【食文化】醤油の話:応用編(1)〜生しょうゆってなんだ⁉︎
ラーメン店で、醤油ラーメンを頼もうとしたら
「淡口醬油」「たまり醬油」「白たまり醬油」
という3種類のラーメンがありまして…🍜
そんな書き出しから始まった「醤油の話」シリーズ。
醤油のヒミツを辿っているうちに随分と長い歴史に驚かされております😮
そもそも、醤油には
①濃口 ②淡口 ③溜 ④再仕込み ⑤白
という、5種類のタイプがあることが判明。
更に、「醤油の歴史」を調べることで、醤油の基礎がようやく理解できました🤔。
俄然、醤油に興味が湧き、スーパーに行き、醤油売り場を見てみたら、
様々なメーカーの醤油が陳列されていたのですが
「こいくち」「うすくち」「さいしこみ」に並んで
「あまくち」「減塩」「だししょうゆ」「さしみしょうゆ」「丸大豆」
など、たくさんの種類が販売されております。
あれ?醤油って5種類じゃなかったっけ😰???
更に目についたのが「しぼりたて生しょうゆ」!
生ビールならわかるけど、「生しょうゆ」って一体何だろう???
「生しょうゆ」をググって調べると「火入れをしていない醤油」と出てくるのですが、
そもそも「火入れ」って何??
さすが、日本が誇る「醤油」の世界は奥が深い!
醤油の歴史がわかった程度じゃ、醤油の世界の半分も理解しておりません💦
前回最終回を迎えた「醤油の話」ですが、
今回からは「応用編」として、醤油の作り方から、醤油のヒミツを探ってみます🧐。
1. まずは醤油ができるまで
そもそも、醤油ってどうやって造られているのでしょー?😅
酒蔵のように蔵元と呼ばれていたりもしますが…。
醤油の製造工程を簡単に紹介します🧐
(1) 原料処理
醤油の原料は「大豆」🫘と「小麦」🌾。
昔は大豆だけだったり、大豆と大麦を使っていたようですが、江戸時代から小麦が使われています。
大豆と小麦の割合は、同量の1:1が基本ですが、
たまり醤油は、大豆がメインで使われていて、
白醤油は、小麦がメインで大豆よりも多く使われています。
因みに、大豆を使っていない醤油は、醤油とはみなされません。
例えば、白醤油の一部で小麦だけで醸造したものや、ナンプラーなどの魚醤は、醤油ではありません。
醤油に使われる大豆には「丸大豆」と「脱脂加工大豆」の2種類があります。
乾燥した大豆を蒸して、小麦は炒ります。
炒られた小麦は細かく割砕されます。
これを混ぜ合わせる。
砕かれた小麦が蒸された大豆の表面を覆うのです。
(2) 麹づくり
蒸した大豆を炒った小麦に混ぜ合わせて、
「種麹」を加えて、麹菌を繁殖させたものが
「麹」です。
この「製麹」という作業は
麹室とよばれる、高温多湿の密閉された空間で、
3日間ほどかけて、職人の手で丁寧に行われます。
「種麹」が成長する過程で生み出されるものが酵素。
この酵素が、大豆のタンパク質を「アミノ酸」に、小麦のでんぷんを「ブドウ糖」に分解。
この酵素のおかげで、旨味と香りに満ちたおいしい醤油になるための下地ができあがるのです。
麹菌が繁殖しやすい「温度」と「湿度」を調整し、分解能力の高い「酵素」を生み出すことが、まさに職人の腕の見せ所。
この良し悪しが、醤油の味を決める重要な工程となります。
酒造りもそうですが、昔から「蔵には神様が住んでいる」と言われてきました。この神様が「麹菌」のことだと思われます。
先日放送が終わったNHKの朝ドラ「らんまん」の中で、
子供の頃、高知の酒蔵で育った主人公万太郎(神木隆之介)の姉・綾が蔵に入ろうとしたところ「おなごが蔵に入ったらいかんですき!」と叱られるシーンがあります。時代は江戸・幕末の頃かな。
「酒蔵の神さんがおなごを嫌うき。酒が腐りよる」
なんて酷いことを言われていましたが、蔵の奥では、この製麹をやっていたのかもしれませんね😅
酒の神様の正体は麹菌。
この麹菌が女性を嫌うというのは単なる迷信ですが、この「製麹」という作業は、当時は神事とされるほど、貴重なものだったと思われます。
日本酒も醬油も製造工程が似ていますので、ついつい想像してしまいます。
麹のことがわかると、TVドラマの何気ないシーンにも面白さが増しますね📺。
(3) 発酵・熟成
麹室から、たくさんの胞子がついた「麹」を取り出す作業を「出麹」といいます。
この麹に、塩水を混ぜたものが「諸味」です。
この水分の多い味噌のような状態の「諸味」を、木桶やタンクに保管して、長い長い時間をかけて熟成させます。
職人は攪拌というかき混ぜる作業を定期的に行い、空気を送って、乳酸菌や酵母菌といった微生物の働きをサポートします。
この諸味を発酵・熟成させる期間は、半年から3年という長い年月を費やします。
発酵・熟成の期間は、醤油の種類や蔵元によって異なっていて、「醤油の個性」を育む、要因の一つとなっています。
(4) 圧搾
十分熟成した「諸味」を布で包み、搾り出す工程が「圧搾」です。
諸味は3日~7日ほどかけて醤油を搾り出されます。
1日目は、諸味自身の重みで。
2日目は、圧力の低い圧搾機で。
3日目は、圧力の高い圧搾機と、
徐々に押す力を強くして、醤油と搾り粕を完全に分離。
最後には粕の中に、ほとんど液体は残っていません。
この工程で、搾り出されたばかりの状態の醤油が
「生揚げ醤油」です。
この段階では、火入れもろ過もしていないので、微生物がまだ生きている状態です。
たまにラーメン屋さんでも、「ウチの醤油スープは、蔵元直送の生揚げ醤油を使っています」なんて紹介しているお店もありますね🍜。
これは、搾りたての醤油という意味なんですね🤔
(5) 火入れ
搾ったばかりの「生揚げ醤油」に熱を加える工程が「火入れ」です。
醤油は微生物の発酵で作られているので、火入れをしないと、そのまま発酵活動を続けてしまい品質が劣化します。
この微生物の活動を止めるのに火を使うのです。
また、醤油に熱を加えると「火香」と呼ばれる、醤油独特の香りが引き立つのですが、この火香も醬油の個性を決める特徴の一つ。
火と醤油の組合せは実に相性が良いですね。
例えば大通公園の焼きトウキビ🌽。
醤油を塗ったトウキビがワゴンで販売されていると、何とも言えない香ばしい匂いが漂ってきます。
これは醤油に含まれるアミノ酸とブドウ糖が加熱によって香ばしい香りを発生させる「メイラード反応」という化学変化なのですが、
これがまさに「火香」の効果というものです。
どの位の火加減で火入れをするかによって、「火香」も異なりますので、こちらも職人の腕の見せ所と言えます。
この火入れによって、醤油は濃い赤味がかった光沢のある色に仕上がります。
一方「淡口醤油」は、火入れの温度を低くして、色を薄くする代わりに、塩分の量を増やして、微生物の活動を抑えています。
だから、淡口醤油の方が、濃口醤油よりも塩分が高いのです😶。
淡口醤油の「淡」は、味ではなく色のこと。
私もずっと、淡口醤油の方が塩分が少ないと思い込んでいました。
減塩しなきゃいけない中高年の皆さんは知っておいた方が良いですね😅
(6) ビン詰めをして完成
こうして、大豆と小麦を麹にして、発酵・熟成させて搾った生揚げ醤油を火入れして、ようやく「醤油」が完成します。
これを余計な雑菌が繁殖しないように細心の注意を払って瓶に詰め、ラベルを貼ってようやく完成品となります。
醤油は鮮度が命。開封すると酸化して、旨味も香りも徐々に減っていきますので、開封後はなるべく早めに使うのがオススメですね。
最近では酸化を防ぐ密封ボトルを使う醤油メーカーもありますね。
こうして完成した醤油。
製造工程が機械化された現在でも、醤油を造る原理原則は変わっていません。
「一麹、ニ櫂、三火入れ」
麹づくり、諸味の攪拌、火入れ、といった工程を経て、
日本の伝統食「醤油」は、室町時代からおよそ550年後の現在まで
その味を伝えてくれているのです。
2. 生揚げ醤油と生しょうゆ、生醤油の違いとは…
それでは本題の
「生しょうゆ」って一体何だろう???
の回答です。
醤油の製造工程で「火入れをしていない醤油」
ということはわかりましたが、もう少し細かく分類されます。
●生揚げ醤油
諸味から搾り出されたばかりの状態の醤油です。
火入れ前のため、酵母菌などの微生物がまだ生きています。
フレッシュで香りが控えめの、まさに「しぼりたて」の醤油となります。
●生しょうゆ
諸味から搾り出されたばかりの「生揚げ醤油」には、酵母菌などの微生物がまだ生きています。
このままだと発酵が続いてしまい、常温で流通させることができません。
そこで、火を使わずに、精密なろ過をすることで、微生物を取り除いた醤油を作ります。
これを「生しょうゆ」と呼びます。
生揚げ醤油同様、香りも味も穏やかな醤油ですが、調理の際に加熱すると、火入れした醤油よりも香りがたってきますね。
スーパーで見かけるのは、このタイプの醤油です。
「非加熱醤油」と呼ばれることもありますね。
●生醤油
これは、醤油の種類ではなく、料理用語です。
味付けしていない醤油を指します。
醤油には、出汁や味醂で味付けした「だししょうゆ」がありますね。
例えば、北海道で人気の「昆布しょうゆ」。
これは、醤油に昆布出汁を最初から加えている醤油。
一方、何も加えていない「大豆・小麦・塩」だけで作った醤油を「生醤油」と呼びます。
よって生醤油は、「火入れ」もされています。
「生」を「なま」と呼ぶか「き」と呼ぶかで、意味が変わってきますね😅
今まで謎でしたが、ようやく解決しました👌
つまり、
火入れをしている「醤油(濃口醤油)」は、
深みのある色で、しっかりした香りと味があります。
火入れをしていない「生しょうゆ」は
鮮やかな色味であっさりした味わいです。
また「生しょうゆ」は、火入れしていないので、
調理の際、加熱することで、グっと香りが引き立ちます。
食べる時の調味料として「濃口醤油」、
調理する時の香り付けとして「生しょうゆ」など
用途や食材によって使い分けると、
より味の幅がひろがりますね。
かなり、醤油についての理解が深まりました。
次回は、醤油の原料と醸造の秘密を解き明かしていきます。
今回も長くなり恐縮です。
m(_ _)m
それでは、また😉
(つづく)
(2023年10月10日投稿)
つづきはコチラ
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