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2024年8月27日の乾杯

新しい乾杯。本来なら秋の気配が訪れそうな8月の終わり、相変わらずの猛暑に晒されながら、それでも少しずつ日が短くなるのを感じながら、おじさんとおねえさんで夏の演劇のことを語り合います。

👨えんげきのおじさんと
👩おねえさんです。
👨こんにちは。相変わらず暑いですね。
👩はい。
👨台風が来たり天候も不順だしね。
👩そうですね。。
👨まあ、そんな今日この頃ですけれども。 お芝居は相変わらず元気でね、いろいろ大きなものから小さいものまでやっていて。
👩ああ、良いことですね。
👨はい。さっそくお話をしていくね。まず、紀伊國屋ホールで『朝日のような夕日をつれて』を観てきました。

紀伊國屋ホール

👩ああ、いいですね。
👨9月1日までだそうですけれどね。
👩はいはい。
👨私って、「朝日・・」を最初に見たのは1980年代でね、まあ歳がバレちゃうという感じもあるんだけど。 あの、私の古い友人が、 その人は本当に若いときからずっと早稲田劇研を観続けていたひとなのだけれど、私を1983年のシアターグリーンに連れてったと言い張っていたのね。でも、私はそれを観たという記憶も自覚もない。 多分その当時って私もそんなに演劇をたくさん観ていたわけではなくてたとえ本当に「朝日・・」を観たとしてもきっとなにをやっているのかもわからなかったのだろうなとも思うし。 なんかね、確かに池袋で勢いが凄くあるコミコミのお芝居を観た気はしているのだけれど、それが第三舞台だったという認識はなくて。
👩はぁ。
👨逆に『朝日・・』が凄く印象に焼き付いたのが87年のやつで、実質的にはそれが私の初見だという感じがしていて。
👩ふんふん。その後の91年は2回観ているし、97年も観ている。2014年になんかあの17年ぶりぐらいにやったやつも一応観ているのね。
👩はい。
👨でね、正直言うと 2014年に観た時には、こうなんていうの、高揚感もあったけれど経年劣化みたいなことも正直感じたんだわ。 同じ『朝日をような夕日をつれて』のフォーマットというか仕掛けでやってるんだけど。
👩うん
👨だけどね今回のやつを見てね、その前に戻った。
👩あぁ、そうなんだ。
👨まあ、2014年の時にも少年役で玉置玲央さんが出ていたのだけれどね、それでも、やっぱり、ある程度までの年齢の俳優じゃないとできない部分があるとおもうんだ、このお芝居って。
👩なるほどね。
👨やってることには、ゴトーを待つ間の遊びとかね、あの途中で入ってくる演劇がらみの小ネタみたいなやつがあんのよ。 あの小劇場病だのミュージカル病だのに冒されたかっていう。 それがあの今回は2.5次元病なんだけど。
👩うんうん。
👨そういうところはバージョンごとに変化があるのだけれど、そのフレームというかフォーマット自体は変わってなくて。一方でそのフレームとかを動かすための勢いとか体力ってあの舞台には絶対必要で。 今回は玉置さんがそれはもう切れてるの。でも厚みがあって。もちろん他の役者さんもそれぞれの色でめっちゃくちゃ切れていて、それぞれが突出することなく物語を構成していて。 だからもうなんかこれってあの87年の時に見た印象と変わらないなとか思って。
👩はい。
👨で、その上でね、舞台の背景とかっていうのは、ものすごく進化をしていて、そもそも紀ノ國屋ホールだから設備もいいし、照明も鮮やかだし、背景の投影されるものも俳優と一体になるようなインパクトがあったり、昔はもう耳で必死になって聞き取ってた言葉がバンバンと背面に提示されて直接脳にはいってくるシーンもあってわかりやすいし。
👩なるほど。
👨一方で、変わらない強さもあって。なんかあのパブロフの犬じゃないけど、第三部隊のころに躾けられた始まる前からのルーティンがあって。客入れの音楽は新旧取り混ぜてで、錯覚でなければ今回はアニメの「怪獣8号」の主題歌なんかも流れた気がするのだけれど、開演の15分前と開演時の静寂の前にはかつての第三舞台のいくつもの舞台のようにOpusの「Live is Life」が流れて、昔はROXY MUSIC の「More than this」を使っていたこともあったけれど、それらの曲が流れると、自然に心が第三舞台に繋がれるようにされてしまってもいて。
👩うん。
👨でね、最後の2014年に「朝日・・」を観たのが概ねひと昔まえなのに、そこに訪れるのは90年代に触れた第三舞台の今と同じ客席にあることの高揚なのよ。
👩これはなんかあれだね、あの。 なんかになんか匂いとか、さあと味とか がバーって戻るみたいなふうになる感じね。
👨ほんとうにそうなのよ。まあ、「たすいち」なんかの舞台でもそうだし、公演を積み重ねてきたいくつかの団体が採用している手法でもあるのだけれど。とにかく、もうこれをやられたらパブロ犬犬観客としてはよだれを流すみたいに息を詰めて舞台の始まりを待つしかない。「朝日のような夕日をつれて・・・」という冒頭が初めはささやくように、やがてしっかりと群唱で語られ、そのあとYMOの「East of Asia」がながれユニゾンの身体で紡ぐ世界があって、「朝日のような・・」がさらに強く舞台を満たすのだけれど、その時点でわかるのよ、自分がもうすでに昂ぶっているって。
👩はい。
👨ただ一方で、振り返ってみると、最初に「朝日・・」を観た時と今観る「朝日・・」ではその高揚のクオリティに優劣がなくても、観る側の感覚は違う。それも別腹でおもしろくてね。
👩ほう。
👨最初に観た時の冒頭ってこれから訪れる未知なるものへの期待感をその演出がやまほどに膨らませていたような感じだったのだけれど、今回は観るたびに心に焼き付けて戯曲なども買って繰り返し咀嚼もして、さらには作品のベースになったベケットの「ゴドーを待ちながら」も何度か観る機会があって、その都度自分なりの理解も思索も降りてきたし思索もあったわけじゃない。で、ほんとうに良い作品というのは、そこで満ちて終わるのではなくて、だからこそ更に観たいと思うわけよ。
👩うんうん。
👨だから、同じルーティンから訪れる高揚であっても、初見のときと、今回では中味が違う気がする。最初へは未知なるものへの興味を導きだし、今回はその普遍を再び目の当たりにすることへの抑えきれない期待だったように思うのね
👩はいはい。
👨で、実際にそれを俳優たちがその世界をノイズのない本当に研がれた身体で演じてくれるから、それはもうとんでもない観たされ方なわけですよ。
👩うふふ。。
👨まあ、鴻上さんも確か還暦をすぎていらっしゃるし、あと何回やるのかわからないけれど。
👩はい。
👨こっちの方もほら、いつ寿命が尽きるかわからないけれど。
👩これこれ、滅多なことをいうもんじゃありません。
👨まあそうなのだけれど、やっぱりいろいろと考えるお年頃ではあるわけですよ。 その中で、改めて風化することのない「朝日・・」を観て、実際、たとえばこのさき再演が続いたとしても、 自分があと何回「朝日・・」を観ることができるのかとは思ったものね。
👩うーん。
👨そう。 なんというか、鴻上作品を全部100%肯定しているわけではないのだけれど、多くの作品、なかでも「朝日のような夕日をつれて」ともうひとつ「天使は瞳を閉じて」は多分何度観てもまた観たくなると思う。そのときご出演の女優陣もとても印象的で長野里美さん、筒井真理子さん、山下裕子さん、藤谷みきさんとそれぞれに今も舞台やドラマで活躍されているけれど、お姿を拝見してふっと「天使・・」を思い出すこともある。。
👩はいはい。
👨「天使は瞳を閉じて」は初めて観たときに終演後わけもわからず涙が止まらなくてね。当時の自分にはそのくらいインパクトが強かったのだと思う。再演されるという噂は聴かないけれど、もしあれば、「朝日・・」とはまた違った感覚で、あればあるだけ観たいよね。良き舞台が持つそういう強さを今もすごく感じていますけれどね。
👩へぇ。
👨ところでお姉さんにはなんか、そういうお芝居ってないですか。
👩ああ、ありはするけれどなんというタイトルだったか。まあ、あるはありますね。そう、ありはしますね。
👨まあ、なんかあのなんかいくつかあるじゃないですか? 人生が変わるっていうか、自分にとって大切な。
👨そうそう。
👩あれ、なんだったっけな。 なんか出てこないけど、
👨なんか別にね小説だって、この小説を読んで囚われまくるっていうのはあるのだれど。
👩うん。
👨ただ、お芝居の方が一期一会感が強くてね。
👩はいはい。
👨小説なんかはね、再び出会おうと思えば本棚から引っ張り出してくれば良いわけだし。 あの、最近はね、映画だってほら結構サブスクで観ることができたりとかね。
👩そうですね。
👨色んな表現があるけどお芝居みたいな舞台芸術はその時にその場にいないと本当の感動ってやってこないから。 だから改めてお芝居とうものが持つ凄さを紀伊国屋ホールに行って思いましたけどね。
👩はい。
👨まあ、客席の年齢とかはね、あの私が最初に見た時には、みんなものすごく若くて。で、それがみんなドキドキしながら観てという感じだったのが、今はだいぶ変わったけど、
👩はい、
👨でもその根源にあるものは、歳がいくらだろうが何だろうが、やっぱり人間をこう震えさせるという点では変わっていないんだなというふうに思って。
👩うん。
👨だから、ほんと良い体験を しましたよ、久しぶりに。
👩うらやましいですね。 懐かしさもあるだろうし。
👨うん、でもね、懐かしさっていうよりもこの「朝日・・・」に再び新しさも感じたんだよね。
👩それはアップデートしているってことですね。素晴らしい。
👨そうそう、さっきもいったけれど、わからないでこう喰いつくように観たのと、全てがわかっていてその呼吸の上で再び観たのって、やっぱりやってくる感覚が違うんですよ。 それはもう台詞ごとの一つ一つのニュアンスなんかにしても。またさ、あの最後にあれ、「リーインカーレーション、蘇りを信じますってみたいなセリフもあるから。
👩はい。
👨そういうのを聴くと、あの多分私、死ぬ直前に観たらまた受け取るものが変わるのかもなとか。
👩これこれ、滅多なことを言うものではない。
👨いつか同じ原子の構成に生まれた私がいつか同じ物をみるのかなぁとかおもえるかもしれない、。死の直前にみるのであればね、まあいつかはね。それはたとえば30年後かもしれないけれど。50年後まではちょっと無理かもしれないけど。 今の段階でその舞台の俳優はまだ生まれてないかもしれないけれど、まだ鴻上さんがその頃までご存命かもわかんないけど。 なんかそういう中でこの作品に触れることができたらそれはもう素敵だと思う
👩なるほど。素晴らしいものをみていらっしゃるなぁ。
👨なんかさ、今回はもうありがたかったね。いつもはなんかロビーで客出ししているお姿を見ても鴻上さんだぐらいにしか思わないで帰るんだけど。 今回はね、あの帰り道にいらしたので、頭を下げて拝んで帰りましたけどね。 あのいいもの見せていただきありがとうございますって。
👩あははは。
👨そのくらい大満足でした。ところで8月に見て良かったという舞台は当然に一つではなくて。
👩あとはどこですか。
👨あやめ十八番はやっぱりいいよね。

座・高円寺


👩ああ。そうですね。
👨私、あやめ十八番の舞台のなかでもお団子屋さんが出てくるシリーズって大好きなんですよ、堀越涼さんのあのご実家を借景にしたっぽいやつ。
👩ああ、私も大好きです。
👨でね、今回は、徒歩5分の駆け落ちっていうのをお母さんがやったみたいな話なのね。
👩可愛い。
👨なんかそういういきさつが解けていくみたいなね。下世話なところもあるのだけれどそれがまたよくて。楽団もはいって、お祭りのお囃子なんかもあって、そのお店や界隈の風景とかも浮かんできて。 で、その世界に浸されると、なんかその下世話なことがなんか人間が生きていく息づかいにも楽しみにも粋にもなるんだよね。。
👩あぁ。
👨小ネタ的なものも色々良くて。そば打ちがをしょっちゅう失敗するお蕎麦屋さんとかも出てきたりとかね。
👩はあ。
👨でもお蕎麦を打つのは失敗するんだけど、なんかマフィンを作るのがうまくて。 今日おそばがなしでマフィンを売るみたいになってまたそれが売れてたりするとか。
👩あはは。
👨あと、単なる過去のエピソードに加えてあの世に行った人たち の存在っていうのもしっかりと舞台にあって。 そのもう亡くなった先であっち側にいる人の顛末と今の人たちの対比というかその繋がりも舞台にうまく描かれているのね。 そういうところにこう堀越さんの人生観っていうかね、そういうものも出ていて。 あとさ、あのやっぱり座・高円11はいいよね。。
👩いいよね。あやめ十八番の座・高円寺なんてもうめちゃめちゃあうから。
👨しかも今回は対面の客席だしね。
👩あぁいいねぇ。そうなんだ。
👨舞台面が広々としていて。入り口の方から見での下手側に楽隊がならんでね。上手側には神社の鳥居なども設えられていて。楽隊はバイオリンと、キーボードと、ファゴットと、ギターをメインにした4人編成でね。あと先日ONEOR8で拝見した中野亜美さんが新たにあやめ十八番に加わって、お団子屋さんの仕事のできるアルバイト役を演じたりもして。
👩はい。
👨私が観た回には終演後に入団披露目もあったのだけど。今回彼女がね、なんかあのすごく努力してお祭りの篠笛を習得したという話があって。
👩うんうん。
👨でね、やっぱり笛が入ったお囃子ってすごいいいんですよ。夏の風情もあったりとかしてね。
👩はい。
👨やっぱりそういうお芝居の為の鍛錬が生きるというのもあやめの雰囲気にはとてもあっている感じがするのね
👩なるほど。
👨まあなんにしても、ああいう暖かさが残るお芝居って私は好きだね。 すごいベタな言い方で申し訳ないけど。
👩いやいやいや。
👨なんだろう、あの、毎日暮らしてるじゃない?
👩はい。
👨しかも長く一人暮らしなんかもしてるから。 日頃は家族っていうことが意識にあんまりないし、あとまあ、いろんな人の修羅場はたくさん、その男女関係のね、それは見聞きしたけれど、そのなかでの時間薬の効き方とか、意地の解け方とか、終わりよければみたいなことっていうのを改めて観る側に呼び起こしてくれるんだよ。そういうあったかさもあ るんだよね。このお芝居には。
👩ああ、なるほど。そうですね。なんとも言えないけど、きっとほっこりするんだよなあ。
👨そうそう、ほっこりっていうのはすごくいい言葉だね。その通りだとおもう。で、あやめ十八番は毎年夏に必ずやるみたいなルーティンができているしね。
👩ええ、そうですね。
👨だから、また来年の夏が来ればと思うし。まあ、来年の夏にはどんな話もやるかわかんないし、時には怪談みたいなこともやったり去年の夏は無声映画の弁士の話をやってたりとかもしていたけれど。
👩うんうん。
👨その無声映画の時代の物語も、それはそれですごく良かったしね。
👩はい。
👨次に何をやるかわからないけれども、でも夏にそういう楽しみがあるってすごいいいと思うんだよね。
👩そうですね。
👨あぁ、夏が来た。あやめの季節だみたいに。
👩ああ、良いですね。確かに。
👨なんかそういう季節へのわくわくもあって、
👩季節感を感じるんだ、あやめのお芝居があると。
👨そうそう。冬にやっても別に構わないんだけど、夏のあやめっていうのは最近定着してきたしね。
👩あやめ十八番さんの雰囲気というか、そこにしかないものがしっかりあるから。
👨うん。
👩その、 それこそさっきの香水の匂いとかで思い出すじゃないけど。
👨はいはい。
👩今まで見たあやめ18番さんの作品とかもなんか繋がって感じる部分があるがするし。特にお団子屋さんの話とかだとしっかり繋がっている気がするし。
👨うん。
👩全部が地続きっていうかまっすぐな線みたいな感じではないんだけど、何かどっか要素がずっと繋がってるような気がすると、その世界がその舞台だけじゃなくて今まで観たあやめの作品全体に広がっていく奥行きというのがあって、私はそれがすごく好きだなと思っていて。そういう世界ってなかなかないと思うのだけれど。
👨お団子屋さんの世界なんかはそのコアというか最たるものだしね。
👩本当そう、あのいろんな作品に出てたりするじゃない?そのモチーフになるものとかは作品ごとに違うのだけれど、その要素というか。でもちろん物語は全然違うわけだから、あれなんだけど。
👨うん。
👩世界観がこうどっかしらで触れ合って。その、あれだよ。クランプね。クランプです。
👨あぁ、クランプね。
👩そのクランプ作品の世界がちょっとずつちょっとずつその他の漫画の本人のような本人じゃないようなみたいな人としてが出てくるスターシステム。
👨うんうん。 なるほどね。その中でもほら、座員が増えたりとかの新たな広がりがあって。そういえばあの大森茉利子さんところの娘さんが今回初舞台でね、小学校一年生なのかな
👩へぇ、凄い。
👨ほら、この間初舞台を踏んだ中村獅童さんところの息子さん、陽喜君だっけ、 彼も確か小学校一年生だから、同じぐらいなんですよ。 ただ、歌舞伎の子役ってのは、子役独特の台詞回しを勉強して芸を磨いていくみたいなところがあるのだけど、傍目にはちょっと棒読みのね。 でもね、あの大森さんところの娘さんは、現代劇の俳優としてめちゃくちゃすでに芸達者で、 あの年頃からあれだったら、二十歳のころにはとんでもない役者になるぞみたいな。
👩すごい英才教育。
👨むしろお母さんが割合とその辺を自由にやらせてるみたいなところも多分あってね。 やりたいという才能があるんだったらやらせるみたいな感じなんじゃないかなと思うんだけどね。
👩なるほどね。
👨うん。 でもそうやって、そのファミリーみたいになってやっていくのもなんかすごく素敵だし。
👩うん素敵。
👨そうしたら今後、ほら20年ぐらいしたってできるじゃない?
👩ああ、そうですね。
👨だからみんながあの50や60ぐらいのさ。松竹新喜劇の看板役者くらいになっても、 今度は大森さんの娘が一緒になって勢いをもったあやめを背負っていけるじゃない。
👩わあすごいなあ、脈々と続いていくんだな。
👨そうそう。そうしたらなんかほら毎年夏が来るたびにっていうのを20年でも50年でもできそうだから、観客としては。 なんかそういうのも楽しみだなというふうに思ってね。
👩いいですね。
👨座・高円寺でずっと続くのであればそれも素敵だし。
👩はい。
👨ところで、もうひとつ、8月の良きお芝居を上げるとすれば、アマヤドリも観ましてね。


吉祥寺しあたー

👩アマヤドリは我々の話でもよく出てきますね。
👨はい。私、大好物ですから。広田さんっていうのはやっぱり天才だと思っているんで。
👩なるほど。
👨今回は『牢獄の森』という新作と『うれしい悲鳴』というアマヤドリの前身になるひょっとこ乱舞最後の演目を交互に上演で。
👩うんうん。
👨『牢獄の森』はほとんどが劇団員での上演で、ひとりだけさんなぎさんが客演だったのですけれどね。さんなぎさんはご存じですか?
👩あぁ、存じ上げないです。
👨うん、私は最近あちらこちらで拝見していて。まだ割とお若いとはおもうのですけれどね。エッジの効いたお芝居をされるかたで。
👩そうなんだ。
👨一方の『うれしい悲鳴』の方は劇団員は3人で、そこに十数人の客演が入っての上演で
👩へぇ。
👨その客演陣も西川康太郎さんとか、ザンヨウコさんとか役者筋ゴリゴリのベテランの方もいるし。 あと若手の方もたくさん出ていて。 まあ、元々『うれしい悲鳴』なんかは初演や再演の時も客演が多かったみたいだし。西川康太郎さんなんかは再演にも出ていた気がする。だから昔の伝統を引き継ぐものは客演をいれて、 新しい語り口のものは劇員団でやるという形になって、でもそこには一種の戦略みたいなものがあるのかなぁと思ったりもしてね。ちなみに『うれしい悲鳴』にはアマヤドリのメソッドのひとつである群舞がしっかりとあって。
👩ああ、ありますね、アマヤドリの舞台には。
👨アマヤドリといえばあの群舞みたいなね。
👩はいはい。
👨『牢獄の森』には群舞がなくて、会話劇のしっかりで物語を構築していく感じで。そのあたりの語り口の違いもおもしろかった。『うれしい悲鳴』では群舞群舞を育児で休団中の一川幸恵さんがつくったらしいのだけれど。彼女が劇団としてしっかり守り育てているメソッドを劇団員はもちろん客演の皆様がキレッキレでおどるわけじゃない。そのことで随分舞台の印歩み歩み視座が生まれ膨らむ。主役的な部分は双子で劇団員の妹である相楽りこさんが演じたのだけれど、、
👩あぁ、はいはい。
👨彼女のお芝居にアマヤドリの舞台という印象は当然生まれるのだけれど、そうはいっても客演の皆様もけっこう個性は強い方が多くて。そのなかで戯曲に紡ぎ込まれた普遍や演じる今をどのように描き出していくかというのは、まあ作演の腕の見せ所でもあるのだけれど、結果として初演時や再演時とはまた違う今回の『うれしい悲鳴』があって、その中に俳優達のみせどころも生まれていて。
👩なるほど。
👨まあそれにしても、西川康太郎さんとかザンヨウコさんとかは上手いよね。
👩そうですね。 私、西川幸太郎さんはすごく好きなんですよ。 見ていてワクワクする。私、あの全然舞台とか観たとがないお知り合いの方に、是非見て頂きたいと伝えたら、観に行って下さったんですよ。そうしたら、凄く染まってくれてなんだったら私なんかより全然追いかけて観続けていて。
👨ほほう。
👩だからその方にとっては人生が変わったのだろうなぁって。その後教えて下さってありがとうございましたってわざわざご連絡をいただいて。すごく観に行っているみたい。実はそういうひとが二人いるのね。
👨あの今回もね、まあ、相葉りこさんと、まあ主役というのとは少しちがうのかもしれないけれど、ふたりで軸になる部分を担って、その中にもう彼ではないと作り出せないそういうニュアンスっていうのは間違いなくあって。
👩あぁ。
👨だから。 彼はやっぱり引退しちゃダメですよ。
👩そうですね。
👨うん、彼に導かれて作品全体がしっかりと行き場なく腑に落ちるような部分もあったし。 彼のそういうお芝居を観ることができてほんとよかったと思う。 さっき言ったザンヨウコさんにしてもそうなのだけれど、こうキャリアを積んだ人たちって、自分のお芝居の足腰を持ってアマヤドリのお芝居ができるわけで。また一方で比較的若い俳優達の個性も取り込むキャパを持った戯曲でもあると思うんだよね。そのあわせ技に出来上がる世界の満ちかたが見応えの一つだった。。
👩はい。
👨で、一方でもう一つの『牢獄の森』というのはよりしっかりと会話劇なのですよ。アマヤドリのこれからの語り口に繋がる部分も感じるし、そうし手描くものの強さもあるし、それを劇団員が育んでいるようにも思えるんだよね。群舞もないし、舞台もよりじっくりと会話の高い緩急で編まれてるのだけれど。
👩はい。
👨最後を群舞にしなかったこと、その世界観をこう身体で俯瞰化させるんじゃなくて、別のやり方でいろんなことを観る側の余韻に引き出す部分があって。 それはある意味広田さんの試行錯誤だとも思うのね。劇団員の人たちと共に群舞に歩み出さず、むしろ俳優の力や個性をより引き出して物語を膨らませていく広田さんの試みにも思えて。アマヤドリの今後の手札を新たに作っていくような、それによってよりたくさんのものを描く底力をやしなっていくというか、なんかそういう感じがした。もちろん二つの作品、どっちも凄く良かったのだけれど。
👩うふ。
👨観る側にとっても実り多き二作品のはしごでしたよ。
👩よかったですね。
👨はい。まあそんなこんなで8月もいろいろと観てきましたけれども。 9月に入るとこれはこれでいろいろ面白い芝居がたくさんあってね。
👩はい。それでは今後のおすすめを。
👨一つ目は、あの木下歌舞伎の『三人吉三廓初買』。
👩ああ、本当。木ノ下歌舞伎は 晴らしいから。以前にみたものも本当よかったものなぁ。
👨ただ、今回の演目は一段と大作で。5時間だからね。
👩木ノ下歌舞伎は長くても何回観てもいいよ。ただ腰が痛いよ。
👨うん、そう。
👩腰が終わってしまう。
👨まあね。
👩あれだけはなんと かならんかなという気持ちがありますが。
👨でもね、今回は中ホールだから。地下のホールよりは良い座席だとおもうけれどね。というかもともと歌舞伎っていうのはそういうもんなんですよ。 来年とかあれでしょ、歌舞伎座ではあの三ヶ月で代表的な狂言を三本通しでやるんでしょ?
👩えっ、そうなんですか?
👨忠臣蔵と、義経千本桜と、菅原伝授手習鑑の通しを一ヶ月ずつやるみたいですよ、来年は。
👩すごい。
👨本当に通し狂言を昼夜で観たら、財布も大変だけれどそれ以前にもう腰が立たないかと。
👩爆発しますね。
👨その、通しで観る醍醐味ってぜったいあるような気がして、興味はあるのだけれどねぇ。。
👩その前に腰がいってしまうんだよな。
👨無事に観終わっても多分ヘロヘロだろうねぇ。
👩うん終わりだ。
👨そもそも大詰めまでたどり着けるかみたいな話だけれど。 だからまあ歌舞伎っていうのはそういうものなのかもしれないけど。なにはともあれ木ノ下歌舞伎の『三人吉三廓初買』は観たいなぁと思います。
👩はいはい。
👨あと、一つはね、子供鉅人という団体があったじゃないですか、解散してしまったけれど。
👩はい、そうですね。惜しまれつつですね。
👨うん、あそこがね、やっぱりお兄様が我慢できなかったみたいで、新しい団体立ち上げられました。
👩だいたいそうですね。
👨あの「焚きびび」っていう団体でね。子供鉅人には、益山三兄弟がいらして、そのうちの上お二人がご出演で。
👩へぇ。
👨益山貴司さんはやっぱり天才ですからねぇ。彼は戯曲を編むだけじゃなくて、美術的なセンスとか表現のいろんな才能もあるんでね。彼の作品だからこころを染めるものがある。 だから彼の作るお芝居は是非に観に行きたいなぁって思うんですよ。それは初めて子供鉅人を観た時からずっとそうですけれどね。。
👩「焚きびび」も面白そうだな。
👨会場のJINNAN HOUSEっていったことがないのだけれど。
👩はい。
👨天気予報では9月になっても暫くは暑いみたいだけれど、8月を乗り越えた勢いで元気に観劇を続けたいと思います。 と
👩うふふ、そうですね。
👨ということで、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨残暑厳しき折り、皆様もご自愛くださいませ。また次回もよろしくお願いします。
👩お願いします。

座・高円寺

(ご参考)
・サードステージ『朝日のような夕日をつれて』
2024年8月⒒日~9月1日@紀伊國屋ホール
脚本・演出:鴻上尚史
出演: 玉置玲央、一色洋平、稲葉友、
安西慎太郎、小松準弥

・あやめ十八番『雑種 小夜の月』
2024年8月10日~18日@座・高円寺1
脚本・演出:堀越涼
出演:堀越涼、大森茉利子、金子侑加、
中野亜美(以上、あやめ十八番)、
秋葉陽司(花組芝居)、井上啓子、内田靖子、
梅澤裕介(梅棒)、小口ふみか、川田希、
蓮見のりこ、福圓美里、松浦康太(シタチノ)、
山本周平(新宿公社)、佐藤つむぎ、原川浩明(花組芝居)、
+日替わりゲスト
音楽:吉田能(あやめ十八番)、池田海人、丸川敬之(花組芝居)、
中條日菜子

・アマヤドリ『牢獄の森』『うれしい悲鳴』
2024年8月17日~26日@吉祥寺シアター
脚本・演出:広田淳一
出演:
(牢獄の森)倉田大輔、沼田星麻、相葉るか、
徳倉マドカ、深海哲哉、宮川飛鳥
堤和悠樹、星野李奈、稲垣干城(以上、アマヤドリ)
さんなぎ
(うれしい悲鳴)
相葉りこ、宮崎雄真、大塚由祈子(以上、 アマヤドリ)
西川康太郎(おしゃれ紳士)、西本泰輔、瀬川聖
津田恭佑、成瀬志帆、月野環、
夏アンナ、元山日菜子、宮本海
梶川七海、小町実乃梨、三尾周平
桜井木穂、チカナガチサト、荒川流(拘束ピエロ)
ザンヨウコ

(今後のおすすめ)
木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』
2024年9月15日~29日@東京芸術劇場プレイハウス
脚本;河竹黙阿弥
監修・補綴:木ノ下裕一
演出:杉原邦夫
出演:田中俊介、須賀健太、坂口涼太郎、
藤野涼子、小日向星一、深沢萌華、
武谷公雄、高山のえみ、山口航太、
武居卓、田中佑弥、緑川史絵、
川平慈英、緒川たまき、眞島秀和、
スウィング:佐藤俊彦、スウィング:藤松祥子

・焚びび
『溶けたアイスのひとしずくの中にだって踊る私はいる』
2024年9月13日~16日
@JINNANHOUSE B1F diggin studio
脚本・演出:益山貴司
出演:益山寛司、高田静流、ISANA、
BEBE、益山貴司



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