第3回寄稿 山口綾子の居る砦 「山口綾子の居る砦のカタラジオvol.0」
見本市2024「しばいぞめ」では、活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います。
【公演詳細】
見本市2024「しばいぞめ」
2024年1月5日(木)ー9日(日)@王子小劇場
インタビュー企画に続いて"団体からの寄稿"を集めました!
公演に先駆けて、団体さんの個性を知っていただく機会になれば嬉しいです。
第3回目の寄稿は山口綾子のいる砦さんからお寄せいただきました
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山口綾子の居る砦の芝居初め、芝居染め
「しばいぞめ」に絡めたテキストということで、わたしたちは山口綾子の居る砦という団体にとっての「芝居初め」「芝居染め」について、山口綾子の居る砦メンバーの二人(飯尾朋花、小澤南穂子)で語らったものを書き起こしました。
山口綾子の居る砦を始めた理由から、今まで団体を続けてみて、変わったこと変わらないこと、そしてこれからのことなどについて、はなしています。わたしたちを知っていただき、興味を持っていただけたら幸いです。
TOPIC① :山口綾子の居る砦の、しばいぞめ(芝居初め)
Q. そもそもの立ち上げたきっかけは?
飯尾 なんだろう、タイミングがあったから?
小澤 飯尾さんと団体作るとは思ってなかった。
飯尾 なほこは団体つくりたい願望あった?
小澤 あったけど、いかんせん一人でできない性分で。俳優としていいへんじ(飯尾、小澤がともに所属する演劇ユニット)にも入ってたし、大学卒業後の演劇を続ける居場所はあった。でも、同時に、その時期に脚本を書く機会もあったりして、演劇にしたいことがたくさん生まれてもいた。ちょうどそのときに飯尾さんと一緒に公演やってた気がする。
飯尾 私も、団体作ることに興味自体はずっとあったけど、一人では無理って思ってて。で、誰とやるんだってなったときにあんまり現実的な相手が思いつかなかったんだけど。小澤さんとは結構公演沢山一緒にやってたし、普通にフラットに喋れる相手だしで、仕事が一緒にできる友達みたいな、レアな印象があって。団体として誰かとやっていくなら、「友達!」とか「仕事相手!」ではなくて、こういう相手がいいんだろうなってどっかで思った気がする。小澤さんも作演興味あるって言ってたし。
小澤 そういう意味ではちょうどいい距離感だったのかも。
飯尾 どっちからやる?って声かけたんだっけね
小澤 私の記憶が正しければ、私から声をかけたと思う。稽古帰り、駅の階段で
飯尾 えもっ
小澤 朋花はやりたいとは言ってたけど、ともかから声をかけてくる感じではなさそうだなと思って、「やる?」って。ここで立ち上げなかったらもうチャンスないとも思ってたし。
飯尾 確かに
Q.「前向きに逃れる」という団体のテーマについて。
小澤 ちなみに、なんで団体テーマ「前向きに逃れる」になったんだっけ?テーマがあった方がいいってなったんだっけ?
飯尾 最初からある?
小澤 おそらく
飯尾 そんな頑張んなきゃダメなの?みたいな話しなかったっけ、逃げるのダメなの?いいじゃんみたいな話してないっけ。
小澤 逃げたいみたいな気持ちあったくない?世界に新しい空間をつくりたいと思ってた。全てのコミュニティーを逃れて、新しい空間をつくってそこでのびのびやりたいみたいな。
飯尾 頑張らないといけない、上手くなければいけない、知識がなければならない、耐えなければいけない、みたいな大変なことに「立ち向かう」ことがベターとされる感じに「なんでだ?」と思ってた記憶がある。
小澤 私はわりと逃げることに対して「いいのかな?」って思ってた。「逃げる」、「逃れる」っていう言葉の違いの話もしてた気がする。最初は「前向きに逃げる」ってともかが出してなかった?
飯尾 そうかも
小澤 その「逃げる」を、「逃れる」にしたいですって言った記憶がある。「逃げる」を前向きに捉えることが、当初私には難しかった。
TOPIC②:山口綾子の居る砦の、しばいぞめ(芝居染め)
Q.始めた当初から何か変わった?しばい染まってみて。
小澤 旗揚げの時は洗練されたものを作ろうとしてた気がする。団体として戦えるものを作ろうとしてたんだと思う。今はだんだんその呪縛は解けてきたような。結構軽やかになった。
飯尾 最初は、二人とも別に所属団体がある上でたちあげたから、「なんで?」って思われたりするだろうなと。だから既にある所属団体とは違う試みが出来たらいいなと思っていた。外から見ている人に、団体をたちあげた理由や特徴、独自性を見せられた方がいいんじゃないか、団体として立ち上がるための基盤をつくらねばという気持ちが少なからずあった。
今はそんなに、そこの差別化とかに躍起にはなってない。「まねっこにならないように!!」みたいな、強迫観念みたいなものはない。自分たちが楽しくできることを優先させてもいいなと思う。「山口綾子の居る砦」を観にきてくれる人たちにとっての心地よさを大切にすることが健康だと思うようになった。
小澤 これまでの公演を経て、団体のスタイルが結構見えてきた気がしてる。最初は赤ちゃんみたいな、輪郭をもっていない、ツルツルな感じ。飯尾と小澤が違いすぎたから将来像が見えなかったんだよね。
飯尾 思っていたよりポップだったね。もっと肩で風を切って歩く人のような団体かと思ってた。二人とも好きなことが違うってこともあって、お互いが好きなタイミングでそれぞれ好きなことをやる団体として立ち上がったから。割とキョロキョロしながら歩く人みたいになった笑
小澤 確かに肩で風切ってはないね笑違ってたからこそ模索する必要があったし、その結果が今のポップさなのかな。
Q.これからどうなっていく?
小澤 今、我々が生きてて逃れることのできないことはどうしてもあるし、作品にも反映される。その逃れられないことに対して、真っ向から対峙するとかではなく、安心できる距離や角度から一緒に触れてみるみたいな作品を作れるといいな。そんな団体になっていきたい。それこそ居場所や砦になっていきたい。
飯尾 そうね〜。飯尾・小澤の距離もそうだけど、ちょうどいい距離感って大事。そういう意味で「前向きに逃れる」っていうテーマがあれたらいいと思う。何かから目を背けたり、なかったことにするみたいな、バイト飛ぶみたいな「逃げる」ではなく、心地よい距離まで、一旦、逃れてみる、みたいな前向きさがあると。団体としても作品でも。
小澤 オルタナティブを見つけるとか、抜け穴を見つけるとか。納得のいく逃げても良さ。
飯尾 立ち向かい続けるのではなく、いっかい離れたりできるみたいな、プラスの逃れる。
小澤 あといろんなことに挑戦したいね
飯尾 したいね、ラジオしたいってずっと言ってるね
小澤 それは立ち上げた時から変わってない。
飯尾 tic tokとかyoutubeにも興味持ってたもんね。
小澤 団体の輪郭が少しずつ見えてきたことで思うのは、山口綾子の居る砦の作るものは結局山口綾子の居る砦の作品になるんだなということ。差別化しようと躍起にならなくても。大きく違っている人間である飯尾と小澤の、その中でも一致する楽しいと思うことが、団体の活動になってるから。だから、今は演劇公演中心だけど、枠にとらわれず、やりたいことをやることを恐れなくてもいいんじゃないかなとも。やりたこと先行で、軽やかに。
飯尾 やりたいことじゃないと動けないよねえ
小澤 そうなんだよ
飯尾 枠組みができてそこで頑張りなさいだと逃げ場じゃなくなっちゃうからね
小澤 ハッ!!!
飯尾 それは理想じゃないよね。かといって輪郭がなさすぎるのも良くないよね。
空気としては、「におい」くらいの、なんかここらへん山口綾子の居る砦のにおいする〜くらいの団体の輪郭
小澤 実家の匂いみたいな
飯尾 それを築いていきたいね
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
見本市2024のためにつくっている作品『目が覚めて、冬』も、「前向きに逃れる」ことを大切に、互いに言葉を重ねながら作っています。冬の間に目覚めてしまった熊の話です。ぜひ、山口綾子の居る砦の匂いをかぎに、劇場までお越しください。
山口綾子の居る砦
飯尾朋花
小澤南穂子
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◎作品情報◎
山口綾子のいる砦「目が覚めて、冬」
~あらすじ~
冬眠から早く目覚めすぎてしまった熊と、冬眠しないつもりだったのに寝落ちした熊が、せっかくだからと初詣に出かける話。
~作・演出~
飯尾朋花、小澤南穂子
~出演者~
クマ:小澤南穂子
ベア:飯尾朋花
~参加チーム・タイムテーブル~
Cチーム
(渋谷/もしくは/私/たち/は/何も知らない、あくびがうつると同時上演)
2024年1月
6日(土)11:30(C)
7日(日)15:30(C)
8日(月)19:00(C)
9日(火)17:00(C)
受付開始・開場は開演の30分前。
上演時間は約100分予定(1団体につき約30分の上演)。
〜ご予約(山口綾子の居る砦扱い)〜
https://shibai-engine.net/prism/pc/webform.php?o=1byvtxvl
※次回は明日、あくびがうつるさんからの寄稿です。次回もまたお会いしましょう!
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