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「立ってるだけでおもろいんですよこいつら」劇団二進数 インタビュー

佐藤佐吉演劇祭実行委員会が、参加団体の魅力を紹介するため稽古中のお忙しい所にインタビューを敢行!第三弾は劇団二進数の樋口龍成さんにお話をお聞きしました!

佐藤佐吉演劇祭2024参加団体インタビュー
ゲスト:樋口龍成(劇団二進数)
聞き手:内田倭史・前田隆成(佐藤佐吉演劇祭実行委員会)



稽古風景

俳優には、出演者でもあるけど、一番の観客であってほしい

内田 自己紹介をお願いします。
樋口 劇団二進数は、2018 年に慶應義塾大学の演劇サークルの創像工房 in front of.で出会った男子 6 人で結成した「まじめに巫山戯(ふざけ)るフリースタイル演劇集団」です。これは、作・演出をやらせてもらっている僕個人の話なんですけど、ものを作る時には自分の思想をいかに入れ込むかっていうことと、いかに大衆にウケるかっていう両輪が必要だと思っています。エンタメとしてやるために、音楽にこだわったり、過度な演出をつけてみたり、役者に自由にやってもらうアドリブシーンを入れたりもしています。
内田 へー!あの「脇役人生の転機」の時もそういう場面があったんですか?
樋口 ありましたありました。回を重ねるごとに固まってきたりはしてたんですけど。この情報を言ってくれたら、あとは何してもいいよ、でも演劇祭のルールで上演時間が45 分を超えたら減点されちゃうから、1分は絶対に越えないでね!みたいな感じでやっていました。
内田 あのバーの中でそんなことが行われていたんですね。
樋口 共演者の演技をこの距離(舞台上の相手役の距離)で見るって特等席じゃないですか。だから俳優には、出演者でもあるけど、一番の観客であってほしいって思ってます。笑かし合いたいんです。
前田 うわ〜いいですね!
樋口 目線だけで他の役者を笑わせに行く輩がいるんですよ(笑)。そういったふざけを、いかに許容できるようにログラインを引いていくかっていうのが、脚本を書いていて一番ムズイところですね。
内田 観ているとお互いにインスパイアさせ合ってる空気感を感じました。
樋口 悪く見れば野郎ノリみたいなところが強い劇団ではあるんですけど、特に同じ年代に伝えたいことが刺さればいいなって思っています。

内田 結成のきっかけは?
樋口 入っていた演劇サークルが人数が多くて脚本もコンペ制だったり、役者も脚本書いた人が選ぶオファー制だったりして、めっちゃおもろいメンツ揃ってるのに、全員で演劇することができないっていう状況があり、だったら外でやりたいって言い始めたのがメンバーのせこと早川で、この 2人が他の 4 人に声をかけたっていうのがきっかけです。僕も誘われた側でした。誰がどの役職をやるかも当時はあんまり考えてなくて、「いや全員書くし、全員役者でるし、全員で照明も音響も全部やるっしょ!」みたいな。全員が全員が全部できるに越したことはない、みたいな感じでやってたんですけど、なんか自然と僕が書くようになりました。全員役者で出るっていうのは変わってないんですけど、メンバーそれぞれが舞台や照明、対外的なやり取りなんかを分担していくようになりました。
内田 団体の運営もみんなでやってるんですね。
樋口 そうですね。この 6 人 と同じサークルの仲間でもう2人、制作広報の石井祥伍と舞台監督の竹内恵理香の 2人が劇団員として活動してくれて、すごくいろんなサポートをしてくれています。
前田 団体内に舞台監督と制作広報がいるってかなり強みですよね。
樋口 「仲間とワイワイしてたら、ここまで来れた」って言えるところまで行きたいですね。

稽古風景

死ぬまでにあと何回あるかな

内田 どんなふうに作品を作っていますか?
樋口 最初は飲みの場で決まることが多いですね。「公演やる?」って誰かが言い出して、「いや、やめようよ。」「もう無理だよ。」だの各々が言い合っているんですけど、酒が進むにつれて結局みんな「演劇やろうよ!!」「よっしゃやろう!」ってなることが多いですね。そこから「この時期にやろう!」「小屋を抑えた!」みたいなことがどんどん先に決まっていき、「じゃあ誰が書く?」みたいな話になると、みんなが僕を見るようになって「ちょっと待てよ!」って言いながらも引き受けて書く、って言うのが、ここ最近の作り方ですね(笑)。
前田 初動が勢いなんですね(笑)。
内田 脚本の題材は樋口さんが?
樋口 書きたいことはずっとあって。環境が変われば思うことも変わるじゃないですか?ここ数年は出会い別れが多いので、そういう時に感じたことを、どう落とし込めば作品にできるかな、と考えてますね。発信としては多分エンタメ企業と変わらなくて、ターゲット層を想定して、そのターゲットのお客さんにどうなってほしいかを決めて、じゃあ、最後のシーンでこんな人がいたらそれが達成できるかなっていうのを考えて…っていうふうに最後から始まりまで逆算して考えています。
内田 樋口さんは脚本と演出をやりながらご自身も役者として出演されますが、稽古はどう進めていますか?
樋口 お互いが見合って意見しあってますね。僕も役者をやりたくないわけじゃないんですけど、脚本を書いて演出もする立場として、自分も出演しながらみんなにフィードバックすることが初期はやりづらかったです。けど最近はみんなが演技指導とか脚本的な目線も培ってくれていて、対等に全員で意見できるようになってきましたね。おもんないときは「おもんない」って言います。それで仲悪くなったりする感じではないんで。揉めたりはするんですけど、なんかちゃんと健全なぶつかり合いはできているかなっていう。そこが友達同士でやってるいいところではあるのかな。
前田 なんか、TEAM NACSみたいですね。
樋口 あー!それはすごい言ってます。各々が各々の場所で活躍して、年に一本とか、数年に一本でもいいから、このメンバーで再集合してお互い変わったところをぶつけあえるような形にしたい、っていうのはあります。でもみんな共通で、赤字だったらやる意味ないって思っています。なので集客数を担保するためにも定期的に公演打っていかないと、とも考えているんですが、場を作るのはなかなか難しいなという悩みがあります。
前田 シビアに演劇を捉えてますよね。
樋口  僕らは24、25歳になる代なんですが、だんだんみんな就職したり資格をとったりする中で、友達でやってるワイワイが続いていながらも、全員が現実を考えないといけないフェーズだなと思っています。自分が書いたものに対して何十人規模の人が考えてくれて 1 本の作品になるっていう経験は死ぬまでにあと何回あるかなって考えたら、めっちゃ尊くないですか?あと 100 回は絶対できないじゃないですか?そう思うとありがたいなーと思いますね。
前田 もうだいぶ悟ってません?
樋口 (笑)。
前田 熱さと冷静さが両方ありますね。

稽古風景

男子高校生だと思って欲しいんですけど…

内田 創作や団体の運営の過程で行き詰まった時、突破口を開けるためにやっていることはありますか?
樋口 ふたつありますね。ひとつは、結構現実的なところで言うと「マジで話し合う」。今日の稽古はこのシーンをやる、みたいな予定があったとしても、それを全部取っ払って脚本の話だけしたり、お互いの今思ってること全部言い合う、みたいなことをしてます。日中の予定が合わないので、深夜稽古とかをするんですけど、夜通し思ってることを口に出し合ったりします。例えば、「お前の日頃のそういう態度がよ!」とか、もうなんか脚本と関係ないところまで言い合ってますね(笑)。
内田 一回全部出しあうわけですね。
樋口 はい。もう 1 個は気晴らしですね。飯をめっちゃ食うんですよ本当に。男子高校生だと思って欲しいんですけど…ラーメン屋とカレー屋をハシゴして飯食ったりします。
内田 頻度じゃなくて量の話か(笑)。
樋口 1 回の量です。
前田 すごいな…。
樋口 1人が「 3 倍盛りいくわ」って言い出したら、みんなそれより下を選べなくなっていって。
前田 いくつになっても続けてほしいです。
樋口 でも最近みんな年で…。ラーメンの濃いめを選べなくなったり、替え玉できなくなったり。田町に麺屋武蔵っていうつけ麺屋があって、通常料金で 3 倍盛りまでオーダーできるんですけど、早川は追加料金を払って 4 倍盛りいくんですよ。勝てねえって思いましたね。

稽古風景

立ってるだけでおもろいんですよこいつら

内田 演劇をやっているなかでどんな瞬間が好きですか?
樋口 個人的には、みんなが楽しそうにしてるだけで満足ですね。あんまり良くないかもしれないですけど、ひたすら稽古をしてきたのにも関わらず、本番になった瞬間、舞台上で役者が今までと違うことをし始める、みたいな瞬間が好きですね。許せないけど愛くるしくて。いや、何のための 2 ヶ月だったんだよ!と思いながら。それでウケてもスベってもたまんねーってなりますね。立ってるだけでおもろいんですよこいつら。本当に嫉妬ですね。
内田 今回の作品について教えてください。
樋口 実は二進数で長尺の作品をやるのが今回が初めてです。今まで「有象無象シリーズ」というアドリブ満載のオムニバス形式の作品や、学生演劇祭での45分の作品だったりをやってきて、「死ぬほど生きたい」って言う2時間の作品を作ったこともあったんですがコロナで中止になってしまったので、世に2 時間尺の作品を出すっていうのが初めてであり、我々ちょっと緊張しています。ラフな気持ちで見に来て欲しいんですけど、笑えるだけじゃなく、ちょっと考えるところとか、涙するところがあってくれたら嬉しいです。ふざけた男どもだけどこんなのもできるんだぞっていうのをやろうとしているので、そこは我々の挑戦として届けられるといいなと思っています。
内田 楽しみにしています。ありがとうございました!

公演ビジュアル

仲間のことを楽しそうに話す樋口さん。熱さと冷静さを兼ね備えた劇団二進数が迎える新しいフェーズは、要チェックです!『死して尚、生きてナオ』は3/1(金)〜3/3(日)、王子小劇場にて。豪華ゲストのアフタートークも予定されています!

公演詳細

劇団二進数
まじめに巫山戯(ふざけ)るフリースタイル演劇集団。
2018年、慶應義塾大学の公認演劇サークル「創像工房in front of.」の同期男子6名で結成。その後スタッフ2名が合流し、現在は劇団員8名を軸に活動している。
東京学生演劇祭2022にて『脇役人生の転機』が大賞を受賞。同作で第8回全国学生演劇祭に東京代表として出場。惜しくも全国制覇とはならなかったが、多くの支持を得て審査員奨励賞及び観客賞を受賞。さらに佐藤佐吉演劇賞2022にて、同作の脚本・演出を務めた樋口龍成が優秀演出賞を受賞。
「今の自分たちを届けたい」という想いから等身大の姿を映すことを重視しながら、「熱さ」と「抜きの笑い」の二つから成る作品たちを世に放つ。たとえひとりでは
0と1しか表せずとも、結集すれば生みだせる表現は無限大に広がることをモットーに、自分たちにしかできない表現を追求していく。

佐藤佐吉演劇祭2024 
劇団二進数第七回公演
『死して尚、生きてナオ』
〇会場:王子小劇場
〇脚本・演出:樋口龍成
〇出演:せこはやと 永井大創 早川留加 樋口龍成 松尾樹
〇詳細はこちら
https://www.nishinsu.com/shishitenao.html (団体HP)
https://en-geki.com/sakichisai2024/nishinsu.html (演劇祭特設サイト)


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