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【見本市2024初日レポート】Cチーム 書き手:笠浦静花

見本市Cチームの初日を観て来ました!
こちらのチームは観客の想像力を喚起する団体が集結しております。
なんだったら、舞台で起きている出来事よりも、そのあいだに観客の心の中に展開される風景に本質があるまであります。
演劇は、(映像などに比べると)抽象的表現が得意で、抽象とは、一人一人ぜんぜん違うものを受け取れるということです。

Cチームの3団体が出来事として何をやってるかを詳述してもこの感動は伝わらないかもしれない!ので、以下に私の自分語り多めのレポを書いていこうと思います。私というのは職員の笠浦静花のことで、血行が悪いのが悩みの32歳女子です!!!

※※※これ以降はネタバレあり!!!!の感想となりますので、まだ観てないという方はお気をつけくださいっ!※※※


①渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない『渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らないの外縁』


タイトルからして、自己紹介代わりの一作なのかも。

舞台上には脚立が一脚。幕には【7:23】の文字が投射され、
お話の最後には最終的にはそれが【7:24】に変わり、ああ、いままで見てきた数々のシーンは、このたった1分の間の想像、白昼夢だったのだと気付かせる仕組み。
全編集中して観ていたにもかかわらず、まるでなにも観ていなかったかのような、いっそ清々しいような後味はとても特別な体験です!

シンプルな舞台セットに女子高生が3人。
30分で山のように展開されるシーンは断片的に短く、それぞれに場所もバラバラで、無関係に見えます。これからどうなるのかなと思ったらすぐに別のシーンに切り替わる。
そうやって雫のようにぽたんと落とされたシーンの印象が、観ている私のなかでちょうど水滴がつながるように融合していき、
整形した二重の傷口から世界が終わっていくような?
生まれたひよこたちの群れがゴミ袋に詰められていくような?
そういった、舞台の上にすらない光景が頭のなかに広がりました。

突然紙束が降ってくるんですが、あれ、私雨の日の車のワイパーみたいだなと思いました。いままでの景色を一掃するような強制力。かっこいい。

あと絵がずっと美しいです。よく考えられた立ち位置、視線。
とくにこちらを見つめられるとドキッとします。

生死に関する悩み、社会に対する疑問などなど重い話題が多数取り扱われているのですが、一貫して強烈な、痛いほどの清潔感が場を支配しており、年明け早々に年イチで清潔なものを観たな!!と思いました。

私は高3の受験のストレスで一時的に頭がおかしくなり、家にある電気ヒーター(名前:ピーター)とずっと話しかけていた時期があります。
その時はたしかにピーターも色々話してくれたと思うんですが、今となっては彼が言っていたことは一つも思い出せませんが、当作品を観ているあいだ、ふとそれが思い出せそうな気がしました。

②山口綾子の居る砦『目が覚めて、冬』

役者があまりにも上手すぎる!!!
二人(二頭)とも可愛いけど、もこもこして、決して小さくはない生き物。
うざぎではないしゾウでもない、ちょうどクマの大きさの演技。
小学1年生のときにまど・みちおの「くまさん」という詩が教科書に載ってましたが、あのころ想像したフレンドリーなクマが今目の前に!
もしも私が役者だったら、お二人から学べることが多かったでしょう・・・。役者じゃないので興奮気味に褒めるだけですが・・・。

眠れなかったクマと、起こされたクマ。
私は運営側の立場ではありますが、前情報を一切忘れて観るのがものすごく得意なので、
最初のどんぐりを賽銭箱に入れるくだりで、
「どんぐり・・・?ははあ、この二人、なにかあるな!」
と導入からちゃんと引き込まれております。
そのへんの石ころじゃなくて、「大切なもの」を入れる。
この大切さの手触りが最後まで効いていました。
クマに大切なものがあるように、私たち人間にもそういうものはあります。

人間の赤ん坊が眠くて泣くのは、まだその不快感が眠いという状態だと理解できず、わけがわからなくて泣くらしいですけど、
大人になっても眠いとぐずっちゃうことはありますよね。それで謎のミニマリスト宣言とかもしがち。
眠いというのは不安であり、仲の良いヤツとひっついたりしたくなるものですね。

生理的な不安感、眠れない、眠らなきゃ、みたいな焦燥から、
一時的に変な空気になったりしても、二頭ならまた楽しい気持ちを発見できる。
人間が出てこないのに、終始共感できる会話劇。

ただ、終盤の人間側のニュースに、今後の二頭の運命にちょっと思いを馳せてみたり。
クマたちはいるもの/いらないものを分けているけれど、
そもそも私たち人間にとってクマは・・・。

終始クマたちは愛らしく、やりとりは軽快で、笑いも起きる軽やかな雰囲気で、後味もほっこりと温かいのですが、
そのへんのちょっとした心配な感じが、作品にちょっとしたエグ味を加わえる、まさに技ありという一本でした。

③あくびがうつる『シアターで夕食を』

始まって2分くらいの私の感想はこちら↓
「アッこれは楽しく観れるぞ!私シムシティとか巨人のドシンとか好きだし!!」

当事者たちの活動を、観察者として見守る系ゲームが好きなんですけど、
まさにそういう楽しさがたくさん詰まった作品です。
(あ、伝わったんだな)(気に入ったんだな)など、彼らのコミュニケーションをただ見守る幸せ。

ところで一輪車というのは、本当に素晴らしい道具ですね。
観ているだけでワクワクします。
しかも本作品中では一輪車漕ぎながらギター弾きますからね。単純にすごい。絶対真似できない。

数年前、私が打ち合わせ相手と待ち合わせしていたら近くで少年が一人、一輪車を練習していて、その打ち合わせ相手が見るに見かねて「もっとこうだ!」とかコーチを始めちゃったことがあったんですけど、私は一輪車のことは何もわからないので、そのあいだ10分くらい終始へらへらしてただ観ていました。そのときに、ああ私はもう一生、一輪車に乗れるようにならないな、一輪車の部外者なんだなと思ったんです。

でも部外者って、悪いものではないですよね。一輪車に乗れないひとのほうが、この作品は楽しいかもしれない。

当事者がいるから、部外者になれる。
本作品に登場する3人は、一貫してずっと当事者です。
一輪車に乗っていても、歌っていても、鏡餅に興味を惹かれていても、クレヨンハウスの話をしていても、ずっと、当事者として、はっきり鮮明に生きている。そして、ずっと、お互いに関係を築こうとしている。
(偏見かもしれませんが)ケーキおばさんのケーキも、誰かのために、というニュアンスがかなり乗った食べ物ですね。

一生懸命、コミュニケーションをとろうとする当事者たちを、ただ見守る私、という関係になれる時間が好きなので、シムシティが好きだし、この作品が好きです。

そして、最後には劇場いっぱいにごま油の香りが広がり、
当事者性をお裾わけしてもらえます。
お腹すいた。お腹がすいたのは私。みんなでご飯を食べたいな、という気持ちが胸に残りました。



【見本市2024 Cチーム 公演詳細】

見本市2024
見本市2024

参加団体:
渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない
山口綾子の居る砦
あくびがうつる

会場:王子小劇場

日程:
2024年1月
6日(土)11:30(C)
7日(日)15:30(C)
8日(月)19:00(C)
9日(火)17:00(C)
受付開始・開場は開演の30分前。
上演時間は約100分予定(1団体につき約30分の上演)。

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(各回開演3時間前までご予約が可能です)


皆様のご来場をお待ちしております!!!!

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