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命をあずける、56円の信頼関係

あなたの1分あたりの給与はいくらですか?
月額20万円とすれば、1日8時間20日勤務で約21円になります。あなたが、もし1分遅刻したからといって、21円を給与からさしひかれますか?

ある運転士が駅で回送列車を車庫に入れるとき、ホームを間違えて出発が1分おくれた。JR西日本は、働くべき時に働かなかったとしてその1分間の賃金56円を支払わず、裁判になった。

「ノーワーク・ノーペイの原則」が未払いの根拠だという。

どうも腑に落ちません。

彼は故意に怠けたわけじゃなく、また常習的なものでもなく、たまたま「勘違い」で間違えたのなら、わたしが会社側なら注意はしても賃金未払いにはしません。そう、性善説が前にでます。

もし仮に、その過失が重大な損失を招いたとしても、運転士を雇っている会社に責任があります。場合によっては、会社はその損害額の一部を個人に求めるかもしれません。でも今回は、回送列車を動かすだけのこと、客には影響がなかったに見受けます。

そう、労使の信頼関係が見えませんね。

JRは旧国鉄、しかも運転士なら労組は旧動労(国鉄動力車労働組合)。「泣く子も黙る
鬼の動労」と呼ばれ、1970年代にはストで運行がストップすることがままあった。今回の裁判は、今もなお、当時の労組感をひきずっているのではないかと思うほどです。

結果は、原告側(運転士)の勝訴。でも、ご本人は昨年お亡くなりになり、その代理人はこう言ってます。

「亡くなられた原告も報われると思うし、労働組合の活動として会社の体質改善を求めるという点でも非常に意義がある」

うーん、ご本人はどう思ったのでしょうか。56円のお金の問題に端を発した、まだつづく労使紛争だと思います。

わたしたち「乗る側」の命をあずかる運行は、労使の良好な信頼関係がベースにあって、それが安全につながると思っています。ぜひ心していただきたいものです。