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樋口一葉「たけくらべ」のマス目のない自筆原稿
日経新聞日曜版に「樋口一葉の日記をたどる」という特集記事がありました。
目に飛び込んできたのが「たけくらべ」の自筆原稿の写真。
草書体のきれいな毛筆字で丁寧に書かれています。数えると1行に20字がきちんと同じ間隔で、マス目に入れたように書かれていますが、写真にはそれらしき罫線は写っていません。
字数を数えるために、原稿用紙にはマス目が入っているのがふつうです。
当時のマス目原稿は「漱石山房」原稿箋が有名ですが、これは明治末期のこと。
「たけくらべ」(明治28年)の時代にはマス目の原稿用紙を使わなかったのでしょうか。
調べると、神楽坂・相馬屋源四郎商店が尾崎紅葉に「マス目の入ったものを印刷してほしい」と頼まれてつくったというのが最初らしい*1)。
紅葉の文壇活躍は明治23年以降だから、「たけくらべ」には間に合います。
一葉の自筆原稿はほかにも存在するのでしょうか。
「たけくらべ」の直筆草稿は日本近代文学館にあるそうです。*2)
「連綿で書きながら原稿用紙のます目に一字ずつを入れており、その流麗な筆は絶妙といえる」由。
つぎに、
オークションに出た一葉の自筆原稿というのがネットにでてました*3)。
みると、この原稿にもマス目がありました。横長で青色の罫線、20字×20行の400字詰め。この自筆原稿は、別の文芸誌に再掲載するために一葉が清書したものという。
「新聞」と同じページを探して見比べた。すると、
字の形、筆遣いは同じ、同一人が書いたのはまちがいありません。
このオークションの原稿には推敲のあとがあります。
「新聞」のは、オークション原稿の推敲を本文に採用しており、字もいくぶん丁寧にかかれているようです。
ここまででわかったことは、一葉はマス目原稿用紙を使っており、
①草稿にはマス目がある
②正式原稿の存在は不明ですが、草稿は連綿でかかれているので正式原稿はあるはず。たぶんこれもマス目あり
③別の文芸誌のための原稿(オークション)にはマス目がある
ところが
④時代が新しいはずの「新聞」の原稿にはマス目がない
この「新聞」自筆原稿はどこに発表するために書かれたのでしょうか。
また、マス目原稿用紙をつかってないのは何故なのでしょうか。
新しい疑問がでてきました。
*1)(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E7%A8%BF%E7%94%A8%E7%B4%99)
*2)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9F%E3%81%91%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%B9
*3)https://mainichi.jp/graphs/20181225/hpj/00m/040/003000g/1