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星野源『創造』について

 2021年2月17日、星野源の新曲『創造』がリリースされた。

 「スーパーマリオブラザーズの35周年記念テーマソング」というお題に対して、星野源は任天堂にリスペクトを捧げた楽曲を制作した。これがなかなか楽しくてヤバい。リリースされてから1日も経たないうちに何度もリピートしているが、飛び跳ねるようなサウンドが楽しくて、自然と身体が動いてしまう。スターを手にしてキラキラ輝くスーパーマリオがBダッシュを続けているような無敵感がこの曲全体に通底している。
 自分はあまりゲームをやらない人間なのだが、そんな自分でもプレイしたことがあるスーパーマリオのゲームで聞き覚えのある音やメロディがこの『創造』にはサンプリングされている。そうした音たちがこの曲から聴こえてくるのはシンプルに楽しいし、まだまだ気づけていない小ネタが隠されている気もする。

 この『創造』という曲では、スーパーマリオや任天堂に対するリスペクトに溢れていながら、星野源のパーソナルな実体験なんかも混ざり合い、「ものづくり」にまつわる思想が歌われている。

 「僕は生まれ変わった 幾度目の始まりは 澱むこの世界で 遊ぶためにある」
 「死の淵から帰った 生かされたこの意味は 命と共に 遊ぶことにある」
 これらの歌詞は、ミスして脱落してもまた復活して走り出すマリオのイメージを連想させるし、2013年にくも膜下出血によって実際に生死の境を彷徨った星野源自身の経験にも重なる。2018年にリリースしたアルバム『POP VIRUS』のプロモーションの際には「曲の歌詞に私的なエピソードは入れていない」という趣旨の発言をしていた星野源が、今回は歌詞に実体験を直接に繋げたことに驚いた。

 この曲の中で繰り返される「何か創り出そうぜ 非常識の提案 誰もいない場所から 直接に 独(いち)を創り出そうぜ そうさ YELLOW MAGIC 色褪せぬ 遊びを繰り返して」という歌詞は、創作活動のスタート地点は孤独なものだし、別に異端であってもいいし、周囲に理解されなくてもいいし、創作を続けることそれ自体が個性や独創性に繋がっていくということを歌っているように感じた。「何か創り出そうぜ」とリスナーを刺激するこの曲そのものが、ものづくりの面白さを体現している。

 『創造』は先行きが見えず閉塞した2021年現在のこの世の空気を打破するような、実にエネルギッシュな曲だ。個人的に疲弊する出来事が続いていたので、実際のところ、この曲にかなり元気をもらった。『創造』は(オンラインではなく)ライブの現場で聴くことができたら、めちゃくちゃ楽しいだろうけど、当面は難しいだろうから、いつかその日まではうちで踊ろうか。

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