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おじょーと駅

おじょーとたくさんの時間を過ごしてきたなかで、印象的な場所というのが、いくつかある。
そのなかでも、一番の聖地といっていいほどの場所が駅だ。なぜなら始まりの地でもある。
おじょーからお付き合いの良返事をいただいたのが、駅だ。
実際には改札手前、電車に乗ってそれぞれ帰りましょうと歩いているとき、唐突にその瞬間は訪れた。あまりに唐突すぎて、何て言われたのか朧気で、少し残念だ。
お付き合いして欲しい旨は、おじょーには伝えていた。返事を待っている状態だったのだが、当時のおじょーの印象から返事には時間がかかるだろうな、と予想していて、まさかデート帰りのタイミングで返事が貰えるとは思っておらず、戸惑ってしまったのをよく覚えている。
おじょーは、私でよければ宜しくお願いします、と言ってくれた気がする。
当然私は喜んだのだが、改札へ向かう人たちに飲まれ立ち止まることも出来ず、ありがとうと、なんだか頼りない返事しか出来なかった気がする。
それでもなんとか立ち止まり、初めておじょーの手をにぎり、握手をした。
ほんの数秒間の出来事だったが、おじょーの手は細く冷たかったのをしっかり覚えている。この握手はこの先一生忘れないだろうと感じたからだ。

その日はその後、おじょーが乗る電車の改札まで送り、お互いに帰路についた。

とても印象深いそのお付き合いを始めた日はいまでも記念日となっている。




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