夏休みは仮想旅行
いま、最も遠い国は隣の半島、北の国でしょう。友好国である隣の中国との間ですら、境界封鎖で行き来はできないし、情報窓は前から開いていない。国境の鴨緑江、対岸のあの国を遠見で撮影した写真が載っていた。スイカをならべた市場らしき道ばたを、マスク姿の人が頭に荷を乗せて歩いている。
中国との境に半島最高峰の長白山(白頭山)がある。山頂の青く澄んだカルデラ湖「天池」の写真を思い出した。残念なことに、今行くのはかなわない。
仮想旅行がしてみたくなった。
半島側から白頭山(朝鮮側はこの表記)をめざし、そこを源流とする3本の大河を下る旅。西にむかっては鴨緑江、790キロを経て日本海にそそぐ。河口の中国岸は丹東市。中朝間に列車がつながる唯一の鉄橋がある。
東へは豆満江が伸びる。いったん北に折れたあと南に下り、日本海にいたる。520キロ先の河口の東岸はロシアだ。
もうひとつは、天池から滝となって注ぎ出ている松江河。北に向かって原生林のなかを下る。途中で松花江と名を変え、吉林、ハルピンを経て1430キロ先でアムール川に合流する。ハバロフスクを通って延々とシベリアを北上して樺太の北端にむかって大量の水を注ぐ。この淡水が冬にはオホーツクの流氷に姿をかえる。
戦前、白頭山の北側地帯は地図上の空白地帯だったという。梅棹忠夫さんが三高時代に友人とこの空白地帯を探検した(「白頭山の青春」)。そして、天池を源流とする川が松花江につながっていることを発見した。
この3河川、今となっては行くことがかなわぬルートでしょう。でも行ってみたい。
地図帳とグーグルアース、かたわらには「坂の上の雲」と「白頭山の青春」をおいての仮想旅行。夏休みはこれできまりです。