もぬけの殻
テレワークと休日の日課になっている早朝の散歩。
夏真っ盛り、こんな時は小さくとも涼しげな花を見つけると、爽やかな気持ちになる。だから、上下左右を注視しながら歩く。近所のスポーツ公園は陸上競技場や野球場、テニスコートがあり、人工池とサクラの広場、それを囲むように遊歩道がある。
トチノキ、ミズキなど、花はすぎている。
ふと上を見上げると、葉の裏側に黒いものがたくさんくっついているのが見えた。地上から約2mのところにあるトチノキの大きな30㎝くらいの葉、セミのぬけがらだった。
もぬけの殻とはよく言ったもの。
セミが羽化して中身はなく殻だけ。10-15個ほどのぬけがらが葉の根本方向にみな同じ向きで、じっと動かずに並んでいる。本人がいなくなってもしっかりと葉を握りしめて、風が吹いても落ちてこない。
トチノキの根元を見ると、地面に穴がたくさんあいている。
ここから這い出て、幹を登り、枝をつたって葉の先端にたどり着いたあと、逆向きに、つまり上の方向を向いて脱皮、羽化したのだろう。相談しながら登ったように、仲良く勢ぞろいしているのが面白い。
最近の研究ではセミの幼虫期間は7年よりも短いという。
それでもアブラゼミで2-5年、土の中で過ごして、夜中に這い出してくる。羽化後も1週間の寿命ではなく3-4週間、それ以上だという高校生の研究結果があるそうです。いずれにせよ、ぬけがらを残して、そこには戻れない体になって飛び立っていく。
蛻(もぬけ)は虫偏。
だから、生き物(セミやヘビなど)のぬけがらのことなんですね。その殻は「人が逃げ去ったあと、魂がぬけ去ったあとのからだ」(三省堂国語辞典) 「もぬけの殻」はセミに対して使う言葉ではないことがわかりました。