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2022年11月10日の乾杯

2022年11月10日の乾杯、おじさんとおねえさんが久しぶりに直接会って食事をしながらの会話。
全国旅行支援を利用して大阪・京都を旅して演劇や落語を観たおじさんと、映画を楽しんだおねえさんがワインと肉料理に舌鼓を打ちながら語り合います。

👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。こんばんは
👨こんばんは。今日はこんばんはというには少し早い時間なのですけれど。
👩そういえばそうですね。
👨私が関西を旅行してきたので、そのおみやげをおねえさんに渡すということで都内某所で食事をして、お話をしています。
👩はい、ありがとうございます。大阪ですよね、どのくらい行かれていたのですか。
👨大阪は2泊しましたね。その後京都にも行きました。大阪ではお芝居と天満天神繁昌亭で落語を聴いてきました。落語は笑福亭由瓶・桂米紫さんの二人会で。

天満天神繁昌亭


👩ほう。
👨やっぱり上方落語を噺家さんのホームで聴くという機会があまりないしね。開口一番の小文三さんの『延陽伯』、由瓶師匠の『くっしゃみ講釈』『網打ち』、米紫師匠の『不精床』『まめだ』と五席それぞれにいろいろにおもしろかったです。米紫師匠は定期的に東京にも来られているので、また拝見するのが楽しみ。
👩なるほど。
👨あとはindependent theatre1と2の両方でお芝居を観たりとか。
👩へぇ。
👨大阪メトロの1日乗車券を使いまくってね。大阪って休日の一日乗車券が600円なのですよ。だから3回乗り降りすると元がとれてしまう。初日は新大阪で1日乗車券を買って、ホテルに寄ってから劇場を往復して、ちょっと寄り道をしてご飯を食べてしっかりとペイしたし、2日目は平日だったけれど一日乗車券は800円だったから、朝天王寺で用事を済ませて、恵比須町の劇場に行って、南森町から繁昌亭にいって、それでも元が取れた。
👩うふふ。一日乗車券も便利よね。
👨うん。それを利用して、少し早めにホテルを出て、天神橋筋商店街をぶらついて、たこ焼きを食べてから劇場にいくなんてことも出来たしね。
👩うん。
👨そうやってしっかりと動いた値打ちもあったしね。観たものは落語もそうだけれど、お芝居も本当に面白かった。
👩うんうん。
👨関西のお芝居ってね、観る側の意識にないところでも何かが絶対に違っているんだよね、東京のお芝居と。
👩うん、絶対に違う。

👨うわぁ、エビときのこのアヒージョだ。
👩今ね、感染症対策もあって、どんとパンを浸けて食べるというのがちょっと寂しいですが。お皿に取り分けてパンを浸けるというのがね。でも安全第一で。

👨そうですね、しょうがないですね。まあ、私は今月なんと5回目のワクチン接種があるのだけれど。
👩そうか。私は2回目で止まっているのですよ。
👨それはちゃんと受けた方がいいよ。旅行支援も受けられないから。
👩でも、PCR検査の陰性証明でも大丈夫なのでしょ?
👨それはそうだけれどね。でもそれだとちょっと面倒くさい気もする。まあ、それはそれとして話を戻すけれど、改装なったindependent theater 2と1でのお芝居を両方観に行ったのだけれどね。2の方では壱劇屋さんを観たのですよ。壱劇屋は最近東京でもよく公演を打っているけれど。


independent theatre 2nd


👩はいはい、知ってる、
👨彼らが関西の9人の作家に同じ前提を渡して、7人にオファーして、ひとりは公募、ひとりは劇団内で選んでみたいなやり方だったそうなのだけれど、それをつなぎ合わせて、客演を入れて、主宰はもちろん主宰の奥さんにも客演して貰って。
👩えぇ。
👨主宰の大熊さんも主宰の奥様もご出演で。
👩へぇ。
👨もちろんどちらも直接存じ上げているわけではないのですが、奥様は別の劇団の方で。というかサファリPにいらっしゃる佐々木ヤス子さんもご出演で。このあいだアゴラで上演されたトリコAのお芝居にもでていらっしゃって。で、そのアゴラのお芝居の作・演出の山口茜さんが今回1本作品を提供したりもしていて。
👩なるほど。
👨まあ、スーパーマーケットという場所の縛りで作家のみなさんは書いてはいるんだけれど、それでなくても個性をしっかり持った作家さん達なので作品の毛色も質感もばらついていて、それはお客様の物語だったり、店員やバックヤードの物語だったりもするのだけれど、 なんか話が積み重なっていく中で、そのスーパーマーケットの雰囲気が浮かんでくるの。
👩へぇ、うん。
👨それは構成の大熊さんの舞台構成力だと思うのだけれど。
👩うんうん。
👨あと、個人的な話になるのだけれど、関西弁でお芝居をしてくれるとね、
👩一気に戻る?
👨うん。世界が広がる力が私の内に強いというか、ああ、極めて個人的なことだけれどほんとは自分って頭の中では関西弁で考えているのだなぁというのがすごくよくわかる。
👩うん。しっくりくるんですね。
👨そうそう。だから、最初に言いかけたけれど、間とかね、そういうのも関西弁のだとそのままによりしっかりともらえるというか。で、なかにはシュールな作品もあるのだけれど、そのシュールさが関西弁だと尖らないで瑞々しく生きるんだよね。
👩うんうん。
👨標準語で演じると、どこか馴染みきれなくてシラケてしまうような感じも、関西弁だと血が通ってシラケないみたいな。
👩それはあるよね。まあ、同じ話でも、その見せ方みたいなものをかえなければいけないというのがあると思う。
👨まあ、上演時間は2時間半あったのですけれどね。
👩あっという間だった?
👨うん。作品的にも、また物理的にもまだ改装して間がない劇場で、席もすごくよくて。
👩うん。
👨席もけっこうお尻への負荷がないふかふかで、小劇場にはあまりない感じで。
👩うふふ、いいね。東京って小さい劇場は、まあ小さい劇場ってどこでもあるかとは思うけれど、特に東京は小さいところがめちゃめちゃあるから、相対的に席のクオリティはあまり期待できないしね。
👨そう、けっこうまだパイプ椅子的なものからは脱していないところも多いものね。
👩うんうん。
👨あとそう、関西のいろんな作家の方々の色を一度に見せられるのって凄く楽しい。やっぱり首都圏のお芝居はたんとみているけれど、地政学的に関西のお芝居って断片的にしか伝わってこないじゃないですか。
👩うん、そうですね。
👨だけど、ああやって観ていると関西のお芝居も、他にはないようないろんな発想のトリガーとか語り口とか奥行きがあって。
👩関西のお芝居も好きだなぁ。
👨やっぱり関西のお芝居でしか表現できないものって、
👩ありますよね。
👨ちょうど観た回が大楽だったこともあるのかもだけれど、
👩うん。
👨終わってからの雰囲気というのも、東京と大阪ではやっぱりちょっと違っていて。

👩あーあ、うふふ。ところで、このお肉美味しいでしょ。
👨うん、おいしい。
👩めちゃめちゃ美味しいよね。
👨うん、これ、何気なくすごくおいしいのよ。なんか脂の具合が丁度いいというか。
👩そうそう、丁度いいのよ。
👩うんうん。あと、カツレツもそのうち来るよ。揚げ物だから少し時間はかかるかもだけれど。
👨ありがとう。ここのお料理って、なんでも美味しいね。
👩そうなのよ。

👨ところで私がカツレツを食べたかったのには訳があって。大阪にいってちょっと揚げ物欲が復活してきたのね。
👩あら。
👨天神橋筋商店街の揚げ物屋さんの熱々のコロッケとかめっちゃおいしかったし、あと大阪にはね、私が学生の頃から食べていたKYKというとんかつ屋さんのチェーンがあってね。今回はお持ち帰りをしたりしてね。
👩KYK?
👨うん、関西にけっこう店舗があるのよ。知らない?
👩知らない。
👨そこのお持ち帰りにはとんかつ弁当のほかにヒレカツ重なんかもあってね。
👩おいしいの?
👨おいしい。あの、やっぱり関西だから多分しっかりと出汁を効かせているのだと思うんだよね。それがまたしっかりした容器でね。ふつう、お持ち帰りのものって紙とか発泡スチロールの容器に入ってくるじゃないですか。KYKのやつは、ちゃんとした蒸気抜きのついたプラスチック容器というかお重になっていてね。
👩うん。
👨しかもふたを開けると、ラップでカツの乗ったご飯と卵の部分が分けられていて、レンチンしてもできたての味わいが楽しめるという。
👩よく考えられている。
👨それが本当に美味しくてね。またその容器だと、お重の隅の方に残った味が染みたご飯をほじるという楽しみもちゃんとあって。
👩うふふふ。
👨まあ、お芝居なんかもそういう場所での特徴とか味わいってやっぱりあるとおもうのだけれど、その土地の文化というかね。ましてや食べ物なんかは小さい頃や若い頃に食べたものが脳に刻まれているような部分ってあるのだろうなぁって思った。
👩そうですね、うんうん。
👨だからというか、二日目は帰りに梅田の地下街で鰻の棒寿司、
👩うーん、美味しそうだねぇ。
👨それと太巻きを1本買ってホテルで食べたけれど・なんか太巻きはね、小さい頃たまに母親が家事がいやになると近所のお寿司屋さんで買ってきて、今日の晩ご飯はこれねみたいなことをしていたので。


梅田地下街 福寿司


👩太巻きだったら色々入っているしね。
👨そうそう。あと、私も昔はあんまり得意ではなくて最近やっと美味しく食べられるようになったけれど、鯖が食べられない人だったんですよ。特にシメサバが苦手でね。押し寿司なんか特に。だから鰻の押し寿司にしたのだけれど。でも関西では酢でしめた鯖って超ごちそうなのね。バッテラですよ。
👩うんうん、バッテラね。うちのおかあさんもバッテラ大好き。
👨得意じゃないのは多分父親の血をひいているからなのだろうねぇ。父親が青い魚ほとんどNGの人だったから。だから小さい頃私のうちでは夫婦げんかになると母親は父親の晩ご飯にバッテラを買ってきていた。
👩うふふふ。良い抗議の仕方だと思います。おいしいし。
👨母親も取り立てて好きでは無かったように思うけれど、普通に食べることはできたから。で、今日の晩ご飯はこれね、わかってるよねみたいな。
👩あははは。
👨あと、父親は大学の先生で銀行なんかで社員研修会の講師などもやっていたのね。そうすると事前にお食事が用意されていて、超高級なバッテラが必ず出てくるんだって。それを凄く嫌がってた。でも面と向かって相手に言うわけにも行かないから、何度か続けて半分くらい残したらしいのよ、せめてもの意思表示ということで。
👩うふふふ。
👨そうしたら、ある研修会では事前に高級な和菓子とお茶が出てきて、その時はしめしめと思ったらしいのだけれど、今度はその研修会のあとにバッテラが出てきてしかもその銀行のけっこうお偉いさんがご一緒にみたいな感じで会食になっていよいよ逃げられなくなったらしい。
👩うふふふ。
👨あと、グルメ系のお話をもうひとつするとね。
👩はいはい。
👨父親の思い出は高級なバッテラの話だけれど息子にはそんな甲斐性はみじんほどもなくて。で、さっき言いかけたB級グルメのはなしに戻るのだけれど、大阪には天神橋筋商店街というのがあってね、その中に揚げ物屋さんがあるのよ。
👩えーと、天神橋筋商店街って細いところ?
👨いや、太いところ。
👩この前行った?
👨おねえさんは行ってないと思う、京都じゃなくて大阪の商店街だから。
👩ああ。
👨行っても行っても終わらないような商店街でね、一丁目から六丁目まであって、めっちゃ長いんですよ。
👩うんうん。
👨で、時間のこともあったし、暫く見回っているうちに力尽きて三丁目の中間でUターンしてきたのだけれど、その間でもいろんなお店があって面白かった。このおみやげのどら焼きも、天満天神繁昌亭のお膝元なので落語の『ちりとてちん』をイメージして作ったお菓子ですって和菓子屋さんで売ってやつで。まあ、よりにもよって「ちりとてちん」をお菓子にするかというツッコミはあったけど。上方落語だと「ちりとてちん」だけれど江戸落語の世界では「酢豆腐」だからね。

天神橋筋商店街 薫々堂 ちりとてちん


👩うふふふ。
👨一応ちゃんと中にフルーティな白あんのつまった美味などら焼きであることは確認しているので。腐ったお豆腐に混ぜ物をしたものでないので安心して召し上がって頂きたいですけれど。
👩はい。
👨で、そういうお店のなかでも10mとか20mくらい列が出来ていたのがその揚げ物屋さんでね。
👩すごーい。吉祥寺さとうみたいじゃん。
👨そうそう、そうなると自然に並ぶじゃないですか。
👩そうか、並ぶか。

天神橋筋商店街 中村屋


👨いや、2日目のマチネがindependent theater 1で、確か前に公演があった記憶があって。少し時間があったので、そこでコロッケでも囓ろうかとおもって。
👩ああ、なるほど。天気はよかったのですか。
👨すごくよかったの。
👩よかったですね。それは気持ちいいわ、きっと。
👨風もそんなになかったしね。
👩ああ、いいねぇ。
👨で、並んでいるうちにきちんとメニューが見えてきて、コロッケ90円、チキンナゲット110円。
👩それは食べたいね。
👨で、けっこう買い方がはんぱじゃないひとも多くて。前に並んでいたおばさんとか、コロッケ12ずつ、二つ包んでとかね。
👩あははは、すごいね。
👨想像するに、まわりの会社のお昼にまかないというかみんなで食べてるのかなぁとかおもったりもして。なんか事務服を着た二人連れの女性が並んで爆買いをしたりもしていたし。
👩ああ、
👨形的には冷凍のコロッケをただ揚げただけみたいな感じなのだけれどね、それが自然体にすごく美味しい。なんぼでもいける感じ。多分揚げる油とか温度とかもよいのだろうね。
👩そういうのって味に影響するものね、絶対。最初に口に入る感触はそこだから。
👨公園のベンチに座ってコロッケ2個とチキンナゲット3個をぺろっと。
👩その、行列ができるコロッケとか、たとえば吉祥寺のメンチカツとかってさ、一回食べると意味がわかるというか、おいしいよね。
👨そうそう。
👩私って、揚げ物とかそういうたぐいのものがそんなにいっぱい食べられない方なので。すぐおなかがね。またさっぱり系が好きだったりもするので、そこまで揚げ物を食べたいとか絶対に並ぶぞとかには正直あまりならないのだけれど、でも吉祥寺さとうのメンチカツなんかは体調のいいときとか胃が大丈夫な時には食べたくなるものね。
👨そうなんだよね。

👩うん、いよいよ店内にも揚げ物の匂いが漂ってきたね。これは注文したイタリアンカツレツが揚がったね。
👨そうだと思う。
👩ただ、私は、カツレツはちょっと自制します。
👨一口だけ。
👩いや、油物はやめとく。
👨わかった。ではカツレツのお皿は全部私が頂きましょう。
👩うーん、じゃあ半口だけ。

👨はいはい。でね、コロッケを食べた後に観たindependent theatre 1stのお芝居もすごく面白くてね。
👩ええ。
👨MousePiece-reeの『あの日あの時の、嘘(黒バージョン)』という50才くらいのおじさま3人のお芝居でね、あまり予備知識も持たないで観にいったのだけれど、ほんとめっちゃ面白くて。平日の昼間でも本当にお客が入っていたし、実際に観て、東京に持ってきてもきっと連日満員になるのではないかと思うような舞台で。

independent theatre 1st


👩へえ。
👨90分くらいの尺のお芝居で、3人だけで6役くらいをこなすんですよ。役どころとしては女性もあるし、男性もあるし。で、わかぎゑふさんっていらっしゃるじゃないですか。
👩わかぎ・・。
👨わかぎゑふさん。
👩ああ、知っています、わかぎゑふさん。
👨彼女の脚本が、彼らの力を信じてそのあた取り混ぜて取り混ぜてみたいな感じでね。で、それも舞台の力になっていて。歌舞伎の女形でもそうなのだけれど、男が演じる女性ってやっぱり根に持っているパワーというか強さがあるじゃないですか。
👩うんうん。
👨あと、3人芝居でやるから、ト書き語りで物語を繋ぐ部分があちらこちらにあるのだけれど、それがわかぎゑふさんの語り口だとすべからく良いリズムでのぼけとつっこみなのよ。
👩えへへへ。
👨だから、観ている方としてはシーン毎に物語が歩みながら、その中ではどんどんツッコんでいくみたいな感じになっていくのですよ。
👩うんうん。
👨ストーリーも最初のうちは謎解き風になっているしね。刑事なんかも出てくるし。
👩へぇ。
👨更には、そうやってただでさえ面白いのに、なんかお約束のごとく3人が集まるシーンで突然トランプをやろうという流行になって。で、最初は札を配ってトランプゲームの態で、だれが一番強いとかたくさん札を取ったとか言っているのだけれど、そこで一番強い札を持っていた人なのか一番たくさん枚数を持っていた人だかが先頭になって、ゴンドラに乗っている態で舞台を回り始めるのよ。そうしてその船頭の語りもおもしろいのだけれど、そのうちゴンドラに穴があいたことになって、3人並んで掻きだせって横一列に並んでなんども水を掻きだして、最後にその掻きだす勢いにカードをばらまいて、それを一番たくさん集めた人が勝ちみたいな。それじゃ、そこに行き着くまでの時間はなんだったのかという。
👩うふふふ。
👨それをね、3度も4度もやるのよ。一度観ただけだとなんのこっちゃなのだけれど、繰り返されるとなんとなくルールの存在に気づいていく面白さがあって、それをさらに繰り返されると最後は舞台でやっていることのいちいちが、なんか滅茶苦茶面白くなってしまってね。
👩嵌まってくるの?
👨そうそう、嵌まってしまうの。あとでググってみたら去年とか一昨年の公演でのトランプゲームの解説動画まで販売されていてね。あぁ、これって彼らの売りのひとつになっているのだなぁとも思って。
👩うふふ。
👨そうそう、それからさ、開場してすぐに場内に入ったのだけれど、彼らの20周年ということで場内では次々とお祝いのビデオメッセージが流されていてね。私でも馴染みのある大阪の俳優や作家演出家の方も多かったけれど、それだけでなく、東京というか花組芝居の植本純米さんや六番シードの方なんかのメッセージがあって。それがみんな個性的で楽しかったし、それもなにげにとても上手い繋ぎで流されていて、劇団の力というか格というか、ああしっかりと実績を積んできはった団体なのだなぁとも思った。
👩うんうん。
👨まあ、今回の旅行はいろいろに支援も利用して安く済んだしほんと、楽しんだというか。天満天神繁昌亭の夜席でも笑福亭由瓶師匠と桂米紫師匠の二人会なんかも聴かせてもらって、関西の言葉が持つ力も実感したし。
👩うんうん。
👨ほんと実り多き旅行でした。
👩なるほど。
👨ところで、ちょっと話は変るのですが、関西に行く前に、こまばアゴラ劇場でムニという団体の『ことばにない』というお芝居を観たのですよ。


こまばアゴラ劇場


👩はい。
👨聞くところによると、構想を始めた段階ではちょっと長めのお芝居という感じだったみたいなのですけれど、作っているうちに一回の公演では収まらないということになって、今年が前編、その前編の上演時間が270分で。10分間の休憩2回込みでね。来年に後編をやるというとことなのですけれど。
👩ええっ。へぇ。
👨でも、興味深かったというか観客として意外だったのは、その時間がまったく感じられないのですよ。まあ、いろいろに気を遣ってくれてね。アゴラの椅子に硬さを感じないようにクッションが用意されていたりもして。
👩ありがたい、それは。
👨休憩時間のトイレにも効率よくお願いしますというお声がけがあったりとか。
👩なるほど。
👨でも、演劇として作品の時間が長いとはまったく感じなかった。あの、なんだろ、ひとりずつの俳優が舞台に醸す空気の浸透圧のようなものがあって。別にそれが凄く強いわけではないのよ、むしろベースは静かな演劇で、様々なことが語られ重なっていくのだけれど、たとえば繋ぎのところのストレスがまったくないのね、物語の時間が自然に流れ込んでくる。あと、時にキャラクターがはっきりと作り込まれてもいて。中には右寄りの政治家の女性などもでてくるのだけれど、そのマイノリティに対する発言なども取り入れられていて、時間がうまく今に繋がれていて、そうして世界があってその中での女性達の立ち位置などが描かれているので、舞台を違和感なく受け入れらる。あとワークショップのシーンなんかでも、一部コンテンツも含めて40分くらいあるものもうまく作り込まれていて、登場人物と同じようにそこからいろんなことを感じることもできて。レズビアンの女性が主人公のお話なんですけれどね。その立ち位置というか感覚が頭の中での概念から解けて、もっと舞台の空気と同化した自分のこととして伝わってくるような感じすらして。
👩うんうん。
👨なんか、観終わって自然にもらった登場人物達の時間があって、そのなかでいろいろ想ったり考えたこともあったし、またその時間の延長として来年やってくる後編を待つような気持ちにもなった。
👩うん。
👨でさ、そのあとに大阪にいって、壱劇屋とかMouse piece-reeの舞台を観て、その言葉の訪れ方とムニの記憶が重なって、あのムニの時間って関西弁だったら全然違うのだろうなぁとも思った。
👩ああ、うん。
👨もし、関西弁で上演されたら、心の内にあるものから台詞として放たれるまでの距離が違う気がするんだよね。そうすると、いろんなものやことが違う形で見えてくるのだろうなぁともおもって。改めて言葉というのは、特に自分の中に関西弁の感覚が心に戻ってみると、思考や表現がどんな言葉で為されるのかというのは大切だなぁとも思った。
👩聞いていていろんな面白いことが頭に浮かんでいる。まだしゃべれないんだけれど。企画とかね、いろんなことが。
👨うん。
👩そういえばね、今気になるミニシアター系の映画がいくつかあって、その中に『MONDAYS』というのがあるのですけれど、知ってます?これは是非に観て頂きたいのですが。
👨ほぼ知らない。ちらっと誰かがいっていたっけなぁ。
👩『14歳の栞』という映画があるじゃないですか。
👨ああ、はいはい。
👩それを作った監督さんが撮った長編映画なのですけれど、
👨へぇ。
👩一週間を繰り返すというタイムループもので、上司に気づかせないとそのタイムループが終わらないというやつなんですよ。何回も何回も一週間が繰り返される中で、上司に気づかせるためにプレゼンをしたりとかするんですけれど、いまミニシアターを好きな人たちの中では、これが「カメ止め(カメラを止めるな)」と同じ匂いがするみたいな評判もあって、もっと観客が増えて流行っていくのではないかとか言われているし、
👨あぁ、なるほど
👩その、流行るのではないかとかいうこともあるけれど、それ以前に純粋におもしろいのね。是非に観て欲しい。知らない人がいたら。まじで観て欲しい。
👨まだやっているの?
👩まだやってる。10月中旬の封切りだったかな、始まったばかりだし。
👨それは、探してみるね。是非に観てみる。
👩東京の劇場はけっこう混んでいたし、満員御礼のところもありましたよ。
👨もちろん今込んでいるということは決して悪いことではなくて、またその分上映期間も延びるじゃないですか。
👩そうそう。めちゃくちゃマジで劇場で観て欲しい。おもしろいから。お勧めですよ、皆様。
👨はい。私も観るようにしますね。お話を聞いているだけで面白そうだから。
👩うんうん。
👨ところで、さっきの話に少し戻るけれど、小松台東の公演を観たんですよ。『左手と右手』という。あの、宮﨑弁でのお芝居なの。


下北沢 駅前劇場


👩へぇ、でもわかる?宮﨑弁。
👨うん、だいたいわかる。95%くらい。たまにえって思うところもあるけれど。
👩ああ、わかるんだ。あの、わからない地方とかってあるじゃない。
👨ある。たとえば、昔「野の上」という団体が津軽弁のお芝居をやったのを観観たときには結構衝撃的だった。
👩津軽弁はわからないよ。わからない。無理だよ。
👨それで、前説で津軽弁のミニ講座みたいなことがあってね、この言葉はお芝居のキーになるから覚えて置いてくださいみたいに。
👩うふふ。もう辞書をくれ。書いておいてほしい。
👨いや、実際にそのリストが当パンに挟まれていたりもしたんだけれどね。ほら、これはお芝居を理解するキーになる言葉ってほんとうにあるじゃないですか。
👩うん、あるある。
👨作り手としてもそこは観客がちゃんと抑えておいてほしいということだったと想うのだけれど。
👩なるほど。
👨で、その宮﨑弁のお芝居は、東京に一度出て行ったのだけれどなじめなくて地元に帰ってきたおじさんと地元の女の人が一緒に暮らしていて、でも彼の上司のおじさんやその息子ととか、ちょっと宗教に嵌まった女の人の妹とか、東京から遊びに来た元おっさんの仕事仲間とかの群像劇にもなっているのだけれど。その空気を作るのに改めて言葉って大事なのだと思った。
👩うんうん。
👨その言葉でないと見えない世界というのがあって。
👩そうだねぇ。
👨やっぱり、方言から生まれる世界というのも、表現の武器だなぁと思うのよ。まあ、今言った団体もそうだし、こまばアゴラ劇場なんかは地方の劇団の公演なども積極的に取り入れていて、そうすると劇団がホームグラウンドにしているところの言葉の力も感じて豊かな気持ちになるし、それぞれの方言というか言葉の力でそれぞれの作品がもっと広がっていけばいいなと、特に今回大阪でお芝居を観て改めて思う。
👩うん。
👨また、その言葉が日常の世界にある劇場でそういうお芝居を観るってとても素敵なことだなぁとも思っていて。Mouse piece-reeのようにアラフィフの俳優の方達が20年間を積み重ねてきた果実というのはやっはり尋常ではないわけで、そういうものが地域ということを超えていろんなところで観ることができたらよいのになあとは思うのだけれど、でも一方でそれを大阪で着る値打ちというのもあるなぁとも今回思った。まあ、そう想う分だけ、地方にも足を運べということなのかもしれないけれどね。その両方が体験できればいいなぁなんて。
👩うふふ。
👨劇団があちらこちらで公演を打つというという文化というかノウハウが定着してくれば、それは観客にとってもよりたくさんのものに触れることができるというか。その中で気になったものは旅行の楽しみと合せ技一本で楽しむというのもいいなぁって。すこしコロナがぶり返してきてはいるみたいだけれど、みんなが智恵を出し合って、そういうやり方がスタンダードになって、観る側もごちゃまぜにいろんな物に触れることができるようになれば、とても豊かなことではないかなぁと思いながら大阪を徘徊しておりましたが。
👩でも、ほんと、大阪で久しぶりに舞台を観ることが出来てよかったですね。
👨うん。実はほかにも用事はあったのだけれど、一番の楽しみはそれだったので。そんなことを言うとほかの用事の方からは怒られてしまうのだけれど、
👩ふふふ。
👨そういう楽しみが自分で気がつかないうちにどっかにしまっていたというのはあるなぁと思った。やっぱりさ、たまには、自分の感性をリセットするというのも、必要なのだなぁと思う。
👩よい経験をされて。
👨まあ、年末に向かって楽しみたいお芝居がたくさんありますからねぇ。三鷹では第27班の公演があるし、殿様ランチの公演も久しぶりにあるしね。あと、毛皮族の『セクシー・ドライバー』もあるし。
👩『セクシー・ドライバー』?
👨なんというか、感嘆に行ってしまえば映画のようにして映像に収めたものに同じ俳優が生で声をかさねるというやり方なんですけれどね。そこには不思議な臨場感が生まれて、戯曲が濃くなって観る側に訪れるような感じもあって面白いんですよ。たまたま春に試演を拝見させて頂いたのですけれど、そのときにはみんなが一方向に座ってスクリーンや演者をみるのではなく、いろんなタイプのコンセプトでの席やモニターが設えてあってね。その物語の訪れ方が場の雰囲気とも共振してちょっと今までにない体験だった。
👩へぇ。
👨おすすめですよ。まあ、師走とはいえ、お芝居は止まらないので。
👩そうですね。でも『MONDAYS』も観てくださいね。
👨『MONDAYS』は単館上演なの?
👩いや、いくつかの映画館でやってる。皆様、是非に。
👨推しますね。でもおねえさんが推すものはけっこう鐵板でおもしろいから私もなんとか観るようにしますね。
👩はい。
👨さてと、食事も美味しく頂いたし、今夜はこれくらいにしましょうか。
👩うん。
👨それでは、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨皆様、風邪など召されませぬように。お体には気をつけて。
👩ではまた。


天神橋筋商店街 

(ご参考)
・落語中毒
2022年11月7日天満天神繁盛亭夜席
伸陽伯 桂小文三
不精床 桂米紫
くっしゃみ講釈 笑福亭由瓶
仲入
網打 笑福亭由瓶
まめだ 桂米紫
三味線 絹代・ななみ
鳴り物 小文三

・壱劇屋『SUPERMARKET!!!』
2022/11/03 (木) ~ 2022/11/06 (日)
@independent theatre 2nd
脚本:サカイヒロト(WI'RE)、サリngROCK(突劇金魚)、
林慎一郎(極東退屈道場)、ピンク地底人3号(ピンク地底人/ももちの世界)、
福谷圭祐(匿名劇壇)、水鳥川岳良(私見感)、
村角太洋(THE ROB CARLTON)、山口茜(トリコ・A/サファリ・P)、
湯浅春枝(劇団壱劇屋)
演出:大熊隆太郎
出演:安達綾子、大熊隆太郎、北脇勇人、
鍬田大鳳、佐倉仁、谷美幸、
半田慈登、松田康平、丸山真輝、
山本貴大、湯浅春枝、𠮷迫綺音、
佐々木ヤス子(サファリ・P)、田中遊(正直者の会)、三田村啓示

・MousePiece-ree 『あの日あの時の、嘘』
脚本: わかぎゑふ(リリパットアーミーⅡ)
演出: 【赤い嘘バージョン】金 哲義、
【黒い嘘バージョン】高橋 恵(虚空旅団)
出演: 森崎正弘、早川丈二、上田泰三

・ムニ『ことばにない』
2022年11月3日~13日@こまばアゴラ劇場
作・演出: 宮崎玲奈
出演: 
石川朝日、浦田すみれ、黒澤多生(青年団)、
田島冴香(FUKAIPRODUCE羽衣) 、豊島晴香、
南風盛もえ(青年団)、藤家矢麻刀、古川路(TeXi’s)、
巻島みのり、ワタナベミノリ、和田華子(青年団)

・『MONDAYS』
監督: 竹林亮
脚本: 夏生さえり 竹林亮
出演: 円井わん,マキタスポーツ、長村航希、
三河悠冴、八木光太郎、髙野春樹、
島田桃依、池田良、しゅはまはるみ
2022年10月14日 日本映画 上映時間82分

(今後のお勧め)
・第27班『蛍』
2022年12月2日~12月11日@三鷹
芸術文化センター星のホール
脚本・演出: 深谷晃成
出演; 鈴木あかり、佐藤新太、大垣友、
もりみさき(以上、第27班)、
高橋茉琴、松田将希、小関えりか、
髙橋龍児(ブルドッキングヘッドロック)、
松本みゆき(マチルダアパルトマン)、
石井舞、久保磨介、成瀬志帆、
佐藤美輝、小野里茉莉

・殿様ランチ『うわつら』
2022年12月7日~⒒日@駅前劇場
脚本・演出: 板垣雄亮
終演: 板垣雄亮、平塚正信、こくぼつよし、
小笠原佳秀、小笠原佳秀、杉岡あきこ(A公演のみ出演)、
斉藤麻衣子、川西佑佳、成海澪、
篠原彩、足立信彦、里内伽奈、
服部ひろとし、はてな(H公演のみ出演)

・毛皮族『セクシー・ドライバー』
2022年11月30日~12月4日@北千住BUOY
脚本・演出・映像: 江本純子
出演: 遠藤留奈、鈴木将一朗、江本純子

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演劇のおじさんとおねえさん
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