新川さん『ミステリー小説の書き方、教えてください。』はTRPGシナリオに応用できる
いきなり動画リンクの紹介から始まるが、新川さんのnoteライブがとにかく面白かったし勉強になる内容だった。小説家や編集者向けと宣伝されているが、ストーリー作りという点でTRPGのシナリオ作りにも活かせる内容だと感じた。
私は小説は書かないが、クトゥルフ神話TRPGのシナリオを作ることが多い。小説で言う主人公が、TRPGシナリオでは、”遊んでくれるプレイヤー”になるという特殊性はあるものの、外枠のストーリーやサブNPCの考え方などは、小説を作る過程と変わらないと思っている。
動画内で紹介されている特に面白いと感じた点を紹介する。
論理性のポイント
論理的=読者が納得すると定義していた。シナリオに置き換えると、ロールプレイしているプレイヤーがノイズを感じないようにする前提だと解釈した。
TRPGはキャラクターを演じて物語に入り込む以上、中の人の心がキャラクターから離れてしまうのは避けたい。例えば、無理な展開・あまりにもご都合主義なストーリー・空気を読まなければ破綻する内容を提示されると、「ん?」と現実に引き戻される。その瞬間は物語のキャラクターから離れて完全にプレイヤーとしての意識に戻されて、没入感がリセットされる。
動画の中ではあくまで謎に対する論理性の話をしているが、汎用的なのでポイントを引用したい。
①物理的に可能なのか?
クトゥルフ神話シナリオの場合、「10メートルの絶壁から飛び降りて逃げるしか手段が無いです。跳躍に成功したら無傷です。」等という展開があれば、流石に無理があるだろうとツッコミを入れてしまう。そもそも人間は10メートルから飛び降りて帰ろうとは思わないし、跳躍はそんな万能技能ではない。
いくらフィクションのゲームでも、現実の我々が遊ぶ以上、「このシナリオでは跳躍成功で無傷になるので大丈夫です」と言われたところで、あまりにも現実とかけ離れた展開を用意されると物理的に無理だろう、という抵抗感が生まれてしまう。
➁心理的に妥当なのか?
私がシナリオ作りで難しいのが➁である。敵の動機が客観的に妥当なのか?という事だ。
クトゥルフのシナリオだと、よく黒幕が邪神を復活させる展開が多いが、その黒幕の動機が分かりにくいと、プレイヤーの納得感も少なくなる。勿論、クトゥルフでは正気度という概念があり、正気度0の人間の思考は理解できないもの、と割り切って無理な動機で邪神を復活させてもいいが、違和感は消えない。自分でもよく書く動機として「永遠の命」のために神と契約する、的な敵を出しがちなのだが、毎回書きながら「永遠の命とかいらんよな…」と思ってしまう。
この①②は、とにかく1つ1つ考え抜いて粗を無くす以外、方法が無いということなので、地道にブラッシュアップするしかない。
論理をごまかす裏ワザ
リアリティレベルを統一する
動画では、例えば刑事を主役にした場合、職業柄「刑事はこんな捜査をしない」という制約が多く、それを無視した展開だと読者が違和感に感じるという話をしていた。主人公はなるべく素人の方が良い、という結論だ。
これはシナリオにも言えて、この探索者で来られてしまうとシナリオの調査が出来ない、展開上プレイヤーが動きにくい等の不都合が無いようにした方がいいと思う。もし専門的な内容を扱う場合は、今流行りのシナリオのように、ガチガチにハンドアウトを設定して世界観に合う探索者を作ってきてもらうしかない。
小説と違い、TRPGはプレイヤーが作った作者の知らない人たちが物語の主人公になるため、このコントロールがとにかく難しい。
他にも興味深い内容が盛りだくさんだったため、シナリオライターさんにぜひこの動画を見て欲しい。