Web3領域において日本から勝ち筋を導ける可能性のあるビジネスモデルと、その批判について
こんにちは。
Skyland VenturesアソシエイトのKOJOです。
今回は、以前あったSkyland Ventures主催ブートキャンプCryptoland Vol.2での議論なども振り返りつつ、Web3領域において日本から勝ち筋を導ける可能性のあるビジネスモデルと、その批判について書きたいと思います。
自己紹介
参考文献
弊社のブートキャンプにおいてtofuNFT沼崎さん/Skyland Venturesよんくろうさんのトークが記録されています。非常に興味深いのでぜひ見てください。
以前、KOJOは以下のような文章も書いております。前提となる部分もあるのでお暇でしたらお読みください。
また、後述するアイデアたちは、私個人の発想であり、Skyland Ventures全体の意見を代表するものではありません。ご注意ください。
日本からでも勝ち筋を導けるかもしれない、とはどういうことか
まず前提として、たとえば僕のような日本人でWeb3に関する知識のそこまで多くない人間がこれから起業しようと思った時、どのようなかたちであれば起業して成功できるのであろうか、という観点から出発したいと思っております。
Web3業界には恐ろしいほど知識や経験のある人間が揃っています。特に海外では尚更で、エンジニアリングや暗号学、ブロックチェーン周りのデータシステムなどを熟知している人間が大量です。そういったいわゆるな専門知を持っていない人間は、自ずと民主化しきっているようなWeb3の一般知をもとに起業していくほかありません。もちろん優秀なチームメンバーを据えることで専門領域での起業は可能ですが、あくまで何もないところからゼロスタートで知識を詰めていく際に、現実的な分量の知識で起業可能なものをイメージしています。というか、そのような専門知を有している人間はとても希少です。
この上で、ビジネスモデルに焦点をあてるかたちでぼくたちにとって可能な事業を見ていきたいのです。まずインフラやプロトコルを作るようなプロジェクトについては排除して考えます。専門的な知識が非常に多いと思われるからです。そうなると、いわゆるアプリケーションレイヤー、Dappsの開発という観点が必要になってくるでしょう。
また、日本であるということの地政学的な強みも活かしていきたいものです。日本に生まれただけで他国の人間よりリーチしやすいアセットを使わない手はないです。
どのようなビジネスがありえるか
収益化の手段をベースに、以下に日本でもゼロから起業できそうな気がする事業を提案し、その上で批判的な意見も併記したいと思います。
①RWAを扱った事業
RWA(Real World Asset)を扱う事業は、実際の資産をトークン化してブロックチェーン上で取引するコンセプトです。これにより、不動産、金融商品、現物アートなどの実物資産をデジタル資産として流動的に取引することができます。
なかでも、「どうして現実資産をNFTにするの?」という問いに対してよく返される答えとしての「低流動性資産をより流動性高めるかたちで売る」というテーマは、RWA事業を行う上で特に大きなビジョンとなっています。
RWAとしてNFT化するものの低流動性資産の一つとして、ホテル宿泊や不動産といったもののNFT化が注目を浴びている一方、「そもそも不動産やホテル宿泊券が流動性の低い資産なのか」というのは疑問の余地があります。また、そもそもNFTにすることで本当に流動性が増す=二次取引が増加するということになるのか、というのはまだまだ検証の余地が残されています。というのも、技術的な観点でいうと、NFTは事業会社の提供するサービスに紐づけるかたちでNFT=サービスの実行権を販売可能なところ、そして事業会社側が二次取引用のプラットフォームなどを提供せずとも勝手に二次取引がOpenseaなどその他のプラットフォームで行われるようになるところがおもしろいのです。ただ、それ自体は技術的に可能になる=理想的にはそうなってほしいという話なだけであり、「NFTを利用したら二次取引が加速される」というロジックはないと思います。というか、現実世界の場合であっても現実資産を二次取引をしたくなるような場では、勝手に二次取引は発生しています(金券ショップやメルカリ的なサービスにおいてそのような商品はトレードされています)。ですので、そのような「既に二次取引される需要がある」ような商品をNFT化する方が、NFTの良さを活かしているようにも思えます。ところで、その上でもなお二次取引がRWAにおいて重要視されるのには、投資目的のユーザーが一次取引における顧客となりやすい現在のCryptoにおける顧客像のせいでもあるでしょう。基本的に、現行のNFTやDeFiのユーザーがトレーダーあるいは投資家であることは明らかです。
②新たなNFTマーケットプレイス(テーマを絞る)
NFT市場で戦うことは、次のブルマーケットに備える上では最善策ともいえるでしょう。特定のテーマやニッチな分野をターゲットにしたNFTマーケットプレイスの開設は、競合と差別化を図る一つの方法です。
たとえば、新興チェーン(いまでいえばBaseチェーンなど)が登場した際に、真っ先に新興NFTマーケットプレイスをそのチェーン特化で展開する。あるいは特定ジャンルのNFT、たとえばRWAに絞ったNFTのみを取り扱うNFTマーケットプレイスとして売り出す、高額なブランド力の高いNFTのみを扱うNFTマーケットプレイスを展開するなど、いろいろな可能性があるでしょう。
③モバイルゲー×GameFi(ギャンブル性)
モバイルゲームを通じてplay to earnゲームは大流行りしました。次のブルマーケットに備えるという観点でこちらも良い選択肢といえるでしょう。ゲーム内での暗号通貨やアイテムの取引、報酬システムをトークノミクスと組み合わせ、プレイヤーエンゲージメントをとにかく向上させるモデルです。麻雀・ポーカー・パチンコ・ガチャゲームなどといったギャンブル性の高いモデルと相性の良いゲームはそもそもcryptoとの相性が良いように見えます。
④NFTコレクション
セールでNFTコレクションを売り出すものです。売り方にも「一点もの」だとか「ジェネラティブ」みたいなパターンがあるようですが、いろいろと難しさの存在する商売でもあります。
RWA系事業にも通底する問題意識ですが、今後NFTコレクションのロイヤリティ設定をつけないモデルがスタンダードになると、より一層「二次取引の加速」によって収益化を目指すモデルは困難を極めます。また、ジェネラティブのコレクションをセールというていで売り出した場合も、セール時に大きな収入が入ってくる引き換えに、継続的な収入とはなりえないのも難しいところです。または、Nouns DAOのような一日一枚のNFTをセールとして売り出すようなケースで継続的な収入とする手段もあり得るでしょう。ですが、継続的に売り出すためのブランドイメージの持続を事業会社として展開することは難しさも残されています(NounsDAOはコミュニティドリブンな形でNFTの価値が安定しているのが興味深いところです)。
⑤日本のIPを利用する
日本のアニメ、映画、音楽などの知的財産を活用して、NFTやデジタルアセットのビジネスを展開することは、まずわかりやすいモデルであるというふうに思います。
一方、日本の既存Web2 IPを利用するにせよ、独自のIPを開発するにせよ、NFTとして売り出す上でのブランディング戦略などは非常に難しい問題となります。
⑥大企業に仕掛ける
既存の大企業と協力・提携して、Web3のテクノロジーを活用した新サービスやプロジェクトを展開する方法です。大企業のリソースとブランド力を活用して、Web3領域での事業展開を加速させることが期待されます。また、このような手段での大企業との協業は新産業であるがゆえに多くの需要が既存企業から発生しているのも事実です。
まとめ
多くのアイデアが眠っているこのWeb3産業ですが、日々新たなスタートアップとの交流で新しいアイデアや新しい発見が得られるのも醍醐味です。今後とも日本から新たなCryptoスタートアップを創出するよう努めたいと思います。