３月１８日㈪　ツキノワグマを運ぶ

・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
　武田真治似のOさんとスキンヘッドパディントンHさんと俺の３人で、これまで３階に置いてあった全員分の清掃バケツを置いていた棚を地上の駐車場の奥のスペースへと運ぶ作業。
　当初エレベーターに乗せて運ぶ予定だったのだが、いざ乗せようとしたらギリギリ１０ｃｍ分くらい入らず、内階段を使って３階から１階へおろすことに。

　ちょっとしたツキノワグマくらいでかい棚で、３人がかりでもめちゃくちゃ重い。何度も心が折れそうになりながら、なんとか３階から２階まで運び、２階から１階の踊り場まで運び、あともうちょっと、

　ってところで、天井がそこだけ低くなってるゾーンがあり、そこにツキノワグマが絶妙に嵌ってしまい、斜めにしてみたりいろいろ試したけど、どうやっても通らない。

　ここまで来たけれど、来た道を引き返して一旦２階までまたツキノワグマを持ち上げて運んで、外の非常階段からおろすことに。
　筋肉も手のひらの皮も何から何までが悲鳴を上げている中、なんとか非常階段の出口のところまで来て、出口のところの扉部分の枠がツキノワグマをこれまた絶妙に阻み、しかしもうここで諦めるわけにはいかないので、ツキノワグマを仕留められた後の体勢くらい傾けたりなんだりして、やっとのことで見事通過、地上までおろすことに成功。

　で、ツキノワグマはもう１体いるので、また３階から１階へ、同じくらいの労力をかけてまたおろす。

　運びながら、これ逆に３階まではどうやって運んだんだろう、と疑問で一杯になる。カラオケの機材が入らなかったときの荒井注の気持ちがわかった。

　せきしろさんの文章でしか荒井注のことを知らない、カラオケの機材が入らなかった人としてしか知らない、逆ボトルシップこと荒井注のカラオケ機材事件、はさておき、ものすごく疲れた。が、引っ越し屋さんってこれを毎日のようにやってるんだもんな、すごいな。まあ、それができないから引っ越し屋さんになってないんですけども。それができるんだったら引っ越し屋さんやってるし。と、軽くやさぐれる。

　こないだ新しく入った元ボクサーの修理担当Sさん、入って３日目でバックレて来なくなったらしい。
　Oさんいわく、チーフが「修理だけでなく、軽くベッドメイクもできるようになってもらいたい」と３部屋分くらいベッドメイクをやらせたのが原因ではないかとのこと。
　たしかにベッドメイクって初めてやった時は想像よりも体力使うし疲れるし腰とかも痛めるから、それで嫌になっちゃったのかな、と思ってたけど、どうやらそうではないらしく、ベッドメイクし終わってOさんとエレベーターで二人きりになった時に「これは男がやる仕事じゃない」とつぶやいて、それっきり来なくなってしまったらしい。
　元ボクサーなのに打たれ弱かったらしい。

　猫顔熟女同僚のMさんに車の免許取ろうとしてるって話をしたら、Mさんは免許持ってるけど下手だから最近は運転していないと教えてくれた。
　車の免許よりも先に原付の免許を取ってたんだけど、教習中に教官から「あなたは他の人より練習しないと外に出しませんよ」って言われたくらい私は運転のセンスがないの、とおっしゃっていた。

　パルクールをやっているイケメン２０歳同僚のOさんにも免許の話したら、バイクって路上教習が無くて免許を取ったらもういきなり自力で街に出る事になる、と教えてくれた。
　Oさんは毎日ハグリッドが乗ってるみたいな巨大バイクで通勤してて、超格好良い。

・松屋で牛焼肉定食を食べる。本当は豚生姜焼き定食を食べようとしていたが、間違えて押してしまった。でも美味しかった。甘口のたれをかけると一番美味しかった。

・人妻の家に行ってその家に住んでいる子供に知恵を授ける仕事。
　パルクールをやっている小学生。パルクールをやっている人に一日で２人も会うことになるとは、そんな日が週２で訪れるような人生になるとは、それも自分がパルクールをやっていないというのに、って、なんか不思議な気持ちがしてきた。俺もパルクールを始めるべきなのか。パルクールの観る専っていう奇妙なおじさんになろうかな。

・先輩とやっている毎週１つ新作落語を作るpodcastの収録。
　先輩、来月転職することになって明日が最終出社日で、送別会を自分で企画して自分で人を集めたらしい。そういえば、大学時代に留年されてから卒業が決まったときも自分で送別会を企画して自分で人を集めていた。１０年経っても変わらない姿、なんかエモかった。
　ちなみに関係ない情報だけど、俺は２０２４年になってやっと「エモい」という言葉を使いこなせるようになってきた。

・仕事に関するインタビューをするポッドキャスターさんの番組にゲストで出演させていただく。同い年らしい。こんなに人生って差がつくものかね、ってくらい立派な御方で、でも俺のような人間にもめちゃくちゃ優しくしてくださって、超良い人。
　世の中、いわゆる「成功者」とか「有名人」のインタビューばかりだけど、いわゆる「一般人」「普通の人」のインタビューをもっと聞きたいから自分でそういうpodcast番組を立ち上げたとおっしゃっていた。めっちゃ気持ちわかる。素晴らしい。
　しかも、その番組で以前農家の方が出演されたことがあって、もし農業やりたいんだったらその農家さんを紹介しますよとも言ってくださり、今度飲みに行きましょうとも言ってくださり、もう、めちゃくちゃ良い人。紫綬褒章かスーを差し上げたい。