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牛に嫉妬する

私は早く母になりたい。
ようは早く子供がほしい。

こんな不景気少子化で税金まみれの日本で、よく子育てしたいなんて思うなと思われるだろうが、
私は誰がなんと言おうと子供がほしい。

個人的な意見を言うなら、結婚したのに子供がいないんじゃ結婚した意味が無いじゃないの。
という思いもある。
まぁ色々な家庭環境があるのでそこはとやかく首を突っ込むつもりは無いが、少なくとも私の中の結婚は『子供を産むこと』を前提とした結婚をしているので、子供を産まないことには意味が無い。

しかしまだ23歳(まだ?私は今すぐにでも欲しい)
中々タイミングや金銭面での安定力が無いのでもう数年は我慢だろう。

しかし、そんな中でこれみよがしに子供を産む生き物が身近にいる。

牛 と、猫 だ。

牛は生まれてから2年で子をお腹に宿すことができる。
猫なんて生まれて1年足らずで妊娠できる。

私が、生まれた瞬間を見てきた子牛、子猫たちはもう立派な母親になったのだ。

なんて羨ましい。
私も早く母親になりたい。

牛舎には先輩ママさん牛がいっぱいいるので、相談に乗ってもらう。

「あなたを種付けした人、私の旦那さんなんだけどさぁ」

「あ、浮気とかじゃないよ?仕事だって、割り切ってるんだけど」

「でもさぁ、肝心の私に種付けしないであなた達には何回も何回も種付けするって、ちょっと違くない?って思うわけ」

「私だって早くママになりたいっつーの!って思ってるんだけど、なかなかねぇ」

「てか、私には『まだ早いよ』とか言ってるくせに、あなた達にはポンポン子作りさせて。全く意味がわからないわ!」


ここまで話しても、牛は私のヤッケをべろべろと舐めるだけで聞いちゃくれない。

はぁ、いっそ私も牛になれば子供が産めるのか。

いやここで間違えてはいけない。
産むことが主語になってはいけない。
私は子供を育てたいのだ。産むだけなんて真っ平御免。

牛は子牛が生まれてすぐに引き離され、オスなら肥育に、メスなら育成舎に連れていかれる。
ママさんはカルシウムを注射されたあと、今までと同じように搾乳される。

ただし、産んですぐの牛乳は成分が濃すぎるので
しばらくは搾っても出荷せず、遠くで頑張る我が子の元へと運ばれる。
なのでその間は売上には繋がらない。


私もそうなりたいのか?

うーん微妙。

でも子供は早く欲しい。

幸せにできる自信とか、正しい教育を与えてあげられるかとか、そんなのわからないけど。

ぶっちゃけ子牛、子猫じゃないので、人間の子供は親の純度100%のエゴで生まれて来ると思っている。
そんなエゴでもいい。
エゴで生まれてきた子供を、私は自分の命と引き換えにでも育てたいのだ。
それがエゴってもんだろう。

子を産むもエゴ。子のために働くのも子のために死ぬのもエゴだ。
でも私はそのエゴが生きる理由になる。

そのエゴがなければ、私なんて生きていても意味の無い、自分自身を大切にすることも出来ない生命体なのだ。
それこそいっそ、牛のように家畜になった方が社会貢献になるくらい。
でも残念ながら私は両親のエゴの元生まれてきた人間なのだ。
なので家畜にはなれない。



「お互い大変だよね」

そう言って牛の頬を撫でようとすると、
ブン!!と首を振って嫌がられた

「一緒にすんな!ってか」


クソ生意気な牛に今日も嫉妬する。

あぁ、羨ましいなぁ

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