6回目、ノースカロライナのセキーナ・ゴードン-ジョーンズ氏(MCC)の解説による"積極的傾聴 Listens Actively"です。
今回のインタビューはわかりやすくて面白かったです!積極的傾聴とパワフルクエスチョンとの関係、クライアントのために聴くことなど、コーチングの実践に生きてくるポイントがたくさん出てきます。
以下、インタビュアーの質問と、ゴードン-ジョーンズ氏の回答を要約してQA形式でまとめます。
逐語訳ではありませんので、全体をご覧になりたい方は、youtubeの自動生成翻訳で確認してみてください。
概要
Q:このコンピテンシーはどのようなものですか?
クライアントの話を聞くこと、そしてクライアントに話を聞いてもらえていると感じてもらうことは、コーチにとって不可欠な能力の一つです。なぜなら、コーチがクライアントの話を聞かなければ、クライアントの前進を促すことは不可能だからです。積極的傾聴は、コーチのために聴くのではなく、クライアントが自分自身の声を聴くことを援助するための振る舞いだということができます。
Q:改訂前後の違いはどのようなものですか?
コア・コンピテンシーの改訂によって、それぞれのコンピテンシーは名詞ではなく、動詞で書かれるようになりました。今回のコンピテンシーは改訂前「アクティブリスニング(Active Listening)」という項目で、コーチが「すること」を表す名詞でした。
改訂版は動詞から始まるようになり(Listens Actively)、この項目は、コーチの「あり方」と「振る舞い」を表すようになりました。この小さな変更の意味することは、コーチはパートナーとして場に関わるものだということです。コーチがコーチングの関係性に持ち込むのは、言葉で、身体で、あるいはもっと深いところから伝わってくることを完全に聞き取る能力であり、それをセッションで扱う能力なのです。
良い実践
Q:メンターコーチの視点から、良い実践では何が観察できますか?
クライアントにどれだけチューニングを合わせているかということだと思います。
メンター・コーチが耳を傾けることのひとつは、コーチがクライアントから出てくるものにどう対応しているかことです。
これがうまくできていないコーチは、「次の事柄に移るために、戦術的に話を聞くぞ!」とか、「クライアントを動かすために話を聞いているぞ!」という意識状態になってしまいます。
一方、これが本当にうまくできているとき、コーチはクライアントとただその場に共にいて、共有されることのニュアンスを聞き取っていきます。
コーチはクライアントの口から出てくるものと、自分に起きていることに関連性を見出し、言葉だけでなく関係性の全てに耳を傾けているのです。個々のクライアントに合わせたチューニングによって、こうした気付きが生まれるのです。
改訂版コア・コンピテンシーでは、「クライアントの状況を考慮する」という新しい要素が入っていますが、これは、コーチ自身の視点でなく、クライアントの視点に立って、本当に共感的に話を聞くということです。つまり、共有される経験を自分の視点を通して聴くのではなく、クライアントの視点を通して聴き、クライアントがそれに気づけるよう配慮するのです。
悪い例
Q:具体的にはメンターコーチングでどのようなことを聞いているのでしょう?いい例や悪い例などは?
メンターコーチングでは、コーチが何に気づき、何を観察し、それをどのようにクライアントに返しているかに着目します。
クライアントが伝えることがなんであれ、コーチにできるようになってほしいのは、クライアントの思考を掻き回すような形で聞くことなのです。
例えば、クライアントが「私は昇進のチャンスにとてもワクワクしている」と言いながら、言葉以外に聞こえてくることが一致しない場合。もしコーチが積極的に耳を傾けて、気づきが生まれる余白を持っていれば、「ワクワクしていると言っていますが、あなたの体はその興奮に反応していないようですね。それについてどう思いますか?」という問いを立てることができます。これによって、クライアントは自分の中の何かに気づくことができます。
つまり、言葉にされていることと言葉にされていないことの両方に気づくのが重要なのです。クライアントが自分自身に気づけるはずのチャンスを逃すのは、メンターコーチとしては見たくないものですね。
もう一つ例を出しましょう。例えばクライアントがそわそわしているのに気づいたとします。貧乏ゆすりをしたり、強いエネルギーをこめて「大したことではないのですが」というように話し始めたとしましょう。内容とは裏腹に、その声はとても興奮し、体は緊張しています。これらはすべて、クライアントに気づきを促すための重要なことです。
仕草だけなく、発言の矛盾にも現れるかもしれません。例えば、「私は本当にいい起業家になれると思う。15年間も考え続けているんです」などと発言する場合は、私だったら、「15年間考えてきたこと、ワクワクしているけど行動していないこと、この二つにどんな関係があるのか教えてください」とか、「15年間もこのことを考え続けているってどんな感じなんですか?何が足かせになっているんですか?」などと聞きますね。
このように、コーチが積極的に耳を傾けることができた場合にのみ、コーチから湧き上がってくる問いというのがあります。傾聴によって、そこで何が本当に伝えられているのかを拾い上げ、言葉だけでなく言葉以外のシグナルもすべて認め、探ることができるからです。
積極的傾聴の姿勢を貫くことでしか得られない気づきのチャンスがあり、これこそが、コーチがもたらすギフトなのです。神聖と呼べるレベルまでクライアントに集中することで、脳をフル活用してクライアントの声を聞くことができるのです。
パワフル・クエスチョン
Q:改訂前はパワフル・クエスチョンという項目がありましたが、お話をきいていると、積極的傾聴は、パワフル・クエスチョンにも関係がありそうですね。これについて教えてください。
パワフル・クエスチョンもコーチに期待することの一つですね。
傾聴しているとき、コーチはそれを何らかの形でクライアントの発言を反映していることになります。それは発言をそのまま繰り返すことかもしれないし、要約や言い換えという形かもしれません。しかし、クライアントに気づきを促すための問いも、一つの反映の形なのです。クライアントが提示したものに対する直接的な反応として、問いが生まれるということが、往々にしてあります。
まとめ+感想
今回の動画をまとめていて僕が考えたことは2つあります。
1つ目は、改訂前と改定後のこの項目の翻訳について。改訂前は、"Active Listening"で、改定後は、"Listens Actively"となっているのですが、インタビューでもあったように、改訂前は名詞で、改定後は、動詞のフレーズになっています。日本語訳では、両方とも「積極的傾聴」となっているのですが、原文で品詞が違うのは結構インパクトがあります。動詞のフレーズになったということは、今回の改訂によって、コンピテンシーはすべてコーチの行動、あり方に視点が移ったということです。より能動的にコーチとして振る舞うという姿勢が反映されているのかなと思います。日本語訳だけを見ているとわからないニュアンスなので、頭の隅に入れておきたいと思いました。
次に、全体の感想として、積極的傾聴でいうところの聴く行為とは、コーチのために聴くのではなく、クライアントのために聴くということであると感じました。コーチは、自分という存在をクライアントのために差し出して、その耳や心、身体感覚や思考というリソースを、クライアントのために聴くことに使っていくのだなあと。その反応としてコーチから生み出される質問も、コーチの理解のための質問ではなく、クライアントが自分の声をより鮮明に聴くためのものであり、そういう問いかけを、パワフル・クエスチョンと呼ぶのかなと考えました。
だから「コーチは鏡である」っていうふうにいうんですね。エゴを手放してただただ耳を傾けて反応する存在。クライアントの目線から観察して、自然に反応や問いを投げる関わり方。セッションの中で意識したいことがたくさん湧いてきています。
みなさんの感想もぜひ、コメントやツイートで教えてくださいね。
コア・コンピテンシーシリーズ、残すところ残り2つです。倫理規定シリーズも読んでみたいというリクエストがあったので、しばらくICFシリーズで続けてみるのもいいかもですね。
*あくまで個人的な活動のため、内容に関してお気づきの点、ご指摘などありましたら、お知らせください🙇♂️