魁(さきがけ)。
コロナが蔓延してもうすぐ3年になろうとしている。その間、「波」の低い間合いをみはからい、まわりの様子をみながら、適度に国内旅行を組み入れて息抜きをしてきた。各国の入国規制が緩和されたと聞いても、まだ海外は早いと思っていた。そんななかで、知り合いに「魁」がいたのです。
帰宅すると、食卓のうえに見慣れないけど、でもどこかで見たような覚えのある小箱がおいてあった。薄いオレンジ色に青い英文字と薄茶の四角いお菓子の絵が描いてある。Mannner WIEN、ウィーンのウエハースじゃないですか。それに、丸いかたちのむきだしの包み紙、チョコレートだ。
「どうしたの?」
「Kさんが行ってきたんだって!」
「どこに?」
「きまってるじゃない、オーストリアよ」
「大丈夫なの?」
「ハンガリーとチェコも」
テレビや新聞で欧米各地の感染対応、生活ぶりなどは目耳に入っていたけれど、観光はまだまだと思っていた。聞くと、行き帰りも飛行機はほぼ満席状態だったらしい。ただ日本人はほとんどおらず、大きな外人さんばっかりで窮屈だったという。ウィーンは電車、バスなど交通機関はマスクが必要だったけれど、それを除けばマスクいらず。プラハでは誰もマスクはしてなかったそうだ。
「もらってこなかったの?」
「平気だったみたいよ」
魁。
知り合いのKさんが行った...家人の顔つきが変わったのがよくわかった。
「Kさん、勇気ある行動、だよね。でも、ぼちぼち始まるのかなあ」
「スペインがいい。前から言ってたでしょ」
パソコンを開いて、旅行サイトをチェック始めた。一気に「しばり」がとけたみたいです。