遺書

だいたいのおじさんは、宝物の行方が気になる。

おじさんにもなると宝物がある。だいたいあるもんだ。
多くのおじさんの宝物は家族だ。
愛するお嫁さんや、かわいい子どもたち、愛してくれる両親。
オジサンの年になると、友達の子どもですら非常に愛くるしく感じる。
私、オジサンはいい年して独身だ。
元々コレクター気質のあるオジサンはモノを大量に持っている。
趣味のモノなので、ほとんど金銭的な価値はない。
何がどうなろうと誰も気にしないだろう。
しかしながら、それらを愛し、必死こいて集めてきたオジサンにはそれなりに思い入れがあるのだ。

昨今、突然の事故や狂気の事件をよく目にする。
件数が増えているのか、露出が増えているのかは知らないが、あっさりした死は現実的に襲ってくるものだと感じる。
日常よい行いをしていても、闇で暗躍する鷲巣でも平等に突然は訪れる。

そもそも遺書について初めて考えたのは22歳の頃だった。
貧乏学生だったオジサンは、命を削ってCDやギターを買っていた。
バイトをしながらも本当に貧しい生活を送っていた。
ふと、自分が死んだとき、大量に集めたCDや、今思うとチープな楽器・機材がどこに行くのかを考えた。
その時勉強していたHTMLを使い、自分の遺書のサイトを作ったものだ。
しかしながら、更新の面倒くささや、実際持っていたモノの少なさから、いつしか時間と共に消えていった。

死が現実的なものになりつつあり、モノに圧迫されながら生きる今、とうとう遺書を準備してはどうだろうと踏み切ることにした。
真に迫った遺書を書くほど人生が円熟していないので、ほとんど遺品整理の準備書きにはなるが、自分が死んだとき役立つことと思い、これから更新しつつ記録したい。

価値はないが思いいれのあるモノたちなので、思い入れを記しつつ、受け取ってほしい人を選んでいく。勝手に選んでいくので、記された人は持っていこうが、売り飛ばそうが、譲渡しようが好きにしてほしい。
自分にとっては宝物でも、他の人にとってはゴミになりうる、それがモノってものだ。
以下表記の「価値」は一般的な価値、特別な知識や技術を持たない人にとっての価値を指し示す言葉として使用する。
死ぬまでの間に徐々に更新することとする。


CD
これが一番価値が低く、数が多い。オジサンにとっては非常に価値がある  が、まわりと違いポップス嗜好の一般的な価値は低い。
誰かを選んで書き始めるとキリがないので、一番簡単な形見分けとしたい。
特にYELLOW MONKEYやBen Foldsやサザンなどは同じCDを何枚も持っているので、みんなで仲良くわけわけしてほしい。好きな人が全取りするのも、それはそれで嬉しい。
20枚にも満たないが、愛着あるものだけを集めたレコードはシゲに持っていってほしい。

楽器
楽器については数が多いので、これぞってやつのみ記す。他は適当にもってってね。

フジゲンのテレキャス
15年くらい前に初めて買ったシングルコイルのギター。初めてのセミオーダーギター。今のバンドを始めるきっかけにもなり、一番長く弾いてるギター。
非常に愛着もある反面、使用感もつよい。一般的な価値は低いだろう。
しかし、バリトラのメイプルネック、マグナムロック、リンディ・フレーリンのブルーススペシャルⅢ、軽量アッシュボディ、ぺらぺら剥がれるラッカー塗装、こっそり裏にいるトロピカルフィッシュなど使用する分にはかなり便利で、いい音がする。
大事な大事なギターはあらたくんに。ぜひ今後役立ててほしい。

アイバニーズのRG
パンク(メロコア)に心酔してた時に買った1本。
OFFSPRINGにあこがれ、TONE ZONEとAIR NORTONを乗せている。
高いものではないものの、剛健な作りはさすがアイバニーズという1本。
今でもバリバリ弾けるはず。轟音大好きかとーちゃんに。

ダンエレクトロ DC3SP
一目ぼれして、19歳の誕生日に買った大好きな1本。
音も作りもしょぼいため、ステージでは2回程度しか使えていない。
しかしながら、自分の進みたい方向や、こうありたいという生き方を示してくれた大切な1本。世の中金じゃないのだよ。
誰もほしくないこの1本を誰にたくすか非常に迷うところではあるものの、オハラに。いずれ建つ豪邸の飾りにでも使ってほしい。ゆきやが楽器に憧れる歳になったら、弾かせてあげてほしい。

アイバニーズ ICEMAN IC-500
恐らく自分の持ってる楽器の中で一番価値の高いギター。
シリアルから95年式、フジゲン製でアメリカからの逆輸入品で間違いないはず。
パーツはオール純正で、ピックガードのみ欠品。
攻撃的な見た目に反して、音はオールマホでSGっぽい硬派な仕上がり。
ハードケースもあるし、売ればそれなりの金にはなるはず。
この変態ギターはギターオタクの23にぜひもらってほしい。

エピフォン サンダーバード
バンドからベースが抜けた際、ほなベースやるかと思って買った世界で一番かっこいいベース。
もちろん価値なんかないけど、サンダーバードってだけで充分価値があると思うのは楽器好き、HEESEY好きの性。
ドノーマルで、使用感も少ない。
これもぜひオハラにもらってほしい。俺のHEESEY愛をぜひ壁面に。

エフェクター
ロックンロールバンドを始めたため、活躍の場がほとんどなかった大好きなエフェクターたち。
それを繋ぐだけでバカみたいな音がでる宝箱。
価値はピンピリで50個弱はあるはず。作ってないエフェクターの部品もぼちぼちある。特にAC128は近々絶滅するはずなので、大切に使って欲しい。
4ノブの自作はZEN DRIVEのコピーで、オレンジのやつはランドグラフDODのコピーで特にお気に入り。
適当に弾いて、いらないやつは売り飛ばしてくれれば。
音の探求者、わんぱくとあらたくんと23に。

DVD/ブルーレイ
これもこれぞって奴だけ書くので、他は適当にどうぞ。

北の国からDVDBOX
何度観たかわからない大好きなドラマ。冷静に観ると非常にゲスいドラマながら、それが引き立てる家族ドラマはオジサンにとって理想の家族像。
お笑いとして観る事もでき、涙を流すことだってできる名作。
これはぜひチャルメラに。子どもたちにもいずれ見せてみてほしい。

オタール・イオセリアーニ2作
月曜日に乾杯!と素敵な歌と船はゆくの2作品。
オジサンを単館系映画に叩き込んだ思い出深い2枚。
ぼけーっと観て、特にどうのこうの感想を述べなくてもいいんだなぁと思った作品。
とにかく美しい風景なのに暗い絵面ときれいな音楽、いじいじしてすっきりしない主人公と周りの陽気な隣人。
雰囲気もんといわれればそれまでだけど、そんな映画があってもいいんじゃない?
これはぜひしげいに。月曜日の方はヴェネチアの話しなのでぜひ。

ローマの休日
これもしげいに。別段すぐれたり、特殊ではないストーリーを名作にしているのは、オードリーとローマの街の美しさだろう。
あこがれのローマ。憧れのオードリー。ぜひこれを観てローマにふらっと出かけて欲しい。

王様のレストラン
今振り返ると恐ろしいほど豪華な配役で楽しいドラマ。
三谷幸喜の素晴らしい脚本と、恐ろしいまでにできあがったキャラクターが毎回ちょっとした問題を抱える名作。
色恋モノが持てはやされた時代に、堂々とした喜劇。
キャラクターに思い入れを持つオジサンには嬉しい群像劇。
山口智子がかわいいし、おじさんたちも非常にかわいい。
これは、ぜひりおに持っていってほしい。楽しいテレビを作っておくれ。

音楽映画一式
デトロイト・ロック・シティ、スクール・オブ・ロック、フェーム、サウンド・オブ・ミュージック、クレイジー・ハート。
アメリカ全開のバカでキャッチーでおもしろい映画たち。
中でもおすすめはフェーム。大学生時代、深夜適当にテレビをつけたらやってた映画。
その時見たのはエンディングに近い部分。若者が無下に傷つきながらエンターテイメントに突き進み卒業ミュージカルを見せる部分。
あまりにも短く意味もわからなかったけど、すごく感激した。
その後、たまに気になり色んな手を使い検索してフェームに辿りついたときは本当に嬉しかった。
いつまでも青いこの映画を持つのはきみちゃんしかいない。
ぜひ、その音楽性を加速して欲しい。

懐かしのザッツハリウッド
ザ・ロック、アルマゲドン。
大きなテレビを買って、DVDの画質に満足できなくて初めて買ったブルーレイ。映画館で観てからどっちも20回は観ている。
演者も大好きながら、音楽が本当に素晴らしい。映像もすきだなーと思ってたら、たしかどっちも同じ演出監督・音楽監督だった。
もう、コッテコテのハリウッド映画ながら、毎度毎度感動してしまう。
中学生の時はザ・ロックを、高校生の時はアルマゲドンを、映画館で見た興奮は今も根強い。
これはオハラの息子ゆきやに託すよ。次代にもこの名作を知ってておくれ。

海外ドラマDVD
ライ・トゥ・ミー、デクスター、の2作。
あんまり有名じゃないものの、大学生の頃から大好きだった2作品。
海外ドラマがすごくすきで、ギャルっぽい作品以外有名な作品はほとんど観てるオジサンが圧倒的一押し。
どちらも人の心の闇に焦点をあてた作品で、サブスクとかにもほぼなってない作品。
ライブなどで終電を逃してビデオ試写室に泊まるときは毎回これを観る。
陽気な音楽とキャラクターの味の濃さが非常に心地よい。
デクスターについてはシーズン2以降はまぁ観なくてもいいけど、とりあえず全部持ってって妹の美咲。

テレビセット
大学時代に買ったBOSEのスピーカーセットと、10年以上テレビを持ってなかったオジサンが初売りで手に入れたレグザ。
ちょっと古くなってきたけど、おっきなテレビ。
今となっては価値も薄いかもしれないけど、大画面で映画みんのはウキウキするよ。
たしかトニーんちのテレビ若干壊れかけてたし、よければどうぞ。

時計
オリエントの機械式
社会人になったときに先生にもらった大事な時計。
軽くてしっくりきてデザインもでかい顔しない、いい時計。
20年近くたったけど今も現役のかわいいやつ。
時計が好きなよっちゃんの息子こーちゃんに。

ROLEX エクスプローラ
質実剛健。維持費はかかるものの、恐らく持ち物の中で一番価値があるかもしれない。2022年の8月にオーバーホールしてます。箱ワランティつきです。
あんまり気に入ってないけど、もしものときに金にはなるんじゃないかな。
いつもお金ないのに付き合ってくれるティモンくんに。

バルカンドリフター
99年製。2022年8月に車検通してる。
インディアンスの衣をまとったカワサキ製のかっけーやつ。
おすすめは3つ目のライトと、ふっかふかのシート。
1日500キロ走っても腰が痛くならないのはすごく優れてるんじゃないかな。
手に入れた時はどこまで行けるのかドキドキしたよ。
ちょっと大きくて邪魔かもしれないけど、走行距離も4万キロ越えてるけど、超元気でまだまだ走れる。
トニーに。みーしゃに怒られそうなら売ってもええよ。
バイクのツーリングでしか感じられないモノはあるよ。ぜひバンドに役立ててくださいよ。

2022年11月7日 初記



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