2024年10月21日の乾杯
新しい乾杯。日もだいぶ短くなり、風もひんやりとして、木々の色にもようやく秋を感じる今日この頃。
今夜もふたりでたくさんに、このごろのお芝居のあれこれを語りあいます。
👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。
👨はいよろしくお願いします。 なんか急にさむくなってきましたね?
👩そうですねぇ。ちょっと風邪を引かないように気をつけないといけませんね。
👨ええ、私は今日、出かけるときにこれまでと同じようにワイシャツ一枚で出かけて、これはダメだと思ってウィンドウブレーカーみたいなやつをとりに戻ったという。
👩これからはどんどん寒くなるみたいですからね。
👨本当におっしゃる通りで風邪など引かないようにしないといけません。
👩はい。
👨まあ、そんなふうにして季節は移ろうけど、 それはそれとして、私は最近も相変わらずいいお芝居に巡り合ってますよ。
👩それはそれは。
👨一昨日だったかな。「劇団ズッカ」という団体こ見てきたんですよ。
👩お名前は聞いたことがありますね。
👨今回が2公演目みたいで若い団体なのだけれどなんかすごかった。
👩すごかったとは?
👨王子小劇場だったんですけどね。
👩はいはい。
👨まず舞台美術がわりと斬新で。劇場に入って奥側が客席というのはけっこうあるのだけれど。入り口側の上方三面にバルコニーがあるのはご存知ですか?
👩うん、うん、ありますね。
👨であそこから張り出して床面の間にポールっていうか、パイプを立てて。
👩ほう。
👨そこに、どう言えばよいのだろう、2階と1階の間に踊り場みたいなステージを作って、下手側にね。 で、上手の方にはあのDJブースとキーボードみたいなものを置いて。 床にはラインの切り方っていうか線みたいなものを引いて俳優達がそこに並んだりもするのだけれど、それが客席に対して平行ではなく斜めだったりもして。
👩なるほど。
👱その空間を満たす照明がすごくて。 ミラーボール大きな二つを上手と下手において。 ムービングライトっていうんですか、くるくる回転する灯体を何台も吊ってキレッキレの照明にして。なおかつ良きプロジェクターで映像にいろいろと語らせてもいて、
👩やっぱり違いますよね、良いプロジェクターは。
👨明らかに違う。解像度が違うのだろうね。無駄なくまぶしくなくキリッと映る。
👩それはストレスがなくていいですね。
👨なんとかルーメンって表現するのですけどね。プロジェクターの光の強さって。
👩はいはい。
👨ルーメンの価を見たらなんかちょっとびっくりするようなやつなのだと思う。だから白ではない壁面全面にバーンと文字が映ったりするんだけど、それでも全然光量が足りているの。
👩ああ、すごい。
👨その中に世界の断片みたいなものを散りばめながら、4人の少女が大人になっていく姿を5人の女優で描き出していくんですけどね。4人のうちのひとりはその表裏を2人の女優で演じていて。 加えて男優が一人、あの先生、プラスの父親役っていう。
👩うん。
👨彼女たちの子供の頃にはね、ほら「GOONIES」という映画があったじゃないですか。
👩ああ、「GOONIES」知っています。
👨そのシーンを重ねた自転車の光景の模倣があったり。 あと、耳障りのよいいろんな台詞があるのだけれど、その言葉の中には。 あのZARDさんとか、荻野目洋子さんとかあもっともっと古くて石田あゆみさんのナンバーを引いたような台詞もあって。というかそもそも石田あゆみってご存じですか。
👩知ってます、石田あゆみさん。
👨彼女の「ブルーナイト横浜」の歌詞に台詞がからめられたりとか。
👩うんうん。
👨あと多分オリジナルなんじゃないかなっていう歌が間に入っていたりもするのだけれど、それもとても良くて。
👩へぇ。
👱それと少女のひとりがボクシングをはじめて、みんなもやり始めるのだけれど、そのジャブジャブアッパー、ジャブジャブアッパーみたいなリズムが繰り返し繰り返し刻まれたりもして、それが舞台全体に満ちてテンポをつくったりとか。もう観ていて飽きないし、取り込まれるし、めちゃめちゃ面白いのよ
👩そうなんだ。
👨なんか作品のタイプは全然違うんだけど、例えば昔初めて快快とかチェルフィッチュに触れたときに訪れたような感覚、新しいとかぶっとんだって当時言われていた作品ってあるじゃないですか? なんかこれまでの描き方じゃないぞみたいな感じの作品、おぉって前のめりになったみたいな。それと同じ感じになって観ていた。 まあ作り手も俳優もきっとまだ若いのだろうしね。新しい演劇がまたやってきたのねって感動したんですよ。
👩またこれから 追いかけるというか応援するところが増えましたね。
👨うふふふ。劇団ズッカはしばらくね、何かをしてくれるという期待がたっぷりにあるので。 おっしゃるとおりでここはちょっと追いかけてみようかなという。
👩うん、いいじゃないですか?
👨やっぱり、王子小劇場は、若手を応援するっていうのも売りだし、実際にこうして新しい良さを引き出す力というものも絶対にあってね。またその歴史も実績もあるし。 まあ、来年には経営母体が佐藤商事から離れて、大阪のインデペンデントシアターと合併しちゃうみたいだけど、こういう舞台を観るとその伝統は続けて欲しいと思うよね。
👩ええ、そうなんですか、へえ。
👨あれ、ご存じありませんでした?先月ぐらいに突然発表があって。元々あそこはオープン以来佐藤商事という会社の運営なのだけれどその佐藤商事が頑張って、頑張って、それでも頑張り切れなくて泣きをいれたみたいで。まあ流行り病の時期もあったしね、
👩ああ、そうなんだ。
👨それで急遽なんとかしなきゃってなって、色々やる中でインディペンデントシアターが手を挙げてくれたみたいで。。
👩へぇ。
👨そのインデペンデントシアターの母体というのは有限会社ジャングルというところで、なんかホビーやキャラクタービジネスの会社らしいのね。そういう会社の一部門として、表現に関わっているという共通点もあるということで大阪に劇場を持ったらしいのだけれど。とても前向きの経営をしているイメージがあって持ち小屋のインデペンデントシアターが1と2、大阪のど真ん中にあって、改装をしたりもして、このご時勢に。その東京進出ということでね。王子小劇場の新しい名前はまだ決まってないらしいんだけど、まあ、インディペンデントシアター王子になるのか、インディペンデントシアター3になるのか知らないけど、どちらにも利があるように運営していくみたいですよ。
👩そうなんだ。
👨暫らく前になるけれど、今王子小劇場の代表をやっている「露と枕」の井上さんとインデペンデントシアターの方がXのスペースでいろんな説明をしてました。 なんか観劇のおじさん界隈でも「どうなるんだろうね?」みたいな話をしてて。
👩うん。
👨ああやって話してもらえると観客としても経緯がわかってありがたかった。それまではいくつかの細かい疑問点もあったのだけれど。たとえば、個人的には、あの王子落語会がどうなのかなとかね。
👩ああ、どうなるの?
👨一応やる方向でみたいな話にはなっていた。あとあの支援会員の制度とかあるじゃないですか? そちらはなんかちょっとまた考えましょうみたいな形で、お茶を濁されてしまったけれど。
👩はい。
👨でも聞いていて劇場を運営するというのはとても大変なことなんだと思った。またその苦労も天秤にかけても演劇というのはなかなか儲からないものなのねっていうのもよくわかりましたけど。
👩 そうね、厳しいもんだよね。どこまで行っても。
👨まあね、。
👩やっぱりこう若手だったりとかやろうって思っている人が活躍する場がないとね、最終的に名優って呼ばれる人たちだって下積みをする場所があってのことだったりするわけだから、そういう人も生まれなくなっちゃう可能性があるからね。 なんとか頑張って生き抜いていただきたいという気持ちです。
👨そうですよね。 まあそんななかで最近公演がたくさん増えてるってことはみんな大変な思いしてやってるんだろうなということは改めて考えましたけど。そういえば、インデペンデントシアターっていうことで、大阪の話をすると、この間の玉造小劇店という団体と、Rob Carltonという 西からの劇団二つを続けてみましてね。
👩はいはい。
👨Rob Carltonは今年のMitaka Next Selectionで。三鷹芸術文化センターが呼んだからそこがお金出してるのかもしれないけれど木戸銭も安くて3000円ぐらいで観ることができて。でも、木戸銭が安くても関係なく面白かった。私のあの知り合いのおじさんが下らねぇなっていいながら大喜びしてたから。
👩あははは、あの演劇界隈大喜びみたいな。
👨そうそう。あのさ、なぎら武さんっていらっしゃるじゃない?
👩いらっしゃいますね。
👨ええ、彼のなんか慇懃というかあの嘘っぽい外国人の日本語みたいな喋り方ってあるじゃないですか?
👩うんうん。
👨そのなぎら武さんが3人いてお芝居をやってるみたいな感じなのよ。 なんか大きなその会社とか政府とかがの上の方が会議をしたのだけれどうまくまとまらなそうなので下の人たちが3人集まってなんとかまとめようって打ち合わせをする話なのだけれど、それぞれのマザータングが違っていて共通で通じるのが日本語だけという設定でね。それだけでもう十分面白いのだけど、次の場では何十年後かになってその時のことを思い出して話をするのよ。 ただ当然に記憶はみんな微妙に狂っていて。しかもお芝居のタイトルの「THE STUBBORN」というのは頑固者って意味なんだけど、それぞれがみんな頑固なのよ。あれはああだったとかこうだったとか意地を張って、そこでもう大爆笑なんだけど、なおかつ最後にじゃあみんなの言ったことをそのまま並べてみたらどうなのかって言いだして繋いでしまう。まあなんというか一粒で3度おいしいみたいな舞台になってて。
👩へえ。
👨団体は 村角太洋さんが作・演出をやるんだけど。昔彼がT-Worksという丹下真寿美さんが主宰している団体に呼ばれて作品を作ったことがあって。
👩はい。
👨シアターグリーンの上でやった『The Negotiation』というお芝居なのだけれど、森下亮さんとか三上市郎さんとかもご出演でね。それがメチャクチャ面白くて。評判もよくてその後Returnsもあって。それ以来彼を注目しているのだけれどね。
👩なるほど。
👨そのお芝居もけっこう肝はおんなじなのよ。その、外国の人っぽい登場人物が、おたがいのこだわりを不毛にぶつけあうみたいなね。で、散々笑って見事に嵌められたなっておもっていたら、少し毛色の違うROB CARLTONの前回公演でも今回も同じように嵌ってしまったからね。
👩うふふふ。
👨まあ、恐れ入りましたというか。
👩良いものをありがとうございましたですよね。
👨うん。また今回も含めてとても受けているというのは多分村角さんも実感しているはずで、きっとまた彼は作品を東京に持ってくるのだろうなぁという期待もあって。
👩いいですね。
👨あともうひとつの玉造小劇店のほうは、かなり前から東京に来ているのだけれど。
👩ああ、そうなんだ。
👨そう、けっこう昔から。ただ、東京の観客に対してある意味宣伝べたでね、。あの。 観客がね、少なくとも私が観た回はどうみても観客がね、圧倒的に関西人の方が多いのよ。
👩へぇ、いや、もったいないね。なんでそんなに宣伝下手なんや。
👨ああ、だから下手というか、多分関西人コミュニティの口コミだけでけっこう席が埋まってしまうのではないかとも思うんだけれどね。
👩すごいなぁ、あはは。やっぱり関西人は地元への情に厚いというイメージがありますね。
👨情に厚いっていうか、これさ、私は出身が関西だから場内に入ってもそんなもんかなとしか思わないけど、あれ、東京の人が入ったらね、わりと居場所がないよ、しばらく。 もう入った瞬間に物販をやっていてでその物販もけっこうノリ、ノリ、突っ込みみたいな感じだから。
👩あはは、すごい。
👨元々中島らもさんとわかぎゑふさんが1990年代に創ったリリパットアーミーっていうすこぶる伝統ある劇団が関西にあって。 中島らもさんが抜けた後その流れでリリパットアーミーⅡとなって。玉造小劇店配給芝居の名義で上演しているみたいなのだけれどか。
👩へぇ。
👨そういうのもあって、その劇団員っていうか客演の人も含めてみんな勢いがあって開演前の舞台にもおもろい熱があるんですよ。物販の口上を言いながら、のりツッコミで客をぐいぐい引き寄せる。ぼけとぐちもふんだんにしてね。関西では当たり前でもあんだけ鍛えられてたらさ、やっぱり芸の域だし開演前から関西劇団の底力を感じる。。
👩うわぁ凄いなぁ、そもそも日頃からぼけとつっこみでそれだけ鍛えられているから大阪の人の会話能力は高まるよな、そりゃ。
👨当パンなどを見ると「わかぎゑふが長年温めてきた「一人称」を紐解く物語。どうして日本には男と女の使う言葉が別々にあるのだろうか」というモチーフで作られた舞台で、事実それにまつわるいろんな企みもあるのだけれど。一方で空の上が舞台の神様たちの話でもあり転生の話でもあって、[て][ん][く][う]のひらがな4文字が一文字ずつ昔の右からの並びではってあるのだけれど、そこに突っ込んでほしくてしょうがない感じがありありで「今の若い人読まなきゃ変かもしれませんけどこの張ってあるのはうくんてとは違いますで」ってとか言っちゃうわけ。
👩あははは。
👨あと、客席が埋まってきて舞台上の物販までいきにくくなると客が手を挙げて注文して劇団員がその商品を持っていったりもするのだけど、なんかあのこれウーバーみたいやなぁとか誰かが言い出して、みんなウーバー、ウーバーとか言いながら商品を運んだりもして。
👩へぇ、
👨でも、客席が関西っぽくなっているにしても東京でも人気劇団 であることには間違いなくて、私が公演に気づいて1週間ぐらい前に慌ててチケットを取った時にはもう空いてる日が2日か3日しかなくて。 公演が始まっても当日券がキャンセル待ちしか出なかった回もあったみたいだし。
👧ほう。
👨会場は711だけどね。 で、前回公演の時も割と状況は同じだったんですよ。たまたまXで発見したのは一週間ほどまえでぎりチケットを抑えたみたいな。
👩はい。
👨まあ、観客としての経験からしても彼らは東京でしっかりと客をつかんでいるのだなぁと思う。
👩うん。
👨演目も毎回おなじようなことをやっているわけではなくて前回はそのあのどっちかっていうと人情劇に偏ってて。 で、今回は同じ日本語でもいろんな呼び方があることへの探求みたいなモチーフはあるのだろうけれど、どちらかというと染みついたナンセンスな部分もあって。 まあ、わかぎゑふさん、私はあの今はやりもんの転生ものってだいきらいやねんとか言いながら、その転生を追いながら言葉の使われかたを紐解いていくというはなしだったし。
👧ええ、嫌いなのにどうして作ったの?
👨しらんがな、
👩うふふふ。
👨でもねぇ、まあ、面白かったですよ。関西の俳優はどこからでも笑いにするしね。またそれが上手い手練れの俳優を集めた座組だったし。
👩はい。
👨あの大王というか後藤ひろひと様の奥様もご出演で。
👩ああ、そうなんだ。
👨楠見薫さんね。
👩はいはい。
👨で、拝見したのは楽日近かかったのだけど。 後半に歌う場面があって、そこで彼女がだんだん乗ってきて踊り出すんですよ。で、踊ってるうちに自分でおかしなってふいてしまいはって。
👩ほうほう。
👨そうしたら座長がカーテンコールの時に「お前この3日間くらい歌のところがずっと ボロボロやないか」とか平気でツッコむわけよ。なんか最後の挨拶が反省会になっていたりするのね。
👩あはは。
👨観る方もそれが楽しみでね、関西人はまた観に行こうかなってなるんですよ。
👩なるほどね。
👨まあ、先日も無名劇団という団体が来て大塚萬劇場で2度目の好演を打ったりとか、コロナ後も関西の劇団が割合とちゃんと来れるようになってはきているとは思うのだけれどね。。
👩それはとてもいいね。ありがたいよね。まあ現状私は今出られてないからだけど、活動してる人たちからしたら、ああ、またあのライバルが増えるぜっていうことなのかもしれないけど。
👨まあね。
👩観る側としては活気があっていいなと思う。。
👨いいなって思うし、ほら、こまばアゴラ劇場がつぶれた時にね。
👩はいはい。
👨地方の劇団が東京で公演を打つのが大変になるのではないかということも問題点としてあげられていて。関西に限らず、全国にアゴラで公演を打った劇団があったからね。あそこって劇場の上の稽古場で泊ることもできたそうだし。
👩ああ、確かに。
👨また積極的に全国から団体を招くっていうのもオリザさんのポリシーだったからね。それこそ北は北海道から南は九州まで全国から来ていたし。また、あそこで知った劇団もたくさんあったし。それがなくなってどうなるんだろうねってみんな心配していた。 でも、今回のその二つの劇団を見てたら、アゴラがなくなってもいろんなすべってあるのかもしれないなって思ってね。 まあ、もちろん内情を知らずに安易にそういうことを言ってはいけないのかもだけれど。京都の「笑いの内閣」の高間さんが、帰りのバスの等級をスタンダードで帰るのかデラックスにできるのか、新幹線なるのか、それはあなたたちの物販の買い方次第です。みたいなこう言っていたのを見たことがあるけれど、あなネタネタではないのかもしれないし。。
👩はいはい。
👨そういう困難はきっと今でもあるのだろうけれど、そうやっても、石にしがみついても東京での公演を売ってもらえるというのはとてもありがたいなぁと思って。
👩うん、そうですね。
👨大変ななかでもやり方というのはあるのだと思うんだよね。そういうノウハウがうまく広まればいいなぁと思う・
👨で、話は変わるけれど、今回もう一つ話題を挙げるとすれば、『売り言葉』かな?
👩どこ?
👨いや、売り言葉。
👩ここは初めてですね。
👨あぁ、ごめん。の劇団の名前じゃなくて、主催の名義はプテラノドンという団体なのだけど、あの、文学座の平体まひろさんが『売り言葉』という一人芝居をされて。
👩へぇ、そうなんだ。
👨もともとはあの野田秀樹さんが 大竹しのぶさんのひとり芝居用に書いた戯曲で。 私、その初演も観ているんですよ。スパイラルホールという原宿の劇場での公演だったのだけれどね。
👩はい。
👨今回は雑遊での上演ということで。でもまあ、あの時の大竹しのぶさんは強烈はでしたからね。言うても。 あれに勝てる舞台を作れるのかなというのは正直あったのよ。
👩うんうん、そうね。
👨でもさ、終演後はもう何をおっしゃるうさぎさんですよ。
👩へぇ。
👨スパイラルホールって、天井が高くて広いホールだから自転車が坂道を降りてくる くるみたいなシーンも作れたのですよ。 今回雑遊でそれをやろうとすると1秒で壁にぶつかるなり観客をひくなりしちゃうからそこは逆にタイトにね、私初めて見たのだけど、あの雑用の空間に両面客席を作って。
👩はい。
👨で、大竹しのぶさんの時には、その坂道の途中にいろんな引き出しが隠れてて。 そこからいろんな小道具を出しては物語を作っていったのね。 要はあの高村千恵子の話だから高村千恵子の言葉は当然大竹しのぶさんが紡ぐのだけれど、高村光太郎の存在や時に言葉は豪華に生の奏者がバイオリンでやったんですよ。
👩へえ。 そうだったんだ。
👨うん、だけど、平体さん版ではそこのところはノイズみたいな音を挟んで智恵子を際立たせたり。なんだろうね、観ていて思ったのだけれど、大竹さんが舞台に少しずついろんなものをくわえて智恵子を浮かび上がらせていったのに対して平体さんは逆に最初に舞台を散らかしてそれらを少しずつ少し片付けていく中でその閉塞や孤独を浮かび上がらせていった感じがして。引き出しから出して広げていくのと、まとめて束ねてトランクに詰め込んでいくという真逆の演出だったんですよ。だけど、平体さんがすごいのは、そこのところで千恵子さんがしぼんでいくのではなくて、その中の終盤の台詞、智恵子抄のなかで狂っていくことさえすごく綺麗に表現して見せた高村光太郎に対しての売り言葉なんですというところに新たに浮き上がる生々しい説得力がうまれるのね。それは大竹さんの本当に作り込まれてのそういう世界ですよというのとはまた違う生々しさでもあって。 平体さんだから表現しうるものを感じたし、この人、どこまで大きくなるんだろうと思って。まあ、文学座なんかでも結構いい役はもらっているのだけれど。先日の「真夏の夜の夢」でも準主役だったしね。でも、そこからどこまで深く高なるのかなってなんか楽しみでしょうがないです。
👩しっかりとした力と魅力を持った人が、どんどんいっぱい。いろんなとこで観ることができるようになりたいですね。
👨うん、まあ彼女はまだ30前だしね、すでにたくさんを貰ってはいるのだけれど。彼女が例えば35になった時にどんな感じなのかなみたいなね。
👩良い感じの歳じゃないですか? うん、気になる。
👨すごく。まあ、噂を聞くとなかなかの酒豪であるみたいですけれどね。
👩おっ、いいじゃないですか?
👨そうね、大酒飲みを否定してはいけないよね?
👩うふふ。
👨まあそんなこんなでいろいろ観てね。 面白いものがたくさんにあったのでその余韻でまだワクワクしておりますけれども。
👩よかった。では、今後のお勧めなどもお話しましょうか?
👨まずはね、やしゃごの『アリはフリスクを食べない』の再演があるのですよ。
👩ええ、それはいつからですか?
👨11月14日からですね。再々演になるのかなぁ。観るたびに印象が新たになって。今回は中野の劇場MOMOなのですけれどね。これははずせないかと。
👩はい。
👨あと、もうひとつは『こそ会』という団体で、11月9日から14日まで上井草のエリア543という小ぶりな劇場で『完璧な月夜のつくりかた』という公演ががありましてね。脚本の花香みづほさんの別の戯曲の上演を先日王子小劇場で観て、それは彼女が別に所属している「イマにヒとコへ(え)」という団体名義での『ねえ、あのさ、』という舞台だったのだけれど、描かれるものの構造や質感に強く惹かれて、彼女の他の作品も是非見たいと思って。
👩なるほど。ところで、実は、わたしからもひとつお勧めしたいものがありまして。
👨はいはい。
👩それは舞台ではなくて映画なのですけれど、アマゾンプライムでも観ることができるようになっているのですけれど、『リバー、流れないでよ』というヨーロッハ企画さんの映画で。
👨へぇ。
👧めっちゃ面白かったんですよね。あの2分間がずっとタイムループするという作品で、しかも観た後に調べたら、その2分間は長回しでとっているらしくて、
👨あぁ。
👩だから私すごく映像酔いをしたのですけれど。
👨映像酔いね、
👩でも、内容はすごく面白かったからおすすめですね。映像酔いしやすい方は休憩しつつ是非。
👨尺はどのくらいなのですか。
👩えぇ、覚えていないけれど。1時間ちょっと、2時間はなかったとおもうけれど
👨えっと、今ググってみたら1時間26分ですね。
👩おもしろいから是非に観て欲しい。
👨映画といえば、噂の『侍タイムスリッパ―』、おもしろかったですけれど。
👩えぇ、観てない。
👨『カメラを止めるな』同様に低予算で池袋のロサ会館の単館上映だったのがどんどん上映館が拡大しているという。
👩そうなんだ。
👨実際に見ても評判に違わず良く出来ていておもしろかった。まあ、そちらも今更ながらですがおすすめということで。今日はそんなところですかね。
👩そうですけ。
👨まあ、ぬくい日も涼しい日も混在している今日この頃ですが皆様お体には気をつけて。
👩はい、ほんとうに。
👨それでは、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨また次回。
(ご参考)
・劇団ズッカ『陽光』
2024年10月17日~20日@王子小劇場
脚本・演出:マツモトタクロウ
出演:大石水月、杏優(太郎物語)、うりのつる、
井澤佳奈、端栞里(南極ゴジラ)
・THE ROB CARLTON『THE STUBBONRNS』
2024年10月4日~14日@三鷹芸術文化センター
脚本・演出:村角太洋
出演:村角ダイチ、ボブ・マーサム、高阪勝之
・玉造小劇店『僕と私の遠い橋』
2024年10月8日~14日@シアター711
脚本・演出:わかぎゑふ
出演: 野田晋市、うえだひろし、長橋遼也、
松井千尋、澤田紗菜、わかぎゑふ(以上リリパットアーミーⅡ)、
八代進一(花組芝居)、大井靖彦、鈴木健介、
木内義一(テノヒラサイズ)、楠見薫
・平体まひろひとり芝居『売り言葉』
2024年10月10日~14日@雑遊
脚本:野田秀樹
演出:下平慶祐
出演:平体まひろ
(今後のおすすめ)
・やしゃご『アリはフリスクを食べない 2024』
2024年11月14日~24日@劇場MOMO
脚本・演出:伊藤 毅
出演:海老根理、辻響平(かわいいコンビニ店員飯田さん)、
佐藤あかり、椎名慧都、小島颯太(以上、俳優座)、
石橋亜希子、井上みなみ、緑川史絵、
佐藤滋(滋企画)、尾﨑宇内、藤谷みき(以上、青年団)
岡野康弘(Mrs.fictions)
・こそ会『完璧な月夜のつくりかた』
2024年11月9日~12日@エリア543
脚本:花香みずほ
演出:加藤広祐
出演:篠原諒
てらだゆい、浜舘洋、藤屋安実(藤一色)
宮内萌々花、ゆで ちぃ子。(イマにヒとコへ(え))
・『リバー、流れないでよ』
ヨーロッパ企画/トリウッド
原案・脚本:上田誠
監督・編集:山口淳太
出演: 藤谷理子、永野宗典、角田貴志
酒井善史、諏訪雅、石田剛太
中川晴樹、土佐和成、鳥越裕貴
早織、久保史緒里(乃木坂46)(友情出演)
本上まなみ、近藤芳正
音楽: 滝本晃司
2023年6月23日公開
有料配信中:Amazon プライム、YouTube, Apple TV
TELASA、U-NEXT、Google Playムービー
Hulu
。