2022年12月12日の乾杯
2022年12月12日の乾杯。師走の街並みがどこか忙しなく感じられる今日この頃。コロナの勢いが衰えたわけではないけれど、まだ上演中止となってしまう舞台もあるけれど、確実に上演本数も増えているお芝居たち。そんな日々を眺めながら今夜もおじさんとおねえさんが語り合います。
👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。よろしくお願いします。
👨よろしくお願いいたします。しかし、いまひとつコロナが収まらないですよね。
👩そうですねぇ。なんでなのだか・・・。
👨なんでも、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長までが罹患されたそうで。
👩あらあら。
👨なんか本丸をいきなり攻められたようで。
👩うーん。
👨公演の中止というのもなくならなくてね。やっぱり出てきてしまう。
👩そうですねぇ。
👨それを聞くたびに悲しくなるのだけれど。
👩うん。
👨まあ、そんな中でもしっかりと公演をできたところもたくさんにあって。この間ムシラセを観てきました。
👩ほうほう。どうでしたから。
👨いやぁ、主宰の保坂さんってもちろん才ある作家であり演出家なのだけれど、その上でやっぱり写真家だよね。まあ、そもそもが女子高の写真部の話なのよ。
👩ふんふん。
👨舞台の作り方も写真家っぽくてね、よく写真のスタジオにいくとロール状にウェイブしたバックが用意されているじゃない?舞台のバックにもそういうデザインが使われていたりね。あと宣材写真なども取られているということで人脈もしっかりと持っていらっしゃるのだと思うのですよ。カムヰヤッセンにいらした工藤さやさんとか、最近よく観ている小口ふみかさんとか中野亜美さんとか、昔から拝見している菊池美里さんとか。なにかいろんな色を持った方が参加しているという感じなの。作品にもその多彩さを武器にする力というのがちゃんとあって,また写真を撮る登場人物たちにはひとりずつのシャッターを押す気持ちが描かれてもいて、彼女が写真家であるということもいろんな広がりが舞台にあるお芝居でもあってね。
👩うんうん。
👨観ていて飽きないということだけではなくて、その時間も物語の顛末もとてもビビッドな感じもして。まあ、ムシラセの舞台っていろんな鋭さはあったのだけれど、それが作り手のいろんな表現の経験に新たに熟したという気がした。
👩ムシラセって暫らくやっていなかったというかできなかったですよね。
👨そうそう、だいぶ久しぶりですよね。
👩そうですね。コロナもあったからということなのだろうけれど、きっと。
👨で、さすがに出演者の写真集付きチケット10000円というのに私は手が出なかったのだけれど、お芝居を観終わってから、これはその値打ちがあるかもねって思った。
👩いやぁ、素敵だなぁ。そういうわくわくさせる企画をするのが上手ですよね。
👨実際には10000円を出された方もけっこういらっしゃったみたいで、終演後受付で山積みにして渡していた。おじさんだけではなくおばさまがたにもそのチケットでご覧になった方がけっこう多かったみたい。実際推しがいる方に彼女の撮る写真はそれだけの価値があるとも思うのだけれどね。
👩そりゃありますよ。
👨そういう表現にまで公演を広げていくというのもやはり保坂さんだからこそできることだろうしね。
👩うんうん。
👨それも表現の広がりかなぁと思って。なおかつ、年末にはそれを元にした写真展も行うという。
👩ほほう。
👨しかもそこに中野亜美さんが何日か在廊するというような話を中野さん自身がツイッターで呟いてもいらっしゃって。なんかしっかりと作品の価値を掘り進めるなぁという感じがしましたけれどね。
👩うふふ。
👨でも、ひとつの表現を大きく成り立たせていくために、そういういろんな企みって大事だと思うのだけれどね。
👩うん、大事だと思う。
👨あとね、表現を作るのに風姿花伝ってやっぱりキャパがあるなぁって思って。
👩ああ、そうですね。風姿花伝はいいよね。
👨うん、観やすいしね。
👩好きだな、風姿花伝。
👨あの、空気が閉塞しないんですよね、意外と。
👩それはわかりますよね。
👨あそこは舞台の階段状のところが難点とは言われているのですけれど、上手のね。今回はそれを全然感じなかったし。そういう会場選びとかを含めて彼女のセンスが生きているなぁとはおもったのですけれどね。
👩はい。
👨さてと、今度は別の団体の公演の話になるのですけれど、「ぱぷりか」という劇団があるんですよ。
👩はいはい。
👨2014年ぐらいからあるのかな、ごぞんじですか?
👩うん。
👨このあいだ主宰の福名理穂さんが岸田國士戯曲賞をとられたんですけれどね。
👩ああ、はい。
👨そこの新作がこまばアゴラ劇場で上演されまして。タイトルは『どっか行け!クソたいぎい我が人生』というのだけれど。
👩へぇ。
👨占部房子さんがご出演で、ほんと久しぶりを拝見したのだけれど、やっぱり彼女のお芝居は凄いね。
👩うふふふ。
👨普通、お芝居っていうのは、俳優の方がセリフを話したり身体を使ったりして、それを観る側が受け取って解釈して理解するわけじゃないですか。そういう工程があるじゃないですか。
👩はい
👨彼女のお芝居にはその工程をすっ飛ばして観る側にやってくるようなところがあって。ダイレクトになにかが伝わってくるの。
👩うん。
👨不安定なというか、そのなんていうの、占いとか、パワーストーンにはまっている占部さん演じるおかあさんとその周辺の話なんだけれどね。
👩はい。
👨わかれた旦那さんが娘を取り返しにくるのではないかとかね。だけど職場の若い男の人にたいしては凄く優しいみたいな。女性的というか女的な部分もあったりしてね。戯曲を読んだ俳優がどのように人物造形をするのか悩むのではないかとおもうような人なんだけれどね。
👩うんうん。
👨それを占部さんが演じると、観る方からするとその風貌も人格も想いもダイレクトに伝わってくるようなフォーカスの定まり方があって。昔から占部さんのお芝居って訪れ方というか伝わってきかたが早いと感じるところがあって。それが早いからこそ深いみたいな印象もあったのだけれど。今回改めて凄いなって思って。
👩うん。
👨また周りの俳優の方たちも、彼女のそういうところとの距離でちゃんとお芝居をつくっているというか。劇団員の岡本唯さんとはえぎわの富川一人さん、青年団の林ちゑさん、ダルカラの阿久津 京介さんの5人芝居なのだけれど、それが占部さん演じる母と、娘と、息子と、息子の嫁と、母親の勤め先の若い男なのよ。で、みんな母親の個性というか不安定さに対する距離が違って演じられているのね。その先に彼女の人物が際立つというか、逆にいうとそこに物語が収まっているみたいなところもあって。
👩うーん、うん。
👨その作り込みって凄くされているのだろうなぁとも思ったし、そういう語り口だから観る側の第六感とか七感にも伝わってくるものがあって、なにかを超えて良いお芝居だなぁと思った。
👩見応えがありそうだなぁ、それは。
👨評判も凄く良かったみたいで。私も二日目と楽前に二度観たのだけれど、実は。観客もどどっと増えていて。やっぱり観客の口コミって言うのは偉大だと思うんだよね。この芝居のことって.ツイッターでも呟かれていたし、また私もしたけれど、あの舞台はいいよってみんなで言い合ったのだとも思うのね。
👩うんうん。
👨あの、俳優達が作る距離っていうのも2日目のころはどこか曖昧な部分もあったのだけれど、楽前に観たときは、俳優達が掴んでいたというかもう絶妙で。観客も増えるし芝居も育つのだなぁって思った。
👩うん。
👨やっぱり初日と楽日というか、公演の最初の頃から終わりに向けてってお芝居も育つことが多いじゃないですか。
👩はいはい。
👨それをもろに体験できたかなって。
👩なるほど。
👨ちなみに、「ぱぷりか」のお芝居って観たことがあります?
👩いやぁ、ないんですよね。
👨でも、名前は知っていたみたいですよね?
👩はい、知っています、知ってます。気にはなっていたのですけれど。
👨ああいうお芝居を観てしまうと、岸田戯曲賞も伊達じゃないというのもよくわかりますよ。
👩うんうん。
👨ところでおねえさんは最近なにかご覧になりましたか?
👩えーとね、最近だと王子小劇場で上演されてた『蒲田行進曲』を観ました。
👨ああ、あれをご覧になったんですか。私もあれは予約をしたのだけれど、体調不良で観ることが出来なかったんですよ。
👩えーと、劇団名はなんだったっけ・・
👨クロカジさん・・、いや違う
👩「クロジカ」さん。
👨そうだ、「クロジカ」だ。
👩あの、「クロジカ」さんっていうお名前はいろいろとかぶってしまうなぁって。正直ね、名前が凄いかぶるなぁっていうのが最初の印象でした。「クロジ」というのもかぶるし、カタカナでしょ、「クロジカ」って。
👨私が最初に感じた劇団名からの印象は採算を黒字化するという願いの「クロジカ」だったけれどね。。
👩舞台自体はあれでしたよ、凄く熱くて。久しぶりに若手の熱い舞台を観たなぁという気持ちでしたね。あと、『蒲田行進曲』はやっぱりいいなぁとか。
👨ああ、『蒲田行進曲』はもの凄く昔にみたことがある。
👩ほんと、久しぶりに熱い芝居をみたという感じでした。
👨なんか、ご覧になったある方から変にいじっていないという話は聞きましたけれどね、昔と比較して。
👩うん、変にいじってはいないけれど、ちゃんと構成が練られているから、観やすくて観る場所がいっぱいあって面白かったですよ。
👨ああ、なるほどね。
👩ただ、ダブルキャストだったのかな。もう片方のお名前は存じあげなかったのですけれど。銀ちゃん役の方がよかった。
👨ああ、なるほど。
👩あと、主役というかヤス役の方も。ただ、惜しいなっておもったのは、あれでしたね。やっぱりがぁって、名乗り上げるじゃないけれどけっこう大声でがなるのだけれど、それが重なったりするとなんて言ってるのかがわからない。ああもったいなぁって思って。
👨ああ、台詞がジャンクしちゃうんだ。
👩がなってもいいというか、そもそもがなっているわけじゃないんですよ。やっぱりキメるという意味で大きな声でいうのだけれど、王子小劇場の反響とかと合っていなくて、なんて言っているんだとか、がなっていてわからんとか聞こえんにもなっていて。言葉が分からないって。
👱うん。
👩もう少し立ててというか、もしもう少しゆっくりめに言ってもらえたら分かったのだけれどなぁ、その熱さはすごくよいのに聞こえないとやっぱりそれがノイズになってしまうからもったいなぁと。ほかはもう概ね満足だったけれど。
👨ああ。確かに王子小劇場の音響って俳優の方に伺うと癖があるっていいますものね、ちょっと。
👩うん、癖がある。あそこは響くからねぇ。
👱あぁ。
👩なんか変な響きかたというか。しかも使い方が逆であったからかもしれないけれど。
👱ああ、通常の入り口のところに舞台を作って、観客は楽屋を通って客席にはいるんだ。
👩えぇ?楽屋の所からは入らないです。あの、セットを通ってそのまま。
👱客席はしっかりとあったんですか?
👩いやぁ、でも減らしていたと思いますよ。
👱まあ、時節柄ね。
👩まあ、そこそこはあったけれど。
👱あそこってコロナ前とかには100人ぐらい入れていたことがあったとおもうのだけれど。で、そうするとまた音の響きもちがうという話も聞いたのですけれどね。
👩うん、そうですね。
👱でも、トータルとしてはおもしろかったのですね。
👩うん。面白かったですね。ほんとにおもしろかったです。
👱ということは、私はやっぱり体調を崩して損をしてしまったのですね。
👩いやぁ、まずは無理をしないでというか・・・。大丈夫です。
👱昔劇場で死ねたら本望だとかほざいたことがあったのだけれど、とっても迷惑だからやめてくださいと劇場関係者の人に諭されましたけれど。
👩うふふふ。
👱実際に私が存じ上げている方で劇場で体調を崩されたことのあるという方が思い出しただけでも二人おりまして。
👩うーん。
👱それなりに大変だったみたいですね。
👩うん。
👱ひとりは王子小劇場でだったみたいで。
👩あら。
👱で、つれの方がろくに歩けなくなっていたのに階段で運び上げようとされたみたいで。で、劇団だか劇場の職員の方が裏のエレベーターを案内して外に連れ出したらしい。まあ、開演前におかしくなられたみたいで、それはそれでまだ良かったですけれどね。
👩えぇ、でもそれでも心配だ。
👱でも、上演途中で倒れられたらもっと大変じゃないですか。
👩うん。
👱まあ、大事には至らなかったみたいで、後日菓子折をもって劇場だか劇団だかに謝りにきたみたいですけれど、もう随分前の話ですけれどね。まあ、体って大事ですから。私も劇場には良い体調でと心がけてはおりますが。
👩うんうん。
👱ところで、話は変わるけれど、「毛皮族」という団体があるじゃないですか。
👩はいはい。
👱江本純子さんのね。彼女が『セクシードライバー』という作品を上演しまして。これがね、めっちゃ面白かった。戯曲は2010年の岸田國士戯曲賞最終候補作品で、そのときは昔のLe Decoで上演の安藤玉恵さんと前田司郎さんご出演の二人芝居だったのだけれど、今回それをまず実写というか湾岸でのロケで映像に取り直して、俳優が公開アフレコをするということをやりまして。
👩うーん、うん。
👱そうするとなにが起こるかというと、物語の風景が明確にもらえるのね。なおかつ映像だから画角も作れるしズームもできるわけじゃないですか。で、そこに重ねる台詞はものすごく良く稽古がされていて、ズレとかは全く感じないのだけれど、その上で生で話していることと映像に焼き込まれた台詞って言うのはやっぱり違うのね。
👩ああ。
👱だからこそのライブ感もあって、観終わると今までに体験したことのないようなビビッドな感覚が残るの。
👩へぇ。どんな感じなのだろう。多分観ないとわからないからなぁ。
👱そう、あれは体感してもらうしかないのだけれど。会場は北千住のBUoYだったんですね.あの、BUoYってわかります?
👩はいはい、わかりますよ。
👱あの地下の空間にスクリーンをいくつも立てて、席もエリア毎にバラバラな感じで上演したのね。椅子の種類もパイプ椅子だったり、ビーチチェアだったり、回転椅子だったり。寝っころがり自由の畳席もあったり。そうすると、まずお尻の感覚がちがうだろうし、映像の見え方にも違うだろうし。またアフレコをしている演者がもろに見える席や他のスクリーンも見える席だと、一つのスクリーンしか目にはいらない席とはまたちがった感覚になるだろうし。舞台エリアではアフレコに加えて効果音を入れたりラストの所では生演奏なんかも入ってね。そんな中でみんなが好きなスタイルで観てくださいねぇみたいな趣向で。
👩うん。
👱結果として映像というコアの表現に対していろんな感覚を抱いた観客に満たされたある意味一期一会のパフォーマンスが生まれるわけですよ。また、実際に観て、そこには新しいなにかが間違いなく引き出されたようにも思えたりもして。
👩うんうん。
👱やっぱり江本さんって凄いのねっていう。
👩うふふ、そうですね。
👱あと、映画も完成したみたいで。それもBUoYで撮影風景を公開していたのを観にいったのだけれど、それも観る側として体験した空間が映像のなかではどのように表現されているのかという経験になるので上映がとても楽しみですけれどね。
👩うんうん。
👱今回の『セクシードライバー』にしても、その『愛の茶番』という映画にしても空間を見せることで生まれる感覚をそのまま表現としているところが凄いというか。
👩うん、なるほど。
👱ところで空間と言えば、『令嬢ジュリーMiss Julie』というお芝居を観たんですよ。その会場がとても物語の雰囲気を映えさせる空間で。自由が丘にあるギャラリーCASA TAMAというところでね、そこで文学座の平体まひろさんと先日水曜日のダウンタウンでも拝見した劇団4ドル50セントの堀口紗奈さん、萩原亮介さんの3人芝居だったのだけれど。まあ平体さんについてはこれまでの舞台観た時の観て思ったことを再認識したような感じで、ほんとうに人物をよく作り込んで緩急に観る側を取り込む力もあって圧倒されたし、堀口紗奈さんもMrs.fictionsとかTOKYO PLAYERS COLLECTIONとかで何度か舞台を拝見したことはあるのだけれど、今回初めて彼女の俳優としてのセンスとか底力とかが分かったような気もして。彼女は召使い役なのだけれど、そのドライな感覚というのが凄く上手く作られていて、それが平体さんの演じる令嬢の奔放さと交わるとその両方がとても際立つのね。芯もしっかりあるよい俳優だなぁとおもった。それは萩原亮介さんと平体さんの関係でもあったのだけれど。
👩うんうん。
👱舞台は下手側の壁が鏡張りになっての広さが感じられて、客席の木製の椅子も含め会場全体に裕福さに裏打ちされたこじゃれた感じもあって、作品が描かれた時代の富とか身分も俳優達がそのなかに上手く収めてもいて。さっきの話しとも共通するのだけれど、空間を作り味方につけて、その中で生まれる力というのが演劇にはあるのだろうなぁとも思って。そうなると良い役者はより上手くというか、冴えて見える。
👩あぁ。
👱もちろん戯曲を解釈してそれをどう舞台に落とし込むかみたいな企みがあって、それをどう演じていくかというのを俳優とすりあわせていくのも演出家の仕事なのだろうけれど、同じようにそこで生まれた物をどのようなイメージにあてはめてどう観客にわたすかという仕掛けをすることも大切な役割だと思うのね。
👩うんうん。
👱ここのところ、それがとても上手くいったものを立て続けに観ることが出来たようにも思えてとても興味深かったです。そういう意味でおねえさんがご覧になった「クロジカ」がどういう空間だったのかもなかなかに気になるのよ。
👩うーん、「クロジカ」、どうなのだろう。
👱ちなみに『蒲田行進曲』だったら階段落ちとかもあったのですか。
👩ありましたね。
👱ああ、ありました?
👩それは、そんな10mとかは無理だからあれだけれど、それもちゃんと表現されていた。基本は、さぶろくってわかりますか?、さぶろくの平台があって、あと木の塗ってない階段とかセットとかがあって、それがいろいろに組み直されてシーンを作るみたいなタイプだったから。なんかね、懐かしいけれどちゃんと今の芝居という感じでしたよ。懐かしいのだけれど古いというわけではなくて。それはとても正しいと思うんだけれどね、やっているもの的に。『蒲田行進曲』をやっているわけだから。そうそう、ちなみに配信(2022年12月29日~2023年1月28日、最終購入2023年1月21日)もあるみたいなので、よろしければ、皆様是非観て頂ければと思います。
👱ああ、そうなのですね。
👩まあねぇ、配信で観てあれがどれだけ伝わるかは分からないけれど、伝わらないということはないのではとも思う。
👱うんうん。なるほど。そうそう、ところで、配信というのも素敵だけれど、最近、開演前とかカーテンコールの時、あるいは終演後に舞台上の写真を撮らせてくださる公演が増えたと思わない?
👩あぁ。私はあまりわからないけれどそうなんだ。そういうところもあるかもね。
👱『令嬢ジュリー Miss Julie』の時もそうして舞台を撮らせていただけたのですよ。照明も完全には落とさない状態に残していただいたのでとても綺麗な写真を撮ることが出来て。
👩あぁ、『クロジカ』がどうだったかは分からない。私はけっこうはやめに劇場を出てしまったのでわからないけれど、なかった気がする。
👱あの、シアターXでアトリエ・センターフォワードの『三人姉妹』を観てきたんですよ。そちらはカーテンコールに撮影ができるパターンだったのだけれど。
👩ほうほう。
👱お芝居自体もよかった。開演前から刻まれる時計の音があってそこから始まる舞台だったのだけれど、舞台の要所でも流れるその音がとてもよく効いていてね。なんかべたつきがなくて、淡々と時間が流れていく中に三人や他の登場人物の人生が描かれているような感じがあって。そこでは、三人の生きた日々がくっきりと描かれている感じがしてね
👩はい。
👱ほら、最後に三人姉妹がそれぞれに仕事をして生きていきましょうみたいな話をするじゃない。この演出たと、むしろそれの重さというのがビビッドにあるような気がするんだよね。
👩うん。
👱とても良い演出だったと思うし、俳優陣も3人姉妹を担うくらいの俳優の方というのはやっぱり上手いわけで。
👩うんうん、そうですね。
👱ナターリアを演じたみょんふぁさんも、明るさもあり、観ている側の憎しみも買える良きお芝居だったし。
👩うふふ。
👱それが、さっきも言ったとおり、時計の音があることによって、そこには日々が刻まれなおかつ砂時計を眺めるようにそれらが落ちていくような感覚もあってね。
👩うんうん。
👱あとさ、私って恥ずかしながらシアターXって行ったの初めてなのですよ。あそこってなかなかの劇場だよね。天井も高くて座席も良くて。
👩ああ、そうですね。あそこも良い。
👱昔からあそこって変に縁がなかったのよ。観たいものがあってもチケットが取れなかったり、チケットが取れても公演が中止担ったりとかが何度もあって。
👩ああ、そういう所ってあるよね。別に観に行っていないわけでは無いのだけれどなんか観にいけない。それはなんかあれなのじゃないですか。その、相性というか。なんかあるのよ、そういうのが。逆に滅茶苦茶行く劇場もあるしね。
👱そうそう。だから、私は両国方面は鬼門なのかもなぁって、なんとなくずっと思っていたのね。
👩うふふふ。
👱実は国技館で相撲も観たことがないし。
👩はあ。
👱あれも生でいっぺん観ると嵌まる人は嵌まるみたいだけれど。それはともかく、今まで観た中で一番世界がクリアにその時間を人々が生きる感覚とともに伝わってくる『三人姉妹』でしたね。チェーホフの中でも『三人姉妹』はもう何回も観たのだけれど、その中でも一番わかりやすい『三人姉妹』だったかもしれない。
👩いや、感覚は作品ごとに変わっていくからね。その中でも観やすいのは大事だと思う。どこまであわせるのかっていうのもあるけど。
👱うん。
👩みんながみんなそうする必要はないとおもうけれど、どこまであわせるかということもあるけれど、ある程度の見やすさは演劇の間口を広げることになると思うから。
👱どうしたって『三人姉妹』は上演時間が2時間はかかるわけじゃない。尺が2時間越えのお芝居で混沌が多い物を観続けるのは辛い。
👩うん。
👱あとねぇ・・、MCRの『無情』も観てきました。
👩あぁ、うらやましいです。MCR大好き。
👱でも毎回観るたびに思うのだけれど、どうして櫻井さんはあれだけ並外れて深い愛情を描くことができるのだろうね。あの風貌からは想像できないような。
👩いやぁ、風貌は関係ないでしょう、失礼だよ。
👱風貌というか、劇団員の人がほんとうにかわいそうなくらいいろんなことをやらされているんだもの。
👩でも、わからないですよ。それだけ底が深いなにかがあるからこそ知りたいみたいな。そうしてもあれだけ人を惹きつけるなにか、そのなにかが知りたいみたいな。あれだけ人を惹きつける何があるのか知りたいなぁと思える人はやはり魅力がありますよ。
👱私はMCRの公演だけは概ね外したことがないものね。あぁ、観ることができなかったというのがないんだよ。もう10年以上ずっとかもしれない。MCRというか櫻井さんが作演をしたものについてはね。
👩MCRは本当におもしろいから、観たことがない人は是非に観て頂きたい。観てください、MCRという劇団があるので。
👱今回は劇団普通の主宰をされている石黒麻衣さんが俳優として参加されていたのですけれど、彼女は1時間50分の中で、出てくるときには怒るだけのお芝居でしたけれどね。
👩はぁあ。
👱ずっと怒っているのよ。
👩うふふふ。
👱でもね、ずっと怒っているのだけれどそれが愛情に裏打ちされているということがちゃんと伝わってくるんだよね。あとMCR劇団員の伊逹香苗さんが皮をむいていないパイナップルを丸かじりするというもの凄い荒芸をやったのだけれど、
👩口がズタズタになりそう。
👱それでドヤ顔をするのだけれど。あと同じく劇団員の北島広貴さんが気を失って車いすに乗せられるという場面があって、それがもう観ているほうが不安になるくらいぞんざいな乗せられ方をしているのだけれど、そうであってもその先にはちゃんと櫻井さんの持っている愛が浮かんでくるというのが凄いなと思ってね。そういうところにも惹かれて、次は来年の5月あたりみたいなのだけれど、鉄板でまた観に行くだろうなって思ったり。
👩うん。
👱まあね、原因不明の体が動かなくなってしまう難病にかかった女性と、目が全く見えない女性の話でタイトルのとおり無情といえば無情なのだけれど、でも、そこから生まれる物語だけではないものに心の底では深く捉えられていたよね。
👩うんうん。
👱あと、これが最後の話になるのだけれど、殿様ランチも観てきました。
👩へぇ。
👱『うわつら』。殿様ランチも暫く公演をしてなくて、観るのも久しぶりで。駅前劇場での公演でしたけれど。作家の男が膵臓がんを宣告されてから亡くなるまでの話なのだけれど、まあ板垣さんの生きることへの見栄の張り方というか強がりが実によいお芝居で。
👩はい。
👱なんていうの、これから死んでいこうという人の周りの空気もとても良く描かれていてね。
👩うんうん。
👱でもそれが単純に暗くなるではなくて、それは3ヶ月とか4ヶ月のはなしなのだけれど、その間は本人も周りの人も日常を生き続けているという物語でもあるのね。そういうところまでがちゃんと描かれているというか。
👩はい。
👱客入れからラジオのDJ風なものが流されていて、開演前のご案内もその流行にのっていて。そういうセンスも描かれている時間が実は特殊な物ではなく、街全体としてはありふれたものだということへの意識付けにもなっていてね。また物語がコメディのテイストで描かれることともよくあっていて。
👩うんうん。
👱男を描く板垣さんも流石のお芝居なのだけれど、その周りを紡ぐ俳優たちの男との交わり方にもそれぞれの味があって、個々に異なる人物の実存感もあってとてもよかった。確定告知のあとの男と義妹を演じた斉藤麻衣子さんのシーンには目頭が熱くなったりもした。そういうシーン毎のクオリティの積み重ねで時間の歩みが描かれているお芝居ってちゃんと男の生きることの質量を描き出したりもするわけで、塗り込められず、でもしっかりと見応えのあるお芝居でした。
👩うん。でも、こうしていろんなお芝居の話をしたら、頭がパンパンになってきた。
👱うふふふ。まあ、コロナの中でもそれだけいろんなお芝居が上演できるようになったということで。もちろん全てがうまくいっているわけではなくて、実際のところ来週も楽しみにしていた舞台が1本中止になってしまって悲しい思いもしているのだけれど、
👩そうですね。中止になってしまうのは本当に悲しい。俳優の方が稽古をしてきたことを考えるとね。
👱でも、お芝居全体が復活していく力強さは間違いなくあって。これからもけっこう目白押しだし。
👩うんうん。
👱年末には「柿喰う客」が久しぶりに公演を打ったり、「serial number」の公演もあるでしょ。あと「なかないで、毒きのこちゃん」も年末に公演があるし。
👩是非に皆様も劇場に足を運んでいただきたいと思います。
👱はい、是非に!それでは今日はこのくらいにしましょうか?
👩そうですね。
👱それでは、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👱皆様、風邪など召されませぬように。
👩ご自愛くださいませ。
(ご参考)
・ムシラセ『瞬きと閃光』
2022年11月30日~12月4日@シアター風姿花伝
脚本・演出 :保坂萌
出演:工藤さや、小口ふみか、
辻響平(かわいいコンビニ店員飯田さん)、
輝蕗、元水颯香、中野亜美、
土本燈子、加藤彩、菊池美里、
つかてつお、渡辺実希、松尾太稀、
土橋銘菓(ダブルキャスト)、柴奏花(ダブルキャスト)
・ぱぷりか『どっか行け!クソたいぎい我が人生』
2022年11月24日~12月6日@こまばアゴラ劇場
脚本・演出: 福名理穂
出演: 占部房子、富川一人、林ちゑ、
阿久津京介、岡本唯
・演劇ユニット クロジカ『蒲田行進曲』
2022年12月7日~⒒日@王子小劇場
原作: つかこうへい
構成・演出: フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会)
出演: 海田眞佑(劇団ウミダ)、古屋敷悠、
吉田覚(演劇ユニットクロジカ)、池内理紗(演劇ユニットクロジカ)、
二瓶俊行(テアトルアカデミー)、高橋まゆ狐、山下雷舞、
シマザキタツヒコ、ヒガシナオキ、長門佳歩、
末安陸(guizillen)、江越暉、大木菜摘、
志賀耕太郎、芝原れいち(劇団イン・ノート)、
中川大喜(劇団イン・ノート)
・もびプロジェクト 『令嬢ジュリー Miss Julie』
2022年12月1日~4日@ギャラリー CASA TANA
脚本: ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ
演出: 下平慶祐
出演: 平体まひろ、萩原亮介、堀口紗奈(劇団4ドル50セント)
・毛皮族『セクシードライバー』
2022年11月30日~12月4日@北千住BUoY
脚本・演出: 江本純子
出演: 遠藤留奈、鈴木将一朗、江本純子
・MCR『無情』
2022年11月30日~12月7日@OFF OFFシアター
作・演出: 櫻井智也
出演: 湯川紋子・加茂井彩音・櫻井智也・
石黒麻衣(劇団普通)・日栄洋祐(キリンバズウカ)・
伊達香苗・篠本美帆(あひるなんちゃら)・堀靖明・
おがわじゅんや・北島広貴・上田房子・
加賀美秀明(青春事情)
・殿様ランチ『うわつら』
2022年12月7日~12月11月@駅前劇場
脚本・演出: 板垣雄亮
出演: 板垣雄亮、平塚正信、こくぼつよし、
小笠原佳秀、相楽孝仁、杉岡あきこ(A公演のみ出演)、
斉藤麻衣子、川西佑佳、成海澪、
篠原彩、足立信彦、里内伽奈、
服部ひろとし、はてな(H公演のみ出演)
(これからのお勧め)
・柿喰う客『禁猟区』
2022年12月22日~12月30日@本多劇場
脚本・演出: 中屋敷法仁
出演: 永島敬三、大村わたる、牧田哲也、
加藤ひろたか、田中穂先、守谷勇人、
とよだ恭兵、村松洸希、中嶋海央、
佐々木穂高、田中廉、山中啓伍、
原田理央、長尾友里花、福井夏、
淺場万矢、今井由希、北村まりこ、
齋藤明里、永田紗茅、沖育美
・serial number『痩せた背中』
2022年12月21日~25日@SPACE EDGE
原作: 鷺沢萠
脚色・脚本・演出: 詩森ろば
出演: 李千鶴、吉田晴登、大谷優衣、河野賢治
・なかないで、毒きのこちゃん『ボーイズ』
2022年12月27日~2023年1月1日@阿佐ヶ谷アルシェ
作・演出: 鳥皮ささみ(猪股和磨)
出演: 猪股和磨、植田祥平、森田ガンツ、
吉田壮辰(以上、なかないで、毒きのこちゃん)
―日替わり出演―
12月27日(火)田村優依・浅利ねこ・中田麦平(シンクロ少女)
12月28日(水)田村優依・工藤史子(ロリータ男爵)・久我真希人(空観)
12月29日(木)森岡未帆・青木絵璃・森耕作
12月30日(金)森岡未帆・土田有未(ナカゴー)・
中澤功(サモ・アリナンズ)
12月31日(土)芳田遥・未来(カムカムミニキーナ)・
亀岡孝洋(カムカムミニキーナ)
1月1日(日)芳田遥・あさぬま美輝(おなかポンポンショー)・
榊原美鳳(ハダカハレンチ)