2022年8月12日の乾杯
2022年8月12日の乾杯、猛暑と不安定なお天気続きの毎日、コロナのために公演の中止も相次ぐ中で、それでも様々に歩み息づく演劇の姿について。エンニュイやダダルズ、日本劇作家協会の公開講座、月刊根本宗子のことなどを、いつものようにいろいろと、おじさんとおねえさんで語り合います。
👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。
👨こんばんは。気がつけばなんか台風がそこまで来ていますね。
👩いやぁ、大変だ。
👨昔は台風が出来てから、来るぞっていって実際にやってくるまでけっこう時間がかかっていたのですが、最近はあっという間に来ますからね。
👩うーん。昨日あたりから凄い風が。めちゃめちゃ強くて台風っぽいなぁとは思っていましたけれどね。
👨そうですね。わたしもチャリンコにのっていて吹き飛ばされそうになりましたけど。
👩もういろんなことがありすぎて。酷いことにならなければよいのですが。
👨うん、それでなくても東北の方は大雨が続きいろいろと大変みたいですしね。
👩あぁ、もう起こりすぎじゃないですか、いろんなことが。
👨そう。もうコロナだけでもええ加減しんどいのに。
👩そうですよ、ほんとうに。
👨逞しく生きろとかそんなことを言っている状況ではないですからね、こうなってくると。
👩うん。なんとかなぁ、なんとかもうちょっと。
👨それでなくても、コロナの方も相変わらず結構大変で。私も観たいお芝居というか観る予定のお芝居が何本も潰れて。
👩ああ。増えてますからねぇ、本当に。もう限界みたいなところがあるのですよね。これでもう一回自粛をとか言うのであれば、その分補償を厚くしてくれないともう限界です。もうそうはできませんという状態ですよね、正直。
👨だから、こうやって前みたいに規制をかけないというのもある意味正しいのかなとは思うのですけれどね。
👩うーん、そうですね。
👨この間、とある劇場の制作をされている方とちらっとお話をさせて頂く機会があって、なんでもこのご時世なので、どの団体でもずっとマスクをして稽古をしてはいるんですって。
👩うん。
👨だけどね、場当たりの時とかゲネの時だけは、マスクを外さないと俳優さんどおしで顔が見えないということがあって・・。
👩いやまあ、そうなんですよねぇ。
👨また同じようなことを、別の舞台でのトークの時にもある方が話をされていて。なんかゲネで始めてマスクを外した相手を見て、「ええ、こんな感じでお芝居をしていたの」というような笑い話が現実にあったみたいで。
👩とんでもない。とんでもないですねぇ、昔のことを考えたら。
👨ああ、こういう感情でお芝居をしていたのねという新しい発見がゲネであるというね。
👩うーん。
👨そういう洒落にならない話も、今の現場にはあるみたいですけれどね。
👩とはいえ、今はコロナも増えているから。そうそう稽古でもマスクはとれないし、
👨ええ。あの、この間エンニュイの公演を観たのですよ。
👩うんうん、
👨この舞台も、私がいった楽前の日は観ることができたのですけれど楽日は公演中止になるという・・・。
👩えぇぇ・・。ショックが大きい。観たかったけれども観ることが出来なかったひともいるわけだから。なんということ!
👨しかも、私もあとで知ったのですが、私がマチネを観た日の夜に徳永京子さんがアフタートークのゲストでいらっしゃって、そのあとツイッターでけっこう評価をされてもいらして。それがとても的確な評価にも感じたし読んだ方達は絶対観たくなるよなぁとか思ったりもして。でも残念ながら翌日は中止になってしまったのだけれど。
👩うーん。
👨私も観て抜群に良い出来だとおもいましたしね。まあ、エンニュイは2月にも観たのだけれどね、それは、とても小さなスペースで。今回は渋谷のEDGEで。割合と広い場所になって。
👩ふーん。
👨居酒屋が舞台で死んだ店長のお葬式の夜に従業員たちが集まっているという話なんだけれど、その店長さんの霊というか想いがけっこうあからさまに舞台を自由に歩き回るというのか今回付け加わっていて。もう一つ視座が付け加わったことで、前回とは違う新たな空間の解き放たれ方を持った厚みのあるお芝居へと昇華していておもしろかった。
👩ほうほう。
👨割合と一期一会的な要素もあるお芝居だったみたいで、でもその一番熟したであろう楽日の回を観客はみることができなかったという・・・。
👩あらぁ、なんと残念な。
👨うん。
👩いやぁでもね、全部が中止と言うことでは無かったのがまだよかった。最後の日が中止になってしまったのは本当にあれだけれど。
👨まあ、主宰の方はある程度、自分のやりたいことの確かさみたいなものは掴まれたのだろうなぁとは思えて。あそこまで膨らみのあるものが演出できていればね。
👩うんうん。
👨そういう意味でも、次の公演もすごく楽しみにはなりましたけれどね。
👩エンニュイは面白いですからね。
👨エンニュイは面白いですよ。
👩うん。
👨加えて、俳優達も、なんか2月に比べてまた一段と良くなっていて。
👩へぇ。この厳しい中でも切磋琢磨していらっしゃるんですね。
👨2月の公演を経験したことで、それぞれに俳優の懐が深くなったのではないかなぁという気がしてね。
👩なるほど。
👨そういうのを感じられることも楽しかったです。それだけに、返す返すも楽日中止のニュースは観客としても残念だった。
👩うん。
👨まあ、あと中止になったといえば、私が岸井ゆきのさんを拝見するのを楽しむにしていた『気まぐれルーシー』の東京芸術劇場での公演が全部中止になりまして。
👩うわぁ、何でですか。
👨やっぱり関係者に発熱とかの症状が出たみたいで。
👩ああ、そうですか。そうなるともう出来ませんねぇ。いやぁもうね、気をつけていてもなるときにはなるから、もう辛い。
👨うん、そうなのですよねぇ。
👩ほんと、辛いなぁ。
👨一応できているところはできているのでね。実際のところたくさんの舞台が上演されてもいるわけだし、全てを失っているわけではないのだけれど。
👩まあまあ、そうだけれどね。でも辛い。
👨救いなのはそんな中でも、印象に残る舞台はちゃんとたくさんにあって。このあいだ、三鷹のSCOOLでダダルズを観たのね。三鷹のSCOOLはご存じですか??
👩三鷹の?SCOOL??わからないです。初めてききました。
👨おもちゃ屋さんのビルの5階にスペースがあるのですよ。多分30人とか40人入ったらパンパンかな。
👩ふーん。
👨そこでダダルズという団体のお芝居を観まして。それはちゃんとできた。人気もあって、多分チケットも完売状態で。
👩ああ、よかった、よかった。
👨5人でのお芝居だったけれど、あれだけ登場人物の想いや考えていることが上手くかみ合わないままに130分休憩込みというのが、もうめちゃくちゃ面白くて。
👩ふーん、すれ違っているのですか。
👨すれ違っているというか、根本から考え方が異なって歪んでいてかみ合わないというか、でも、シチュエーション的に会話はしなければいけないのですよ。
👩ほうほう。
👨そうやって一応物語の態に作られてはいるので。しかも130分だから換気ということもあって休憩を途中で入れるんですよ。
👩へぇ。
👨でさ、交わらないどおしが会話を続けるというのは、やっている方も疲れるとはおもうのだけれど、観ている側も同じくらいじわじわと消耗していくのね。
👩うふふふ、それはそうだ。
👨前半が50分で後半の方がちょっと長かったような気がしたのだけれど、前半が終わった段階でどうなるのだろうって。その、お芝居もだけれど、私がどうなるのだろうという不安も抱えつつ、後半を迎えたのだけれどね。
👩あははは。
👨でもね、前半から個々の俳優が圧倒的にキャラクターを貫いているからそれに引張られたままに観ることができちゃうんですよ。
👩へぇ、それはきっと観ていておもしろい舞台ですね。いいなぁ。
👨とはいえ、観終わったあとは案の定消耗していてふらふらになりながら5階から1階まで階段をおりましたけれど。だけどなんか、悪い疲労ではなかったよね。
👩ふーん。
👨その貫きみたいなものにどこか麻痺しながら惹かれたようなところもあって。俳優達はマスク無しでの密な舞台だったけれど、無事に千穐楽を迎えることができたみたいなので、それもほっとしましたけれど。
👩いやぁ、ほんと。そうやって出来るところがあるのは救いだね。よかったとおもう、凄く。
👨あと、この間も話したけれど、タカハ劇団も芸劇で予定した公演が全て中止になってしまって、とても残念だったのだけれど。でも高羽さんはね、日本劇作家協会ってあるじゃないですか。
👩ああ、はい。
👨あそこがバリアフリーの演劇というのを公開セミナーでやったのね。そこに拘わっていらっしゃったりもして。
👩ふんふん。
👨興味深かった。最初にバリアフリーでお芝居をつくるとどうなるかということで、30分くらいのお芝居を見せてもらったのですよ。夏井孝裕さんの作品をwonder x worksの八鍬健之介が演出されて。この間シアターミラクルで拝見したHauptbahnhofの金田一央紀さんが演出助手を勤められて。作品としてもちょっと星新一さんの作品を想起させるような近未来的なSFテイストでおもしろかったのだけれど、そこにまず手話がはいるのね。チタキヨの米内山陽子さんがされたのだけれど、それが端の方で立っているわけではなくて、舞台に堂々と入り込んで手話で舞台の空気を作り込んでいくのですよ。
👩へぇ。
👨あと音声ガイドもはいるのね。最初に舞台の広さとか配置とかを音と共に説明をして、劇中の舞台の状況やト書き語りみたいなこともされるの。
👩舞台が見えない方と台詞が聞こえない方も楽しめるようにということね。
👨そうそう。で、なおかつ字幕も入るのよ。
👩凄い。
👨そうすると、俳優の方の演じ方とか間の取り方なんかもそれらを上手くとりこむように舞台が変ったりしてね。キャストも神農直隆さん、コロさん、松永玲子さんと手練れの俳優の皆様で、そこに生まれる間もとても自然に感じられて。
👩それは、いいですね。みんなが楽しめるお芝居というのは。
👨そう。開演時にしてもだれもがわかりやすいように場内のライトが識別しやすい色でまたたいたり、わかりやすい音で構成されたチャイムがなったりとか、いろんな配慮があるのよ。
👩確かに字幕というのもいいな。私は、なんというか、ちょっと難聴なんですよ。
👨ああ、そうなんですか。
👩そうなんですよ。まあ生活するときには、困ることもあるけれどまあまあ聞こえるくらい。聞こえるけれど、小さな声で話されたり急に声をかけられたりするとわかんなかったりするんですよ。最初の声が聞き取れなかったりとか。だから字幕があると助かるんですよ、声があるにしても。集中しないとね、集中していたときに声をかけられたことが全然聞き取れなかったりもしてみたいなこともあるので。
👨きっと、メンタルな負荷が絡んでくるとより受け取りにくいとかそういう場合もあるのだろうしね。
👩うん、そうですね。そういうのもあるかもしれない。
👨私はそういう不自由さを感じたことは無い人なのだけれど、それでも字幕があると舞台が凄くわかりやすいの。台詞やシチュエーションのひとつずつがもれなく刻まれていく感じ。
👩うんうん。
👨あと、手話というのはひとつの身体表現でもあり言葉でもあるから、
👩そうですね。
👨それが舞台の端のほうでやられているのであればきっとほとんど観ないのだけれど、中にはいってきてくれると、それ自体から訪れる場の膨らみがあるわけで。
👩うん。
👨それと音声ガイドにはここになにがありますとか何をしていますとかも含めて案内してくれてね、そうすると、観ていることとは別腹で観る側の無意識に訴えて舞台をもう一度確認してくれているような感覚もあって。
👩うんうん。
👨もちろん、そういうことは必要な方達にとって舞台をより知るための大きな助けになるのだろうけれど、
👩楽しんで頂ける方がね、いろんな方に楽しんで頂ける。
👨メリットはその方達に留まらず、観客全てが何かを与えられるものになっているように思えて。
👩うん。
👨とても面白くて、楽しくて、興味深い試みでもありましたね。正直、全ての舞台に対してあのようなことができるとは思わないのよ。でもね、
👩でも、いっぱいあって欲しいな。増えて欲しい。
👨そう、そういう作り方を意識して組まれる演劇がね。たまたま私が観た、『再起動の夜』という30分くらいの舞台はその第一作目なのかもしれないけれどね、そういうのもいろんな団体のレパートリーとしてもっと増えてくれればよいなと観ていてすごく思いましたけれどね。
👩そうですね。増えて欲しい。いい試みだ。
👨あとその後で、劇場で作品を観ることやそもそも劇場に足を運ぶことの難しさについてのお話なども伺って、日本の劇場というのは改良するところがたくさんあるんだということも感じました。でも、そういうことって団体も劇場も観客も意識しないとできないことだから。
👩そうですね。
👨とても勉強になって。有意義な公開セミナーでした。
👩すごいな。ちょっと観てみたかったなぁ、それ。
👨目から鱗が落ちるような話がいくつもありましたよ。それとね、帰り道に思ったのだけれど、考えてみれば歌舞伎のイヤホンガイドだって歌舞伎の知識に対して十分ではないところを補ってくれているわけじゃないですか。
👩ああ、そうですね。確かに。
👨人間って言うのは、人によって、ここはたくさん持っているけれど、ここはもうすこしあったらよりわかりやすいというのはあるので。そう考えたらそういう風にしていろんな媒体や表現が演劇に介在して補っていくというのはもっと一般化してもよいなぁとは思うのね。
👩うんうん。
👨またそうできる懐があるのも演劇のひとつの豊かさかなぁともおもって。
👩いやぁ、いろんなことがあるなぁ。面白いですね、とっても。
👨さっきも言ったように、たとえば一瞬の張り詰めた空気や場毎の欠落を重ねていく中で成り立っているようなお芝居もあって、そこでは介在するものがあると舞台が成立しないこともあるとは思うのね。実際そういう作品もたくさんあるとは思うし、それを全部今回みたいに作りなさいというのは無茶だとはおもうのだけれど、いろんな方がたくさんに楽しめるお芝居を作るというベクトルでみれば、今回みたいな作劇のノウハウっていうのはもっと広がっていくべきだとはおもうけれどね。
👩うん。むしろね、特化しても良いとおもうの。
👨ああ、なるほどね。
👩なんかあるじゃないですか、『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク』とか。
👨『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク』?
👩うん。常設になっているんじゃないかなぁ。元々は海外でやっていた公演・・、公演というかね、あれは真っ暗な、なにも見えない真っ暗な中。私が行った時にはアウトドアの会社とコラボしていた時だったから、キャンプ、森の中みたいなのがが広い建物の中に作られているんですが真っ暗なんですよ。その中に水が流れていたりとか、お金をポケットの中に入れておいてお酒を飲んだりとか。で、目の見えない方がアテンドさんをしてくださるのです。それが、すごい・・、なんでしょうね、感覚?やっぱり全然わからない感覚だったりとか、その、暗い中で私が普段目に頼っている人間にはわからないものを体験とか知ること。その、完全に理解とか出来ていないと思うけれど、でも、まず知ることができたというか体験だった。うん、知ることができるというか体験できる。いまどのようにやっているのかは全然わからないのですけれど、いっときこういろんな風に、規模がおおきくなったりもしていましたね。多分いまも常設にはなっていると思います。
👨ああ、多分それはいまでもやっているんじゃないですかねぇ。
👩うん、続いていると思います。凄く良いからね、また行きたくなっています。
👨うん、それは私も興味があるね。行ってみたいなぁ。
👩でもね、絶対に一人で行った方がよいですよ。
👨ああ、そうかもしれないね。
👩私はひとりでいったのですけれど、誰か、友達とか知り合いとかといくと、そこで話とかしちゃったりもしているから良くなくて、一人で行ってなにを感じるか、周りの人と何を話すかが大事な気がして。
👨うんうん。
👩みんなひとりで行けばよいのになって思ってもいます。
👨まあそれは、行くならひとりだろうね。
👩うん、絶対ひとりが良いなぁって思う。
👨そういう自分の感覚と向き合うときに、知り合いがいるのはあまり良くないかなと思う。ちゃんと切り離して体験したいというか。良くないというのとはまた違うのかもしれないけれど。
👩すくなくとも、最初の体験はひとりで行って欲しいし。ペアとか何人かでいくと絶対にそこで固まってしまうから、ひとりだけ、ソロだけのやつとかがあればよいのになぁと思います。誰かと行っても、話せたりもするわけだけど、そこで固まったりしなければよいとおもうけれど。だいたいね、不安な環境ではあるわけだから。いつもとは違う、自分たちの普段の生活の中とちょっと違う、私たちが体験できない普通、誰かの普通の中に入っていく。自分たちが慣れていないことの中に入っていくわけだから。
👨なるほどね。
👩いやぁほんとに。まだ行ったことが無い人がいたら是非いってくださいって思う、ひとりで、ひとりで行ってください。
👨うん、そのひとりっていうのはほんとわかる気がする。そういうものって誰かと行くと感想を言い合っただけで自分の感覚が色を与えられて歪んでしまう気がするから。
👩うんうん。
👨やっぱりそのときの感覚は自分一人で見つめて、咀嚼して、記憶したいよね。
👩ですです。そうそう、個人的にはそう思う。
👨なんかいろんな試みっていうのは、まだまだこんなコロナの日々にもあるものだね。
👩はい。
👨ところで、試みといえば根本宗子さんの新しい試み『Progress2』も面白かったよ。
👩ほう、どんなだったのですか?
👨あの、このシリーズは6月にも一度あったんですね。KAATで。
👩はいはい、おっしゃっていらっしゃいましたね。
👨そのときには安川まりさんが30分のひとり芝居を演じて、そのあとの根本さんのダメ出しまで見せてもらったのですけれど、今回は場所を象の鼻テラスに移しましてね。
👩へぇ、はい。
👨戯曲はほぼほぼ同じなのですが、そこにダンサーの山之口理香子さんが入られて。
👩ほう。
👨なおかつ二宮ユーキさんの映像が入ったんですよ。映像というか、撮影機材を抱えて動き回って別の切り口で作品の生撮影をしながらそれを壁面に映し出すというのをやったの。もちろん、建物の中でのお芝居もあるのだけれど、俳優やダンサーさんは上手からさらに外にでて、それをカメラが追いかけていくみたいなこともあって。
👩へぇ。
👨そうすると大きな客船の姿が借景になったり、海に向かって佇む姿が壁面にうつしだされたりとかいうのもあって。
👩うんうん。
👨あとダンサーの方は主人公の台詞にならない想いの揺らぎのようなものまで表現をするのだけれど、その表現力自体が圧倒的だし、それが外に捌けていくことでその去来を観る側に感じさせるみたいなこともあって。
👩うん。
👨戯曲は概ね前回と同じで私にも記憶もあるのだけれど、でも俳優が舞台で演じることにダンサーの方の身体表現が重なったり、更にはその光景が客席からではないカメラに切り取られた視座から紡ぎ込まれると、観る側が受け取るものの先で取り込まれる、その膨らみがまったく違うのですよ。
👩ふーん。
👨根本さんにしてみれば実験みたいな部分もあって、企みとして舞台にこういう表現を差し入れてやったらこう言う風になるというのを確かめたかったということもあるのだろうけれど。
👩はい。
👨そこから生まれるものは観る側にとってもほんとに超絶素敵な果実で。また、6月に観たものは根本さんが考えるこういう可能性を内包していたものなのだなっていうことに驚いたりもしたのですよね。
👩はいはい。
👨観客は通常、そういう試行部分というのは観ないわけじゃない。私たちというか観客はその最後の部分の映像なり舞台の研がれたもので作品に向き合うわけで。まあ、映像は彼女のファンクラブに入れば観ることが出来るみたいで、だからファンクラブに入ってねという話でもあるみたいだけれど、それが生まれる空間を目の当たりにしただけでも、捉えられかたは凄かった。
👩その、出来ていく途中?なんていうんでしょう、裏側も一緒に見ることができるという。
👨そうそう。彼女の企みというのが。しかもこれってまだ続くっておっしゃっていたから、きっとそこには今回供されたものの更なる彼女の企ての解け方というのがあるわけじゃない。そうして生まれた作品は鐵板で面白いと思うし、前回や今回とはひと味もふた味も違った面白さをもらえるようにも思えるし。
👩うんうん、そうですね。
👨まあ、チケットは瞬殺でなくなるから、取るのがめっちゃ大変なのですけれど。
👩うふふふ。それはとてもわかりやすい評価ですよね。
👨そうそう、彼女はすでにそれだけの評価をうけている証だし。しかも、今回彼女自身が開場時の消毒検温の声かけで立っていたりして、けっこう手作りの矜恃というかその良さを残したりもしているしね。
👩あはは。
👨なんであなたがここにいるのって、観客としては一瞬びびったりもしたけれど。だけど、そういう志っていうのは観客にとって凄くありがたいし、ある意味作品との距離を無くしてくれるし、良いやりかただなぁともおもって。それは彼女に良い観客がついているからできることでもあるし、そうやって培われている信頼は、次に彼女の作品を観たときにもっと観る側に力がついているというかより演劇的に確かな視座や俯瞰で観ることができるよう学ばせてもらうための良き環境を作っているような気もするんだよね。
👩うんうん。
👨まあ、さっきも言ったように、彼女にとっても実験的な部分もだからこそ得られる果実もあったのかもしれないけれど、観る側にとっても、勉強になるなんていうと偉そうだけれど、たくさんに得るものが多い試みだったね。
👩はい。
👨でも、改めて、安川まりさんは上手いよね、やっぱり。あと山之口理香子さんは、根本さんの他の舞台でも何度か観ているのだけれど、その身体が紡ぐ想いの奥行や揺蕩いというのが、ほんと俳優の方が演じるのとは別の浸透圧で伝わってきて。あと、映像に切り取られた情景にもしっかりと目を奪われたしね。
👩うふふふ。観ることができてよかったですね。チケット大戦争に勝利して。
👨ええ、もう、これまでのチケット争奪戦で培ったノウハウを活用して今回はなんとか。思えば昔はチケットぴあに電話のダイヤルがすり減るのではないかと思うくらいかけ続けてチケットを取っていたわけじゃないですか。
👩あぁ・・・。もう考えられないですね。
👨だってさ、歳がばれちゃうけれど、昔々第三舞台とか夢の遊眠社のチケットなどというのは超プラチナだったわけですよ。そのときなんかほとんど始発でいって発売の3時間前とか4時間前から発売窓口に並んだものね。
👩凄いなぁ。
👨それでもけっこうな列になっていて、寒い中みんなカイロを握りしめて取れるかなぁって不安になりながら待って。先が見えないくらい並んでいたからね。そのころから比べると明らかに文明は進化しているのだけれど、でも手段が進化しても生の舞台のチケットの数が増えるわけではないので。
👩それはそうですね。戦い方が変るだけで争奪戦が起こることには変わりがない。
👨根本さんってこれまでも地道かつ大胆にやってきて、既に根本宗子ブランドみたいなものを確立しているので、コアなファンの方も多いし競争率は激しいよね。
👩そうか。
👨まあ毎回観ていて、そのたびに驚かされることもあるし、面白いし。来年も恙なく実験が続けられたら良いのにと思う。
👩ほんとに、舞台をやろうとしている団体は一生懸命稽古してやっているからさ、どうかさ、どうか中止にならないでほしい。
👨それはもう祈りですよね。
👩うん、祈り。本当に、お願いだから、その期間どうにかもってくれって。出来てくれって。もうさ、もう気の毒で悲しくなる、公演中止って聞くと。
👨それもさ、さっきも言ったけれど、ゲネくらいまでいって中止になるものがけっこうあるんだよね。あぁ・・って思う
👩それはそうですよねぇ。でも、そうなるよなぁ。その頃になると俳優やスタッフの体力も落ちてくるから。コロナにはもうやめてあげてくれって思います。
👨まあ、東京の感染状況をみていると若干だけれどピークに来たのかなという感じはありますけれどね、それでも。
👩うーん。
👨でもそんな中でもチケットの発売はけっこうあってね、この間も田瓶奇譚集のお話をしましたけれど、
👩はいはい。
👨あと、東葛スポーツも久しぶりにあるんですよ。東葛スポーツ『パチンコ(上)』もとても楽しみで。
👩とうかつすぽーつ?
👨うん、東葛スポーツ。
👩うん?団体名ですか?
👨団体名なのですよ。
👩ふーん。
👨一言では言えない芸風の団体なのだけれど。たとえばラップでね、いろんなことをティスりながら物語を組み上げるとか。
👩ああ、そういわれると聞いたことがあるなぁ。なるほど。
👨私けっこう昔からみているのですけれどね、ハズレがなくて、ツボにはまる部分も多々あって。
👩へぇ、それにしてもすごい団体名だな。
👨うふふ。きっと東葛飾の東葛なのだけれどね。
👩ああ、なるほどね。
👨それがあったり。あとほりぶんの話もこのあいだしたし、そうそう玉田企画もありますね。長井短さんがご出演みたいで。
👩はい。
👨それから9月には、以前大阪で凄く良いお芝居を観て一度で名前を覚えた、6月に東京で『ボンバイエ!!』映画の上演会をした無名劇団という団体も大塚萬劇場で公演をしますね。
👩ああ、はいはい。
👨まあ、こういうご時世の中でもまだまだ楽しみはたくさんありますので、希望を持って。
👩そうですね。いろんな苦しいことも多いけれど、そんな中でも頑張ってくださっている方がいるから、観客も全力で楽しまなければと思います。
👨そうですよ。あとこれまでの経験則から言うと、来月にはコロナが少しおさまっているのではないかという期待もあるしね。
👩うーん。でもドンドコ増えているしなぁ、今。
👨東京はここ何日間か若干マイナスになっているじゃない。
👩確かに。
👨だからといって毎日2万なり3万人の人が罹患しているというのも笑えないわけで、考えてみれば恐ろしいはなしだけれどね。
👩怖い話ですよ、本当に。本当に恐ろしい。
👨そんな中でも、前みたいな行動規制をされているわけではないので、自分がしっかり注意をして、楽しいと思えるものをたんとみたいと思いますね。
👩そうですね。ほんとうに自分の元気がまず大事だから。
👨実は私、4回目のワクチンを打ちましたからね。
👩偉い!
👨今回熱は出なかったのですけれどね、肩が痛くなって一番酷いときには首が回らなくなってしまうという洒落にならないような状態にまで陥って。テレビを観ながらご飯を食べるために仕事用の回転椅子を食卓に持ち込んだりもして。完治するのに1週間くらいかかった。
👩うふふふ。
👨まあ、そういう苦しみはあっても罹るよりはましだとおもうから。
👩うん、それはそうです。
👨だからみなさんも回転椅子があれば生活はできるので、是非にワクチンを受けて頂きたいなぁと。
👩あはは、是非に受けてください。
👨ということで今夜はこれくらいにしましょうか、また様子を見ながら、お芝居が恙なく行われることを祈りながら、お話をしたいと思います。
👩そうですね。
👨それでは。演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨次回もお楽しみに。
(ご参考)
・エンニュイ『無表情な日常、感情的な毎秒』
2022年7月29日〜31日 @spaceEDGE
(7月31日は公演中止)
脚本・演出 長谷川優貴
脚本の断片 今まで出演してくれた全てのメンバー
クリエーションメンバー :
青柳美希、荒波タテオ、市川フー
小林駿、zzzpeaker、長井健一
二田絢乃、波多野伶奈、ヨシオカハルカ(actors team Re-birth)
・ダダルズ『QPQの地点』
2022年8月4日~8日@三鷹SCOOL
作・演出:大石恵美
出演 : 生実慧、大谷ひかる(三条会)、永山由里恵(青年団)、
西山真来(青年団)、横田僚平(オフィスマウンテン)
・劇作家協会公開講座 2022年 夏
2022年8月7日@座・高円寺2
① 戯曲から始まるアクセシビリティ
公募短編戯曲のバリアフリー上演 『再起動の夜』
作:夏井孝裕
演出:八鍬健之介
演出助手:金田一央紀
舞台手話通訳:米内山陽子
音声ガイド:檀鼓太郎
字幕制作:丸山垂穂
出演:神農直隆、コロ (COROBUCHICA.)、松永玲子 (ナイロン100℃)
② 上演を振り返るシンポジウム
「作り手からの視点 ー実践を経てー」
③ 当事者とともにこれからを考えるシンポジウム
「みんなで劇場に行こう!」
・ダイアローグ・イン・ザ・ダーク
(URL貼り付けに問題があるようでしたらお知らせください)
・月刊「根本宗子」新しい試み『Progress2』
2022年8月8日~10日@象の鼻テラス
8月8日は公開ゲネプロ
作・演出 : 根本宗子
絵 : harune
出演 : 安川まり 山之口理香子
撮影 : 二宮ユーキ
(今後のお勧め)
・東葛スポーツ
東葛スポーツ『パチンコ(上)』
2022年9月16日~20日@シアター1010/稽古場1
構成・演出 : 金山寿甲
出演 : 板橋駿谷、森本華、川﨑麻里子、
名古屋愛、宮崎吐夢
・玉田企画『ヨン』
2022年9月23日〜10月2日@東京芸術劇場シアターイースト
作・演出
玉田真也
出演 : 長井短、祷キララ、ファン・リハン
伊藤修子、李そじん(東京デスロック/青年団)、森優作
田中祐希(ゆうめい)、前原瑞樹(青年団)、森一生
山科圭太、玉田真也
・無名劇団『プラズマ再臨』
2022年9月14日~18日@大塚萬劇場
脚本 : 中條岳青
脚色・演出 : 島原夏海
出演 : 島原夏海(無名劇団)、泉侃生(無名劇団)、柊美月(無名劇団)、
太田雄介(無名劇団)、尾形大吾、石原正一、
中村ユリ(アルソア日粧)、中山さつき、天知翔太、
彩華、神咲有希乃(TWINPLANET)、粂野泰祐、
黒住萌(TWINPLANET)、佐伯龍、澤田紗菜(リリパットアーミーⅡ)、
常盤ナナ(エイチエスプロモーション大阪)、中井美空、西ノ原充人(TWINPLANET)、
平松伸一、松田拓士(竜人世界)、山田真彩子、
吉本翔咲音
よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートは我々の会話をより多岐に豊かにするために使用いたします。よろしくお願いいたします。