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ホームレスから教わった生き延びる極意

小学1年生の頃、母親と上野の美術館に行こうという話になってお出かけをした。
東京に出る、ということで普段は田舎暮らしの母親がルンルンでお洒落しようと支度をしていたことを思い出す。

当時の私に美術館の良さというのは正直良くわからなかった。
しかし、上野駅のホームに御座を引いて座りながらまるで自分の住居のように振る舞っていたおじさんのことは記憶に残っていた。
彼らに何か驚かされたのだが具体的に何をされたのかは不思議なことに覚えていない。存在、が強烈で他が覚えていないのだ。

母親からあの人たちはホームレスなのだと教わった。
家が無い。だからホームレス。
どうして、そうなってしまうのだろうと当時は不思議に思った。何か人生に失敗するとああなってしまうという恐怖心のようなものも芽生えた。
高校受験、大学受験、就職活動、人生の大事な場面において彼らの存在がチラついた。

そこから30歳になるまで僕のホームレスイメージというのは変わらなかった。

30歳になった頃、0円ハウス学というイベントがあった。
講師は坂口恭平さん。
「独立国家のつくりかた」という本で一部では有名な方だ。
当時は「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」という本を出していてその一環としてこのイベントをされていたのだと思う。

なぜこのイベントに参加したのかで言えば、もしホームレスになっても大丈夫なようにしておきたかった。もしくはホームレスになったらこうなるというものを見ておきたかったというのがある。

0円ハウスとはなにか。
それはモバイルハウスのことだった。

モバイルハウスとはなにか。
それはダンボールハウスのことだった。

はい突然ですが、ここでクエスションです! 
当時0円ハウス学というイベントでホームレスの方から実際レクチャーしてもらいダンボールハウスを作ることになったのですが、顔が見えるように作った方が良いとアドバイスを受けました。
ハウスなので密閉されて全部隠れた方が良いと思いがちですが、顔が見えることで得られるメリットとは一体何なのでしょうか?



・・・


・ ・ ・


正解は…

「顔が見えると火を気軽に投げ込まれにくくなるから」
でした!

子供も大人も火を投げ込んでくるとのこと。
そしてこれはホームレスあるあるらしい。

この言葉は今でも記憶に残っている。
生きたノウハウとはこういうことを言うのだ。

人間がそこにいるという明示をしっかり出すことによって、最も避けたい事象を避けることに成功している。
弱さを出すことで逆に最高のリスク回避となる。

0円ハウス学ではホームレス生活について他のこともリアリティをもって色々教わったのだが得られた感想としては「これなら会社員していたほうがまだ楽だ」だった。

今どんなところで生活して、どんな仕事を送っているかというのは人生の一場面を切り取ったものに過ぎない。

誰でも仕事がうまくいかなくなることだってあるし、生活にしても落ちぶれたと感じることもあるだろう。

そうなったとしても、ダンボールハウスに火を投げ込むような人にはなりたくないなと隅田川を見ながらふと、思った。

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