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北方領土とクリミア

5月9日は旧ソ連の対ドイツ戦勝記念日。ロシアのプーチン大統領はこう演説した。「計り知れない勇気と犠牲の上にナチズムから人類を救った。文明はいま、決定的な転換点を迎えている。祖国に対する本物の戦争が再び行われているが、われわれは国際テロに反撃し(ウクライナ東部)ドンパスの住民を守った」

旧ソ連の構成国であるベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン7か国の首脳の前で、ナチズムとの戦いを根拠とし、ウクライナ侵略地区防衛と同盟国の結束を促した。

旧ソ連は帝政ロシア国土をベースに、領土の膨張によってできあがった国だ。旧ソ連が崩壊して構成国の多くが独立国となった。その後もロシアは、近隣国との境地域に対し侵攻占拠し、領土問題がいまも散発している。ウクライナに対する先年のクリミア併合がそうであり、今回のドンパスも同じである。

一方、第二次世界大戦時にクリミア半島で行われた連合国ヤルタ会談で、ソ連のスターリンは日本参戦に対する代償として南樺太と千島を領有することを約束させた。それが北方領土問題の根であることは周知のことである。

北方領土とクリミアやウクライナ黒海沿岸地区、ともにロシア(旧ソ連)の不当占拠であることはいうまでもない。北方領土の日本返還、クリミアのウクライナ返還が実現するのだろうか。

残念ではあるが、ともに否であろう。

正当化してきた占領に対して、それを覆してまで返す理由がない。
利益喪失になることに対して、ロシア国民に返す説明がつかない。

「ナチズムとの闘い」で国民の結束をはかり、同盟国を縛っている国なのである。