あなたの値段はいくら?
昔、人間は売り買いされていた歴史がある。
遊郭や、普通に人身売買もあっただろうし
きっと今もどこかでその名残はあると思う。
幸いにも日本では人身売買、臓器売買
いわゆる人体の売り買いは禁止されているので
私は売られることなく
こうして元気に生きている。
さて生命の値段とはどうやってつけられるのか。
希少価値。需要と供給。
魚や野菜の値段は特にそうだと思うし、
それらが春夏秋冬、値段が変わるのは
旬。というものが関係しているんだと思う。
では牛はどうなんだろうか。
鶏や豚は専門外なのと、
私は実際に売り買いする人ではないので
詳しい『そこんとこ』はわからない。
だが『和牛』と『ホルスタイン』とで
売値に大きな差があることは知っている。
特にオスかメスかでもその差は開く。
一般に和牛はオスがメイン。
肉になるから大きく育った方が良いので、
自然とガタイの良いオスが好まれるそうな。
大体、子牛一頭20万円で売れる。
メスでもそんなに変わらない。らしい
では次
ホルスタインの、メスは
うちでは、そもそもそんなに売りには出さない。
メスが産まれたらそのまま自分の家で育て、
子を産み、乳を絞るからだ。
まぁ大人のホルスタインだったらこれも同様に
一頭20万円、といったところだろう。
ホルスタインのオスはなんとビックリ。
子牛一頭、5000円
5000円である。
子供のお年玉か?と勘違いしたくなる。
ほぼ価値がないので、己の精液代くらいに
なればマシだという考えの元売られるのだ。
自分の生命が自分の精液代なんて
考えただけでぶっちゃけ吐き気。
それはもうほぼ無価値なのと変わらないのでは無いかと思ってしまう。
なので基本的に人工授精をする際には
『判別』といって
F1のオスなのかメスなのか
はたまたホルスタインのメスなのかオスなのか。
もう既に精子や受精卵のときから区別されたものを使って、損のないようにしている。
しかしごく稀にその可能性を打ち破って
「本当はホルスタインのメスが産まれる予定だったのに、オスが産まれた!!」
という場合もある。
そういう時は、仕方ないのだが肩を落とす。
なぜなら売っても金にならないから。
母牛が命懸けで産んだ子供は5000円。
産まれてすぐにつけられたその値段。
残酷に聞こえるが仕方ないのである。
ちなみにどうしてそんなにホルスタインのオスは安いのかというと、諸説あるんだが
北海道でホルスタインのオスを買い取って手広く牧場を経営していた方が辞められたそうで。
そしたら他にホルスタインのオスの行き場がどこにもないため、この破格の値段となったらしい。
これこそ、需要と供給。希少価値。
こうなると人間は生命の価値をつけられないのが
奇跡のように感じてくる。
まぁ今は少子化なので、産まれてくる子はみんな
需要と供給に合っているからいいんだろうけど
ベビーブームと言われたくさん子供が産まれたときでさえ、「もう子供いらないので産まないで!」と
ある国の一人っ子政策のような事にはならなかった。
人間も生命の価値が同等か、となるとかなり疑問が残るが……。
(例えば一般人と芸能人の間とでは、色んな物事への対応にやはり差がある。これを価値の差。と呼んでしまえば、それは人間の価値は同等ではないことになる)
無難なところでいけば、血液型には希少価値があると思う。なかなか無い型の血液であればそれは珍しいので必要とする人が増えるからだ。
きっと人間も値段をつけ始めれば、
スタイルの良さとか、顔の整いとか、血統とか。
その辺りで値段にきっと差がついてくるだろう。
しかしそれが無いのは人間だから。
生き物にはそれが当たり前のように行われている。
どれだけ可愛い可愛い子牛でも
売ってしまえば小学生のお年玉である。
そんな残酷な世界を知っていたとしても
私は今日もお肉を食べる。
お肉美味しい。ヴィーガンになるなんて考えられない。
こんなに素晴らしく美味しいもの。
私たちが食べなければどんどん需要と供給は下がり
彼らの値段は、
彼らの生命の値段は、無に等しくなる。
意味が無くなるのだ。
和牛はどうか知らないけど、ホルスタインはもう野生化では生きていけない完全に家畜化された動物なので、どこかで誰かが牛乳を飲まなければ、ホルスタインは根絶される生き物になってしまう。
私は少しでもお肉食べることが、
牛たちの『価値』を少しでも上げることになると思う。