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弁護人が目の前で手錠をかけられた!?話題のキーワード「制裁裁判」について、当事者に聞いてみた(前編)

つい先日のことなのですが、私のツイートが軽く跳ねまして

たぶん、2000いいねをオーバーしたのは初めてなのではないでしょうか。法律ネタでも訴求力あるものであれば、ここまで反応があることを知って少し嬉しくなりました。

この「制裁裁判」って単語と、「弁護士が手錠をかけられた」という事情、両方が珍しいという話なのです。

たまたま傍聴していた裁判でこの事象が起きました。
周りは大阪地裁の傍聴マニアと親子だけでメディアは全くおらず。ツイートが一気に跳ねたこともあり、普段お世話になっている弁護士ドットコムニュースさんからもお電話いただき、一部情報の提供をして記事になったりもしました。プロはやっぱり仕事が早い。

実際に何があったのかは、後ほど詳しく説明するのですが、今回はその渦中である弁護士先生にインタビューをすることができたので、その様子をお届けいたします。


先に動画をアップしたんですが、これは適当にカットを入れています。カットを入れていながらも50分以上の動画なので充分すぎるのですが、実際は2時間を超えるインタビューとなりました。

noteの方では、その全体のやり取りを公開したいと思います。


今日はその前編ですね。最初は一気に書き上げようと思ったんですが、頭が狂いそうになったので分割します。余計なところは省いているんでそんなに時間はかからないのではないかな。
実際の音源だと僕の「えー」「あのー」ってのが多過ぎて、がしがしカットできたので。

動画をご覧いただいた方でさらに関心がある方、法廷録音に関心がある方、裁判中に手錠をかけられるとどうなっちゃうのと気になっている方、どんな方でもお楽しめる内容になっているかと思います。

それでは、どうかお付き合いください。


インタビュー冒頭

―さっそくゲストの方をお呼びいたします。中道一政(なかみちかずまさ)弁護士です

(中道)
よろしくお願いします


―簡単にプロフィールなどをご自身で紹介いただけますか

(中道)
特に申し上げるようなプロフィールはございません。中道という弁護士です。


―出演いただいて今さらですが、この様子は録音してもいいですか

(中道)
いいですよ


―よかった。断られたらどの口で言うてんねんと思ったんで

(中道)
そうですね(苦笑)裁判所で録音させてくれって言っておいて、自分の発言は録音するなじゃなかなか身勝手ですよね


―今、「録音」なんてワードが出ましたので、一連の流れを私の方から説明させていただきます

(中道)
はーい


5月30日11時30分、ストーカー規制法の裁判があり、それを担当されていたのが、中道弁護士でした。裁判の前の準備で机に置いたものの中にICレコーダーがありました。

YouTube用スライドより

裁判官が「それ録音していませんか?」「切ってもらえますか?」などと聞きます。それに対し中道さんは「答えません」「なぜ録音できないのか理由を教えてください」と回答。

そこからしばらく、その問答が続き、「これ以上続けると退廷にしますよ」と警告がなされるも、なおも続けるので正式に退廷命令が出されます。なおも席に残る中道さんに法廷警察権を執行すると言い、法廷の外に待機していた職員が入ってきて、手錠をかけられて身柄を拘束されてしまいました。

先生、これは生で見ていてショッキングでした

(中道)
あっはっは(照)


―そして法廷から出るタイミングで裁判官から「午後から制裁裁判を行います」と宣言がなされました。というのが、傍聴人から見えたところです。
先生、細かい部分は後ほど伺いますので、流れとして何が起きたのかお聞かせいただけますか

(中道)
今、紹介いただいた流れのあと、確かではないですが、地下か1階あたりにあると思われる「拘束室」という場所に行きました


―拘束室?

(中道)
身柄拘束などの「拘束」ですね。その拘束室で1時間半ほど過ごし、午後1時に「法廷と秩序維持に関する法律」に基づく裁判を受けることになりました。ものの10分くらいで終わりました


―そんなすぐに終わったんですね。
 その拘束室というのは普段どんな使われ方をしているものなのでしょうか

(中道)
知らないです。普段使われているんでしょうか


身柄を拘束された被告人が裁判まで待つ場所とかでもないんですね

(中道)
そうですね、被告人さんがいる場所とはまた別の場所なんです


―じゃあ本当に謎な部屋なんですね

(中道)
そうですね、綺麗な部屋でしたよ


―使っていないんでしょうね

(中道)
そういう気がします


―制裁裁判を受けられて、どういう結果…判決という言い方でいいんでしょうか?

(中道)
正しくは決定と言うみたいです


―そうなんですね。で、決定はどのようなものだったのですか

(中道)
過料3万円を支払なさいっていう決定がなされました


―普段、裁判でも耳にするのって「科料」ですけど、今回は「過料」ですよね。何が違うんですか?

(中道)
簡単に言うと私が受けた「過料」は前科前歴とは違います。刑法に定められた刑罰じゃないんです。よく言われているのは行政罰だとか言われたります


―いろいろと難しそうですが…、とりあえず中道さんとしては前科にならないと

(中道)
そうですね


―ニュースでは「監置」ということも出てましたが、これは?

(中道)
私が受ける可能性があった処分の一つです。
法廷秩序維持に関する法律に、私に「過料」か「監置」の制裁を与えることができると書いてあるんです。「監置」であれば20日以下、「過料」であれば3万円以下


―いわゆる身柄拘束をされるということでしょうか

(中道)
そうですね、「監置」は身柄拘束です


―監置ってどこでされるんですか?

(中道)
どこでされるんですかね?知らないですね。拘束室あたりでするんじゃないですかね。でも、ベッドとかなかったんで、ベッドは欲しいですよね


―笑

(中道)
なので、また別の部屋かもしれないし、拘束室にベッドを用意してくれるのかもしれないですし、それはわからないですね


―それはまた詳しい人がコメントしてくれるかもしれないので、それに期待しましょう

(中道)
そうですね


―やっぱこのテーマ非常に反響があって、法律関係者の方も勉強して以来初めて聞いたなんて方もいましたので

(中道)
もう本当に不祥事で申し訳ありません


―いやいや、不祥事じゃないんじゃないですか?先生もそうは思っていないのでは?報道でも悪く言われている感じでもなかったですし。ヤフコメは酷かったですが。
 僕としては先生の弁護活動が正しく伝わればいいなってことでお呼びしていますので

(中道)
ありがとうございます


どうして法廷での録音を求め続けるのか

―ここから、それぞれの場面に応じた質問をさせてください
 この裁判に限らず、裁判で録音をしたいという主張とされていますがそれは何故なのですか?

(中道)
まずシンプルに、裁判を受ける当事者、もしくは代理人、当事者を守るべき立場の者として、その日そこで何が話されたかという証拠が欲しい。シンプルにまずはこれです。
私が今回のようなことをやって騒がれたのは、昨年の12月ころなんですね。録音を許可して欲しいということをずっと求めていると、裁判が閉廷され、国選弁護人を解任されるという事態があったんです


―私もそのニュースで先生のことを知りました

(中道)
その被告人さんは精神障害をお持ちの方だったんです。裁判当日にどういう発言を、どういう口調で、どういう様子でしているのか、ということを正確に把握して病状の判断に役立てたいと思ったんです。

そのためには本当は録音、録画をしたかったけれども、録画の機材は持ち合わせていないし、録音は是非したいなと思ったんです。

そのため、裁判所に事前に録音するということを通知して許可を求めたところ「不許可です」と


―それは、今仰られたような理由も含めて申請されたのですか?

(中道)
いえ、そこなんです。
裁判所はですね、「起訴状一本主義」というルールがありまして、裁判が始まる前は起訴状に書かれていること以外、触れてはいけないんですよ。
裁判を余計な知識を持たず、公平に迎えるためにそういうルールがあるんです。


―そうか、手元に起訴状しかない中で、そういう理由込みで申請すると「そういう人なのか」と情報を与えることになっちゃうんですね

(中道)
そうです。なので第1回公判で自分が録音を必要とする理由を、まぁ僕自身の判断で明かすことはあるんですが、裁判官の起訴状一本主義に抵触してしまうんですね。

なので第1回公判で録音の許可を求めようと思ったら、単純に「録音を許可してください」って申し上げるしかしょうがないんですね

ただ、その裁判に公平に接して欲しいというルールは、被告人のためのルールであるので、被告人にとって有利な事情を先に伝えるというのは、厳密にいえばしてはいけないことではないのかもしれません。ですけど、一般ルールを考えると少しやりにくいですね


―なるほど。そしてそれで、その裁判では解任されてしまったと。
 私は別の裁判で、中道さんが類似の主張をしているのを拝見しておりますが、非常に論理立てて主張されているので、特定の主義主張に偏っている感じでもないですよね。被告人の利益のためにというのがよく伝わります

(中道)
ありがとうございます


―では、ここで事前に募集していた質問から紹介を。

 「相馬獄長さん」から

 裁判を監視するためには、その正確な記録が必要不可欠と考えます。ライターや一般傍聴人の録音、あるいは撮影については、どのようにお考えなのでしょうか

(中道)
結論から言うと、傍聴人にも録音が認められてもいいと思っています。録画はちょっとまだわからないです、ただちにダメとは言いにくいけど。録音はもういいでしょと思っています。
というのも裁判所が考えているのは、プライバシーの侵害がどうとか、法廷の中で訴訟に関する人にプレッシャーを与えてしまうだとか、多分これらが理由になると予想さているんです。で、録音機で別に被告人などにわからず録音することは、わからないし、誰にもプレッシャーを与えることにならないんじゃないかなぁと。


―その点ではそうですね。
もしプレッシャーがポイントになるのなら、私も普段、傍聴席の前の方の席でがっつりメモを取っていますけども、それは規制されていないですし、

YouTube用スライドより

今やSNSなどがあるから書こうと思えばいくらでも書ける。という事情下で録音だけがダメというのは理由になっていない気がするんです。

(中道)
そうですね。私もまさしくそう思っていて、メモもPDF化したらいくらでも共有可能。録音もデータとしていくらでも共有が可能。リスクとしては全く変わらないのではという考えなんです。


―そう思います。まぁ正確性の違いはあるでしょうけども。
 裁判では個人情報に関わる被告人のお名前、住所だなんだってのもありますが、これもメモ頑張ればとれちゃいますしね。もちろん、変な使われ方をしないようにってのはわかるんですけども

(中道)
そうですね、「変な使われ方」をするかもしれないからできないであれば、メモもできない傍聴もできないになるはずなんですよ


―そうですよね、それでメモも傍聴も禁止だってなったら、僕としてはチーンって感じですけども。
 海外を例にするのもですが、放映されている国もあるですからね

(中道)
そうですね、私はですね憲法が裁判を公開すると決断した時点で、一定のプライバシー侵害はしょうがないという判断を憲法自身していると考えています


―そうですね。
 今回のテーマってマスコミの方も多く関心を頂いていて結構問い合わせなんかもいただいていて。「ライターとしてどう思いますか?」って。

 そんな中、こういうテーマにしておいてなんですが、僕自身は録音がOKになると既存メディアの横の繋がりというか、人海戦術などで多くの記事が作られちゃうんで、録音OKになっちゃうのもなぁって思いもあって。
 とは言え、普段から発信ってのは切り取られているわけで、正しい情報か否かって知るきっかけにはなるんで、議論が深まって欲しいなとは思っています

(中道)
そうですね。傍聴人の方にとっては不利なことを申し上げてしまいますが、記者に関しては特に録音をしていただきたい、むしろさせるべきだと思っています。
間違った報道したときどうするねんっていう


―そうですね

(中道)
やっぱり報道なんで、正確なものを報道するっていう使命が強いわけで、社会的責任というか。それに応じた武器をきちんと与えて欲しいですね。
手書きメモだけで、絶大なる社会的責任を負わせるのは可哀そうというか、むごいというか、そういう気がしています


―わかりました、ありがとうございます。

 続いての質問です。Burj Khalifaさんから

 裁判所にとって法廷録音すると不味いことは何か有りますか?(想像で結構です。)

(中道)
何もないはずなんですけどね。むしろ、裁判所自身でも録音をする、訴訟当事者でも録音をする、より正確な記録ができる、利益しかないと思うんです。
というのが、お利口さん的な回答です。そうではない、ちょっと穿った回答をすると、


―おっ、待ってました

(中道)
マズいことがあるんだろうなと思いますし、私は裁判所がマズいことをしているという経験を何度かしています


―何かお話しいただけるようなことはありますか?

(中道)
裁判所が作っている調書に、法廷内で起きていたはずの出来事が書かれていないということが時々あったということです


裁判所の調書とは

―今回も一連の騒動の中で、いろいろな言葉が飛び交い、中道さん不在時にもいろいろと物事が進んだのですが、今回の調書ってそのあたりは残るものなんですかね?

(中道)
そこはもう実は入手しているんですが、次の公判のときにいろいろ考えていますので。
ここまで言ったら、裁判官も聞いていたら警戒するでしょうね。どうぞご準備ください


―裁判官が聞いてくれるYouTubeになりたいっすね。ここ残しておいて大丈夫ですか?

(中道)
全然いいですよ、準備しはったらいいんじゃないですか。こっちも準備していきますわ


―では、続きましてもBurj Khalifaさんから
 法廷録音禁止についての判例は有りますか?

(中道)
私が録音不許可という処分に対して、不服申し立てをしたことがあります。
ちょっと皆さんにはわかりにくいかもしれませんが裁判所は「裁判長の訴訟指揮はそもそも不服申し立ての対象ではありません」と述べていて、法廷録音の不許可処分も訴訟指揮の一つなんですね。
なので、そもそも不服申し立ての対象ではありません、という判例になっています


―過去に別の先生がこういったことで争われたりというのはご存知ですか?

(中道)
私も調べているんですが、たぶん私が一番目の判例です。まぁ無いっていうのを断言するのは結構難しいんですけどね


―では、これも視聴されている方にお詳しい方がいれば

(中道)
むしろ前例があるなら教えていただきたいです。勉強します


―今回対象になっている裁判は、他の裁判よりも録音に対する思いが強いように感じるのですが、これはなにかあるのでしょうか

(中道)
そうですね、ここは多少あるのですが、控えさせていただければと思います


―では、カットしますね

(中道)
いや、「控えさせてください」というコメント自体は残していただいて結構です


―わかりました。まぁこの先、裁判がありますからそこで明らかになるということですね

(中道)
そうですね、その先で明らかにすることはできると思います


―今回の裁判って5月30日の前に4月に「幻の1回目(僕命名)」がありましたが、冒頭手続きにもならずに録音についてで揉めて、期日としては2回目でしたが、その間に裁判所から通達などはあったのでしょうか

(中道)
ありません


―その1回目のときって次回期日は追って指定(公開の場では決定せず、後日関係者間で調整すること)になったんですけど、その日程決定する際に釘を刺されるもなかったんですね

(中道)
5月30日を指定するにあたり、事務所に文書で期日の候補の問い合わせが来たのですが、そこには「録音をしないでください」などは書かれていなかったですね。


―じゃあ1回目公判から何か事態が変わっていたということではないんですね

(中道)
そうですね。私は期日を決める文書のやり取りのときに、私から出す文書の方で「録音をする予定です」とはっきり書いて出しました


―ちなみに被告人には録音のことだったり、5月30日はこうなると思うよっていうのは、どこまでかお伝えしていたんですか

(中道)
第1回公判のときにですね、裁判官がどうしても次回期日を指定したがるんですよ。で、私が「2回目の指定したって所詮録音するので無駄ですよ」と。だから、「なんかしらの裁判所からの強硬措置があるなら今回でも結構ですよ」と第1回目のときに言っていたんです。

ですが裁判所は第1回目のときに強硬措置を取らず「いやいや、弁護士さんにもう1度考え直すチャンスを与えますから」というようなことを言いながら、なんとか2回目を指定しようとしていたんですね


―考え直すチャンス?

(中道)
それは僕は、もうその言葉を建前だと受け止めているんです。
この裁判官は別日を設定して、準備万端で迎えるつもりなんだなと。
そういう予感を十分に持っていたので、5月30日を迎えるに当たって被告人さんに「私は法廷の外に連れ出されるかもしれません」と、


―傍聴席にってことですよね?

(中道)
そうなんです、被告人にはそう伝えていたんです。
もし裁判所が強引に弁護士なしに進めようとしたら、まず「弁護士に相談したい」と述べて私のつまみ出された場所に来て相談するようにしてくださいって申し上げていたんです。


―分かるように言うと、これ実際裁判でも、裁判の途中でなにか不安ごとがあったら、弁護人に聞いてくださいねってのを伝えてくれる裁判官もいます。裁判の途中に何か不安だなと思ったら弁護人に聞くというのは普通のことですよね。

(中道)ただ、今の話は私が外に出されるとしても、傍聴人の方も使われる出入り口からというのを想定していたんです。

ところが、今回、身柄拘束されてしまい、秘密のような部屋に連れて行かれてしまったので、被告人さん私のところに来ることができなくなってしまった。まぁ想定外と聞かれると、実は若干は想定していたんですけど、被告人さんには伝えていなかったことですね


―さすがにそこまで伝えていたら「どうしたらいいの」ってなるので難しいところですよね。
 特に今回のように法廷の外に出るかもしれないという可能性を感じる中で録音したいんだと主張することに対して、別の弁護士の方に相談などされていましたか?という質問が佐藤正子さんからいただいております

(中道)
まぁちょこちょこ喋ってはいましたね。大々的に皆さんに相談するということはなかったですけども、個人的に「あなたはどうしてますか?」って聞くことがあったくらいですね


―それを聞いて、先生が個人でいろいろ考えられて、実行していくバイタリティが凄いなと思っています

(中道)
そうかな…、僕はこの録音は普通の人だったらしたいだろうな、普通のことを普通にやってるくらいの感覚でやってるんですけどね。

で、他の弁護士さんは、これは誰とは言えないですけども、大事な事件は秘密録音しているって言っていましたね


―なるほど、そういうこともあるのでしょうね

(中道)
いやいや、それはそうですわ。弁護士として手元に証拠がないの恐くてしょうがないでしょ


―ちょっと専門的な話になってしまうかもですが、
 例えば録音をしました、裁判所の調書と細かい文言が実際は違います、と。そうしたときに、先生が持っている録音のデータをもとに最終弁論なり他の質問をするのは、調書に乗っていない情報を基準にするので、どういう扱いになるのかな

(中道)
裁判所の調書はですね、刑事訴訟法で一応絶対の立場には置かれていないんです。まぁ一応信頼はされていますけどね。

刑事訴訟法の中で公判調書というのは、弁護人に限らず検察官もですが、調書の内容がおかしいと思ったら、おかしい点があるのでこのように訂正してくださいなどと申し立てる権利があるんです


―そうなんですね。僕が思っていたのは録音データというのは独自証拠で、調書に残ってないから裁判で行われたことではありませんってなったらどうするのかなって思っていたんです。そういう修正の訴えをすることができるわけですね

(中道)
そうですね。分かりやすい言葉でいうと公判調書の修正の依頼をできる、というのでご理解としてはいいと思います。裁判所がそれを受けて、修正します、修正しませんといった回答をするんです


―なるほど、それは知りませんでした

(中道)
ここがミソなんですが、弁護士が修正を依頼するときに秘密録音をしていたときに、何を証拠に言ったらいいですかねっていう話なんです


―そうですね、どうしたらいいのでしょう?

(中道)
「メモと記憶だ」って言い張るしかないんですよね。
僕実際に経験してきた中では、僕が不許可だけれども公に録音しているケースが何件かあって、その録音に基づいて異議を申し立てても、それは認めないというなかなか強者の裁判官もいましたしね


―それは難しいですね

(中道)
それでも勝てないんだから、メモや記憶で勝てるなんてことはありえない、、、とまでは言わないんですけども、それで異議を認めてくれる謙虚な裁判官もいらっしゃるんです


―そうですね、さすがにいてくれないと。


身柄拘束までの話

 さぁ、録音の話も聞きたいことはたくさんあるんですが、当日の話に移りたいと思います。
 当日、この法廷の前に6~7人の職員さんがスタンバっていて、ある種ものものしい雰囲気を感じていたんですが、中道さんはそれに気付いていましたか?

(中道)
そうですね、あっ、準備してる~、と思いました


―仰る通りまさしく準備でしたね。
 気になったのが、普段いるスーツを着た職員さん以外に実際身柄を抑えた専用の服を着ている人がいましたが、あの方はどういう立場の人なんですか

(中道)
身柄を抑えに来た人は廷吏(ていり)さんって言うんじゃないかな。そこそんな詳しくないんで、そこまで自信はないんですけど、法廷の警備員さんみたいな位置づけの人ですよね


―まぁ待機していたのは法廷の外でしたが、その雰囲気の中、先生は着席をしてICレコーダーを見えるように置いていましたが、あれは突っ込まれるかなと思ったんですが、あれはどうしてなのでしょうか

(中道)
堂々とやるためです


―やっぱ先生はそうでないと

(中道)
いやぁ、だから不器用なんだと思います。
そんなもん、バレへんようにやっとったら、、、目的は達成されないんですけどね、証拠に使えないですからね。難しいですよ、ホント


―でも、法的なテクニックはわかりませんが、真っ向から闘おうという姿勢は傍聴席には伝わりますよね。まぁ傍聴席に伝わってもかもしれませんが

(中道)
いや、そんなことないです。ありがとうございます


―退廷警告されました、退廷命令出されました、職員呼ばれました、身柄拘束されましたという流れ自体は、裁判所の手続きの流れとしては不手際などはなかったのでしょうか

(中道)
そうですね、録音を不許可、理由を言わないことが適切かどうかというのを横に置くとしたら、この手順は特に誤っていないと思います


―その一方で、一度ダメですよって言われたことをまた日を跨いで再度申請するっていうのが裁判官の言う秩序を乱すにあたると捉えられてもという部分もあるんですが、この点いかがでしょうか。

(中道)
それだったら、裁判所の言うこと聞いて録音しませんって言ったら、ずっと録音できない時代が続くわけですか?と思うわけです


―ですね…、どこかで変わるポイントがないと

(中道)
刑事訴訟規則は、「裁判官が許可すれば録音できる」と書いてあるので、許可をすることはできるはずなんだから、許可して欲しいわけなんですよ。

YouTube用スライドより

それでも不許可という選択肢を取るんだから、許可なのか不許可なのかの判断基準くらいはあるはずでしょうと思っている訳です。

さすがにその基準は教えてくれませんか、と思う訳です。その基準が適切かどうかという議論はまた別に行われるんでしょうけど、基準が適切かどうかの議論ができない訳です。それはさすがに、ちょっとマズいでしょうと


―判断基準はありませんって言われてるみたいですもんね

(中道)
理由を言わないことにこだわっているのはむしろ向こうでしょと。お互いがガンコなのでしょう。裁判所も一貫して理由を言わないので頑固だし、僕も一貫して理由を求めて頑固だし、頑固者同士がぶつかったら秩序が乱れていると。


―これ素人考えで言いますと、判断基準を一人の裁判官が述べることで、それが前例となって他の地でも起きることの責任は取れませんというような考えは出来ませんか?

YouTube用スライドより

(中道)
いやいや、裁判官は独立してその職権を行うって憲法に書いてあるんです。周りの目を気にして「自分が許可したらなんかなぁ」なんて思っているようであれば、裁判官〇めてください


―(苦笑)わかりました。やはり見方が一般と違うところですね

(中道)
それはそうですよ。
なので、あの裁判官が不許可の理由を立派に説明するという方であれば、あの方は自分の信念に基づいて立派に職責を果たそうとしておられる。考えは違うけどその態度は尊敬に値するということはあると思いますね


―そうですね、それは尊重しなければいけませんね

(中道)
まぁだけど考えが違うから、こういう方であれば正々堂々とがっぷりよつで戦おうというようになると思いますね


―そういう姿勢がやはり望ましいんでしょうね

(中道)
それ以外にどんな姿勢があるんですか、司法に


―話を当日に戻しますけども、身柄を抑えられたとき、遠目では特に乱暴に抑えられたとは感じなかったのですが、実際はどうでしたでしょうか

(中道)
警備員さんは必死に僕にお願いしていましたね、「頼むから…」って


―あぁなるほど、まぁ雰囲気はわかるかな

(中道)
いや、ホントは嫌なんだと思いますよ


「とりあえず、ここは出ようよ、ねぇ」って感じなのでしょうね

(中道)
でも、その「とりあえず」に従っていたら、僕は目的を達せられないから、「その『とりあえず』はすみませんけど従えません」なんてやりとりをしていました


―なにか強引に制圧したって感じではなかったですよね?

(中道)
全然全然、警備員さんは命令聞いてるだけですからしょうがないですよね。大元の命令を出した人が悪いんですわ


―あと、心配していたのですが、お怪我などはされていませんか

(中道)
そうですね


―仮にお怪我などされていたら、何かに問えるものなのですか

(中道)
いやまぁ、僕が抵抗していたことが原因で怪我をしたってされて、特に責任に問えたりはしないんじゃないかな。
実際、法廷内から出されそうになったときに、その場に留まろうと必死に頑張りましたからね


―そうですね、こればかりは裁判所に録画を許可していただきたかったですね。完全に両足が浮いている時間なんかもありましたからね


(中道)
警備員さんが両足を持ち上げはりましたね


一応補足しておきますと、暴れまわったとかでなく、必死に動きませんという姿勢を示していたということだけはお伝えしておきます

YouTube用スライドより

(中道)
ありがとうございます。第三者に言っていただけると助かります


―その後、手錠をかけられたじゃないですか。これって初めてですよね

(中道)
初めてですね


―そのときってどんな気持ちでした?

(中道)
手錠をかけられたときの気持ちってね、模範解答みたいなのを期待されてメディアさんも時々聞いてきてくださったんですけど、僕つゆにもなんとも思っていなくて、
手錠かけられたときの第一の感想は「ピッカピカの手錠やな」ですわ


―怒りで覚えていないとかかと思いきや。
 あれって裁判所のものなんですかね?

(中道)
そうでしょうね、他から借りてくることはなかなか難しいだろうから


―これ普段使うこととかあるんですかね?

(中道)
だから、ピッカピカなんでしょうね、ということです


―ここで思うのは、想定外とは言え被告人を残してしまったじゃないですか。そのあと被告人も動揺から若干体調不良なども訴えていて、そうなった結果自体は弁護活動としてマイナスに捉えられてもと思うのですが、この点はいかがでしょうか

(中道)
まぁ被告人はね、僕が悪いとは全然思っていないようで、自分で自分のことを言うのもアレなんですけど。

法廷内でも実はあの先ほどと堂々とICレコーダーを置いたというのと矛盾することを言うのですが、この日は身柄拘束を想定して、表に出していた録音機以外の隠し録音機があったんですね


―笑 これ大丈夫ですか?

(中道)
全然OK。裁判所にももう言ってますから。
隠し録音機に全部録音していて、被告人さんが法廷の中で「私のせいで弁護人が連れて行かれた」、「死んで詫びないといけない」などと言ってましたね。


―はい、現地で傍聴していても確かに言っていました

(中道)
というのも今回の録音というのは、本当にご本人のご依頼なんです。で、ご本人のご依頼である以上、私は一歩も引く気はない。そしてそうこうする内に本当にとんでもないことになってしまったと。

例えば、このプロセスの中で、被告人さん自身が私のことを止めてあげればよかったとか、「もう私として十分なので、そのあたりで止めていいです」みたいなことを言えばよかったなどということを言ってくれています。


―実際見ていても、先生のことを信頼しているんだろうなというのがよく伝わりましたからね。


この裁判でも感じた録音の必要性


―じゃあ、この点にも触れましょうかね、先生が外に出られる際に荷物を被告人さんに預けて、「このまま弁護人不在で進むことはないと思うけど」ってなったときに、「いや、必要的弁護事件じゃないから、このまま進めますよ」って言って、そこで先生がまた「それなら意地でも出ねぇ」ってまたヒートアップしてましたからね

YouTube用スライドより

(中道)
いやぁ、あのときは本当に出るものか本当に留まってやろうと思っていますからね


―そうですね、壁に張り付いていたりしましたもんね。

(中道)
そうですね


―ちょっとね、あの発言はね冷静さを欠いてらっしゃったかなと思いましたけどね、私も

(中道)
ちなみにね、その発言がね公判調書に書いてないんですよ


―ぶーっ!!それ本当ですか?

(中道)
ご自身の失言は公判調書に書いていないんですよ。今、私ちょっとヒートアップしましたね。アカンアカン


―いや、僕のノートにも書いてますよ、あれ

実際の私のメモ

(中道)
調書には書いてないんですよ。言ってないことになってますわ


―いや、じゃあ僕の傍聴ノートを公式の記録として採用してもらわないと

(中道)
そうしたら普通さんが今度傍聴できんくなるかもね 笑


―そういう経緯が過去にもあって、弁護活動を行うために録音を求めるようになったんですね


一気に書いてきましたが、前半はここまでです。
なぜ録音を求めるのか、ニュースで見たのとは違う印象を持った方も多いのではないでしょうか。私もかなり驚きました。

後編では制裁裁判で何が行われたのかなどをご紹介していきたいと思います。

6月13日はアップすると思います!!
(宣言しておかないと、ずるずるいってしまいそうなので…)

後編へ


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